生成AIを使用すべきでないケースとは?

2024年8月17日

要旨

生成AIの誤用は組織におけるAIの価値を損なう

ガートナーの調査によると、過去1年間で生成AIの採用が爆発的に増加し、事業部門だけでなく組織全体で最も展開されているAI技術の1つであることが明らかになりました。これは、生成AIが日常的な業務改善から画期的なビジネス革新まで、幅広い可能性を提供しているためです。

しかし、生成AIは万能ではありません。生成AIはより広範なAIの分野の一部に過ぎず、ビジネス上の問題に対処するには異なるAIテクニックを組み合わせる必要に迫られる場合が多くあります。しかし、組織が生成AIに近視眼的に注力し続けていると、他のAIテクニックは軽視される可能性が高くなります。

そのため、生成AIだけに注目し、他のAI技術を検討しない企業は、AIプロジェクトの失敗が多くなり、AIの機会のほとんどを逃す恐れがあります。

本記事では、こうした失敗を避けるために、生成AIが自社のユースケースに適していない場合や、代替となるAI技術を検討すべき場合、生成AIを代替となるAI技術と組み合わせるべき場合を判断できる生成AIを活用すべきケース、代替のAIテクノロジを使用すべきケース、生成AIと他のAIを組み合わせるべきケースについて、それぞれ解説いたします。

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生成AIが自社のユースケースに適しているかを判断する

  • 生成AIモデルを使用するかどうかは、ユースケースごとに決定します。まずは、検討中のAI技術にかかわらず、ユースケース自体に価値があり、実現可能であるかを見極めます。これが重要なのは、一部のユースケースはAIに最適ではなく、さらに検討するメリットもないからです。
  • ユースケースに優先順位を設定したら、下記に示す関連ユースケース群と照らし合わせて、自社のユースケースに対する生成AIモデルの相対的な有用性を把握します。
    • 生成モデルの有用性が高い:コンテンツ生成、会話型ユーザーインターフェース、情報や知識の発見
    • 生成AIモデルの有用性は中程度である:セグメンテーション/分類、レコメンデーション・システム、認識、インテリジェント・オートメーション、異常検知/監視
    • 生成AIモデルの有用性は低い: 予見/予測、計画、意思決定インテリジェンス、自立システム(自立走行車、先進ロボティクス、ドローン)
  • 生成AIが自社のユースケースに適していない一般的な理由は、生成AIに伴うリスクを許容できず、またそのリスクを効果的に軽減できないからです。生成AIに特有のリスクとしては、出力の信頼性の欠如、データ・プライバシー、知的財産、法的責任、サイバーセキュリティ、法令遵守などが挙げられる。こうしたリスクは、ユースケースごとに検討する必要があります。

生成AIの代替となるAI技術を検討する

  • 生成モデルの有用性が高くないユースケースには代替となるAI技術を検討します。 
  • 検討すべき既存の確立されたAI技術には、非生成的ML、最適化、シミュレーション、ルール/ヒューリスティック、ナレッジ・グラフなどがある。コーザルAI (因果関係を特定して活用するAI)、ニューロシンボリックAI、FPAI (第一原理に基づくAI)などの先進的な技術も追跡する価値があります。
  • まずは、代替となるシンプルなAI技術を試すのがよいでしょう。なぜなら、リスクとコストが低く、理解も容易だからです。

“生成AIという「ハンマー」しか持っていなければ、すべてが生成AIのユースケースという「くぎ」のように見える”

生成AIモデルを他のAIテクニックと組み合わせる

  • AIテクニックは相互に排他的なものではありません。最も高度なAIシステムは通常、AIツールをバランス良く組み合わせてテクニックを補完し、精度や透明性、パフォーマンスを向上させながらコストを削減してデータの必要性を低減させることを目指しています。
  • 生成AIモデルと他のAIテクニックを組み合わせることは、極めて強力な手段となり得ます。
  • AIテクニックの組み合わせの可能性は無限に存在します。次に、前述した5つの代替となるAI技術(非生成的ML、最適化、シミュレーション、ルール/ヒューリスティック、ナレッジ・グラフ)と生成AIモデルを組み合わせる典型的な方法をご説明します。

生成AIと他のAI技術との相乗効果

  • 非生成的MLと生成AIモデル

潜在的なユースケース:セグメンテーション/分類、シンセティック・データ、コンピュータ・ビジョン

  • 最適化/検索と生成AIモデル

潜在的なユースケース:LLMなどの生成AIモデルを使用して従来のエンタプライズ・サーチを拡張し、より会話的なインタフェースを実現

  • シミュレーションと生成AIモデル

潜在的なユースケース:建築設計、材料設計、創薬、天気予報といった用途に関して、通常であればコストや時間がかかりすぎて実行できないシミュレーションを実施

  • ルール・ベースのシステムと生成AIモデル

潜在的なユースケース:チャットボット、ロボアドバイザー、特殊な自然言語生成

  • グラフと生成AIモデル

潜在的なユースケース:ナレッジ・マネジメント、検索拡張生成

アナリストによる本リサーチについてのコメント

Leinar Ramos
Gartner Senior Director Analyst

「適切なAIテクニックを組み合わせる能力を備えている組織は、精度や透明性、パフォーマンスが高く、コストを削減し、データの必要性を低減させるAIシステムを構築できる独自の立場にある。」

重要な3つのポイント

1

生成AIを巡るハイプ (過剰な喧伝) により、適さないユースケースに生成AIを使用してしまい、AIプロジェクトが複雑化したり、失敗したりするリスクが高まる恐れがある。


2

生成AIに必要以上に注目することで、代替となるさまざまなAI技術を軽視し、AIの潜在的なユースケースの大半には、確立されたAI技術の方が適していることを見逃してしまう可能性がある。


3

AI技術は相互に排他的なものではなく、多くの場合、組み合わせることでシステム全体を強化できる。

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Leinar Ramos
シニア・ディレクター,  アナリスト

生成AIを専門とし、またAI、アプリケーション、その他の領域のITリーダーに対し、AI (人工知能) に関する重要な経営優先課題についてアドバイスを提供しています。

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