2023年9月23日
2023年9月23日
ガートナーの「人工知能 (AI) のハイプ・サイクル:2023年」では、不完全なシステムから生じる限界とリスクについて言及する一方で、明らかに革新的なメリットをもたらすイノベーションと手法について特定しています。また、AI戦略においては、最も信頼性の高い投資先を検討することが重要です。
ガートナーのディレクター アナリストのアフラズ・ジャフリー (Afraz Jaffri) は、次のように述べています。「AIのハイプ・サイクルでは、生成AIや意思決定インテリジェンスなど、2~5年以内に導入の主流となるために特に注目すべきイノベーションを取り上げています。こうしたイノベーションを早期に導入することで、ビジネス・プロセス内でAIモデルを利用する際に生じる問題を緩和し、競争優位性を大きく向上させることができます。」
今すぐダウンロード (英語):Build a Value-Driving AI Strategy for Your Business
生成AIは、AIに関する議論の中心となっており、ChatGPTのようなシステムを使用する開発者やナレッジ・ワーカーの生産性が実際に高まっています。こうした状況から、企業や業界ではビジネス・プロセスと人材の価値を再考するようになり、生成AIはハイプ・サイクルで「『過度な期待』のピーク期」に押し上げられています。
今後、より強力なAIシステムに向けた生成AIの動きには、以下の2つのタイプが見られるとガートナーは考えています。
詳細を見る (英語):Executives’ Guide to Generative AI
生成AIはコンテンツの発見、作成、信憑性、規制に関連するため、ビジネスに影響を及ぼします。また、人間の仕事の自動化に加え、カスタマー・エクスペリエンス/従業員エクスペリエンスの自動化も可能です。
このカテゴリに分類される重要なテクノロジは、以下の通りです。
汎用人工知能 (AGI):人間が実行できるあらゆる知的タスクを遂行可能な機械知能 (現時点では仮説段階)
AIエンジニアリング:企業がAIソリューションを大規模に実現する際の基盤。企業による一貫性のある開発、デリバリ、AIベースの運用システムを実現する
オートノミック・システム:限定領域のタスクを実行する自己管理型の物理システム/ソフトウェア・システム。自律性、学習、仲介という3つの基本特性を有している
クラウドAIサービス:AIモデル構築ツール、事前構築型サービスのAPIを提供する。また、クラウド・サービスとして事前構築型インフラストラクチャ上で動作する機械学習 (ML) モデルの構築/トレーニング/展開/利用を可能にするための関連ミドルウェアも提供する
コンポジットAI:知識表現のレベルを広げて学習効率を高めるために、複数のAI手法を組み合わせて構築されたアプリケーション (または複数のAI手法の融合) を指す。より効果的な方法で、さまざまなビジネス問題を解決する
コンピュータ・ビジョン:実世界の画像と動画のキャプチャ、処理、分析に関連し、物理世界から意味のある文脈情報を抽出する一連のテクノロジ
データ・セントリックAI:AIによる成果を向上させるためにトレーニング・データの質を高めることに重点を置くアプローチ。データ品質やプライバシー、拡張性にも対処する
エッジAI:IT以外の製品、IoTエンドポイント、ゲートウェイ、エッジ・サービスに埋め込まれたAI手法の使用を指す。自律走行車、医療診断の拡張機能、ストリーミング・ビデオ分析といった、コンシューマー向け/商用/産業用アプリケーションのさまざまなユースケースで利用されている
インテリジェント・アプリケーション:学習で得られた適応力を活用し、人間と機械に対して自律的に応答する
モデルの運用化 (ModelOps):高度なアナリティクス/AI/意思決定モデルに対するエンド・ツー・エンドのガバナンスとライフサイクル管理に焦点を絞っている
AI運用システム (OAISys):本稼働の準備が整ったエンタプライズ・グレードAIのオーケストレーション、自動化、拡張を可能にする。機械学習 (ML)、ディープ・ニューラル・ネットワーク (DNN)、生成AIで構成される
プロンプト・エンジニアリング:生成AIモデルによる一連の応答が特定および限定されるように、入力データをテキスト/画像形式で生成AIモデルに提供する分野
スマート・ロボット:1つ以上の物理的な作業を自律的に実行するように設計されている、AI搭載の機械 (多くの場合はモバイル)
シンセティック (合成) データ:現実世界を直接観察して得られたデータではなく、人工的に生成されたデータのクラス
今すぐPodcastを視聴 (英語) : The AI Hype Cycle 2023: New Technologies on the Innovation Trigger
ガートナーのバイス プレジデント アナリストのスベトラーナ・シキュラー (Svetlana Sicular) は、次のように述べています。「Stable DiffusionやMidjourney、ChatGPT、大規模言語モデルが広く使われるようになったことにより、生成AIに対する調査研究は加速しています。大半の業界におけるエンドユーザー組織は、積極的に生成AIを試しています」
シキュラーは次のように続けます。「テクノロジ・ベンダーは、生成AI対応のアプリケーションやツールのデリバリを優先させるための生成AIグループを形成しています。また、2023年には生成AIを用いてイノベーションを打ち出す多くのスタートアップ企業が登場しています。ガートナーではこの動きは拡大していくと見込んでいます。一部の政府機関では、生成AIの影響を評価し、規制の導入を準備しています」
このカテゴリに分類される重要なテクノロジは、以下の通りです。
AIシミュレーション:AIエージェントとシミュレーション環境 (AIエージェントのトレーニング、テスト、時には導入が可能な環境) を一緒に開発するために、AIとシミュレーションのテクノロジを組み合わせたアプリケーション
AIの信頼性/リスク/セキュリティ・マネジメント (AI TRiSM):AIモデルのガバナンス、信頼性、公平性、確実性、堅牢性、有効性、データ保護を確保する
コーザルAI:相関に基づく予測モデルを超え、アクションをより効果的に処方してより自律的に行動できるAIシステムにするために、因果関係を特定して活用する
データ・ラベリング/アノテーション (DL&A):アナリティクスとAIプロジェクトを向上させるためのデータ拡充を目的に、データ資産の分類/分割/注釈付け/拡張を行うプロセス
第一原理 (ファースト・プリンシプル) に基づくAI (FPAI) (通称:物理学に基づくAI):物理学/アナログの原理、準拠法、分野の知識をAIモデルに組み込む。FPAIは、複雑なシステム・エンジニアリングとモデル・ベースのシステムにまでAIエンジニアリングを拡張する
ファウンデーション・モデル:広範囲にわたるデータセットを用いて「自己教師あり学習」でトレーニングされた、大規模パラメータ・モデル
ナレッジ・グラフ:機械での読み取りが可能な形式で、物理世界とデジタル世界を表したもの。ナレッジ・グラフにはエンティティ (人、企業、デジタル資産) と、エンティティ同士の関係性が含まれ、これらはグラフ型データ・モデルに準拠する
マルチエージェント・システム (MAS):複数の独立した (ただし相互に作用する) エージェントから構成されるAIシステム。各エージェントがそれぞれの環境を認識してアクションを実行できる。エージェントの例としては、AIモデル、ソフトウェア・プログラム、ロボット、その他の計算エンティティがある
ニューロシンボリックAI:機械学習手法とシンボリック・システムを組み合わせて、より堅牢で信頼性に優れたAIモデルを作成するコンポジットAIの一形態。より効果的にさまざまなビジネス問題を解決するための推論インフラストラクチャを提供する
責任あるAI:AI導入の際にビジネス/倫理面で適切な選択を行うための見地を指す包括的な定義。建設的かつ倫理的で説明責任を担うAIの開発/オペレーションを確実に行うための組織的な責任と実践方法を網羅する
Afraz Jaffri
Director Analyst, Gartner
アナリティクス/データ・サイエンス/AIに注力しています。データ/アナリティクスのリーダーに対し、近代的なデータ・サイエンス、機械学習、アナリティクス・プラットフォームへの投資を最大限に活用するためのアドバイスを提供しています。
Svetlana Sicular
Vice President Analyst, Gartner
データとAIが関与する領域に注力しています。人間とAIは単独よりも連携することでスマートになると、Sicularは考えています。また、組織がAIを活用して画期的なビジネス・アイデアを実行に移すことで、デジタル・トランスフォーメーションを達成できるよう支援することに重点を置いています。
【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/
ガートナーのサービスをご利用のお客様*にお勧めのレポート
英語:
Hype Cycle for Artificial Intelligence, 2023
Understanding Gartner's Hype Cycles
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