AIエージェントとは?

AIエージェントは、業務効率化やイノベーションを加速させる画期的なAI技術として注目されています。本記事では、AIエージェントの仕組みや特性、どのような分野で活用されるのかをわかりやすく紹介します。

2025年2月18日更新

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AIエージェントの定義とは?

まずはAIエージェントの定義を正しく理解することが重要です。ガートナーではAIエージェントを「デジタルおよびリアルの環境で、状況を知覚し、意思決定を下し、アクションを起こし、目的を達成するためにAI技法を適用する自律的または半自律的なソフトウェア」と定義しています。

これは将来を見越した抽象的な定義ですが、さらに拡張して説明すると、「特定の目標を達成するために自律的に行動でき、環境から情報を収集して意思決定を行い、その結果として論理的または物理的な行動を実行できるAIシステム」とも言えます。

従来のチャットボットやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは異なり、AIによって複雑なデータや状況に適応する高度な可能性を備えている点が大きな特徴です。

AIエージェントの特性とは?

AIエージェントの特性は多岐にわたり、その能力や機能はRPAと比較しても格段に高度です。従来のRPAは、あらかじめ定義されたルールに従って反復的なタスクを自動化するソフトウェアですが、AIエージェントはタスクの自動化だけでなく「エージェント性」を備えた高度なシステムです。

自律的に稼働し、処理するデータに基づいて意思決定を行い、学習によって性能を向上させられる点が大きな違いです。

以下に挙げるのはAIエージェントの主な特性です。

  • 適応性:環境や目標の変化に合わせて行動や戦略を調整できる
  • 積極性:将来のシナリオを予測し、戦略的に意思決定を行い、目的達成に向けて主体的に行動できる
  • 目的の複雑性:高度な意思決定や問題解決能力を要する複数の目標を管理・実行できる
  • 環境の複雑性:不確実性や変動性が大きい環境下でもタスクを制御・実行できる
  • 自律性:人間の介入をほとんど必要とせず、独立して稼働できる

現状のシステムに備わるエージェント性は、限定的な条件でタスクを実行する程度にとどまりますが、将来的には学習や意思決定を通じて、完全に自律的なタスク実行を可能にするエージェント性を獲得すると考えられます。

本記事冒頭の図にもあるように、現在のLLMベースのアシスタントと、人間に近いエージェント性を備える本格的なAIエージェントの間には、依然として大きなギャップがあります。

ステートフルとステートレスの違いとは?

AIエージェントを理解するうえで、ステートフルかステートレスかを区別することも重要です。

  • ステートフルなAIエージェント:過去の情報を保持し、それをもとによりパーソナライズされた応答や動作が可能
  • ステートレスなAIエージェント:以前のやり取りを保持せず、すべてのリクエストを独立したものとして扱う

マルチエージェント・システム(MAS)とは?

マルチエージェント・システム(MAS)は、複数の独立したエージェントが相互に協調して作業を行うAIシステムの形態です。各エージェントは自律的に環境を認識し、必要に応じて行動を起こす能力を持ちます。

AIエージェント同士を連携させることで、個々のエージェントでは対処できない複雑なタスクを処理したり、分散型の意思決定を行ったりすることが可能になります。

AIエージェントの仕組み

AIエージェントはタスクを自律的に処理しますが、そのプロセスは大きく「認識」「判断(推論)」「実行」の3つのステップに分けて考えることができます。これは人間の行動プロセスに似ており、AIエージェントの動作原理を理解するうえで役立ちます。

1. 認識:ユーザーからの質問や要求を解析し、その意図を正確に把握する段階です。内部知識と外部知識のどちらが必要かを判断し、必要に応じて外部データベースやAPIを参照して関連情報を取得します。AIエージェントがこれらの知識を取り込むためには、LLM、RAG、グラウンディング、Webサーチなどを組み合わせる設定が必要です。

  • RAG(検索拡張生成):外部データベースから情報を検索し、応答生成に活用する手法
  •  グラウンディング:特定の事実や信頼できるデータを根拠として明示的に参照することで、一貫性と信頼性を高める手法(RAGはグラウンディングの一種としても位置付けられます)

2. 判断(推論):大規模言語モデル(LLM)などが、内部知識や検索結果をもとに情報を整理し、推論を行います。複雑なタスクや高い精度を要する場面では、Chain of Thought(CoT)やFew-shot Scaffoldingなどの技術を活用して段階的に推論を進めます。

  • CoT(Chain of Thought):複雑なタスクをいくつかの中間ステップに分解し、順番に処理することで結果へ導く推論手法
  • Few-shot Scaffolding:初期の推論を支援する具体例やヒントをモデルに与え、精度を高める手法

3. 実行:最終的にAIエージェントが具体的なアクションを起こす段階です。ここには外部サービスの呼び出し(Function Calling、Tool Use、API呼び出しなど)が含まれます。これらの機能はAIエージェントの外部に存在するため、“外部のサービスや機能を利用している”と認識すると分かりやすいでしょう。

AIエージェントの種類

AIエージェントには多様な種類があり、これらの特性は相互に排他的ではありません。たとえば、目的ベースのエージェントが環境から学習する機能を持つ場合もあります。

以下に主要な種類とそれぞれの特徴をまとめます。

反射エージェント

過去と現在の知覚情報を両方考慮します。世界の内的モデルを持ち、行動に対して環境がどう反応したかを踏まえ、次の行動を選択します。

目的ベースのエージェント

特定の目的を達成することを目指します。ただ環境に反応するだけでなく、目的を達成する手順を主体的に踏むため、より自発的に行動します。

有用性ベースのエージェント

目的の達成だけでなく、その行為の有用性や品質を最大化する点に注目します。効用関数を用いて各状態の望ましさを評価し、その順位に基づいて意思決定を行います。

学習エージェント

経験から学びながら自らのパフォーマンスを改善し、環境の変化に適応します。強化学習や教師あり/教師なし学習などの手法を活用し、時間の経過とともに進化します。

階層エージェント

意思決定を階層構造で行います。上位層が抽象的かつ長期的な戦略を、下位層が短期的な意思決定を担うことで、複雑な計画や意思決定が可能になります。

コラボレーティブ・エージェント

共通の目的を達成するために、他のエージェントや人間と協力します。情報やタスクを共有することで、効率性と成果を高めることができます。

AIエージェントの適用例

AIエージェントは、タスクの自動化や意思決定の高度化、周囲とのインテリジェントな相互作用などを通じて、幅広い業種/環境を変革する可能性を秘めています。

適切に設計/設定されたAIエージェントは、以下のような環境で活用されることが想定されます。

  • コンシューマー環境:商品の販売や個別要件に合わせたソリューションの提案、顧客サポートなど
  • インダストリ環境:プロセスの動的最適化や反復作業の自動化、品質管理の強化など
  • インフォメーション環境:意思決定を支援する情報分析、拡張、照合、評価、要約など
  • クリエイティブ環境:さまざまな形式のコンテンツ資産の編成や最適化、生成など
  • ソーシャル環境:コミュニティやグループ間での効率的なファシリテーションや情報共有
  • ロジスティクス環境:輸送プロセスやサプライチェーンの管理、自動調整

AIエージェントを活用することによる利点とは?

AIエージェントを導入することで期待できる利点は非常に多岐にわたります。業務効率化やイノベーション促進、顧客体験向上など、さまざまな領域での大きな変革が見込めます。

主な利点は以下のとおりです。

  • 業務効率の向上:反復的なタスクを自動化するだけでなく、自律的に稼働して学習・意思決定を行うため、従来のRPAよりも高度な自動化が可能です。
  • イノベーションの促進:学習・予測・自律的意思決定が可能なため、例えばマーケティング資料の更新やコンテンツ生成など、多様な分野で新しい価値を生み出します。
  • 多様な環境での適用:コンシューマー、インダストリ、インフォメーション、クリエイティブ、ソーシャル、ロジスティクスなど、幅広い場面での導入が可能です。
  • マルチエージェント・システム(MAS)による高度なタスク処理:複数のAIエージェントが連携するMASを活用すれば、複雑なタスクや分散型の意思決定を効率的に行えます。
  • 柔軟性と適応性:環境や目的の変化に合わせて行動戦略を調整でき、単独でも協調的にも動作できるため、さまざまなシナリオに対応が可能です。
  • 情報分析と意思決定の改善:大量の情報を分析・照合・評価・要約することで、より正確なデータに基づいた意思決定をサポートします。
  • 高度な自動化:エージェント性をもつため、単なる自動化を超え、自律的に稼働・意思決定・学習を行えます。
  • 学習と改善:経験から学習しパフォーマンスを向上させることで、導入後も継続的な成長が期待できます。

ただし、これらの利点を十分に享受するためには、自律性や法的責任を踏まえたガバナンス体制、堅牢なセキュリティ対策、データ・プライバシーを守る法的・倫理的ガイドラインなど、明確なガードレールを設けることが不可欠です。次の「AIエージェントを活用する際のリスクとは?」も合わせてご参照ください。

AIエージェントを活用する際のリスクとは?

AIエージェントには多くの利点がある一方で、自律性や学習能力、複雑なタスク実行能力の高さゆえに、さまざまなリスクが存在します。リスクを適切に管理しないと、企業に重大な損失や法的問題をもたらす可能性があります。

主なリスクを以下に整理します。

セキュリティ上のリスク

  • データ漏洩とプライバシー侵害:AIエージェントが機密情報にアクセスするケースが多いことから、データ漏洩のリスクが高まります。
  • 敵対的攻撃:外部から送信される不正ペイロードや攻撃コードなどによる攻撃リスクが考えられます。
  • 不正利用:エージェントが犯罪者に乗っ取られたり悪用されたりすると、深刻な不正行為につながる可能性があります。

意思決定と法的責任に関するリスク

  • 不正確な出力やハルシネーション(幻覚):AIエージェントが誤った回答を生成し、それに基づいて企業が誤った判断を下すリスクがあります。
  • 知的財産権の侵害:知らないうちに他者の知的財産を外部へ配信する可能性があり、法的責任の問題が発生します。
  • 法令遵守違反:AIエージェントが法規制に反する行為を行うリスクや、顔認識ソフトウェアの誤判定による人権侵害などが挙げられます。
  • 責任所在の不明確化:エージェントが自律的に意思決定を行うため、最終的な責任の所在が不透明になる恐れがあります。

信頼性に関するリスク

  • ブラックボックス化:外部提供のエージェントやモデルは内部構造が不透明で、プライバシー評価や法規制適合性の確認が困難です。
  • 不適切な意思決定:AIの誤作動や誤学習によって、ビジネスにとって好ましくない意思決定が行われる可能性があります。
  • 予期せぬ行動:自律性の高さゆえに、想定外の出力やエラーが発生する場合があります。
  • マルチエージェント・システムの複雑性:複数のエージェント間で目的や相互作用が衝突すると、予期せぬ問題や不適切な振る舞いが生じることがあります。

その他のリスク

  • コンテンツの異常検出:エージェント経由で機密データが流出するリスクがあります。
  • 消費者保護:エージェントが提供する情報に誤りや有害なアドバイスが含まれる場合、消費者の安全を脅かす可能性があります。

AI TRiSM (AIのトラスト/リスク/セキュリティ・マネジメント) とは?

ガートナーでは、AIリスクを管理するための枠組みとして、AI TRiSM (AIのトラスト/リスク/セキュリティ・マネジメント)を提唱しています。モデルやエージェントの透明性・解釈可能性の確保や、コンテンツの異常検出、AIのデータ保護、敵対的攻撃への抵抗力強化など、総合的な対策を講じる必要があります。

AI TRiSMは、AI技術の導入や運用に伴う信頼性・リスク・セキュリティを総合的に管理するフレームワークです。エージェントのガバナンス、信頼性、公正性、堅牢性、有効性、データ保護などを保証し、AIを安全かつ効果的に活用するための包括的なガイドラインを提供します。

AIエージェント導入のさまざまな課題におけるガートナーの知見

ガートナーは、企業や組織がAIエージェントを導入/活用する際に直面する課題やリスクを総合的に分析し、その解決策を提示しています。ガートナーのリサーチノートでは、AIエージェントがもたらす最新動向や可能性だけでなく、リスク軽減のための対策やガバナンス・モデルなども詳しく解説されています。たとえば、以下のようなリサーチノートを通じて、AIエージェントに関するより深い知見を得ることができます。

※ご契約者様向けのリソースです。ご契約のお客様は、以下のリサーチノートからさらなる詳細をご確認いただけます。

AIエージェントのリアリティ
執筆:亦賀 忠明, 針生 恵理
AIエージェントが急速にバズワードになりつつあります。AIエージェントは、人の力を介さずにタスクを自律的に実行できる仕組みであり、これに対する業界やユーザーの期待が高まっています。AIを推進するテクノロジ・イノベーションのリーダーは、今できることと将来できることを明確に区別し、リアリティに基づいて採用方針を決定すべきです。

イノベーション・インサイト:AIエージェント
監訳:林 宏典
企業は、業林 宏典種を問わず複雑な作業を自律的に実行する画期的なテクノロジとして、AIエージェントの進化を注視すべきです。AIエージェントは、業務を革新的に変える機会を提供する一方で、セキュリティや倫理上の重大な懸念も生み出すからです。

クイック・アンサー:AIエージェントがもたらす新たなリスクとセキュリティ脅威を低減する
監訳:礒田 優一
OpenAIやMicrosoftなどの先進のモデル・プロバイダーが既にAIエージェントを推進していますが、これらはAIモデルやAIアプリケーションに内在するリスクの範囲を超えた新たなリスクやセキュリティ脅威をもたらします。本リサーチノートでは、こうした新たなリスクを説明するとともに、リスク低減のために実装すべき新たなコントロールについて分析します。

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