「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2021年」で浮かび上がる3つのテーマ

2021年10月19日

2021年の先進テクノロジのハイプ・サイクルに掲載する25の先進テクノロジに、NFT (非代替性トークン)、デジタル・ヒューマン、物理学に基づくAIが加わりました。

2021年の初めに、クリスティーズはオークション・ハウスとしては初となる2つの大きなニュースを発表しました。それは、暗号通貨での支払いを受け入れること、そして唯一無二であることを証明するNFT (非代替性トークン) を用いた完全なデジタル作品の販売を取り扱うことでした。

実際に、デジタル・アーティストのBeeple氏による作品は、6,900万ドル以上で落札されました。これは、まったく新しい収益化の一手段であり、これまでにない新たなデジタル・エコシステムを形成する可能性を秘めています。

NFTは、ブロックチェーン・ベースの代替不可能なデジタル資産であり、デジタル・アートやデジタル・ミュージックのような現実世界の資産のほか、住宅や自動車のようなトークン化された物理資産に結び付けられるものです。デジタル・アートの場合、NFTは来歴、所有権、アクセスを証明します。NFTは不変のパブリック・ブロックチェーンを使用しており、市場評価額は7月の時点で3億ドルを超えました。

詳細を見る (英語): 2021-2023 Emerging Technology Roadmap

また、NFTは、ガートナーの「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2021年」に追加されたテクノロジの1つでもあります。このハイプ・サイクルは、今後2~10年間にビジネスや社会に最も大きな影響を及ぼす25の画期的なテクノロジを紹介するものです。

今すぐ視聴 (英語):Behind the Research: The Gartner Hype Cycle

アナリストでバイス プレジデントのブライアン・バーク (Brian Burke) は、次のように述べています。「画期的なテクノロジが次々と登場し、最も革新的な企業でさえも追随するのが困難な状況です。デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションに重点を置く企業は、変化を加速させる必要があり、先進テクノロジを巡るハイプ (過熱状態) に惑わされるべきではありません」

今年のテクノロジは、トランスフォーメーションのメリットを生み出す可能性や、幅広い影響をもたらす可能性を基準として選ばれ、以下の3つの主要なテーマに分類されています。

  1. 信頼を構築する
  2. 成長を加速する
  3. 変化を形作る

テーマ1:信頼を構築する

ITチームが、テクノロジによって実現するビジネス・トランスフォーメーションを効果的に主導するには、信頼できるビジネス基盤を構築する必要があります。信頼 (トラスト) にはセキュリティと信頼性 (リライアビリティ) が求められますが、その基盤は、再現性があり、実証済みのスケーラブルで革新的なものでなければなりません。それは、ITがビジネス価値を提供するための回復力のあるコア/基盤を確立します。

例えば、サービスとしてのリアルタイム・インシデント・コマンド・センターは、さまざまなソースからの情報を融合させることで、組織の状況認識を向上させます。通常、緊急応答機関では、どちらかと言えば手動で、緊急指令室のデータベース、センサ、ビデオ、通信システムを統合しています。

しかし、これを「サービスとして」提供することで、指令室のリアルタイム機能が簡素化されます。当初関心が持たれたのは、犯罪撲滅を目指す次世代のリアルタイム・センターの創設でしたが、そのユースケースは、山火事の管理、自然災害、特殊な事象のほか、そして特に今まさに必要とされているパンデミック対応にまで拡大しています。

このテクノロジに伴う大きな課題は、機関相互に求められる協力の大きさです。対象データ (データベース、無線通信、IoT、一斉通知、ナンバープレート・リーダー、位置情報トラッキング) はすべて、通常、別々の機関が所有しています。それでも、サービスとしてのリアルタイム・インシデント・コマンド・センターは、緊急時応答を向上できる可能性があります。

詳細を見る (英語):Data Fabric Architecture is Key to Modernizing Data Management and Integration

「信頼を構築する」のテーマに分類される先進テクノロジとしては、ほかにも、ソブリン (主権) クラウド、準同型暗号、データ・ファブリックなどがあります。

テーマ2:成長を加速する

信頼できるビジネス基盤が確立されたら、ITリーダーやCIOは、自社の成長を促進するイニシアティブに注力する必要があります。それはつまり、テクノロジ・リスクとビジネス・リスク許容度のバランスを取り、短期間で達成できる企業の成長目標を設定するということです。

人間をデジタル・ツインで表現する「デジタル・ヒューマン」について考えてみましょう。このテクノロジは、ライセンス付与されたペルソナによって新しい収益源を生み出せる機会をもたらします。アバターやヒューマノイド (人型) ロボットのほか、チャットボットやスマート・スピーカーといった会話型ユーザー・インタフェースの形式になる可能性があります。そのような対話型かつAI主導の表現体は、会話型UI、CGI、3Dリアルタイム自律型アニメーションなどのさまざまなテクノロジにサポートされ、見た目や振る舞いが「人間のように」なります。

こうしたヒューマノイド・テクノロジのユースケースが多く見られるのは、人事トレーニング、コミュニケーション、医療、顧客サービスなどです。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) は、テクノロジの可能性を押し広げ、非接触のエクスペリエンス、社会的孤立の解消、高齢者の介護を可能にしています。デジタル・ヒューマンは、映画に出演したり、コンファレンスでパフォーマンスを披露したり、ブランドのインフルエンサーとして活動したりしています。デジタル・ヒューマンの課題としては、テクノロジが未熟であることに加え、社会的な障壁や倫理的な懸念が挙げられますが、ビジネスに影響を与え差別化を実現する可能性があることから、このテクノロジの追求へと動いている組織も存在します。

「成長を加速する」のテーマに分類される先進テクノロジとしては、ほかにも、マルチエクスペリエンス、インダストリ・クラウド、量子機械学習などがあります。

テーマ3:変化を形作る

変化とは本来、破壊的なものです。重要なことは、ディスラプション (破壊) を認識し、そのシフトを形作るテクノロジを受け入れ、カオス (混沌) に秩序をもたらすことです。リスクを軽減するには、変化を予測しそれに対応する必要があります。

例えば、物理学に基づくAI (Physics-Informed AI: PIAI) とは、物理的および科学的に健全なAIモデルを構築できるAIです。PIAIは、気候や環境問題のように、その規模からモデル化するのが難しい複雑なシステムをより効率的にモデル化するための選択肢として、特に関心を集めています。

詳細を見る (英語):How to Make AI Trustworthy

従来のデジタルAIモデルは、学習したデータの範囲を超えて汎用化させることができないため、適応性に限界がありました。PIAIは、状況や物理的な製品をより信頼性の高い形で表現します。COVID-19は非常に脆いビジネスモデルの脆弱性を顕在化させました。PIAIは、システムが稼働する環境/状況を柔軟に表現し、開発者がより適応性の高いシステムを構築できるようにします。また、広範なシナリオにおいても信頼できる、堅牢で適応力のあるビジネス・シミュレーション・システムを構築することも可能になります。

「変化を形作る」のテーマに分類される先進テクノロジとしては、ほかにも、コンポーザブル・アプリケーション、コンポーザブル・ネットワーク、インフルエンス・エンジニアリングなどがあります。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

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