AI導入のために知っておくべきこと:
AIをビジネスに活用する最善な方法とは?

2023年7月16日

企業のCIOとITリーダーが、ビジネスにAIを導入し活用していく上で不可欠な5つのポイントをご紹介します。

ガートナーの2023年CIO/テクノロジ・エグゼクティブ・サーベイによると、ChatGPTが登場する前から既に、自社で AI (人工知能) テクノロジを導入しているCIOは3人に1人、2024年中にAIを導入する予定のCIOは15%でした。しかし、AIを導入するためにどのような方法が最善なのかを決めるためには、ビジネス価値、リスク、人材、投資に関する優先課題を考慮する必要があります。

AI導入によるビジネス成果への期待:CIOが知っておくべき5つのポイント

ビジネス部門のリーダーはAI導入によるビジネス成果に高い期待を寄せており、CIOはこれに応える必要があります。CIOには、AI言語に技術的な面から精通することに加えて、ビジネスにとってのリスクと機会を熟知することが求められます。

ここでは企業のCIOとITリーダーが、ビジネスにAIを導入し活用していく上で不可欠な5つのポイントをご紹介します。

No. 1:ChatGPTが登場する以前は、全社レベルではなくビジネス部門レベルでの効率改善を目的として、最新のAIを導入シナリオに注力していた。

大半の組織は通常、ビジネス部門や以下のユースケース領域にAIを導入しています。

  • スマート・プロセス・オートメーションとロボット・システム
  • 大規模な自動化/パーソナライゼーション
  • 従業員の生産性や、AIによって可能となる意思決定精度の向上

No. 2:最善のAIユースケースでは、関連性/論理性/質の高い、十分な量の信頼できるデータへのアクセスが必要である。

CIOはよく、AIがビジネスに価値をもたらすことを期待しますが、何が実行可能であるかを明確にする必要があります。AIのビジネス価値の大半は、1度限りのポイント・ツー・ポイント・ソリューションから生み出されています。ソリューションから大規模に、より多くの価値を得るには、ビジネス・プロセスを深層から変え、AIチームとソフトウェア・エンジニアリングの間の業務遂行方法を一新する必要があるかもしれません。既存のシステムへのAIの統合は一筋縄ではいかないためです。

以下のユースケースは、実行可能性と、ビジネス価値を高める可能性のどちらも高いため、投資を正当化しやすいでしょう。 

  • 価格最適化
  • リード・スコアリング
  • 需要の創出

以下のAIユースケースは、実行可能性は高いもののビジネス価値が中程度となり得ることから、投資については機会次第ということになるでしょう。

  • クロスセル/アップセル
  • テリトリ編成
  • 営業コンテンツのパーソナライゼーション
  • ナレッジ・マネジメント
  • アカウント・インテリジェンス

No. 3:生成AIの利用増加により、組織は、著作権のあるコンテンツや保護対象のコンテンツ、そして、機密情報のセキュリティ侵害をめぐる法律問題にさらされている。

生成AIは、複数のビジネス能力を拡張および加速できますが、利用増加をきっかけに倫理と責任を問う声が出ています。そのため、CIOはAIに関する最新の政府規制やに留意する必要があります。以下に、AIに関連するリスクや生成AIに関連するリスクを示します。 

AIのリスク:

  • 規制:AIは、著作権のある、または、保護対象のコンテンツ/情報/データをめぐる訴訟に組織をさらす可能性があり、法的リスクが存在する

  • 評判:AIはバイアスを増幅し、「ブラック・ボックス」 (インプットやオペレーションがユーザーから見えないAIシステム) を生み出す可能性がある

  • コンピテンシ:AIには一連の固有のスキルセットが必要なことから、既存の人材のスキルを向上させるか、学術界/スタートアップから意図的に調達する必要がある

  • 間違ったアウトプット:生成AI、中でもChatGPTは、推論において不安定になったり誤りを起こしたりする可能性、コンテキスト全体を把握しそこなう可能性があるほか、説明可能性/追跡可能性に限度があり、バイアスがかかっている

  • セキュリティ:組織の機密データや知的財産が、外部ユーザー (サービス・プロバイダーの従業員やハッカーなど) への回答生成に利用される可能性がある

法律:

生成AIによって、知的財産やプライバシーへの懸念に関連する法的リスクが生じる可能性がある。例えば、著作権の侵害や企業秘密の不正流用、データ・プライバシー、モデルのバイアス/セキュリティがある。

No. 4:AIを内部構築する必要はない。AIを取得し、既存のアプリケーションで組み込み型AIを利用することが可能である。

内部開発をせずにAIを取得する方法は多数あります。例えば、使用中のエンタプライズ・アプリケーションに組み込む、パッケージ・アプリケーションを購入する、AIのアドオン (チャットボット、仮想アシスタントなど) を利用する、といったことが可能です。以下の方法があります。

  • 購入:API (Amazon Web Services、Google、IBM、Microsoftなど)、パッケージ・アプリケーション (IBM、Microsoft、Oracle、SAP、SASなど)

  • 構築:オープンソース (Python、Apache Spark、TensorFlorなど)、データ・サイエンス/機械学習のプラットフォーム、市民データ・サイエンスのツール

  • 外部委託:グローバル/ローカルのコンサルタント、スペシャリスト、システム・インテグレーター

CIOによると、AI人材のリソースについては大きな懸念はなく、AI開発の成功に必要な人材を調達するために内部雇用と外部雇用を組み合わせています。ただし、鍵となる4つの役割があります。それは、データ・サイエンティスト、データ・エンジニア、AIエンジニア、ビジネス領域の専門家です。

No. 5:責任あるAIの導入/一連の取り組みの計画策定に必要なことは、ステークホルダーに関与しながら、現行の取り組みを理解し、自社の企業価値にとって、AIが何を意味するかを定義することである。

CIOがとるべき今後のステップ

  • 簡潔なAI戦略文書を作成する。その文書では、自社のビジョンと潜在的なメリットをまとめ、リスクの監査と軽減を行い、KPIを把握し、価値創出のベスト・プラクティスを説明する
  • AIプロジェクトのスポンサーを特定し、プロジェクトのKPIが正確に測定され、広く周知されるようにする

  • データ・ドリブンな組織文化を浸透させるために、データ・リテラシー・プログラムに投資する

  • 責任あるAIプラクティスを浸透させ、AI戦略に後から補足するのではなく、AI戦略の基本とする

John Hilleryは、ガートナーCIOリサーチ グループのピア/プラクティショナー リサーチ チームにおけるマネージング バイス プレジデントです。最近のリサーチでは、IT戦略、ガバナンス、オペレーティング・モデル、パフォーマンスの測定、人材、CIOの役割の進化に注力しています。

Nathan Lewis はガートナーCIO&インダストリー・グループのスペシャリストです。現在は、同業他社および業界のリサーチに従事しています。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
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