2024年9月10日

Gartner、「生成AIのハイプ・サイクル:2024年」を発表 - 2027年までに生成AIソリューションの40%がマルチモーダルになると予測

Gartner IT Symposium/Xpo (10月28~30日開催) において、AIの最新トレンドを解説

 

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、 2027年までに生成AIソリューションの40%がマルチモーダルになる (テキスト、画像、音声、動画など複数のタイプのデータを一度に処理するようになる) との見解を発表しました。これは、2023年の1%からの大幅な増加になります。この生成モデルのマルチモーダル化へのシフトは、人間とAIのインタラクションを強化し、生成AI対応ソリューションを差別化する機会をもたらします (グローバルでは2024年9月9日に発表しています)。

ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストのエリック・ブレテヌー (Erick Brethenoux) は、次のように述べています。「生成AI市場において、複数のモードでネイティブに学習したモデルが台頭し始めています。これにより、異なるデータ・ストリーム間の関係を把握しやすくなるだけでなく、あらゆるデータ・タイプやアプリケーションに生成AIのメリットを拡張できる可能性があります。また、環境に関係なく、人間がより多くのタスクを実行できるようAIがサポートすることが可能になります」

マルチモーダル生成AIは、Gartnerの「Hype Cycle for Generative AI, 2024 (生成AIのハイプ・サイクル:2024年)」において、オープンソースの大規模言語モデル (LLM) とともに、「早期に採用することで顕著な競争優位性と市場投入までの期間短縮をもたらす可能性があるテクノロジ」として特定されています。どちらのテクノロジも、今後5年以内に組織に大きな影響を及ぼす可能性を秘めています。

Gartnerが10年以内に主流の採用に達すると予測している生成AIイノベーションの中で、その可能性が最も高い2つのテクノロジとして挙げているのが、ドメイン固有の生成AIモデルと自律エージェントです (図1参照)。

図1:生成AIのハイプ・サイクル:2024年
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出典:Gartner (2024年9月)

ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストのアルン・チャンドラセカラン (Arun Chandrasekaran) は次のように述べています。「テクノロジやベンダーが入り乱れ、めまぐるしく変化するエコシステムが原因で、生成AIエコシステムの舵取りは企業にとって極めて困難な作業となり続けるでしょう。業界再編の始まりと共に、生成AIは幻滅期に入っています。ブームが一段落すれば、今後数年間は急速なペースで機能が進歩し、さらなるメリットを得られる可能性があります」

マルチモーダル生成AI

マルチモーダル生成AIは、通常では実現不可能な新しい機能を実現することで、エンタプライズ・アプリケーションに変革的なインパクトをもたらします。このインパクトは特定の業界やユースケースに限定されるものではなく、AIと人間の間のあらゆる接点への適用が可能です。現在、多くのマルチモーダル・モデルは2~3つのモードに限定されていますが、今後数年のうちにさらに多くのモードが組み込まれるようになるでしょう。

ブレテヌーは次のように述べています。「現実世界では、人は、音声、視覚、感覚など、さまざまなモードの組み合わせを通して情報に接し、理解します。マルチモーダル生成AIが重要であるのは、データは通常マルチモーダルであるためです。マルチモーダル生成AIアプリケーションをサポートするために、単一モデルを複数組み合わせると、遅延や精度の低い結果につながることが多く、結果としてエクスペリエンスの質が低下します」

オープンソースのLLM

オープンソースのLLMは、商用アクセスを民主化し、開発者が特定のタスク/ユースケース向けにモデルを最適化できるようにすることで、生成AIの導入から得られる企業価値を加速させるディープ・ラーニングのファウンデーション・モデルです。さらに、モデルの改善と価値の向上という共通の目標に取り組んでいる企業、学術機関、およびその他の研究機関の開発者コミュニティにアクセスできるようにします。

チャンドラセカランは、次のように述べています。「オープンソースのLLMは、そのカスタマイズ性の高さ、プライバシーおよびセキュリティのコントロール性の高さ、モデルの透明性、共同開発を活用できる機能、ベンダー・ロックインを抑制する潜在力を通じて、イノベーションの可能性を高めます。そして最終的に、低コストで学習しやすい小規模モデルを企業にもたらし、ビジネス・アプリケーションと中核的なビジネス・プロセスを実現します」

ドメイン固有の生成AIモデル

ドメイン固有の生成AIモデルは、特定の業界、ビジネス機能、またはタスクのニーズに最適化されています。企業内でユースケースの整合性を改善すると同時に、精度、セキュリティ、プライバシーを向上させ、よりコンテキストに沿った回答を提供できるようにします。これにより、汎用モデルの場合ほど高度なプロンプト・エンジニアリングを使用する必要がなくなり、対象を絞ったトレーニングを通じて、ハルシネーション (捏造された回答) のリスクを下げることができます。

チャンドラセカランは、次のように述べています。「ドメイン固有のモデルは、より高度なレベルを起点に業界固有のタスクを実現できるようにすることで、AIプロジェクトの価値実現までの時間の短縮、パフォーマンスの向上、セキュリティの強化を達成します。これにより、汎用モデルではパフォーマンスを十分に発揮できないユースケースにも生成AIを適用できるようになるため、生成AIの採用範囲が広がります」

自律エージェント

自律エージェントは、人間の介入なしで、定義された目標を達成する複合システムです。さまざまなAI技術を利用して、環境におけるパターンを識別し、意思決定を行い、一連のアクションを実行し、アウトプットを生成します。自律エージェントは、環境を学習し続けることで性能が向上し、次第に、より複雑なタスクに対処できるようになる可能性を秘めています。

ブレテヌーは次のように述べています。「自律エージェントは、AIの能力を大きく変化させるものです。その独立したオペレーションと意思決定能力は、ビジネス・オペレーションを改善し、カスタマー・エクスペリエンスを向上させ、新しいプロダクトやサービスを創出します。これはコストの削減や競争力の強化につながり、さらには従業員の役割を『作業者から監督者へ』とシフトする組織的なワークフォースの転換をもたらすでしょう」

なお、日本で生成AIの領域を担当するディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀 忠明は次のように述べています。「生成AIの進化は、インターネットの進化と似ており、まだ二合目です。その進化の過程において、全般的に生成AIは『過度な期待』のピーク期の下り方向にあります。そこでは『想定以上にコストがかかっている』といった幻滅的な事象も発生しています。そうした注意が必要なフェーズではありますが、生成AIは、これから、ヒューマノイドやあらゆるデバイスとアプリケーションへの組み込み、汎用人工知能、スーパーインテリジェンスに向けた進化が想定されます。企業は、産業革命、AI共生時代が到来していると捉え、リアリティを重視しつつ、将来に向けた顧客体験、ビジネスやITの在り方、従業員とAIとの関係を含む戦略を抜本的にアップデートする必要があります」

Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「Hype Cycle for Generative AI, 2024」 ならびにWebinar 「What Mature Organizations Do Differently for AI Success」(英語) で詳細をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products

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Gartner IT Symposium/Xpoについて

Gartnerは来る10月28~30日に、Gartner IT Symposium/Xpoをグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて開催します。2024年度は、「今日をリードし、明日を形作る」をテーマに、テクノロジ・イノベーション、経営幹部のリーダーシップ、ビジネス戦略の3つのトラックからなるプログラムをご用意しています。主要な17のトピック領域における最新のテクノロジ、戦略、そしてリーダーシップに関する知見を提供し、CIOとリーダーシップ・チームにとっての最重要課題を取り上げます。コンファレンスのニュースと最新情報は、Xでご覧いただけます (#GartnerSYM)。

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