2025年1月14日

Gartner、急速に期待が高まっているAIエージェントに関する最新の見解を発表

今できることと将来できることを明確に区別し、リアリティに基づいて採用方針を決定すべき

 

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、市場で急速に期待が高まっているAIエージェントに関する最新の見解を発表しました。

2024年後半から「AIエージェント」というキーワードの市場認知が急速に拡大しています。Gartnerでは、AIエージェントを「デジタルおよびリアルの環境で、状況を知覚し、意思決定を下し、アクションを起こし、目的を達成するためにAI技法を適用する自律的または半自律的なソフトウェア」と定義しています。この定義を拡張することで、AIエージェントとは「特定の目標を達成するために、自律的に行動するAIシステム」と捉えることもできます。こうしたエージェントは、環境から情報を収集し、それに基づいた意思決定を行い、論理的もしくは物理的なアクションを起こすことが可能となります。

ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀 忠明は次のように述べています。「現在のAIエージェントは初期の段階にあり、多くのユーザー企業にとって、その理解と実践はそれほど容易なことではありません。しかし、そうした企業であっても、AIエージェントに関する取り組みによって試行錯誤を行うことは、AI共生時代に求められる新たな能力 (ケイパビリティ) を獲得する上で重要な人的基盤を形成する重要なきっかけをもたらします」

これまでのチャットボットやロボティック・プロセス・オートメーション (RPA) との違い

チャットボットやRPAがあらかじめ定義された作業手順を自動化するのに対し、AIエージェントは、AIによって複雑なデータや状況に自律的に適応できる可能性を持っています。これまでのツールは与えられた入力に決められた通り反応するだけですが、AIエージェントは状況を理解し、自ら「気を利かせながら」目的を達成するためのプロセスを構築します (図1参照)。高度なAIエージェントは、自律した学習能力 (経験から学習し、行動を改善する能力 [強化学習やフィードバックを活用]) や、適応性 (環境の変化や未知の状況に柔軟に対応する能力) を有することが期待されています。しかしながら、現時点のAIエージェントはまだ初期段階のものであり、「理想のAIエージェントになるように」人間が試行錯誤をしながら育てていく必要があります。

図1. チャットボット、RPA、AIエージェントの違い
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出典:Gartner (2025年1月)

亦賀は次のように述べています。「企業は、AIエージェントについて『すぐにすごいAIが登場した』『導入すればすべてをうまく実行してくれるソフトウェアやシステムが登場した』と捉えてはなりません。これはあくまでも理想であり、将来的な展望やビジョンです。ユーザーが何も設定等をせずに、企業ユーザーにとって気の利いた対応が出来る『AIエージェント』は、現時点では世の中には存在しません。AIエージェントを試したい企業は、ベンダーの提供する『AIエージェント・フレームワーク』を用いて、特定されたタスクに対応するAIエージェントになるように適宜設定もしくは開発する必要があります」

現在市場に存在するAIエージェント・フレームワークには、企業での即効的な利用可能性があるものと研究開発的な高度なものに分類できます。研究開発的な高度なものは、1) フレームワークでの進化したもの、2) 大規模言語モデル (LLM) そのものが進化したもの、3) マルチエージェントに分類されます。こうした高度なものは先端エンジニアに好まれる傾向が強いものの、今企業で利用するものというよりもむしろ将来の可能性を探るものであり、先端テクノロジを自ら触れて実験したという企業を除いては、優先的な選択肢とはなりにくいため注意が必要です。

亦賀は次のように述べています。「AIエージェントを実践する前段階として、AIを推進する担当者やエンジニアは、まずはリアリティを把握することが重要です。理解できる・できないにかかわらず、ベンダー等のWebサイトにアクセスして初期の探索を行うことは、そのリアリティを知るために最初にやるべきことです。すべての企業は、ベンダーやシステム・インテグレーターに『丸投げ的なPOCを依頼』しないように、自分たち自身で出来る体験や学びをまずは行い、事前に目利き力を強化する必要があります」

2028年までに、日本企業の60%は、現在のAIエージェントにより、機械的な業務に関するタスクの自動化を実現するとGartnerは仮説を立てています。

OpenAIのChatGPTの登場を契機とし、Googleや他のベンダーの勢いが増してきています。これから数年かけてAIのステージは急速にAGIやASIへ向けて前進し、現在を超える新たなステージがこれから始まるとGartnerはみています。企業は、AIエージェントを将来の重要な戦略要素として捉え、適切なタイミングで新たなチャレンジを行うことが推奨されます。

Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「AIエージェントのリアリティ」で詳細をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products

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