将来のテクノロジ・トレンドを理解するために重要な先進テクノロジ

2024年8月30日

要旨

ガートナーの「先進テクノロジにおけるインパクト・レーダー」は、「スマート・ワールド (Smart world)」「生産性革命 (Productivity revolution)」「プライバシーと透明性 (Productivity revolution)」「重大なイネーブラ (実現因子) (Critical enablers)」という4つのテーマに分類されます。

企業が、先進テクノロジや最新トレンドをプロダクトやサービスに取り入れる際には、以下の点に留意することをガートナーでは推奨しています。

  1. オンラインとオフラインのエクスペリエンスが融合するスマート・ワールドにおいて、競争力を高めるために使用する
  2. 既に真の価値をユーザーに提供している、一般的でインパクトのある生成AI のユースケースを優先させる
  3. 成長の促進とリスク軽減のバランスを取る
  4. 戦略的なプロダクト・ロードマップをサポートする重要な先進テクノロジとビジネスのメリットを特定する

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4つの主要テーマ

テーマ1:スマートワールド (Smart world)

スマートワールドは、オンラインとオフラインの体験が融合することで実現される新しい世界観です。この世界では、人々、場所、コンテンツ、モノとの相互作用が根本的に変化します。これらのテクノロジにより、顧客体験の差別化や、より自然でコンテキストに応じたインタラクションが可能になります。

  • AIアバター (AI avatars):人間のような仮想のペルソナ。コンピュータで生成された画像(CGI)やさまざまなAI手法/アプリケーションを使用して作成される

  • デジタル・ツイン (Digital twins):テクノロジを活用して作成されるプロキシ。単一または集合としての物理/仮想資産、プロセス、人、組織の状態をミラーリングすることでデジタル表現を生成する

  • マルチモーダル・ユーザー・インタフェース (Multimodal user interfaces [Multimodal UI] ):ユーザーとマシンのやりとりが同時に発生するモデル

  • スマート・スペース (Smart spaces):オープン性、接続性、調和、インテリジェンスに優れたエコシステムにおいて、テクノロジによって実現されるシステムと人間がやりとりする物理環境

  • 空間コンピューティング (Spatial computing):共有された枠組みの中で物理的オブジェクトとデジタル・オブジェクトを組み合わせるコンピューティング環境

テーマ2:生産性革命 (Productivity revolution)

AIの進化、特に生成AIの登場により、生産性の大幅な向上が期待されています。これらのテクノロジは、既存の機能を改善し、新しい機能を追加し、人間の潜在能力を拡張することで、生産性の大幅な向上を実現します。

  • モデル圧縮 (Model compression):小型デバイスへの展開や中央システムの容量拡大のため、学習済みニューラル・ネットワークのサイズを縮小する一連の手法
  • 自律型無人航空機 (Autonomous unmanned aerial vehicles [UAV]):自律飛行するマシン。主に資産の検査に使用されているが、小荷物の配送にも利用され始めている
  • 生成AI (GenAI)オリジナルのソース・コンテンツから成る膨大なリポジトリから学習することで、コンテンツ、戦略、設計、手法を新たに生み出すことができるテクノロジ
  • 生成AI対応仮想アシスタント (GenAI-enabled virtual assistants [VA]):大規模言語モデル (LLM) を活用して優れた機能を提供する新世代の仮想アシスタント
  • コンピュータ・ビジョン用ビジョン・トランスフォーマ (Vision transformers for computer vision [ViTs]):画像分類、物体検出、画像生成を向上させるために、画像の一部分で画素間の関係を計算するニューラル・ネットワーク
  • インテリジェント・アプリケーション (Intelligent applications):外部の代替データ・ソースから学習するために、1つ以上のAI手法を使用するアプリケーション
  • シンセティック・データ (Synthetic data):現実世界の事象から収集されたのではなく、人工的に生成されたデータ
  • 自己教師あり学習 (Self-supervised learning):機械学習 (ML) のアプローチの一種。ラベルやフィードバックを提供するために、過去の結果データや人間のスーパーバイザーに頼ることなく、データ自体からラベル付きデータを作成する

2025年までに、生成AIは、会話型AIの80%に組み込まれるようになる (2023年の20%から増加)

出典: Gartner

テーマ3:プライバシーと透明性 (Privacy and transparency)

デジタル化の進展とAIの普及に伴い、プライバシーと透明性の問題がますます重要になっています。これらのテクノロジは、AIの採用における正しいビジネスおよび倫理的選択を確保し、人々と社会に利益をもたらすAI設計原則を適用するのに役立ちます。

  • 人中心のAI (Human-centered AI [HCAI]):人間のインプットを通じてAIが継続的に改善することを求める一般的なAI設計原則
  • 振る舞い分析 (Behavioral analytics):詐欺師、信頼できるユーザー、ボットを区別する信頼モデルを構築するために、ユーザーと保護されたサービスのやりとりを監視するセッション追跡機能
  • 責任あるAI (Responsible AI):組織がAIを導入する際にビジネス/倫理面で適切な選択を行うための多くの見地を指す包括的な用語
  • 分散型アイデンティティ (Decentralized identity [DCI]):関連する自己主権型アイデンティティ (SSI) システムと同様に、従来のアイデンティティ・システムが直面するプライバシーと透明性の課題に対処することを目的とするテクノロジ
  • プライバシー強化テクノロジ (Privacy-enhancing technologies [PETs]):基盤となる個人データを保護しながら情報の処理を可能にする、一連の堅牢なアプローチ

テーマ4:重大なイネーブラ (実現因子) (Critical enablers)

このテーマは、新たなユースケースを可能にし、既存のエクスペリエンスを強化する新たな用途に焦点を当てます。これらのテクノロジは、新しいITソリューションの可能性を生み出し、既存のアプリケーションを強化します。

  • ニューロモルフィック・コンピューティング (Neuromorphic computing):人間の脳や神経系の働きを模倣してコンピュータのコンポーネントを設計する工学的アプローチ
  • トークン化 (Tokenization):価値やデータを暗号的に安全に表現すること
  • 量子プロセッサ (Quantum processors):キュービット (量子ビットとも呼ばれ、従来のコンピューティングにおけるビットに相当するもの) で構成されるチップ
  • ハイパースケール・エッジ・コンピューティング (Hyperscale edge computing [HEC]):分散クラウド・プラットフォームを基盤とする、エッジへのパブリック・クラウド・アウト型ソリューション。ハイパースケールのパブリック・クラウド・サービスを通じて管理/制御される
  • AIチップ (AI chips):ディープ・ニューラル・ネットワークの処理に最適化された半導体デバイスの一種
  • Web3非中央集権型のWebアプリケーションを開発するための新しいテクノロジ・スタック。拡張性、分散型アイデンティティ、クロスチェーンの相互運用性のアーキテクチャを実現する
  • ブロックチェーン (Blockchain)ピア・ツー・ピアの分散、非中央集権化、不変性、暗号化、トークン化にフォーカスしたテクノロジ群
  • ナレッジ・グラフ (Knowledge graphs [KGs]):ノードとリンクのネットワークを介して異種データ間の関係を記述する、機械での読み取りが可能なデータ構造
  • LEO衛星メガ・コンステレーション (LEO satellite mega-constellations):基本的な有線接続に匹敵する遅延と速度で、世界的な通信とインターネット・アクセスを提供するテクノロジ
  • プライベート5G (Private 5G):3GPPのテクノロジと周波数帯に基づき、企業向けに接続性、最適化されたサービス、セキュリティを提供するテクノロジ
  • スケーラブルなベクトル・データベース (Scalable vector databases):ベクトル検索機能を提供する。LLMと組み合わせることで、モデルが企業やドメインに特化した情報を使用して検索に対応できるようにする

アナリストによる本リサーチについてのコメント

Tuong Nguyen,
Gartner Director Analyst

「広範囲にわたるさまざまな市場にディスラプション (破壊) を起こす可能性が最も高く、影響力の大きい先進テクノロジと最新トレンドを紹介します。プロダクト・リーダーにとっては、競争戦略の一環として、こうしたテクノロジ/トレンドを評価することが極めて重要です」

重要な3つのポイント

1

ガートナーは、先進テクノロジのインパクト・レーダーにおいて、トレンドやテクノロジを4つの主要テーマに分類している。企業は、競争力を獲得するために、これらのトレンドやテクノロジを役立てることができる


2

インパクト・レーダーは、破壊を起こすテクノロジへの投資と戦略のプランを作成する際の指針となる


3

目標を達成するには、インタフェースとエクスペリエンスの最適な組み合わせを見つけ、カスタマー・エクスペリエンスを差別化する必要がある

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Tuong Huy Nguyen
ディレクター,  アナリスト

ガートナーの先進テクノロジ/最新トレンド・チームに所属し、イマーシブ・テクノロジ (拡張現実、複合現実、仮想現実)、メタバース、SLAM、ヒューマン・マシン・インタフェースのリサーチを主導しています。先進テクノロジや最新トレンドを取り入れてプロダクトの創出と進化を成功させる方法について、テクノロジ・プロバイダーのプロダクト・リーダーにアドバイスを提供しています。

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