スマート・ロボットとは?特徴、導入する上でのメリット、今後の課題を解説

AI搭載のスマート・ロボットが生む新たなビジネス・チャンスと課題をわかりやすく解説し、スマート・ロボットの導入がもたらす成果をユースケースとともにご紹介します。

2025年3月22日更新

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スマート・ロボットとは?

スマート・ロボットとは、人工知能(AI)を搭載し、自律移動が可能なマシンであることが多く、1つ以上の物理的タスクを自律的に実行するよう設計されたものです。これらのロボットは、機械学習(ML)によって将来の活動を最適化していきます。

スマート・ロボットは、タスクやユースケースに応じて、パーソナル・ロボット、ロジスティクス・ロボット(物流用ロボット)、農業用ロボットなど、さまざまなタイプに分類されます。スマート・ロボットへの関心が高まっている背景には、ロジスティクス業務の改善やオートメーションの推進、幅広い業種で人的作業を補完できる可能性があるためです。

ロボティクス化が進む主な業界

ロボット化が進んでいる業界については、スマート・ロボットの機能向上や効率と安全性の向上、人間の能力拡張や社会的な対話の新しい可能性を求める動きによって促進されています。業界の動向を以下に説明します。

  • 物流および倉庫管理
    この分野では、特に2020年から2021年にかけて、COVID-19パンデミックの影響でスマート・ロボットへの関心が大幅に高まりました。自律移動ロボット(AMR)やハンドリング用グリッパー、ピッキング・カルーセルなどを含む物流ロボットは、倉庫や小売、電子商取引のワークフローに幅広く統合され、重い荷物の運搬、注文ピッキング、荷物の仕分け、施設の処理能力向上などで高い成果が見られます。

  • 製造業
    早期からロボット導入に積極的な業界で、スマート・ロボティクスの活用範囲が拡大しています。資材の移動や、人間や他のロボットとの協働を通じて、安全性向上と負傷防止などのビジネス・メリットが生まれます。

  • 輸送
    ロジスティクス工程の最適化や移動時間の短縮など、オペレーション効率の向上が主なビジネス価値として注目されています。

  • 小売および電子商取引
    デジタル変革(DX)を支援し、多様なビジネス上のメリット(迅速な配送や効率的な在庫管理など)を享受できます。

  • エネルギーおよび公共事業
    スマート・ロボティクスの導入が急速に進んでおり、アセット・インスペクション(設備点検)に大きな価値をもたらしています。検査の頻度と品質を向上させ、危険エリアでの安全性を高め、コスト削減や予知保全を可能にします。

  • ヘルスケア
    リハビリテーション向けエクソスケルトン(Exoskeleton、外骨格デバイス)の活用や、高齢者/要介護者との対話や健康モニタリングを行うコンパニオン・ロボットが普及し始めています。また、テレプレゼンス・ロボット(Telepresence Robot)を利用することで、医療スタッフの生産性向上や交差感染リスクの低減を実現しています。

  • 建設
    エクソスケルトン(外骨格デバイス)が普及しつつあり、ケガの防止や安全性向上、従業員の生産性向上に寄与しています。

  • 農業
    スマート・ロボットが拡大している分野の一つで、収穫や除草などを支援する事例が生まれています。

  • 商業向けセキュリティ/警備
    多様な現場での活用が期待されており、商業施設や屋外/屋内空間での巡回や点検にスマート・ロボットを活用するケースが出始めています。

  • 宇宙探査
    人類の探査範囲の拡大、危険環境での探査、宇宙空間での組立/建設/メンテナンス、宇宙ゴミ除去や衛星の寿命延長サービスにおいて、スマート・ロボットが注目を集めています。

  • 教育
    教育現場で教師を支援し、あらかじめプログラムされたレッスンや、生徒へのフィードバックを行うなどの用途があります。

  • 食品産業
    調理や調理工程の自動化を目的としたフード・ロボットの研究開発が進んでいます。

  • ワークプレース
    オフィス空間での導入や、ハイブリッド環境下での対人コミュニケーション・共同作業を改善するために検討が進んでいます。

スマート・ロボットの特徴

  1. 人間との直接的なやり取り
    教育、ヘルスケア、ソーシャル・サポートなどで積極的に活用され、人間との対話を重視して設計されています。

  2. 人間を置き換えるのではなく拡張する役割
    反復的・危険な作業をロボットが担当し、人間は創造的・高度な作業に専念できます。教育では教師をサポートし、ヘルスケアでは医療スタッフの対応範囲を広げます。

  3. 高まる知能と自律性
    AIと機械学習(ML)により、物理的タスクを自律的に実行可能。エッジAIやコンピュータ・ビジョン、センサー・フュージョン、リアルタイムなデータ分析などを活用し、意思決定能力を高めます。

  4. アンドロポモーフィック(擬人化)の活用
    対称的な“目”や個性的な声、名前など人間らしい要素を持たせることで、ユーザーとの社会的なつながりとエンゲージメントを強化します。

  5. 産業用途を超えた応用範囲の拡大
    物流や製造だけでなく、教育、ヘルスケア、宇宙探査など多様な領域へ波及しています。

  6. 用途ごとのタスク特化型機能

    • 教育:個別学習サポート、集中力維持、教師の負担軽減

    • ヘルスケア・ソーシャル・サポート:対話、孤独感の緩和、健康モニタリング

    • テレプレゼンス:遠隔操作で感染リスク低減、リモートワーク支援

    • アセット・インスペクション(設備点検):点検頻度・品質向上、ダウンタイム削減

    • ヒューマン・オーグメンテーション(人間の能力拡張):エクソスケルトンにより身体能力を拡張

  7. シームレスな統合の必要性
    スマート・ロボットは既存の業界別ワークフローやエンタープライズ・アプリケーションとの統合が求められます。例として、倉庫管理システムや運用ソフトウェアとの連携などがあります。

  8. ユーザーインターフェース(UI)の重要性
    操作性が直感的であるほど、ロボットを有益なアシスタントとして活用しやすくなります。

  9. 多様なビジネス価値の創出
    人材不足の緩和、安全性向上、コスト削減など、多面的な成果を期待できます。

  10. 環境への適応力
    与えられた状況に合わせて稼働できるため、人的介在が少なくても作業が可能です。

スマート・ロボットを実現するメリット

  • 人間の能力拡張/向上

    エクソスケルトン(外骨格デバイス)や宇宙ロボットなどが代表例で、作業者を補助し、危険地域や過酷環境での活躍を可能にします。

  • 効率向上と運用効果の拡大
    物流・倉庫管理におけるAMRsの活用や、製造現場での自動化などにより、運用効率を大きく向上させます。

  • 安全性の強化と負傷の防止
    エクソスケルトン(外骨格デバイス)を活用した身体的負荷の軽減や、危険作業をロボットに任せることで、リスクを低減します。

  • コスト削減と最適化
    自動化や予知保全、人的ケアの削減、遠隔操作による負荷軽減など、多角的なコスト最適化が期待できます。

  • 新たな機会と市場拡大
    多様な分野で導入が進み、ベンダーの専門化によるビジネス価値の高いソリューションが増えていきます。

  • 社会的相互作用と支援
    教育現場や高齢者支援、医療テレプレゼンスなどにより、社会的課題の解決にも寄与します。

スマート・ロボットを実現する上での課題

  • 既存インフラやワークフローとの統合の難しさ
    倉庫管理システムや実行システム、セキュリティ・ソフトウェアなど多岐にわたる統合が必要です。

  • 実装の複雑性
    過酷な環境下での運用やロボット・フリートのスケーラビリティなど、技術的なハードルが高いケースがあります。

  • ビジネス価値の特定とROIの評価
    定量的成果が示しやすい業界以外では、投資対効果を明確化するのが難しい場合があります。

  • タスクの複雑さ
    反復的かつ予測可能なタスク以外の高度な判断が必要な場面では、まだ多くの課題が残ります。

  • 変革管理(チェンジ・マネジメント)
    ロボット支援型プロセスへの移行と人材再教育、スタッフの抵抗感の緩和など、組織的な変革が求められます。

  • 価格モデル・市場の断片化
    ロボット・プロバイダー間の価格モデルが未成熟でばらつきがあるため、導入企業にとって比較・評価が容易ではありません。

  • スマート・ロボットの種別ごとの特有の課題

    • 設備点検ロボット:アセット・マネジメント・システムとのシームレスな連携

    • エクソスケルトン(外骨格デバイス):導入コストの高さや認知不足

    • 宇宙ロボット:大規模投資と遠隔制御の難しさ

    • 社会的な対話を目的としたロボット:不確定な人間環境での対応、「不気味の谷」問題(AIやロボットなどの人間と似た性質を持つ対象に対して、人間が違和感や嫌悪感を抱く現象)など

スマート・ロボットのユースケース

  • 物流および倉庫管理
    自立移動ロボットを中心としたロジスティクス・ロボットが注文ピッキングや仕分けを自動化し、コスト削減と処理能力向上を実現

  • 設備点検およびモニタリング
    ドローンや四足歩行ロボットなどと連携し、設備の点検を自動化することで、稼働停止やダウンタイムを最小化

  • エクソスケルトン(外骨格デバイス)による人間の拡張
    医療リハビリテーションや製造、軍事、建設などで、安全性向上と疲労軽減に寄与

  • 宇宙での作業
    宇宙空間や危険地形での探査/建造/保守作業など、人間の活動を補完

  • 社会的関与(教育ロボット/コンパニオン・ロボット/テレプレゼンス・ロボット)
    学習支援、高齢者支援、遠隔診療や会議参加など、多角的に活用

  • その他の新たなユースケース
    製造業(人間との協働や工場システム統合)、農業、警備、商業施設の点検、フード・ロボット、建設、自動配送、パーソナル・ロボットなど幅広く拡大

スマート・ロボット導入におけるガートナーの支援

ガートナーは、スマート・ロボットソリューションの開発・統合・導入に際し、以下のような調査・分析に基づく推奨を行い、特にプロダクト・マネジメント・リーダー(製品企画責任者)、プロダクト・マーケティング・リーダー(製品マーケティング責任者)やエンドユーザー企業のビジネス価値創出を支援します。

  • 調査の実施とインサイトの提供
    企業の導入事例やテクノロジ・プロバイダーのソリューション分析を通じ、先進テクノロジや主要ユースケースを特定

  • プロダクト・マネジメント・リーダー(製品企画責任者)へのアドバイス
    製品戦略の策定からロードマップ構築、特定業界の先進的なユースケース(設備点検、エクソスケルトン、宇宙探査など)への展開、AIを活用したロボット・ソリューションの開発支援における知見を提供

  • ビジネス価値パターンの特定
    各業界におけるスマート・ロボットのユースケースから得られる運用効率向上、安全性確保、コスト最適化などのパターンを整理

  • 課題の特定
    統合や実装の複雑さ、変革管理(チェンジ・マネジメント)への対応など、導入に伴う主要課題の整理

  • 戦略的計画の前提条件の提供
    スマート・ロボットとの日常的な人間の関わりの増加や、ロボットとドローンの協調作業など、将来的なテクノロジ展望を提示

  • 市場動向の分析とベンダーの状況把握
    物流、設備点検、エクソスケルトン(外骨格デバイス)、ロボットAIプラットフォームなど、多岐にわたるプロバイダーを横断的に調査し、企業のテクノロジ選定を支援

スマート・ロボット導入に関するガートナーの知見

ガートナーは、データに基づく知見と戦略的アドバイスを通じて、企業や組織がスマート・ロボット導入の複雑性を克服し、望ましいビジネス成果(運用効率やコスト削減、安全性向上、人間拡張など)を実現できるようご支援します。

スマート・ロボットは、製造・物流といった既存の導入分野にとどまらず、教育、ヘルスケア、エネルギー、公共事業、宇宙探査などにまで用途が広がっており、今後もさらなる拡大が見込まれるでしょう。

企業や組織のプロダクト・マネジメント・リーダー(製品企画責任者)、プロダクト・マーケティング・リーダー(製品マーケティング責任者)は、統合の難しさや変革管理(チェンジ・マネジメント)を含む課題を戦略的に対処しつつ、スマート・ロボットの可能性を活かした新たなビジネス価値を創出することが求められます。

※ご契約者様向けのリソースです。ご契約のお客様は、以下のリサーチノートからさらなる詳細をご確認いただけます。

Emerging Tech Roundup: Capturing the Disruption Opportunities With Smart Robots
2023年11月2日発行、ID G00765256
著者: Annette Jump

スマート・ロボットのインテリジェンスと自律性の向上、さまざまな業界における新たなユースケースの出現、市場での成功した導入と市場での差別化のための戦略的考察について解説します。

Emerging Technologies: AI Roadmap for Smart Robots — Journey to a Super Intelligent Humanoid Robot
2023年10月4日発行、ID G00761328
著者: Annette Jump, Bill Ray

AI、センサー、ソフトウェアの進歩を原動力として、2023年より5年から10年以上にわたるスマートロボットの機能進化のロードマップをご提供します。

Emerging Technologies: Top Use Cases for Smart Robots to Lead the Way in Human Augmentation
2022年3月25日発行、ID G00759842
著者: Annette Jump, Bill Ray, Nick Ingelbrecht, Tuong Nguyen

ヒューマン・オーグメンテーション(人間の能力拡張)分野で急速に拡大するスマート・ロボットの活用機会を探り、特に、従来の物流アプリケーション以外への展開を模索する企業に重要な先進ユースケースを提示します。

Emerging Technologies: Top Use Cases Where Robots Interact Directly With Humans
2022年3月22日発行、ID G00765279
著者: Bill Ray, Nick Ingelbrecht, Annette Jump, Tuong Nguyen

人間と直接やり取りするよう設計されたスマート・ロボットの急成長分野、特に教育、ヘルスケア、社会的支援の領域について解説します。

Emerging Technologies: Smart Robot Adoption Generates Diverse Business Value
2022年4月25日発行、ID G00759844
著者: Annette Jump, Bill Ray, Tuong Nguyen, Nick Ingelbrecht

さまざまな業界で拡大するスマート・ロボット導入の潮流と、それによって得られるビジネス価値の主要パターン、有力なユースケース、およびプロバイダーやユーザー企業が直面する主要な課題を検証します。

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