ブロックチェーンとは何か?

2022年4月2日

ブロックチェーンは、信頼できるデジタル環境を既に築きつつあり、いずれは、Web3とメタバースを支えるものになるでしょう。そのため、この流れに取り残されないようにする必要があります。

要約
  • ブロックチェーンは、複数の人、企業、またはコンピュータ間で、互いに認知しているかどうかに関係なく、仲介者なしに、デジタル環境での価値交換 (金融取引や、情報をはじめとする資産の交換など) を可能にする。
  • ブロックチェーンは、分散型 (デジタル) 台帳の一種である。完全なブロックチェーンでは、5つの設計要素を組み合わせて、ユーザー認証を行い、取引を検証し、後で改ざんや変更ができない方法で台帳に情報を記録する。これにより、中央に管理者を置く必要がなくなる。
  •  現在のブロックチェーン・ソリューションは、例えば、スケーラビリティという点では成熟を続けているが、最終的には新しい社会経済モデルを支えるものになるだろう。

住宅を購入したことがある方は、想像してみてください。もし、面識がない売主と直接取引ができ、さらにその取引が、後から変更したり、撤回したりできない形で確実に記録されるとしたらどうでしょうか。不動産業者、住宅ローン仲介業者、保険代理店、住宅診断士、不動産名義書換代行会社などと大量の個人情報を照合する必要がなくなるのではないでしょうか。これを実現するのがブロックチェーンです。ブロックチェーンとは、バリューチェーン (価値連鎖) におけるやりとりを直接かつ安全に結び付けて記録する1つの手段です。

上記の例は、ブロックチェーンから着想したレコード管理のシナリオにすぎませんが、さらにブロックチェーン・テクノロジの開発が進めば、人工知能 (AI) のインテリジェントな意思決定能力とモノのインターネット (IoT) のセンサ・パワーを基盤として、Web3メタバースによるピア・ツー・ピア時代にまったく新しい社会経済的構造を生み出せるようになるでしょう。

しかし、未来のブロックチェーンについて結論を出すには時期尚早です。

リサーチを読む (英語):Blockchain Technology: What’s Ahead?

ブロックチェーンとは何か?

ブロックチェーンとは、分散型デジタル台帳、暗号化、イミュータブル (不変) レコード管理、資産のトークン化、非中央集権型ガバナンスなどの既存のテクノロジや手法を組み合わせて、ネットワーク参加者によるやりとりや取引で必要とされる情報を取得して記録するものです。取引を検証および保護する銀行のような仲介者は存在しません。

記録の対象となるのは、金融取引のほか、病歴、個人情報、サプライチェーン・ロジスティクスなど、レコードに添付されるメタデータといった情報の交換の場合もあります。ブロックチェーンに対応した未来では、政府発行の個人IDが、その人の知らないところで、多数のデータベースに登録されているということは起こらないでしょう。

ブロックチェーンの主要5要素

ブロックチェーンを構成するテクノロジにより、ブロックチェーンでは以下が可能になります。

  • 匿名参加者の身元を確認する
  • 参加者が交換したい情報/資産を所有しているか検証する
  • 取引が発生可能なことを認証/承認する
  • 取引情報を台帳に記録する。台帳のコピーは、ネットワークの各ノードにより個別に更新され、保持される。

このデジタル環境では、レコード変更は不可となり、タイムスタンプ付きで暗号化され、相互にリンクされてブロックを形成します。1つのブロックで、Bitcoinの約1,500件の取引レコードが集約されます (ブロック・サイズは台帳によって異なります) 。参加者が取引するにつれて、台帳は大きくなり、1秒当たり約7件の取引が処理されます (Bitcoinの場合。時間当たりの処理件数は台帳によって異なります) 。

ブロックチェーンがもたらすビジネスの可能性

ブロックチェーンがビジネスに与える潜在的な影響は極めて大きなものです。取引相手の素性が分からず、相手が取引したいという資産を本当に所有しているか確信が持てないという理由で、現在実行していない、または実行できないすべての取引を思い浮かべてください。

無数の潜在的な取引相手、資産の種類、取引にとって、このような不確実性は問題ではなくなるのです。ブロックチェーンは参加者を特定し、取引のあらゆる要素が有効であることを確認するほか、エコシステム・ルールを適用し、参加者全員がそのルールを遵守していることを保証します。

19世紀以来、商取引において、身元の保証と法的地位の確立に使われてきた低速かつ高コストのアナログ手法は過去のものとなるでしょう。

それと同様に重要なのは、ブロックチェーンが従来の中央集権型システムで可能だった取引よりも、種類/規模の両方で、よりスピーディーにかつ多様な取引を実現する能力です。

企業は長年にわたり、商取引の実行およびリスク管理のために、決済システム、保険、配送/物流サービス、政府など中央集権型インフラストラクチャに依存してきました。しかし、そうしたシステムは、デジタル・プラットフォームが可能にするマシン・ツー・マシン取引の複雑さ、規模、スケールに対応できるようには設計されていません。

デジタル・ネットワークでは、単体データ、暗号通貨などのデジタル・ビジネス資産、リワード・ポイント、断片的な資産を、プログラマブル・エコノミーの一環として取引できます (もしくは、まもなくできるようになります)。構成単位が0.01ドルに満たない取引は、数百万~数兆単位で取引される可能性があります。一方、現行の決済システムは、一定額以下の取引をコスト効率よく、安全に処理することができません。また、現在可能な取引量を処理することもできません。

企業は、あらゆる関係者のデータを収集して価値の一部を取得する仲介者を介さずに、新しいデジタル資産とやりとりに対処するための新たな方法を必要としています。ブロックチェーンによって、こうした課題の解決が期待できます。

ブロックチェーンの仕組み

ブロックチェーンは、作成、書き込み、読み取り専用で構成される特殊なタイプの分散型台帳です。すべての分散型台帳がブロックチェーンというわけではありませんが、ブロックチェーンはすべて分散型台帳です。

完全なブロックチェーンでは、5つの設計要素を組み合わせて、ユーザー認証を行い、取引を検証し、後で参加者による改ざんや変更ができない方法で情報を台帳に記録します。また、エコシステムの非中央集権型ガバナンスの採用や、デジタル・ビジネス資産や新たな形態の通貨の作成/使用を含むプログラム可能な機能の導入を可能にします。

完全なブロックチェーン・ソリューションは確かに存在しますが、現在の企業イニシアティブの多くは、「分散」「暗号化」「不変性」という一部の要素しか含まれていません。欠如していることが多い要素は、価値交換のための「トークン化」と、コンセンサス主導のガバナンスを実現するための「非中央集権化」です。

このように不完全な、つまり「ブロックチェーンから着想した」ソリューションでも、不動産購入などの手動プロセスをデジタル化したり、保険金請求のように複数のトランザクションで情報交換を効率化したりすることで、付加価値を得ることができます。しかし、5要素が1つでも欠けている場合は、新たな収益の拡大という点では、その価値は限られてしまいます。

ブロックチェーンの主要5要素

完全なブロックチェーンとは5要素がすべて揃ったものです。

  • 分散:分散型ネットワークで接続されたブロックチェーン参加者は、ブロックチェーンのビジネス・ルールを適用するプログラムを実行しているノード (コンピュータ) を操作します。また、ノードには、台帳の完全なコピーが保存されていますが、この台帳は新しい取引が発生したときに、個別に更新されます。
  • 暗号化:ブロックチェーンは、公開鍵や秘密鍵などのテクノロジを使用して、データを安全かつ半匿名で記録します。例えば、ブロックチェーンは、Bitcoinウォレットを作成する過程で、参加者のアドレスを生成します。このアドレスは、ネットワーク参加者全員が見ることができますが、匿名性は保たれます。
  • 不変性:完了した取引は、暗号化され、タイムスタンプが押されて、台帳に順次追加されます。すべての参加者が合意しない限り、レコードは変更できません。このように合意を得た変更は「分岐 (フォーク)」と呼ばれます。
  • トークン化:価値は、トークンの形で交換されます。トークンは、金融資産、データ単位、ユーザー・アイデンティティなど、さまざまなタイプの資産を表すことができます。トークンの用途は、スマート・コントラクトを介してプログラミングできます。トークン化、つまりトークンの作成は、ブロックチェーンがデジタル・ビジネス資産を表し、取引を可能にするための方法です。
  • 非中央集権化:ノードの大部分の制御やルールの決定が一元的に行われることはありません。コンセンサス・メカニズムが取引を検証して承認するため、中央でネットワークを統制する仲介者が不要になります。非中央集権化 (およびその逆の中央集権化) は、テクノロジ、経済状態、意思決定という3つの核となる要素から構成されています。それぞれを調整することで、エコシステムに適用されるガバナンスの方法に対応することができます。

経営幹部への提言:ブロックチェーンを無視しない

ブロックチェーンは、既にビジネス手法に革命をもたらし始めていますが、CIOでさえ完全に乗り気というわけではなく、その他の経営幹部チームに至っては言うまでもありません。ガートナーの調査によると、2016年から2021年にかけて、平均して45%のCIOが、自社ではブロックチェーンにまったく関心がないと答えていました。

それでもスタートアップ企業や大手デジタル企業は、従来の中央集権型テクノロジやプロセスでは対応できない問題解決や価値創出のために、ブロックチェーンを導入しています。暗号通貨の市場は現在、約2兆ドル規模に達しており、政府や上場/非上場企業は、Bitcoinだけで約300億ドルを保有しています。

ファッション、スポーツ、消費財、音楽、ゲームなどの業界における大企業は、非代替性トークン (NFT) を使用して、オンラインとオフラインの世界の橋渡しをしています。特に、メタバースでは、ブランドの強化と、デジタル顧客とのエンゲージメントの効果向上のための手段として、NFTが利用されています。サプライチェーン分野では、FoodTrustのメンバーが300社を超えました。海運業界では、TradeLensが年間7億件のイベントと、600万件の文書を処理しています。金融サービス業界では、Depository Trust & Clearing Corporation (DTCC) が、2022年第1四半期にProject IONの株式決済ソリューションの立ち上げを計画しています。

ガートナーのハイプ・サイクルでは、ブロックチェーンが明らかに「幻滅期」から脱しつつあります。今こそ行動を起こすときです。CIOは、企業がデジタル・トランスフォーメーションの一環としてブロックチェーン・イニシアティブを加速する必要があるという事実や、永久に競争力を失うほど遅れを取るリスクについて、取締役会、CEO、ビジネス・リーダーに向け注意を喚起し、情報を提供すべきです。

参考文献 (英語):「The Real Business of Blockchain: How Leaders Can Create Value in a New Digital Age」デイビッド・ファーロンガー (David Furlonger)/クリストフ・ウズロー (Christophe Uzureau) 共著

関連コンテンツ

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

ビジネスを成功に導くガートナーのサービス

ガートナーのエキスパートから提供する、確かな知見、戦略的アドバイス、実践的ツールにより、ミッション・クリティカルなビジネス課題の解決を支援します。

Get Smarter

Gartner Webinars

Gartner Webinars

ガートナーのエキスパートから、さまざまな分野における最新の知見をご紹介

ガートナー コンファレンス

ニュースレター「Gartner News」へご登録ください

「Gartner News」はITの各分野を幅広くカバーした「皆様のビジネスとITを成功に導く情報」をお届けいたします。

ご登録のEメールアドレス宛てに、最新リサーチ情報、コンファレンス開催情報などをお届けいたします。

Gartner Articles

さらに Gartner Articles を表示する