2024年12月4日

Gartner、2025年に向けて獲得すべきマインドセットを発表

すべての企業、組織、人は新たなマインドセットを獲得して、産業革命の時代に備える第一歩を踏み出すことが重要である

 

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、開催中の「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス」において、2025年に向けて獲得すべきマインドセットを発表しました。

ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀 忠明は次のように述べています。「かつてない歴史的な時代変化が訪れている中、テクノロジを駆使できる企業、組織、人と、そうでない人たちに二極化します。産業革命の時代に生き残るためには、新たなマインドセットを獲得し産業革命をリードする必要があります」

2025年に向けて獲得すべき新たなマインドセットは、次の通りです。

江戸時代からNew Worldへ
時代は江戸が明治になった程の大転換期にあります。江戸が明治になった時と同様に、これからは、従来の時代が無くなることを想定し、企業は、過去の延長的なスタイルと決別する必要があります。そこでは、従来の業務中心のビジネスからデジタルを前提としたビジネスへ再定義し、戦略的に転換することが求められます。時代変化を無視し、企業の再定義を行わない日本企業の70%は、2030年以降に弱体化し、消滅する可能性が高くなっています。仮に消滅しない場合でも、その周辺を含め、急速に衰退が進行すると見ています。

産業革命:「うちは大丈夫」から「真剣勝負」へ
現在世界で起きているデジタルによるビジネス競争について、まったく認識していない、もしくは認識しているとしても「うちは大丈夫」「うちは関係ない」「うちはやっている」「どうせ大したことはない」と状況を軽く見る企業が多く見られます。

亦賀は次のように述べています。「こうした姿勢は、競争に負けるべくして負けるパターンです。企業はデジタルによる競争の負け戦にならないよう、今の戦況、敵の戦い方を真剣に把握し、将来の競争への備えを確実に行う必要があります。例えば、次世代モビリティは単なるEV化にとどまらず、道路やパワーグリッド、およびAIによるコントロールを含む社会インフラの再定義の話です。製造業もモノの付加価値をデジタルで付けるとともに、デジタルが前提のモノづくりも含めたデジタル製造業への転換が必要です」

「人間だけ」から「AIとの共生」へ
2030年には、企業の70%で「さらに能力の高いAI」が当たり前に使われるようになるでしょう。こうしたAI共生時代において、最も危険なことは「人が考えないこと」、もしくは「人に考えさせないこと」、すなわち人間の機械化です。人間は、AIやヒューマノイドに職を奪われないよう、機械にできることは機械にやらせ、自分で考え学習する「人間力」を高めることが重要です。そして、「考えない/学習しない組織」から、「考える/学習する組織」への転換が必要です。

人材育成から人材投資へ
企業の人材育成は、育成の目的があいまいで、スキル獲得や資格取得が目的化され、あまりお金もかけずに行われているものも多く見られます。一方で、グローバルのTier1企業では、数百億円規模の人材投資を行い、現場の従業員をデジタル・プロフェッショナルにするなど産業革命への備えを着実に進めています。企業は人材投資を重要戦略と位置付け、従業員の能力やプロフェッショナルの養成を促進し、プロフェッショナルな人材には相応の対価を用意するなど、人材戦略を抜本的に見直す必要があります。

「やらされ感」から「自分のため」へ
DXといった取り組みを義務的に推進すると「やらされ感」が強い人が多くなります。こうした人には自分事として積極的に取り組む姿勢が欠如しているため、身が入らず、やった感だけ出して終わりとなり、自信が持てないままとなります。一方、変化への対応を自分事として捉え、自分のアップデートのために常に謙虚に学び続ける人は、自ら前進し着実に自信をつけていきます。こうした人が多い企業は、一人一人の好奇心やセルフマーケティング力が高く、企業としても価値向上を高められる強い企業に変革していきます。

「忙しい」から「仕事を速やかに終わらせ新しいことをする」へ
「忙しい」ことを理由に従来の仕事のやり方を継続する日本企業が多く存在します。これからは従業員の時間と環境を見直し、無駄なミーティング、メール、業務、手続き、報告、上司への過剰な説明といった時間を削減し、空いた時間で新しい学習機会の創出やクリエーター的な仕事をできるようにする必要があります。テクノロジを駆使して自動化できるものは自動化する、しがらみ、しきたり、掟、作法に過剰にこだわるマイクロ・マネジメントを見直すだけでも、従業員には余裕が生まれ、より元気に活躍できるようになります。

「分かったふりをする評論家、どうするのかを繰り返す第三者、作業者の集団」から「謙虚に学び高みを目指すチーム」へ
旧態依然とした企業には、分かったふりをする評論家、どうするのかを繰り返す第三者、言われたことだけをする作業者、自分で手を動かさず手配だけをする人が存在します。一方、新しい時代に向けて、真剣に取り組む企業には、対策する軍師的な人、リアリティを重視して正しい道に導くPeople-Centricなリーダーシップのマインドを持つ人、クリエーター的なエンジニアやアーティストなどが存在します。

亦賀は次のように述べています。「人は、機械にできることは機械にやらせて、生成AIなどのテクノロジを駆使して人間力を取り戻すとともに、産業革命を実現する新たなエンジニアリング能力を獲得することが重要です」

完璧から継続的改善へ
何でも完璧に作って同じものを使い続ける、いわゆるウォーターフォール型 (モード1) のやり方を続けたり、すべてにおいて完璧を求めようとしたりする企業が多く存在しますが、こうした「1回作って終わり」の発想では変化対応ができないため、マインドセットの転換が必要です。これからは、変化対応を原理原則として、作って、継続的に改善して提供するアジャイル型 (モード2) の推進が重要です。これはIT部門のみならず企業全体として必要なマインドセットです。2030年までに、40%の企業で非IT部門が完璧を求め続けることで、弱体化するとGartnerは見ています。

妄想からリアリティへ
テクノロジが登場すると、バズワードに踊らされて、正しく理解せずにすぐに「すごい」ことができると妄想しがちです。しかし、往々にして、それは、現時点で存在しない「べーパーウェア (どうなるか分からないもの)」である場合があるため注意が必要です。仮に「すごい」ものがあっても、自社内にすぐに新しいテクノロジを使える人がいるわけではありません。テクノロジを過大/過小評価せずに、常にリアリティを把握できるよう自ら学び、目利きのできるケイパビリティ (能力) を有し、本質を捉えること、バズワードやトレンドよりも自社の戦略を重視することが重要です。

亦賀は次のように補足しています。「『生成AIによって、すぐに確実に生産性向上を実現できる』『生成AIがあれば、すぐに雇用を削減できる』というのは『妄想』です。これを経営者が発するとそれは、『妄想の暴走』となり、多くの人に迷惑をかけるもととなります。すべての人は、数年後と今を区別し、今は数年後に向けた準備期間と考えるべきです」

「自社、業務中心」から「顧客と従業員中心」へ (People-Centric)
自社、業務中心の企業では、従業員は会社のために働くことが徹底され、「やらされ仕事」になり、元気がなく、結果的に企業利益中心による顧客からの「高い、遅い、不満足」が継続、拡大につながります。一方、顧客と従業員を大事にする企業は、従業員が満足して初めて顧客が満足できるというバランスを持ったTX (トータル・エクスペリエンス) の原則を有し、従業員が、大事にされ、元気になり、活躍できる環境があります。People-Centricは、ビジネスの好循環を生みだします。

細かいルール・ベースのガイドラインから原理原則ベースのほどほどのガイドラインへ
細かいガイドラインを作る企業は、作ることが目的化し、マニュアル通りに対応する従業員が増えるため、ガイドラインにない想定外事象には対応できない企業になります。2030年までに、こうした細かいガイドラインの作成を継続する企業の90%が作るだけで終わるとGartnerはみています。原理原則ベースのガイドラインを作る企業は、シンプルなガイドラインであるため手間がかからず、従業員が自分で考えることを推進するため、想定外の事象にも対応できる考える組織へと転換できます。さらに、こうしした企業ではAIによる人間の代替の準備が出来るため、スムーズにAIやヒューマノイドの導入が進むようになります。

事例とやり方 (HOW) の模倣ではなくWHYと結果にこだわる
他社の事例を尋ねてそれを模倣する企業が多く見られます。こうした企業は事例ややり方 (HOW) が分かっても、そもそもなぜやるべきなのかのWHYが不明確なことが多く、真にインパクトがあることは実現できす、企業を弱体化させます。2030年までに、事例はあるのかと問い続ける企業の90%が存亡の危機に陥る可能性があります。まねるために事例を探すのではなく、事例から学ぶべきことを見つけ、それを実現するための能力を身に付けることが重要です。

「お願い」から「新しいオーナーシップ」へ
経営陣がDXの取り組みをIT部門に丸投げし、IT部門はその施策を作って業務部門に「お願い」して使ってもらう日本企業が多く見られます。お願いされた業務部門は使わないといけない理由がないため、このようなものは使えないと言って、IT部門に改善を要求し続ける結果、DXが進展しないことになります。

亦賀は次のように述べています。「産業革命はIT部門だけでできることではありません。真のDXの実現に向けて、経営者は丸投げせず、デジタルの本質的なインパクトを理解し、リスクを自ら取り、戦略的に変革を推進するリーダーになる必要があります。業務もなくなることを前提とした新しいビジネス・アーキテクチャとプロセスを推進するチーフ産業革命オフィサーを設けることが有効です」

作業者からクリエーターへ
企業は産業革命とAI共生時代を前提に、抜本的に、新たなタレントを創るべく戦略をアップデートすることが重要です。そこでは、従業員が大事に、元気に、活躍できるワークプレースを作ることが、生き残るための必須要件となります。そうした企業では、従業員は作業者ではなく、破壊的なテクノロジであるスーパーパワーを駆使するクリエーターやアーティストとなります。時代変化に対応できない企業、組織、人は生き残れません。スキル、マインドセット、スタイルの抜本的転換が必要です。

亦賀は次のように述べています。「人間ならではの創造を楽しみ、テクノロジと『知恵』を駆使してすべてを『より良く』しようとする企業に、人は集まります。そこで人が大事にされ、元気になり、活躍することで、顧客を呼び、ビジネスの好循環が生まれます。デジタルの時代とは、デジタルによって人間力が増幅される時代です。この原理をうまく理解し実践できた企業が生き残れるようになります。逆に、そうでない企業は、衰退、消滅していく可能性があります。2025年に向けて、日本企業は一刻も早くこれに気づき対応を加速させる必要があります」

Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年」「2024年の展望:「新たな産業革命」へと邁進する」などで関連する内容をご覧いただけます。
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ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス

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