CIOにとっての5つの最優先課題:
IT部門の枠を超えた価値創造への実践的アプローチ

ガートナーのエグゼクティブ パートナー (EP) は多くの場合、実務経験を持つ元CIOです。この実務経験により、現役のCIOが直面する課題や状況を深く理解し、直接お客様と協働しながら、具体的な戦略的イニシアティブや実行プランの策定/最適化に取り組みます。ガートナーのEPがCIOから最も頻繁に寄せられる5つの質問について、回答と共にご紹介いたします。

2025年1月13日

CIOの主要な課題はAIから人材まで多岐にわたる

ガートナーの「CIOレポート」は、正式なアンケート調査に依拠したものではなく、ガートナーのサービスをご利用いただいているCIOの皆様から日々寄せられる問い合わせのほか、アナリストやエグゼクティブ パートナー (EP) とのやりとりに基づいて作成されています。本レポートは、CIOにとって何が重要かを取りまとめたものであり、お客様が組織の課題を特定し、今後のステップを判断するのにお役立ていただけます。

本CIOレポートでは、2024~2025年にかけて多くのCIOが直面する可能性が高い、以下の5つの課題について焦点を当てています。

  • AI戦略
  • データ/アナリティクス戦略
  • 新たなセキュリティ脅威
  • ITの価値の実証
  • 人材戦略

Gartner CIO レポート

CIO からガートナーに最もよく 寄せられる質問への回答

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近年、CIOが直面する主要な5つの課題:AI、データ、サイバーセキュリティ、ビジネス成果としての投資対効果、人材

ガートナーのエグゼクティブ パートナー (EP) は多くの場合、実務経験を持つ元CIOです。この実務経験により、現役のCIOが直面する課題や状況を深く理解し、直接お客様と協働しながら、具体的な戦略的イニシアティブや実行プランの策定/最適化に取り組みます。ガートナーのEPがCIOから最も頻繁に寄せられる5つの質問について、回答と共にご紹介いたします。

1. 人工知能(AI)戦略をどのように確立するか?

最も注目すべき点は、92%のCIOが2025年までに自社あるいは自組織でAIを導入すると考えていることです。このことは、他のどのテクノロジよりも高い割合を示しています。CIOは、AIがもたらすビジネス・インパクトに対するCEOや取締役会の期待の急騰に直面していますが、この期待の高まりには大きな課題が伴います。AI導入に深く関わるリーダーの約半数である49%が、その価値の測定や実証に苦心していると報告しています*1。これは単なる技術導入の問題ではなく、具体的なビジネス価値を生み出すための戦略的アプローチが必要であることを示唆しています。

AI戦略を実行可能なものとするために、具体的なビジネス価値を創出できる領域を特定し、優先順位付けを行います。その際、期待される効果だけでなく、潜在的なリスクも明確に評価することが重要です。実行段階では、小規模なパイロット・プロジェクトから開始し、明確な評価指標に基づいて効果を検証しながら、段階的に展開していきます。また、AIの開発・運用体制の確立、必要なスキルの育成、適切なガバナンス体制の整備など、持続可能な運用モデルの構築も重要な要素となります。さらに、環境の変化や組織の成熟度に応じて戦略を柔軟に調整していく必要があります。

2. データ/アナリティクスの実効性をどのように向上させるか?

データ活用の重要性が増す中、最高データ分析責任者(CDAO)の27%が、ビジネス部門からの協力不足を最大の課題として挙げています。この状況を改善するには、CIOとCDAOが緊密に連携し、データ/アナリティクスが企業の重要資産であるという認識を組織全体で共有することが不可欠です。

CDAOがCIOの直属である場合は、データ/アナリティクスに関するビジョンと範囲について明確な合意を形成します。

  • 同等の立場にある場合は、共通の課題を見出し、相互に補完し合えるコラボレーションを構築します。
  • CDAOがビジネスリーダー、CIOがテクノロジーリーダーとして機能する場合は、各々の強みを活かしながら、ビジネス支援とテクノロジー革新の両面からアプローチします。

具体的な施策としては、データを主要な企業資産として位置付け、重要なビジネス・プロセスや意思決定への影響を可視化することが重要です。また、部門横断的なデータ共有の仕組みづくりや、データ・リテラシーの向上を通じて、組織全体のデータ活用能力を高める必要もあります。

これらの取り組みにより、データ/アナリティクスが企業の重要な資産として認識され、ビジネスの重要な目標、プロセス、意思決定、成果に対してより大きな影響を与えることが期待されます。

3. 絶えず進化するセキュリティの脅威から組織を守るにはどうしたらよいか?

世界のサイバー犯罪による企業の損失は年間6兆ドルを超えており、この脅威は進化し続けています。CIOには、最高情報セキュリティ責任者(CISO)と協力しながら、組織固有の事情を考慮した効果的なセキュリティ・プログラムを構築することが求められています。

また、サイバーセキュリティ・プログラムの実現に向けて、以下の3つの重要なアクションに取り組む必要があります。

  • CIOとCISOは、サイバーセキュリティのリスクに対する明確な説明責任を確立する必要があります。これにより、効果的なリスク・ベースのコントロールに関する意思決定が可能となります。
  • 一般に受け入れられている標準や実証済みのプラクティスを活用しながら、組織固有のビジネス状況を反映したプログラムを構築します。これは、標準化された対策を単に導入するのではなく、自社や自組織の特性や課題に合わせてカスタマイズすることの重要性を強調しています。
  • セキュリティ・プログラムは俊敏性と継続的な改善を実現できるように設計する必要があります。これは主要な原則を重視しながらセキュリティ・プロセスを正式化するという方法で達成します。

4. IT投資から得られるビジネス価値を実証するにはどうしたらよいか?

ガートナーの見解によると、81%の企業がDX (デジタル・トランスフォーメーション) の目標達成に苦戦しています。CIOには、IT投資の価値を明確に示すことが求められますが、これは単なる技術的な成果ではなく、ビジネス成果として示す必要があります。

IT投資のビジネス価値を実証するために、次の3つの質問に焦点を当てることが重要です。

  1. ステークホルダーは何を重視しているのか?
    価値はテクノロジ自体ではなく、テクノロジによって実現されるビジネス成果にあります。つまり、導入した技術が実際のビジネス成果の改善にどのように貢献したかを示すことが重要です。
  2. IT価値のストーリーをどのように構築するか?
    IT価値のストーリーを「運営(明かりを灯し続けること) 」と「変革(ビジネス成果を改善すること)」の2つに分けることが重要です。運営の価値とは、高いパフォーマンス・レベルの維持や事業継続性の確保が、ビジネス・パフォーマンスにどう貢献するかを示します。一方、変革の価値とは、既存能力の拡大や新たな能力の提供による付加価値を示します。
  3. どうすれば効果的に価値を伝えられるか?
    評価指標を使用して価値のストーリーの内容を裏付け、サポート対応やシステム保守が、ステークホルダーの目標達成やビジネス成果の向上にどう貢献したかを具体的に説明することが重要です。

このように、IT投資の価値を技術的な指標ではなく、具体的なビジネス成果として示すことで、投資の正当性をより効果的に実証することができます。

5. どのように組織を編成し、人材戦略を策定したらよいのか?

2024年には69%のCIOが従業員のリスキリング/スキルアップを計画しており、これは前年の47%から大幅に増加しています*2。特に生成AI、AI/機械学習 (ML)、サイバーセキュリティ、データ/アナリティクス、データ・プラットフォームなどの分野での人材育成が急務となっています。

組織の文化と人材を重視する観点から、優秀なIT人材の採用・育成に向けた具体的な戦略を策定します。手順としては以下の通りです:

  1. 従来の採用チャネルだけでは、必要な人材の確保が困難になっている現状を踏まえ、ソーシャルメディア・プラットフォームや従業員紹介制度を人材の発掘に活用し、IT労働市場に存在する潜在的な候補者へのアプローチを強化します。
  2. IT部門のジョブ・ディスクリプションを見直します。必要なスキルや経験を列挙するだけでなく、その職務が持つ魅力や価値を明確に伝える説得力のある内容に改善することが重要です。これにより、候補者がその職務に適しているかどうかを適切に判断できるようになります。
  3. 重要なIT人材の確保に向けて、柔軟な働き方の導入を積極的に推進します。特に、完全リモートやハイブリッドワークなど、新しい働き方の選択肢を提供することで、優秀な人材の採用と定着を図ることができます。

このように、戦略的な採用活動、魅力的な職務内容の提示、柔軟な働き方の実現を通じて、組織に必要なIT人材の確保と育成を実現することが可能となります。

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