オンプレミスとは?旧来型の限界やクラウド時代の“Newオンプレミス”、ITインフラ近代化の最前線、およびAIと共存する次世代インフラ戦略について解説

今日の企業や組織では、老朽化対応やレガシー・インフラの維持といった課題は増えるばかりで、次世代インフラの構想に時間がかかっています。そのような状況の中で、旧来型の“Oldオンプレミス”では、技術的/人的な課題が山積みのままとなり、時代に合った変革が求められています。本記事では、クラウド・ネイティブやAIと共存する“Newオンプレミス”への移行戦略を軸に、日本企業が直面する6つの課題や、仮想化基盤の見直し、人材育成、リスク管理など、実践的な対応策を詳しく紹介します。将来を見据えたITインフラ戦略のヒントとしてお役立てください。

2025年4月12日更新

オンデマンドWebinar「クラウドはオンプレミスより安い-コストを正しく見る6つのポイント」

昨今、パブリック・クラウドの利用コストは、オンプレミスより高いと言われることもありますが、多くの場合それは誤りです。まずは、なぜオンプレミスが安価に見えるのか、その理由を理解する必要があります。本Webinarでは、クラウドのコストに関する誤解を解消し、コスト安に向かうためのポイントを整理します。

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本Webinarでは、「クラウドはオンプレミスより高い」という誤解を解き、クラウドのコストを正しく理解するための6つのポイントを解説しています。オンプレミス(自社運用のサーバー)が安く見える理由や、クラウド活用による真のコスト上のメリットについて考察し、最適なコスト管理の方法を提示します。

CIOやITインフラ運用の戦略策定を担う企業および組織のご担当者が、ITインフラ投資戦略の見直し時に、判断材料としてお役立ていただけます。

重要ポイント:
・オンプレミスが安価に見えるのは、コスト要素を正しく比較していないため
・クラウドコストは利用状況や運用方法により変動するため、正しい評価が不可欠
・クラウド利用の最適化が、長期的なコスト削減につながる

フォームにご記入いただくと、無料で視聴いただけます。

オンプレミスの概要

クラウド全盛の時代にあっても、依然として⽌まってはならない社会的なインフラは今でもオンプレミス中⼼であり、30年前のものを継続して運⽤するレガシー‧システムとなっています。しかし、「旧来型オンプレミス(Oldオンプレミス)」をこのまま維持し続けることには大きな課題があり、将来を見据えた抜本的な戦略転換が求められています。

本記事では、2025年から2028年にかけてのオンプレミスITインフラの展望を整理し、「旧来型オンプレミス(Oldオンプレミス)」から「新しいオンプレミス(Newオンプレミス)」への移行に伴う課題を洗い出し、それらを克服するための戦略的アプローチや実践的なアクション項目をご紹介します。

オンプレミスとは?

ガートナーは、OldオンプレミスとNewオンプレミスについて、以下のように定義します。

1. Oldオンプレミス(旧来型オンプレミス)

Oldオンプレミスは、従来の「牧歌的スタック」 を指し、このスタックは、サーバーやストレージを基盤とし、仮想化、OS、アプリケーションといったシンプルなレイヤで構成されています。

2. Newオンプレミス(新しいオンプレミス)

Newオンプレミスは、クラウド・ネイティブの要素を取り入れた新しいオンプレミスを指します。ハイパースケーラーが展開している、ハイブリッド・クラウドもしくは分散クラウドのソリューションの一部としてのオンプレミス・サービスも、Newオンプレミスに含まれます。

ガートナーは、2026年までにオンプレミス・ベンダーのテクノロジの90%がNewオンプレミスになるという仮説を立てています。

Newオンプレミスへの理解を深め、ハイパースケーラーやクラウド・ネイティブ技術と実践のトレンドを学ぶことが、ユーザー企業にとって重要です。

また、ハイパーコンバージド・インフラストラクチャ (HCI) におけるクラウド・ネイティブの特性も、Newオンプレミスの重要な要素となります。

3. AI入りのNewオンプレミス

AI入りのNewオンプレミス、すなわちクラウド‧ネイティブとAIを実装した新しいオンプレミス環境を導入しようとする動きが増えています。「AI⼊りのNewオンプレミス」とは、「本物」のクラウドのエッセンスと、業界で主流となり得るAIを、オンプレミスで提供するものです。「偽物」のクラウドとニッチなAIをオンプレミスで提供するものとは区別する必要があります。

ガートナーの仮説事項に基づくオンプレミス・インフラの将来像(2026~2028年)

まず、オンプレミス型ITインフラに関するガートナーの仮説事項を見ていきます。

  • 2026年末までに仮想化基盤近代化の失敗が半数に達する: ガートナーは「2026年末まで、日本企業の半数が従来型のサーバ仮想化基盤の近代化に失敗する」とみています。これは約50%の企業が老朽化した仮想化環境の刷新に躓く可能性を示しています。

  • 2027年までにベンダー消失の現実に直面: 「2027年までに、オンプレミスを継続しているユーザー企業の70%は、Oldオンプレミスのベンダーが市場からいなくなっていることにようやく気が付き、途方に暮れる」という仮説を立てています。つまり、多くの企業で主要インフラ製品のメーカー撤退/サポート終了(ベンダーロックインの崩壊)に直面し、対応に苦慮する恐れがあることを示唆しています。

  • ガートナーは他にも「2027年までに、大企業の70%において、現状維持とコスト削減を主目的とするオンプレミス・インフラは廃止される」という仮説も立てています。これは、大企業ほど「維持するだけ」のインフラから脱却し、より革新的な基盤へシフトしていく傾向を示唆しています。

  • 2028年までにインフラ予算超過が常態化: 「2028年末まで、日本のIT部門の70%は、オンプレミス・インフラの老朽化対応について予算を超過し、経営層から厳しく追及される」との仮説も示されています。この70%という高い割合は、従来型インフラ維持に予想以上のコストがかかり、計画した予算を大幅に上回ってしまう企業が続出する可能性を示しています。

以上の仮説ではいずれも、ITインフラについて、日本企業が見過ごせない事態に置かれていることが示唆されています。これらの仮説にある数字の背景には何があるのか、次に詳しく解説します。

旧来型オンプレミス(Oldオンプレミス)を維持することについて、日本企業の課題は何か

日本企業が旧来型オンプレミス(Oldオンプレミス)を維持するためには、複数の深刻な課題が顕在しています。これらの課題は、技術的な側面だけでなく、経営戦略や人材、コストなど多岐にわたります。次に日本企業における旧来型オンプレミスの課題を整理します。

1. ベンダーサポートと製品の可用性の問題

  • Oldオンプレミスのみをサポートするベンダーは市場から消滅しつつあり、国産ベンダーはサーバーだけでなくメインフレームからも撤退し始めています。
  • 外資系ベンダーも、Newオンプレミスを推進したり、VMwareのように他企業に買収されて再スタートの段階を経たりと、かつてない転換期を迎えています。このようなベンダーの再編や撤退は、ユーザー企業の選択肢に影響を与え始めています。
  • 富士通のメインフレームサポート終了のアナウンスに呼応して、国産メインフレームからの脱却が加速しており、日立やNECのメインフレームでも同様の流れが顕著になっています。
  • ガートナーでは、「2027年までに、オンプレミスを継続しているユーザー企業の70%は、Oldオンプレミスのベンダーが市場からいなくなっていることに気づき、途方に暮れる」と仮説を立てています。
  • 現在のテクノロジの衰退に伴い、ベンダーやシステム・インテグレーターにおいても、それを扱うエンジニアが減少し、「誰も支える人がいなくなる」という現実を深刻に捉える必要があります。
  • 2028年にもなれば、重要システムの中身が分かる人がほとんどいなくなり、システムはブラックボックス化するという懸念が広がっています。

2. 維持コストの増加と複雑化

  • テクノロジ進化のスピードが以前よりも速まる中で、企業や組織は、レガシー・インフラの老朽化対応やシステム更改に追われ続けており、革新的テクノロジを時流に乗った形で取り込めるインフラへの転換には時間がかかっています。
  • 従来の延長としてオンプレミスを利用しようとしても、それを支えるテクノロジがなくなるため、ユーザーは代替テクノロジを検討せざるを得なくなります。
  • 単にベンダーに頼れば済むという安易な発想をしている場合、50〜300%増の見積もりがベンダーから提示され、絶対額で100億円増加するといった大幅な保守費の増大が今後起こる可能性があります。
  • ベンダーからすると、旧来のシステム更改や老朽化対策に関連するテクノロジも人も、少数派向けの特別対応となり、維持戦略に位置付けられるものになっています。年を追うごとにその色が強まるため、特別対応のユーザー数が減ることによるサポート・コスト上昇のリスクが露呈するようになります。

3. 新しいテクノロジの導入遅れと、ビジネスにおけるイノベーションの困難性

  • 旧世代のレガシーなサイロから成る現状のオンプレミスを起点とせず、「ITインフラのグランド・デザイン(全体構想)」を描くことが最優先課題となります。
  • 現在では、「他企業と同じテクノロジを用いたビジネスアーキテクチャでは勝てない」と考え、生成AIなどの先進テクノロジを積極的に取り込み、差別化を進める企業が競争優位性を高めています。
  • 一方、日本におけるユーザー企業の多くでは、いまだにクラウドかオンプレミスかを検討し、OSのサポート切れやインフラ・ハードウェアの老朽化のタイミングだけに反応し、個別のテクノロジを場当たり的に導入している状況が見られます。
  • 「現状維持とコスト削減を主目的とするオンプレミス・インフラは、2027年までに大企業の70%以上において廃棄される」という仮説をガートナーは発表しています。これは、Oldオンプレミスが将来のビジネス目標に貢献しないという認識の高まりを示唆しています。
  • レガシー・インフラや旧来スタイルのオンプレミス環境で長く使い続けてきたテクノロジに対しては、2023年の段階でも日本企業のCIOの40%以上が投資を減らす意向を示しており*1、現状維持を目的とするインフラから、自社のビジネス上の競争優位性に資する革新的テクノロジを取り込めるプラットフォームへの転換が求められています。
  • AIや生成AIの実装はインフラ・レイヤにまで及んでおり、経営層のAI/生成AIへの投資マインドが高まっています。経営層は、レガシー・インフラの維持や保守に数十億円の固定費をかけるよりも、新たなビジネスを支える先進テクノロジへの投資を増やしたいと考えています*2
  • 今の業務システムをどうするかという議論のみを続けていると、時代の変化に取り残される企業が増えるだけです。旧来の業務が継続することにより、そうした企業や組織は、イノベーションへ向かう企業と比較して相対的に劣化し、競合に大きな後れを取ることになります。

*1  Gartner、日本のCIO200人以上を含む世界のCIO約2,400人を対象にした調査結果を発表
*2 
 2025年CIO/テクノロジ・エグゼクティブ・サーベイ

4. 人材不足とスキルギャップ

  • 企業のIT運用部門/子会社は、レガシーなオンプレミス・インフラストラクチャのアーキテクチャ刷新や高度な運用自動化による変革を実現しなければならないものの、これに対応する従業員の意識改革やリスキリングにまで手が回っていない現状に直面しています。
  • ハイパースケーラーの利用には新たなスキルやマインドセット、スタイルといったケイパビリティが必須となります。
  • テクノロジの衰退に伴い、ベンダーやシステム・インテグレーターにおいてもそれを扱うエンジニアが減少し、「誰も支える人がいなくなる」という現実を深刻に捉えるべきです。
  • 2028年にもなれば、重要システムの中身が分かる人がほとんどいなくなり、システムはブラックボックス化するという懸念が広がっています。熟練エンジニアの高齢化に伴い、こうしたシステムを理解する人のリタイアが進んでいます。
  • 「高度な自動化機能を備えたインフラストラクチャへの変革とその運用を実現しないIT運用部門の80%以上は、2027年までに部門の縮小を余儀なくされる」という仮説をガートナーは立てています。
  • これからの基幹系システムを刷新していくためには、主にハイパースケーラーを用いることも検討のひとつとなりますが、その際は、クラウド・ネイティブであってもサービス停止を極力起こさず、かつ継続的改善を前提にした新たなビジネス・アーキテクチャとする必要があります。これを実践するために、徹底的な人材投資を速やかに開始する必要があります。
  • オンプレミスの仮想化基盤の近代化を狙うには、そのアプリケーションの近代化およびワークロードの再配置までを視野に入れて検討します。併せて、技術的にレガシー化/老朽化しているものは削減・廃棄する必要があります。仮想化基盤だけの観点から脱して近代化を狙うに当たっては、コンピューティングの抽象化技術に関するトレンドを改めて理解し、先進テクノロジを無理なく取り込める基盤テクノロジやプロセス、オペレーションに変えることを目指す必要があります(下図参照)。
  • AI入りのNewオンプレミスを使いこなすためには、人材のケイパビリティ(スキル、マインドセット、スタイル)が不可欠です。よって、これに投資する場合は、人材投資も併せて行う必要があります。
ITインフラ近代化のロードマップ | ガートナー

5. 戦略的な方向性の欠如と将来ビジョンの不明確さ

  • 日本におけるユーザー企業の多くでは、いまだにクラウドかオンプレミスかを検討し、OSのサポート切れやインフラハードウェアの老朽化のタイミングだけに反応している状況が見られます。インフラのグランド・デザイン(全体構想)を描くことが最優先課題です。
  • 単に現在のシステムをマイグレーションしたり、若干アップデートしたりする議論に終始するのではなく、革新へと舵を切る必要があります。新しいテクノロジを使うだけでなく、ビジネス・プロセスやアーキテクチャそのものを時代に即した形で再定義する必要があります。
  • 現状の維持が担保されている基幹システムの安定稼働を優先しながら、インフラ近代化とプラットフォーム転換への準備を開始することが重要です。
  • オンプレミスの従来型インフラについて一度はゼロベースで考え、企業のビジネス目標やインフラ利用者のニーズに基づいて、どのような価値を提供すべきか、あるいはどのような価値が求められているかを明確にする必要があります。

6. 予算上の制約と非効率な支出

  • 2027年までに、メインフレームを継続している企業の90%は、脱メインフレームの取り組みを加速しようとしますが、莫大な見積金額を提示され、驚愕すると予測されています。メインフレーム・マイグレーションの提案において、移行費用が例えば100億円に上るケースが当たり前のように顕在しています。
  • メインフレーム・マイグレーションは、できるだけ安定稼働とコスト抑制を優先し、過剰な要件や新たな要求を盛り込むことは避けることが重要です。これによって、法外な見積もりを回避することが期待されます。しかし、仮にマイグレーションを実行できたとしても、特段のビジネス・メリットを見いだせない場合が多く、多額のコストに見合う成果が得られない可能性があります。
  • レガシー・マイグレーションのソリューションは高額になり、改修期間が長期に及ぶ可能性があります。レガシー・テクノロジの塊になっているシステムの老朽化対応に人も資金も費やすことになり、コスト削減のループから抜け出せず、投資マインドにならない企業は、競争力を失います。
  • 「2028年末までに、日本のIT部門の70%は、オンプレミス・インフラの老朽化対応について予算を超過し、経営層から厳しく追求される」という仮説をガートナーは立てています。

これらの課題を踏まえ、日本企業は旧来型オンプレミスの維持から脱却し、ビジネス価値に直結する新しいプラットフォームへの移行*3を真剣に検討する必要があります。

*3 プラットフォーム戦略
ガートナーはプラットフォームを「他のプロダクトやサービスに役⽴つ、またはそれらを実現するプロダクト」と定義しています。プラットフォームの範囲はユーザーのニーズを反映する必要があり、あらゆるプラットフォームの究極の評価基準は、エンドユーザーおよび企業全体にとっての重要事項にどのように貢献するかに置きます。

戦略的アプローチ:インフラ近代化とプラットフォーム転換

OldオンプレミスからNewオンプレミスへの移行を成功させ、将来にわたって競争力あるIT基盤を構築するには、戦略的なロードマップに基づく取り組みが必要です。ここでは、企業や組織が検討すべき主なアプローチを提示します。

1. ITインフラの戦略目標設定とグランド・デザイン(全体構想)の策定

前出の章「旧来型オンプレミス(Oldオンプレミス)を維持することについて、日本企業の課題は何か」でご説明したような企業や組織における現状の課題を踏まえ、ビジネス目標と利用者のニーズに基づいたインフラストラクチャのグランド・デザイン(全体構想)を再考する必要があります。

  • ビジネス目標との整合性: ITインフラの在り方や構成は、アプリケーションのワークロードによって決まり、そのアプリケーションを利用する顧客(利用者)によって提供されるサービスの成果は、企業のビジネス目的や目標に沿ったものでなければなりません。
  • 時代に合わせたインフラの再定義: 単に既存システムを新しい環境に移すのではなく、ビジネス・プロセスやアーキテクチャそのものを時代に合わせて再定義するべきです。これには、新しいテクノロジの導入だけでなく、組織間の連携やチームの役割/スキルの変革、サービス提供のスピードと品質の向上、場所を問わないオペレーションの効率化などが含まれます。
  • 段階的な近代化と最終形の想定: 部分的、段階的な近代化を図る場合でも、最終的なあるべき姿を想定し、経営層や関係者と共有しておくことが重要です。
  • 代替テクノロジの検討: 現在のオンプレミス・テクノロジの衰退を前提とし、代替テクノロジの検討に着手する必要があります。ハイパースケーラーは有力な代替候補の一つですが、その利用には新たなスキルやマインドセット、スタイルといったケイパビリティが不可欠となります。また、Newオンプレミスを採用する場合でも、ハイパースケーラーの理解は不可欠です。
  • AIネイティブ・プラットフォームへの進化: オンプレミスかクラウドかに関わらず、AI/生成AIネイティブ・プラットフォームへと進化させることを検討する必要があります。

2. 具体的なアクションと推奨事項

戦略目標に基づき、具体的なアクションと推奨事項をご説明します。

  • メインフレーム戦略の策定: メインフレーム・マイグレーションならびに将来を見据えた戦略を開始し、経営層と合意を図る必要があります。優秀なシステム・インテグレーターやエンジニアを早急に確保し、必要な費用は削減すべきではありません. メインフレーム・マイグレーションは、安定稼働とコスト抑制を優先し、過剰な要件や新たな要求を避けることで、法外な見積もりを回避します。並行して、新たなビジネス・アーキテクチャを推進する部門を立ち上げることも重要です。
  • 仮想化基盤の見直し: 現在のオンプレミス・インフラにおける仮想化ソリューションや、ハイパースケーラーが展開しているオンプレミス向けソリューションの多様性を理解し、プラットフォームとしてのインフラのあるべき姿を描いてから探索を開始します。BroadcomによるVMwareの買収を踏まえ、VMwareへの依存を見直し、代替テクノロジ(コンテナ、HCI、クラウド上のVMなど)の検討を加速する必要があります。維持・継続の提案内容も精査し、ベンダーのケイパビリティを比較検討し、自社にとって合理的な判断を下すことが重要です。
  • 運用自動化の推進: オンプレミスにおいても、クラウド環境と同等の運用自動化の仕組みとプロセスを実装します。高度な運用自動化を実現する小規模なチーム(自動化チーム)を構築し、アジャイルな手法を用いて開発部門が必要とする自動化機能を段階的に実装します。
  • 人材育成と組織変革: 新しいテクノロジやアプローチに対応できる人材の育成が不可欠です. クラウドやAIを使いこなせる人材への投資を加速し、業務部門の人材もテクノロジを駆使できるビジネスパーソン(ビジネス・テクノロジスト)になれるようなトレーニングや社内大学などの施策を展開します。 IT運用部門は、従業員の意識改革やリスキリングにも注力する必要があります。
  • ベンダーとの関係性の再構築: 現在付き合いのあるベンダーやシステム・インテグレーターが、現在のテクノロジをサポートし続けてくれると考えるのは大きな誤解です.。テクノロジの衰退に伴い、ベンダーやシステム・インテグレーターにおいてもそれを扱うエンジニアが減少していく現実を深刻に捉える必要があります。新しいスキル、マインドセット、スタイルをもたらすベンダーやシステム・インテグレーターとの付き合いを深めることが重要です。ベンダーからの提案を鵜呑みにせず、価格の透明性を高めるよう交渉し、契約内容を文書化して残しておくようにします。
  • コスト最適化と投資のバランス: 老朽化対応やインフラ更改の際に重視されるのはコスト削減だけではありません。先進テクノロジへの投資意欲が高まっていることを想定し、老朽化対策をIT部門だけで進めるのではなく、経営層やビジネス部門との対話の場を定期的に持つことが重要です。
  • リスク管理と事業継続性: 止まってはならない社会的なインフラは今でもオンプレミス中心であり、これらのシステムのブラックボックス化は深刻なリスクをもたらします。システムの中身を可視化し、シンプルにできるものは断捨離を進め、人海戦術による運用や煩雑な手続きを見直す必要があります。クラウド・ネイティブであってもサービス停止を極力起こさず、かつ継続的改善を前提とした新たなビジネス・アーキテクチャとする必要があります。
  • AI戦略の組み込み: AI/生成AIはインフラ・レイヤにまで影響を及ぼしており、経営層の投資マインドも高まっています。データ主権とセキュリティ要件を考慮しながら、AIを推進するための「AI入りのNewオンプレミス」環境の採用も検討すべきです。ただし、導入だけでなく、AIを使いこなすための人材育成も並行して行う必要があります。

3. 継続的な評価と改善

インフラ近代化とプラットフォーム転換は一度限りのプロジェクトではなく、継続的なプロセスです。企業のビジネス目標やインフラ利用者のニーズに基づいて、提供する価値や求められる価値を明確にし、定期的に評価と改善を行う必要があります。

ガートナーはお客様のITインフラ近代化をご支援いたします

オンプレミス型ITインフラの変革は、技術的なチャレンジであると同時に、組織文化やビジネス戦略にも関わる経営課題です。ガートナーの仮説が示す未来像は決して他人事ではなく、日本企業の多くが直面する現実となりつつあります。そのため、全社的視点での戦略策定と実行が求められます。

多くの企業で既にデジタル・トランスフォーメーション(デジタル変革、DX)の機運が高まっており、経営層もITの重要性を再認識しています。企業や組織のご担当者はこの追い風を捉え、「Oldオンプレミスの延命」から果敢に脱却して「Newオンプレミス+クラウド+AI」で構築する次世代プラットフォームへと舵を切ることが重要です。それこそが、新たなビジネス価値を創造し、2028年以降も企業が存続、繁栄していくための礎となると考え、ガートナーは日本企業のお客様をご支援いたします。

ITインフラ戦略を成功させるには、経営トップの理解と支援が欠かせません。CIOやIT部門長は、専門的な技術課題を経営層に噛み砕いて説明し、適切な意思決定を引き出す役割を担います。ガートナーでは、経営層と対話する際に押さえておくべきポイントと、そのための情報の見せ方についてご支援することが可能です。

また、本記事で解説しました戦略的アプローチをご確認いただき、具体的な現状のインフラ環境、ビジネス目標、そして将来の展望に基づいて、お客様にとって最適なインフラ近代化とプラットフォーム転換のロードマップを策定するための、より具体的な分析やフレームワークについて弊社までご相談ください。

企業や組織のお客様が、次の時代にふさわしいIT基盤の構築を可能にするために、経営トップから現場のエンジニアに至るまで、組織全員が一丸となってインフラ近代化に取り組み、計画的かつ着実に行動することをご支援いたします。

オンプレミスに関するガートナーの知見

※ご契約者様向けのリソースです。ご契約のお客様は、以下のリサーチノートからさらなる詳細をご確認いただけます。

2025年の展望:オンプレミスの将来
2025年2月19日発行、ID G00824205
著者:Hiroko Aoyama, Tadaaki Mataga

新興テクノロジへの投資意欲が高まる中、旧態依然としたオンプレミス・インフラの大半は「戦力外通告」を待つだけとなっています。これを、自社のビジネス価値に直結するプラットフォームへの道が開かれていることと捉えられるかどうかが、今後の企業の存続に関わる。I&Oリーダー(インフラ運用のリーダー)は、新興テクノロジのほか、アーキテクチャやアプローチ、ベンダー状況の変化に対する感度をさらに上げ、戦略的な決断とアクションを実行することが急務です。

オンプレミス・インフラ向け従量制サービスのマーケット・ガイド
2024年2月28日発行、ID G00807276
著者:Hiroko Aoyama

オンプレミス・インフラ向け従量制サービスとは、ハイブリッドおよびオンプレミスのミッション・クリティカルなインフラストラクチャ・サービスを提供する従量制のITオペレーション・モデルです。I&Oリーダー(インフラ運用のリーダー)は、本リサーチノートを活用してオンプレミス・インフラ向け従量制サービスの機能を評価し、ビジネス・ニーズに合わせたコストの調整、オペレーションの自動化、複雑性や混乱の軽減を行うべきである。

混乱するクラウド/オンプレミス市場:自社インフラをいかに舵取りするか
2023年12月25日発行、ID G00804274
著者:Hiroko Aoyama

クラウド・コンピューティングとオンプレミスのデータセンター・インフラストラクチャの市場が進化し、ワークロード移行への関心が高まり続ける中で、企業は適切なパートナーやソリューションの見極めに苦心しています。I&Oリーダー(インフラ運用のリーダー)は本リサーチノートを活用して、クラウド/オンプレミス・データセンター市場と組織のニーズについて評価します。

プラットフォーム・ネイティブな従量制サービスのマーケット・ガイド
2025年2月6日発行、ID G00825734
著者:Hiroko Aoyama

プラットフォーム・ネイティブな従量制サービスとは、オンプレミスのミッション・クリティカルなインフラ向けの従量制のプラットフォーム型サービス・モデルです。インフラストラクチャ/オペレーションのリーダー(インフラ運用のリーダー)は本マーケットガイドを活用して、ハイブリッド・クラウド運用モデルへの需要に応えられる、各ベンダーのプラットフォーム・デリバリ能力を評価すべきです。

国内企業で顕在化するVMware環境脱却の動き
2024年12月11日発行、ID G00821471
著者:Takuma Yamamoto

VMwareがBroadcomに買収されたことによって、特に調達費用の急激な上昇が起こり、オンプレミスのVMwareサーバ仮想化基盤の今後に関する選択を迫られる企業が増えています。Gartnerの調査から判明した国内企業の今後の方針は、インフラストラクチャ/オペレーションのリーダー(インフラ運用のリーダー)が仮想化基盤について判断する上で有益となるでしょう。

クラウド移行に失敗しない方法
2025年2月19日発行、ID G00825740
著者:Takuma Yamamoto

クラウドの採用は増え続けているが、すべてのケースが成功するわけではない。企業がクラウドに対して不満を抱く場合、それはクラウド・コンピューティングに欠陥があるからではなく、企業が適切なプランニング/スキル/実践を欠いているからです。本リサーチノートでは、インフラストラクチャ/オペレーションのリーダー(インフラ運用のリーダー)が、クラウドに失望しないようにする方法を解説します。

自社にとって最適な近代的インフラとはどのようなものか
2025年1月8日発行、ID G00824351
著者:Hiroko Aoyama

ビジネスを実現する基礎的要素としてのインフラの役割が増大しています。インフラストラクチャ/オペレーション・プラットフォームのリーダー(インフラ運用のリーダー)がインフラの近代化戦略を策定する際は、将来の目標を定めるとともに、現行インフラのケイパビリティを評価する必要があります。

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