クラウドERP戦略変革の機会とは?クラウドERP向け生成AIのユースケース比較

生成AIによるクラウドERPの進化は、業務効率の向上、コスト削減、迅速な意思決定に期待が寄せられています。本記事では、CIOやITリーダーを対象に、自社のERPソリューションの成熟度・要件および将来の戦略と比較するのに役立つ20の実用的なユースケースをご紹介し、どのようにガートナーの知見を企業のビジネス戦略にご活用いただけるかをご説明します。

2025年1月31日更新

継続的なビジネス価値を創出するERP戦略

ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)には、並々ならぬネガティブな見方がつきまとっています。ガートナーの調査によると、最近実施されたERPイニシアティブの70%以上が、2027年までに当初のビジネス・ユースケースの目標を達成できず、そのうち25%は、重大なリスクに直面する可能性があります。

ERPイニシアティブをビジネス戦略の目標と一致させることが、成功の鍵となります。ガートナーのリサーチノートをダウンロードすると、以下の知見を得られます。

  • ERPイニシアティブがもたらす将来のビジネス価値を、組織内のステークホルダーに明確かつ魅力的に伝える

  • ERPソリューションによるイノベーションを活用し、現状に疑問を投げかける意欲のあるステークホルダーを集め、初期段階から期待を高め、推進する

  • エンドユーザーの「自分たちにとってのメリットは何か?」という疑問に答え、従業員の体験向上に取り組む姿勢をを示すことで、ERPイニシアティブに対する全社的な支持を得る

Research「What IT Leaders Must Do to Avoid Disappointing ERP Initiatives」をダウンロード

CIOおよびITリーダーがERPイニシアティブを推進し、ビジネス価値の創出につなげる方法

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生成AIはERPにどのような影響を与えるのか?

生成AIは、クラウドERPソリューション内のさまざまな業務プロセスを自動化し、効率化を促進します。例えば、請求書処理、財務照合、現金回収、チャットボットを活用したユーザーサポートなどが含まれます。これにより、業務コスト削減、人的エラーの低減、意思決定の迅速化が可能になります。

具体的にどのようなクラウドERP向け生成AIのユースケースがあるのか?

ガートナーのリサーチノートでは、20のユースケースが提示されています(図「クラウドERP向け生成AIのユースケース比較」参照)。各ユースケースには、2024年5月時点での実現可能性、および⼀般的な企業が1年で実現し得る価値に基づいてスコアが付けられています*

*これは⼀般的な評価であり、企業は自社の成熟度・要件と比較しながら検証する必要があります。

「クラウドERP向け生成AIのユースケース比較」をERP戦略に活用する方法

前図「クラウドERP向け生成AIユースケース比較」に取り上げられている20のユースケースは、特に財務管理、受注から入金まで(O2C)、ソーシング/調達、製造/サプライチェーン、従業員管理の業務に適用できます。これら以外にも、あらゆる業務に等しく適用可能なものや、ERPシステム自体のサポートに使用されるものがあります。

この比較チャートは、20のユースケースをビジネス価値と実現可能性の観点で整理し、戦略的議論やベンダー選定の意思決定に役立ちます。

クラウドERP向け生成AIのユースケースのスコアカードとは?

ガートナーが提示するクラウドERP向けた生成AIのユースケースは、次の3つのカテゴリに分類されます。ここでは、各カテゴリに配置されているユースケースの例も提示します*

1. 有望(実現可能性・価値ともに高い)

  • 買掛金請求書の自動化: ⽣成AIベースの買掛⾦請求書⾃動化ツールは、機械学習 (ML) を使⽤して、請求書を発注書 (PO) や契約と照合したり、POのないものについては⾃動的にコード化したりする。これによって⼿⼊⼒の請求書処理が最⼩限になり、⽀払い遅延が減り、早期⽀払いの値引きを受けるチャンスも⽣まれる
  • デジタル‧アシスタント∕チャットボット: デジタル‧アシスタントやチャットボットは、ERPを活⽤するユーザー向けに、⽇常的な問い合わせ、情報への迅速なアクセス、単純作業の⾃動化などのリアルタイムのサポートや⽀援を提供する
  •  受注処理‧問題検出: リアルタイムのオムニチャネル在庫データやその他のデータを使⽤して、最適化された受注処理の意思決定を⾃動的に特定‧選択することで、受注処理モデルを改善する。⽬下の受注残に影響するサプライチェーン問題に着⽬し、顧客への通知の電⼦メールやテキスト‧メッセージを作成することもある。

2. 計算されたリスク(価値は高いが実現には課題あり)

  • 契約書の生成: 契約のテンプレートや条項の草案作成を⾃動化し、かつ従来の契約のテンプレートを学習して修正箇所を提⽰する。トレーニングや⼊⼒データに基づいて、取引や関係に合った新たな契約を⽣成することもある
  • 出荷情報の問い合わせ: ⽣成モデルを使⽤して、輸送中の荷物、ステータス、位置情報、到着予定時刻 (ETA) などに関する質問に回答する。「注⽂したものは今どこにあるか」などの問い合わせに応じて、配送状況を含めて詳細情報を提供することができる

3. わずかな利益(実現可能性はあるが、価値は限定的となる可能性あり)

  • ERPセキュリティ: ERPシステムの社内外の潜在的な脅威を⾃動的に特定し、警告するために使⽤される。⽣成AI主導のシステムは、疑わしい動作を検出し、スタッフに直ちに潜在的なリスクを警告することができる
  • データの拡張‧改善: ⽣成モデルを使⽤して、⽋けているデータを埋めるために、妥当と思われる値を予測することができる。例えば、利⽤可能なデータに基づいて、データの分析とビジュアライゼーションにChatGPTのCode Interpreterプラグインを使⽤したりする。

*図に示す20すべてのユースケースについての価値や実現可能性の詳細は、リサーチノート「クラウドERP向け⽣成AIのユースケース⽐較」よりご確認いただけます。本リサーチノートに関する詳しい情報は、こちらからお問い合わせください

自社ERPに取り入れる生成AIのユースケースをどのように選定すればよいか?

まずは、自社のERPの成熟度や戦略的目標に照らし合わせ、導入すべきユースケースを選定する必要があります*

ガートナーでは、各ユースケースを選定する判断基準については、「価値」「実現可能性」とに次元を分け、それぞれ以下の観点より、各ユースケースの概要を説明しています。

1.   価値

  • コスト削減:調達費‧⼈件費の節減、利幅の拡⼤、資産の最適化、サービス要請 (保守など) の最少化のいずれかを通じて、コストを最適化できる
  • 効率性:同等あるいはより少ないリソース (例:設備投資、スタッフ、テクノロジ、時間) でパフォーマンス⽬標を達成するか上回り、タスクに従事するスタッフの貴重な時間を解放し、より価値のある活動に集中させる
  • リスク:評判であれ、財務であれ、⾃社にとってのリスクを制限できる

2.   実現可能性

  • 技術的:テクノロジ‧ソリューションやインフラストラクチャが、⽣成AIソリューションの⼤規模な構築と展開をサポートできる
  • 組織的:組織がAIテクノロジやその洞察を利⽤し、意思決定に取り⼊れることができ、またそうしたことに対してオープンである。AIを活用して意思決定を拡張・⾃動化するための組織の準備状況も含まれる

*ガートナーのツールキット「Toolkit: Discover and Prioritize Your Best AI Use Cases With a Gartner Prism」を活用すれば、自社のニーズに合わせてカスタマイズも可能ですので、ご興味ありましたらお問い合わせください

ERP戦略策定のために、選定した生成AIのユースケースを優先順位付ける方法は?

生成AI対応の各ユースケースが財務管理、受注・入金管理、ソーシング/調達、製造/サプライチェーン、従業員管理などの業務にどのように適用できるかを可視化することで、優先順位付けに役立ちます。

一般的に、複数の関連業務へのパイプラインが長く示されるユースケースほど、総合的なビジネス価値は高くなります。また、パイプラインで可視化することで、有益な議論の発端となる重要なステークホルダーをピンポイントで特定するマップとしてもお役立ていただけます。

ガートナーでは、この可視化された「クラウドERP向け生成AIユースケースのパイプライン」をリサーチノート「クラウドERP向け生成AIのユースケース比較」の中でご紹介していますので、ご関心ある方は是非お問い合わせください

生成AIをERP戦略にどう取り入れるか?また、何から始めればよいか?

生成AIの台頭は、ERP戦略に生成AIを取り入れる適切なタイミングについて、多くの疑問をもたらしています。以下のポイントを考慮し、性急な意思決定による期待外れの結果を回避する必要があります。

  • 生成AIとは何かを理解する生成AIには、以前であれば高額な投資を必要としたイノベーションや自動化のユースケースをサポートできる可能性があります。しかしながら、拙速に陥り失望しないためには、戦略的な考え方に加え、成果の創出に注力します
  • 選択肢と技術の成熟度を評価する:ERPベンダーは、既に利用されているほかのAIや機械学習 (ML) の機能と併せて生成AIを推進するパイロット・ユースケースに取り組むことで、新たなニーズに応え始めています。企業は、これらの製品/サービスについて、自社の目標や期待に対する適合性を理解します
  • 幅広いERP戦略との連携を確保する:現在、ほとんどのベンダーは、最新のクラウドERPソリューションに向けたユースケースを開発することに注力し、レガシー化したオンプレミス・ソリューションにユースケースを後付けしようとはしていません。そのため企業は、AI全般の採用ロードマップを、ERPの刷新またはリプレースの節目に合わせて計画する必要があります。さらにAIエンジンに供給するクリーンなデータも入手できるようにしておきます。

ERP戦略に関するガートナーのリサーチ情報

本記事でご紹介した20の生成AIユースケースは、ERP内の生成AIユースケースすべてを網羅しているわけではありません。新たなユースケースが急速に発展する可能性もありますので、CIOやITリーダーの皆さまは意思決定の情報源として、ERPに関するガートナーの知見をご活用ください。

Gartner のサービスをご利用のお客様は、下記のレポートで詳細をご覧いただけます。契約されているサービスにより本ドキュメントを閲覧いただけない場合もございますので、ご了承ください。

クラウドERP向け生成AIのユースケース比較

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