DX (デジタル・トランスフォーメーション) とは?

ビジネスを成功へと導く、真の意味でのDXを実現するために重要なポイントを解説

ビジネスを成功に導くためのDX:戦略と実行におけるベスト・プラクティス

ガートナーのeBook「DXを実現するためのITロードマップ」をダウンロードして、ご活用ください。

本eBookでは、以下の重要なポイントについて解説しています。

  • ビジネス目標に対し成果を出すためのDX実現に重要な5つのステージ
  • DXイニシアティブの計画/実行のために主要なステージ/リソース/人材
  • 数千の組織の経験に基づいたベスト・プラクティス

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DX (デジタル・トランスフォーメーション) とは?

ガートナーではデジタル・トランスフォーメーション (DX) を次のように定義しています。*1

DXとは、クラウド・コンピューティングなどのITの近代化から、デジタルの最適化、新たなデジタル・ビジネスモデルの考案までを指す。公共機関では、サービスのオンライン化やレガシーの近代化など、ささやかな取り組みを指す言葉として広く使われている。したがって、この場合の用語は、デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションというよりも『デジタル化』に近いものである。

出典: Gartner

DXの目的、なぜDXが必要なのか?

デジタル・ディスラプションが進む中、真の意味でDXに成功する企業は依然として少ないのが現状です。しかし、VUCAと呼ばれる、 Volatility (変動性)、Uncertainty (不確実性)、Complexity (複雑性)、Ambiguity (曖昧性) が高まる現代のビジネス環境において、DXは競争力を維持/強化するために不可欠な取り組みとなっています。

ガートナーの調査結果から明らかになった世界の経営者の最大の関心事である「ビジネスの成長」を実現するためには、競争力のあるビジネス価値をタイムリーに顧客に提供する必要があります。そのようなビジネス価値を創出するには、あらゆる経営的資源 (労働力、資金、時間、設備など) を増強するか、既存のものを有効活用すべきかということになります。しかし、資源は有限であり、不確実性が高まり続ける将来に備える上で、安易な増強はリスクを伴います。

そのため、資源そのものを増強するという方向ではなく、それらの有効活用に焦点を当てることを検討します。すなわち、どのようにビジネス価値を生み出すかという過程を見直すべきです。その場合に、DXを単なる資源のIT化として捉えるのではなく、ビジネスの抜本的な変革をとして捉え、競争力のあるビジネス価値を創出する「トランスフォーメーション」へと至るまでの道のりについて考えます。

DX成功への道のり、DX推進のために重要なステップ

DXの成功には、ビジネス成長のためのトランスフォーメーションにつながるアクションが必要です。

しかし、多くの日本企業では、旧来の業務やシステムの非効率さが自社の成長を阻む重大な要因となっています。そのうえ、日常業務に取り組む現業部門が日々の業務処理に忙殺され、目下の目標やノルマをこなすことで精一杯となり、経営的な視点から中長期戦略や改善の視点を持つ余裕がない、あるいはその必要性を感じていない可能性があります。

こうした課題を解決することで、従業員の士気や満足度が高まり、同時に顧客満足度の向上にもつながります。さらに、市民開発 (非IT部門 [市民] によるソフトウェア開発) を促進するノーコード・ツールの進化により、より迅速かつ効率的に顧客へ価値を提供できる機会がもたらされます。そして、進展するAIテクノロジを活用する能力の強化も求められていますが、これには膨大な時間と投資が継続的に必要となります。

こうした背景から、まずはスタートとして業務改革に焦点を当て、業務改革によってもたらされるビジネス成果、すなわち顧客にどのような価値がもたらされるかについて再確認します。それから、DXの真の目的であるビジネス変革の実現および競争力の強化につなげる道のりを進んでいくことになります。

以下に、業務改革からつながるDX成功のための重要な一連のステップをご紹介します。

1. 業務改革からスタート

日本企業の多くが取り組むDXは、老朽化したシステムの刷新、人手不足解消のための自動化ソリューションの導入といった形で推進されます。最終的に顧客へ価値を提供するためというよりは、目前の課題解決に主眼が置かれる形で進み、結果として現行業務の再現にとどまる傾向にあります。

また、業務改革の取り組みに際し、対象市場 (顧客や競合状況) の変化やテクノロジの進展を十分に考慮せずに、顕在化した業務上あるいはシステム上の課題のみに着目し、短期間かつ低コストで対処しようとすると、急場をしのぐ現行業務の再現に終始することとなります。その結果、将来を見据えた戦略的で計画的なDXが遠のいてしまう可能性があります。

DXへの投資が、IT化による急場をしのぐ現行業務の再現だけにとどまらないように、既存の業務プロセスにおける問題点を、顧客ロイヤリティを高める観点から洗い出すことから始めましょう。

例えば、顧客への見積もりに必要な情報をタイムリーに取得できているか、カスタマー・エクスペリエンス向上に必要なデータをリアルタイムで利用可能か、といった点を検証します。これらの問題点の解消をアプリケーション近代化のスコープに取り入れることで、真の意味でのDX実現への一歩が踏み出せます。

2. 顧客価値の創出を中心に据える

DXの成功には、マイケル・ポーター (Michael Porter) が提唱したバリューチェーンの概念を理解し活用することが重要です。バリューチェーンとは、企業の活動を「主活動」と「支援活動」に分類し、各活動が最終的にどのように顧客価値の創造に貢献するかを示す枠組みです。

主活動には、調達物流、製造、出荷物流、販売/マーケティング、サービスが含まれ、これらは直接的に価値創造に関わります。支援活動には、全般管理、人事・労務管理、技術開発、調達活動があり、これらは主活動を支える役割を果たします。

DXを推進する際は、このバリューチェーンの概念に沿って、社内業務の改革が最終的に顧客へ価値を提供するという観点から、創出される付加価値を可視化することが重要です。例えば、DX推進によって製造プロセスを最適化することで、品質向上やコスト削減が実現し、それが顧客にとっての価値(より良い製品をより適切な価格で)につながります。

また、デリバリに至る時間を短縮することも重要です。デジタル技術を活用して各活動のプロセスを効率化し、顧客に価値を届けるまでの時間を短縮することで、顧客満足度の向上につながります。例えば、受注から配送までのプロセスをデジタル化することで、リードタイムを大幅に短縮できます。

さらに、デジタル技術によって、「エクスペリエンス」「共感」「信頼」といった新たに生み出される付加価値を可視化し、意思決定を支援することができます。例えば、顧客データを分析して個別化されたサービスを提供することで、顧客エクスペリエンスを向上させ、より深い顧客との関係性を構築することができます。

このように、バリューチェーンの観点からDXを推進することで、企業は顧客価値の創出を中心に据えた変革を実現し、競争優位性を確保することができます。

3. 市民開発の推進

さらに、ビジネス価値の創出や顧客満足度の向上を目的とした市民開発 (非IT部門 [市民] によるソフトウェア開発) を推進することも重要なポイントとなります。ガートナーの調査によると、日本において市民開発に取り組んでいる企業は50%に達しています。

市民開発の重要性は、以下の点にあります:

  • 個人や部署レベルの業務効率化が全社に広まることで、企業全体の業務効率化につながり、対顧客サービスの向上をもたらします。

  • 市民開発の推進は、非IT部門のデジタル人材育成の目的にも合致しています。日本において非IT部門のデジタル人材育成に取り組む企業は半数程度存在します。

  • 市民開発を促進するノーコード・ツールの進化により、より迅速かつ効率的に顧客へ価値を提供できる機会がもたらされます。

ガートナーは、2027年までに、日本企業の70%は、市民開発による業務の効率化と迅速な意思決定の実現を通じて、顧客満足度を大いに向上させると予測しています。

しかし、市民開発の推進には課題も存在します:

  • 従業員(一般ユーザー)の士気向上

  • セキュリティを含む適度なガバナンスの確立

  • 企業としての大義名分の存在

これらの課題を克服できない企業では、市民開発が進まない状態になることが予想されます。

市民開発を成功させるために、以下のアクションが必要とされます。

  1. 市民開発の採用・推進に際しては、その最終的な目的がビジネス価値の実現、顧客満足度の向上であることを社内で明確化し、周知します。

  2. 市民開発を管理するガバナンスは推進に軸足を置き、あまり厳しい内容にすることを避けます。厳し過ぎると市民開発に対する一般ユーザーの士気を損ねることになります。

  3. 開発ツールの機能の進化を常にモニタし、市民開発に適用可能な新しいテクノロジを積極的に取り入れ、市民開発で実現できる業務機能の範囲を拡大していきます。

市民開発の推進は、IT部門の負荷を軽減するだけでなく、組織全体のデジタル・リテラシー向上にも貢献します。また、市民開発で開発されたアプリケーション同士の連携や、市民開発されたアプリケーションとその他のSaaSやIT部門が管轄するアプリケーションとの連携(アプリケーション統合)も、一定のルールの下で広がっていきます。

4. データに基づく業務上の意思決定の自動化

データに基づく業務上の意思決定の自動化に成功することで、労働生産性を大きく向上させることができます。ガートナーの予測によると、2027年までに、日本の大企業の10%は、データに基づく業務上の意思決定の自動化に成功し、労働生産性を20%向上させると見込まれています。

しかし、意思決定の自動化を実現するためには、いくつかの課題を克服する必要があります:

  1. 意思決定の複雑化:現代のビジネス環境はますます不確実性を増しており、投資判断や経営方針の設定はもとより、これまで比較的単純なロジックに従っていた意思決定でさえも、複雑な状況判断などに基づかなければ正確性を担保できなくなっています。

  2. AIツールの進化と活用:今はまだ任せられないとしても、AIは人と同じように成長します。それは人間が経験を積んで成長するのと同様で、AIが出した推奨や警告に対して正解を教え続けるなど、人間の行いと結果をデータ化して教えていく地道な取り組みが求められます。

  3. 企業固有の知識の反映:業界固有の知識や地域特有の商習慣などを考慮した正確な回答を汎用的なAIに求めることは難しく、個別企業での業務経験から得られる知識への対応は困難を極めます。

これらの課題に対処するためには、以下のアプローチが有効です:

  1. AIを活用した業務のあり方をデザイン:AIの持つ可能性、それを競合他社が活用する状況で自社が取り残された場合、どのような影響があるのかを想定し、組織に広く共有して対応策を経営方針として検討します。そのために、自社においてAIを活用した業務の在り方がどのようなものか、周囲がイメージしやすいようにデザインして示します。

  2. 汎用的なAIの業務活用:AIの活用に過度な規制や制限をかけるのではなく、法やプライバシー保護のリスク、倫理には十分注意しながら、汎用的なAIの業務活用を積極的に進めます。

  3. 自社固有の特定業務に適用できるAI開発:汎用的なAI機能の活用経験を積みながら、やがては意思決定を自動化することを視野に入れて、自社固有の特定業務に適用できるAIの開発を進めます。

データに基づく業務上の意思決定の自動化は、DXの成功に不可欠な要素です。適切なAI技術の活用により、より迅速で正確な意思決定が可能になり、結果として労働生産性の大幅な向上につながります。継続的な投資と改善を通じて、データドリブンな組織への変革を進めていくことが重要です。

5. AIとの共存

2022年11月のChatGPTの発表以来、多くのベンダーが競うように自社のツールに生成AIを利用した機能を実装しています。そのような中、日常型AIによる業務効率向上について取り上げられる機会が多くなっています。ガートナーは日常型AIを「従業員の生産性向上、より質の高い仕事の実現、時間の節約を支援するAIサービスの一側面を指す」と定義しています。

日本企業の多くも、日常型AIによる業務効率向上の可能性に大きな期待を寄せています。例えば、MicrosoftのAzure OpenAI Serviceの国内ユーザー企業数は、2023年9月時点の560社から、同年11月には2,300社へと短期間で4倍以上になりました。多くの従業員が日常的に利用する検索やメール・ドキュメントのドラフト作成などの日常型AIのユースケースに、Azure OpenAI Serviceを適用している事例が見られます。

しかし、ガートナーでは、2027年までに、日常型AIを導入した日本企業の70%は、抜本的な業務の進め方の見直しを行わず、期待した水準の業務効率の向上を実現できないと予測しています。この予測の背景には以下のような課題があります。

  1. 現行業務プロセスの複雑性:現行の業務プロセスが必要以上に複雑な場合、AIを導入しても効果が限定的になる可能性があります。

  2. AI導入の目的の曖昧さ:AIの導入自体が目的化し、本来のビジネス価値の創出や顧客満足度の向上という目的が軽視されるケースがあります。日常型AIが適用される業務のプロセスや人的リソースなど、テクノロジ以外の側面がまだ検討の視野に入っていないケースの方が多くみられます。

  3. 業務の抜本的見直しの不足:AIを現行の業務プロセスに単に組み込むだけでは、真の効率化は実現できません。業務プロセスの見直しに取り組まない企業では、日常型AIを導入してもビジネス価値の早期実現や、従業員満足度の向上に必要な業務効率化の効果が大幅に減殺されてしまいます。

これらの課題を克服し、AIとの共存を効果的に実現するためには、以下のアプローチが重要です。

  1. 業務の抜本的見直し:日常型AIの導入を、業務の在り方を抜本的に見直す契機とします。「AIの効率化効果を最大限に生かすには、業務をどう見直せばよいか」という視点で検討を行います。

  2. KPIの適切な設定:業務効率化のKPIとして日常型AIの影響のみでなく、それを含めた業務の在り方を見直す効果全体を対象とします。

  3. AIの利用目的の明確化:AIの活用が自己目的化しないようにします。経営視点に立ち、AIの推進担当者のミッションを「AIの利用率」ではなく「業務の進め方の見直し」とします。

AIとの共存を通じて、人間の創造性や判断力とAIの処理能力や効率性を最適に組み合わせ、ビジネス価値の創出を最大化することがDXの重要な目標となります。AIを単なるツールとしてではなく、業務変革の触媒として活用することで、真の意味でのDXを実現することができます。

ガートナーと共に実現するDX戦略

2027年に向けて、現行業務を再現するだけのIT投資の90%は、迫り来る変化に対応できず、市場競争力を失う主因となると予測されています。DXの真の目的を理解し、業務改革を起点に、データとAIを効果的に活用しながら、全社一丸となってDXに取り組むことで、企業は大きな成長を遂げることができるでしょう。

しかし、DXの推進には多くの課題が存在し、その道のりは決して平坦ではありません。ガートナーは、豊富な経験と最新の知見を基に、お客様のDX推進を強力にサポートいたします。市場動向の分析、ベスト・プラクティスの提供、テクノロジ選定のアドバイス、変革管理のサポートなど、DXの各段階で直面する課題に対して、具体的かつ実践的なガイダンスを提供します。

ガートナーと共に、貴社の競争力を高め、デジタル時代をリードする組織へと変革させていただければ幸いです。DXの成功に向けて、まずは貴社の現状と課題をお聞かせください。ガートナーのエキスパートが、貴社に最適なDX戦略の策定と実行をサポートいたします。

備考 *1
総務省 (情報通信白書) によるデジタル・トランスフォーメーションの定義は次のとおりです:「企業が外部エコシステム (顧客、市場) の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム (組織、文化、従業員) の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム (クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術) を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」

出典:令和3年版 総務省 情報通信白書

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