2024年5月23日
2024年5月23日
ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、開催中のガートナー データ & アナリティクス サミットにおいて、「データ活用の民主化」に向けて押さえておくべきポイントを発表しました。
Gartnerが実施した日本におけるデータ活用の取り組みに関する最新の調査では、データ活用で全社的に十分な成果を得ている日本企業の割合は3%にとどまっています。また、データとアナリティクス (D&A) の利活用に対する企業姿勢や組織体制が整っていない日本企業は多く見られます。
シニア ディレクター アナリストの一志 達也は、企業がデータ活用を推進する際に、よく見られる誤解を5つ挙げています。
誤解1:第一歩として、データを統合する (基盤を構築する) 必要がある
データ活用の推進に向けて、まずは社内外に散在するデータを1カ所に集める必要があり、そのための基盤を構築することが先決と考える企業が散見されます。データを1カ所に集める前に、どのようなビジネス上の問いに対し、データから得られる洞察で回答したいのかを明確にし、本当に答えられるのかどうかを試してみる必要があります。それは、基盤がなくても、データが1カ所に集まっていなくても、十分に行えるはずです。
誤解2:最新のテクノロジでデータ分析をすれば良い結果が得られる
最新のデータ分析ツールやサービスなどを用いれば、より優れた洞察をデータから得られると誤解するケースも見られます。最新のテクノロジは分析者の時間効率を高めるなどの効果がありますが、得られる洞察に大きく影響するのはデータの品質、あるいはそもそもどのようなデータを利用できるのかです。
誤解3:経験や勘では想像もできない、新たな発見がある
手持ちのデータを分析すれば、経験や勘では想像もできない、新たな発見ができると考える企業も見られます。ですが、そういった新発見は、滅多にありません。闇雲にデータ探索を行うのではなく、ビジネス上の課題解決につながる問いを立て、それに役立つデータは何かと考える方が成果獲得への近道となります。
誤解4:全社員がデータ分析スキルを身に付ける必要がある
データ活用の取り組みを進めるには、全社員がデータ分析スキルを身に付ける必要があると誤解する企業も見られます。データ・ドリブンな意志決定や行動を求められる社員は、データ・リテラシーを高める必要がありますが、データ分析のスキルは専門職を中心に身に付ければ良いのです。日本の組織は、役割の明確化が未だ進んでいませんが、役割に応じた能力を定義し、それを満たすように育成を計画すべきです。
誤解5:データの専門人材がいないからデータの活用が進まない
自社にデータ分析などに精通した専門人材がいないことが、データ活用の進まない要因である、と考える企業が散見されます。それよりも、組織文化やマインドセットの問題である可能性もあります。データへの問いを立てることや洞察を意志決定や行動につなげることは、自社の人材でなければ難しいと言えますが、データを分析する高度な作業は外部に委託することも可能です。
一志は次のように述べています。「これらはデータ活用を推進したいと考える日本企業との対話に含まれる代表的な誤解です。データの民主化やデータ・ドリブン経営といったバズワードに惑わされず、地に足のついた取り組みを戦略的に進めることが重要です。それは最初から組織全体を対象とするよりも、課題を抱えていてD&Aがその解決に貢献できそうな、特定の部門や業務から始めるべきです」
企業がデータ活用で成果を獲得するためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
D&Aの推進に不可欠な役割
Gartnerは、企業がD&AやAIに取り組むにあたって、チームに最低限必要な役割を挙げています (図1参照)。AIを本格的に活用していくには、これまでのD&Aの役割に加えて、AIエンジニアやAI開発者、倫理担当者やプロンプト・エンジニアなどの専門的な役割が新たに不可欠になります。役割によっては、中央集約型ばかりでなく分散型となることがあります (例えば、ビジネス部門におけるマーケティング・アナリティクスやサプライチェーン・アナリティクスなど)。
一志は次のように述べています。「データ/アナリティクス/AIに関連する役割は拡大していますが、D&Aで何にどう取り組むのかによって、必要な体制や役割は変化します。チームの人員構成を明確にし、役割を担うためのスキルと経験を持つ人材を採用または育成し、チームの総合力を高めることが重要です。リーダーは何より成果を定量的に示すことを優先し、取り組みの将来を見据えて、人材ポートフォリオを計画的に拡張しなくてはなりません」
データの信頼性を確立するためには適切なデータ管理が必要
データの管理にガバナンスは不可欠です。すなわち、組織としての原則と個別のルールを明確にし、役割 (所有者、作成者、編集者、利用者、管理者など) を定めて統制する必要があります。データ活用には、組織のデータが適切に提供 (共有) される必要がありますが、誰もが自由にアクセスできて良いはずがありません。データ共有においても、ガバナンスを効かせることが重要です。そのためには、利害関係者の代表で構成された、ルールを制定するための枠組みが必要になります。また、現場にルールを浸透させ、適切に運用されていることを確かめ、必要に応じて調整を要望する現場の役割を誰かが担う必要があります。もちろん、全社員の意識レベルを底上げするための教育を定期的に行い、必要ならば認定制度を設けることも推奨されます。
一志は次のように述べています。「『データ・ドリブン』な組織を目指しているのは、日本のD&Aリーダーだけではありません。海外企業も思うようには組織を変革できず、D&Aの成果を定量的に示すこともできず、苦労していることに変わりはありません。ただし、海外は実践して失敗しているのに対し、日本企業は実践の前段階で足踏みしている様子が見て取れます。長くひとつの企業に勤め、幅広い業務を経験している日本企業の人材は、会社への帰属意識も高く、示される方針に柔軟に従う傾向が高いと言われています。日本企業の持つ強みを活かしつつ、新時代に対応するよう、D&Aのリーダーは組織的な能力の獲得や文化の変革を担う必要があります。そのために、経営が理解できる言葉で説明して信任を獲得し、他のビジネス・リーダーとも良好なパートナー関係を築くなど、自身の役割への理解を得て立ち位置を確保することが重要です」
Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「日本におけるデータ活用の実情」および「データ、アナリティクス、AIに欠かせない役割とは」で関連情報をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products
日本のITエグゼクティブ向けのニュースや最新情報は、GartnerのXやFacebookでも案内しています。最新のプレスリリースや記事、ウェビナー情報については、ニュースルームよりご参照ください。
本日5月23日までグランドニッコー東京 台場にて開催中の「ガートナー データ & アナリティクス サミット」では、トレンド技術の活用によるビジネス成果の獲得や、積年の課題にD&Aリーダーとしてどう立ち向かっていけばよいのか、人材の確保や組織の構成といった新たな悩みをどう解消すればよいのかなど、広範囲にわたるD&A関連のトピックを解説しています。AI関連については国内外のエキスパートによる講演も予定しています。コンファレンスのニュースと最新情報は、X (旧Twitter) でご覧いただけます (#GartnerDA)。
Gartner, Inc. (NYSE: IT) は、お客様のミッション・クリティカルな課題について、より優れた意思決定と大きな成果へと導く実行可能かつ客観的な知見を提供します。詳細については下記Webサイトでご覧いただけます。