変動の激しい環境でも適応できるビジネス戦略とは?

2023年7月17日

現在はかつてよりもビジネスモデルの変革が頻繁に起こっている時代です。こうした環境において、変化のペースが速いほど、適応力の高さが不可欠となります。変動の時代に必要とされるビジネス戦略について解説します。

従来の12カ月単位のプロセスで策定される戦略は主に「確実性」を頼りとしているため、すぐに廃れてしまい、変化への対応に時間がかかることが多々あります。今日の変動の激しいビジネス環境成長を推進しようとしている幹部リーダーには、こうした従来型の方法ではなく、適応力のあるイベント駆動型の戦略アプローチが必要です。

ガートナーのシニア ディレクター アナリストのイアン・コックス (Ian Cox) は、次のように述べています。「現在はかつてよりもビジネスモデル変革が頻繁に起こっています。しかも、抜本的な変革です。こうした世界には、長期的な戦略に対して適応力のあるアプローチが適しています。変化のペースが速いほど、適応力の高さが不可欠となります」

適応力のあるビジネス戦略への出発点

組織の戦略の適応力を高めようとしている経営幹部は、以下を行います。

  • 判断:戦略の策定や変化への対応に時間がかかるなど、既存の戦略上の課題を判断する

  • 特定:こうした課題を克服するために最も関連する適応力のあるビジネス戦略プラクティスを特定する。例えば、「可能な限り早期に実行を開始する」などである

  • 選択と実装:優先する適応力のあるビジネス戦略プラクティスをサポートするために、関連するビルディング・ブロック (リアルタイムの知見など) を選択して実装する

適応力のあるビジネス戦略の4つの中核的プラクティス

ガートナーは、適応力のあるビジネス戦略の策定に必要な4つのプラクティスを特定しています。  確固たる適応力のある戦略へのアプローチについては、この4つのすべてをベースとしますが、多くの場合、企業は最初に、差し迫った戦略課題に対処する1~2つのプラクティスに注力します。

No. 1:可能な限り早期に実行を開始する

戦略は、ビジネスモデルで想定されたように価値を創出し、提供し、獲得するために企業が取るべき長期的な選択と行動を定義するものです。しかし計画の作成に時間をかけるほど実行にかける時間が減り、その間に世界が先へと進んで、作成した計画が時代遅れになるというリスクが高まります。

また、速やかな実装は、計画の不備を明確にして改善点を特定する上でも役立ちます。適応力のあるビジネス戦略には、実行に向け完璧、完全な情報は不要です。利用可能な情報を活用して、成功するために真っ先に必要となるアクションを特定します。

No. 2:起こると同時に変化に即応する

ディスラプションの多い今日の環境を考慮すると、戦略の見直しに1年を費やせる余裕のある企業はほとんどありません。これは、ビジネス環境の動きが遅く、ディスラプションはあっても頻度が低かった時代に一般的な方法でした。戦略の見直しを四半期ごと、あるいは毎月行っている企業もありますが、真の適応力のある企業はビジネス環境を常時モニタリングし、ビジネス環境を見直すための新たな情報を入手するたびに、戦略の見直しを開始しています。 

適応力のあるビジネス戦略の指針となるビジョンはなおも長期的で、大胆な内容になる可能性がありますが、企業の成功に不可欠なアクションの限界を押し広げるために、(数年ごとに完全に一新するのではなく) 継続的に拡張すべきです。

No. 3:不確実性を受け入れ、探求する

不確実性は機会を生み出すため、一部の領域では一定のリスクを受け入れることが不可避です。しかし、リスクを利用してイベントが起こると同時に即応する企業は、不確実性の高い世界で成功できる可能性が高まります。ビジネスにおける適応力のあるビジネス戦略は、これを成し遂げ、リスクを軽減する上で役立ちます。

No. 4:戦略に全員を巻き込む

トップダウン型の戦略プロセスに関与するのは選ばれたごく少数です。一方、適応型プロセスは包括的であり、エンゲージメントが重視され、共同作業であり、組織内外のあらゆる人からアイデアや知見を受け入れます。そのため企業の戦略策定/更新/実装能力は高まり、アウトプットの質も向上します。

適応力のあるビジネス戦略の9つのビルディング・ブロック

ガートナーの調査によって、この4つのプラクティスを確立する上で役立つ、9つのビルディング・ブロックが判明しました (数は今後増える可能性あり)。

大半の従来型の企業は、最初に注力する2つ程度の中核的なプラクティスの確立に役立つ、ビルディング・ブロックのサブセットにまずは注力します。これらのビルディング・ブロックを使って特定の問題に取り組み、従来型の戦略プロセスも並行して進めながら、適応型のアプローチの要素を追加していきます。デジタル企業として誕生した企業は、これより多くのビルディング・ブロックを使うことが多くなります。

ビルディング・ブロックは、以下の3つのカテゴリに分類されます。

  • インプット:戦略に関連するアイデア、知見、情報を生成、取得、保存する方法。該当するブロック:リアルタイムの知見、クラウドソーシング、継続的なスキャン

  • プロセス:戦略を策定、見直し、維持、更新する方法。該当するブロック:分散型の意思決定、戦略スプリント、継続的なプロセス

  • アウトプット:戦略の形式、内容、構造。該当するブロック:選択肢に基づく戦略、実験に基づく戦略、実用最小限の戦略

Ian CoxはガートナーCIOリサーチ チームのシニア ディレクター アナリストです。担当分野は、戦略的プランニング、ITオペレーティング・モデル、取締役会へのコミュニケーション、CIOオフィスなどです。ガートナー入社前は、幅広い業界の取締役会や経営幹部の独立したアドバイザーとして、戦略、デジタル・トランスフォーメーション、CIO/ITの役割などを専門としていました。

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本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
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