2023年8月11日
2023年8月11日
今までにないレベルで、今後起こり得るデジタル・ディスラプション (破壊) の中には、現時点ではまったく想定していない、あるいは逆に非現実的だと考えられているにテクノロジに起因することもあるでしょう。
ガートナーのバイス プレジデント アナリストのベン・プリング (Ben Pring) は、次のように述べています。「地殻変動は一夜にして起こるわけではありません。しかし、ディスラプションを初期段階で無視すると、サイクルが発展段階に入った後期では、戦略、財務、存続といったあらゆる面で、参入コストが上昇することになります」
今すぐタウンロード: ガートナー「2023年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」
「空飛ぶ車」と「デジタル・ヒューマン」には共通点がほとんどないように見えるかもしれませんが、両者はいずれも、私たちの知るこの世界を変える可能性があるテクノロジ・ディスラプションです。始まりは小さくても、将来的にはかなり普及する可能性のあるディスラプションとそれに起因するテクノロジをご紹介します。
メタバースは、人のエクスペリエンスを仮想化することで、イマーシブなデジタル環境を提供します。メタバースによって、企業は以下のような側面からディスラプションに直面するでしょう。
仮想現実 (VR) は、長い間もてはやされたり、一方では嘲笑われてきました。しかし、ディスラプションの中核となるテクノロジです。そのため、VRがメディア/エンタテイメントからビジネスのやりとりに至るまで、現実世界の多くの局面で挑み始めるにつれて、メタバースに懐疑的であることは、逆に不意打ちを食らう危険性があります。
ITサービス・ベンダーが、業務エクスペリエンスにおけるVRのビジネス機会を捉えるには、プロセス、システム、エクスペリエンス、インフラストラクチャによってどのように新しいVR世界を実現/最適化するかを顧客が再考できるように、コンサルティング/開発ソリューションを構築することに注力すべきです。
例えば、オフィス面積を縮小した組織には、そこで働くスタッフや関与する顧客のために、可用性の高い安全なVR環境が必要になるでしょう。必要不可欠なサービスを市民に提供している公的機関は、サービスを容易に利用できるようにする必要があります。VRを活用して物理的な部品の設計/製作を行っている製造業では、テクノロジ・リーダーが、技術的な俊敏性に欠けるアプローチに挑む新たなアプローチを主導する必要があるでしょう。
長年の憧れであった「空飛ぶ車」が、徐々に現実味を帯びつつあります。現在スタートアップと、大規模な運輸企業の部門の両方で、プロトタイプの開発が進められています。このイノベーションによって、低高度空域は根本的に破壊されるでしょう。地上の道路では密集度が下がる一方、人や企業にとってまったく新しい輸送モデルが登場する可能性があります。間接的な影響としては、以下が挙げられます。
航空管制システムによって混雑した航空路を管理する必要がある
多額のテクノロジ投資が必要になる
垂直レーンによって都市は再編される
通勤時間が短くなり、郊外が遠隔の地方まで拡大される
新しい業界のバリューチェーン全体を構築する必要があります。コード、システム、プロセスの開発に全面的に依存することになり、これを開発/最適化できるのがITサービス・プロバイダーです。
ITサービス・プロバイダーのゼネラル・マネージャーは、初期段階にあるこの新市場でイノベーションを目指す企業にとっての有能なパートナーとなるべきです。
そのために、運輸業界にとっても、また運輸に依存する企業にとっても、このトレンドがどのように進展するのか、適切な視点を得るために最低限は投資すべきです。
デジタル・ヒューマンは、ますます本物の人間のようになっていきます。デジタル・ヒューマンはすぐに利用でき、スクリーンを介したやりとりが可能で、サービスに関する課題に対処したり、顧客サービスを即座に提供したりできます。デジタル・ヒューマン・ソフトウェアが自然言語処理ツールやロボティック・プロセス・オートメーション (RPA) ツールに統合されるにつれて、デジタル・ヒューマンの存在感は、ますます多くのプロセスのワークフローで高まるでしょう。デジタル・ヒューマンは、あらゆる分野で人間同士のやりとりに取って代わる可能性があります。例えば、医師の診察、税理士への相談、ニュースの視聴、年次勤務評価などです。
コンサルティング・リーダーは、単独あるいは組織の他部門のリーダーと協力して、顧客がデジタル・ヒューマンの労働力を活用するためのアプローチ策定に注力すべきです。特に、ビジネス・プロセス・アウトソーシング・プロバイダーのサービス・デリバリ・リーダーは、自社のサービス・デリバリ機能内にデジタル・ヒューマンを配備するための戦略を策定する必要があります。
自律分散型組織 (DAO) は、ブロックチェーン (通信の追跡のための安全なデジタル台帳を提供) 上で運営されるデジタル主体であり、従来のような人間による管理がなくても、ほかのDAOやデジタル・エージェント、人間のエージェント、さらには企業とのビジネス・インタラクションに関与できます。DAOは、以下のようにディスラプションをもたらします。
オープンソース型の作業を従業員が収益化できるようにする (現在は難しい場合が多い)
従業員に対し、ステークホルダーとなって発言権を持つ機会 (キャリア・オーナーシップ) を与えない
DAOはビジネスへの対処方法を示し、これまで慣れ親しんできたコミュニケーションの構造に変化をもたらします。DAOは、顧客の需要を満たそうとしている従業員や組織にとって、魅力的なものとなる可能性があります。
ITサービス・プロバイダーのゼネラル・マネージャーは、この考えに慣れ親しんでおく必要があります。DAOは、ウイルスのように広まるデジタルの本来の性質により、極めて速いペースで発展し、日常業務にディスラプションをもたらす可能性があるためです。またゼネラル・マネージャーは、DAOが解決策となるような問題の根本原因を分析する必要もあります。すなわち、既存の組織モデルの性質に対して多くの従業員が不満に思っていることや幻滅していることです。さらにゼネラル・マネージャーは、既存のアプローチに隣接する、DAOベースのサービス・デリバリ・モデルの潜在能力を評価すべきです。
長年にわたって電気自動車 (EV) への移行が進んでおり、現在は全世界の新規販売台数の約4.6%を占めるに至っています。導入に向けた大きな障壁の1つに、簡単で効率的な充電オプションの不足があります。ワイヤレス充電は、EVの展開を加速するために役立ち、(a) 道路または (b) ほかのバッテリ残量の多い車両からEVに電力を送ることで、運転中のリアルタイムでの充電を可能にします。結果として、次のようなディスラプションが生じます。
自動車にソフトウェアが組み込まれるケースが増える
「スマート」な道路を建設するという課題が生じる
自動車業界に注力している、ITサービス・プロバイダーのゼネラル・マネージャーは、顧客がその開発ロードマップにEVワイヤレス充電テクノロジを追加できるよう支援する能力を高めるべきです。ワイヤレス充電などの最先端の領域を理解し、先見的なリーダーシップやサービス・ポートフォリオを整合させることで、ITサービス・プロバイダーには競争力を高める機会がもたらされます。
電子機器の半導体として使用可能な炭素の一形状であるグラフェンは、従来の半導体素材と比べ、優れた価格や性能を提供できる可能性があります。グラフェンは、熱伝導性と電気伝導性が非常に優れており、高速かつ強力なコンピューティング/電子機器テクノロジに向けた解決策になるかもしれません。グラフェンは、以下の領域でディスラプションをもたらすでしょう。
抽出方法
チップ製造ツール
世界的な競争環境への拡張
地政学的な影響と結果
グラフェンは、高密度集積回路のトランジスタ数は約2年ごとに2倍になるという、ムーアの法則を延長させる可能性があります。チップ製造に使用されるその他の素材は限界に達しており、ムーアの法則の意義が持続しない恐れがあります。
IT/ビジネス・コンサルティング企業のゼネラル・マネージャーは、半導体テクノロジにおいて見込まれる、グラフェンの今後の進展を把握しておくべきです。今後18~36カ月は、顧客がサプライヤーに関するデュー・デリジェンスを実施し、中~長期的に存在意義が続く最新テクノロジを確実に活用できるように、支援を提供することに注力します。
IT業界ではコンポーザビリティ/ディスポーザビリティ (使い捨て可能であること) の概念が急速に浮上しており、CIOはテクノロジのイノベーションを加速させてユーザーの需要に対応するために、テクノロジを入れ替えることが可能になっています。
使い捨てのテクノロジはあらゆるテクノロジにディスラプションをもたらしますが、消費者/顧客の需要を踏まえると避けることはできません。ディスラプションは、以下に影響を及ぼします。
プロダクト/サービスの長期的な販売を目指しているすべてのテクノロジ・プロバイダー
保守料金が発生する、複雑なテクノロジ向けのビジネスモデル
テクノロジ・サービス・プロバイダーのゼネラル・マネージャーは、開発手法のほか、プロダクト/サービスのバンドル時に行う基本的なアーキテクチャの選択肢を刷新しなければなりません。テクニカル・リーダーに指示して、異なるコンポーネントのテクノロジ間の「交換と入れ替え」を促すアーキテクチャ・リファレンス・モデルを開発させ、また特定のテクノロジに依存する長期の戦略的な賭けのリスクと制限について、組織に理解させる必要があります。
ベン・プリングはガートナーのバイス プレジデント アナリストであり、Gartner for General Managersプログラムのメンバーです。このプログラムは、ガートナーの顧客企業の最上級リーダーにコンサルティングとカウンセリングを行う、ガートナーのアドバイザリ・サービスです。
【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/
ガートナーのサービスをご利用のお客様*にお勧めのレポート
英語:
*契約されているサービスにより本ドキュメントを閲覧いただけない場合もございますので、ご了承ください。
「Gartner News」はITの各分野を幅広くカバーした「皆様のビジネスとITを成功に導く情報」をお届けいたします。
ご登録のEメールアドレス宛てに、最新リサーチ情報、コンファレンス開催情報などをお届けいたします。