- 多数派の考えとは相反しているが、暗号通貨とこれを運営するブロックチェーンは、従来型の決済ネットワークよりも安全である。
- 今後わずか3年で、暗号通貨の窃盗とランサムウェアへの支払いが30%減少するとガートナーでは予測している。
- このようなポジティブな変化は、「ブロックチェーンの透明性」「ブロックチェーン・インテリジェンス市場の出現」「政府の関与」「VASP (仮想資産サービス・プロバイダー) による保護」という4つの特徴に大きく起因している。
2022年2月3日
通説とは違い、暗号通貨は匿名の犯罪者にとって安全な隠れ蓑ではありません。実際のところ、スマートなアナリティクスを装備しているブロックチェーンでは、金銭がどのような迂回路を通ろうとも、従来型の決済ネットワークよりも簡単に痕跡を追うことができます。とはいえ、自己ホスト型ウォレットが利用されている場合は特に、さまざまなブロックチェーン・アドレスを使って盗んだ資金を動かしている犯罪者の身元を特定することは当面難しいと言えます。
ガートナーは、先日発表した「Predicts 2022: Prepare for Blockchain-Based Digital Disruption」において、「犯罪者によるブロックチェーン・ネットワークからの資金の移動および支払いが困難になるため、2024年までに、暗号通貨の窃盗やランサムウェアへの支払いは30%減少する」と予測しています。この根拠は次に述べる4つの進化した特徴に起因しています。
今すぐダウンロード (英語):What the Future of Blockchain Means for You
透明性の高いブロックチェーンは、サイロ化された従来型の決済システムに比べ、犯罪的な決済の追跡が大幅に容易なプラットフォームです。現在、全ブロックチェーンの時価総額の約99%は、約23のブロックチェーンで占められています。言い換えれば、数千もの企業システムや決済ネットワークではなく、わずか23の完全に透明性の高いプラットフォームに、効果的なブロックチェーン不正対策システムを統合する必要があるということです。
難しいのは、何ら特徴のないブロックチェーン・メタデータを意味のある情報に変換し、データにリアルタイムの機械学習と分析を適用することです。しかし、これがうまくいけば、インテリジェンスによってブロックチェーン・プラットフォームのすべてが即座に確認され、犯罪の疑いのある決済とアドレスを追跡し、頻繁に繰り返される異常な資金の動きのパターンを特定することができます。
Chainalysis、CipherTrace (Mastercard)、Elementus、TRM Labsといったベンダーは、ハッキング調査のためにフォレンジックを必要とする捜査当局に知見を提供しています。取引所やDeFiプロトコルでは、このようなベンダーのソフトウェアを使って不正を防止するケースが増えています。
今こそ、このような不正防止ツールを民主化して個々のユーザーが直接取得できるようにし、犯罪者のアドレスに送金する前に、事前に警告を受け取れるようにすべきです。不正防止ツールの民主化は、「ユーザー自らが自らの銀行となる」というWeb3ファイナンスの精神に基づいています。しかし、ここには難題があります。それは、「犯罪者がツールをリバース・エンジニアリングし、今後資金を窃取する際に検知/防止ツールの回避方法を解明できないよう、ツールを不透明な状態で保つにはどうすればよいか」ということです。
詳細を見る (英語):The CIO’s Guide to Blockchain
各国の政府・機関は、急速に進歩しているブロックチェーン・インテリジェンスと不正防止ツールの採用を進めているだけではなく、犯罪目的での暗号通貨の使用をさらに困難にすべく、本腰を入れています。ガートナーのレポートに記載されている実例を紹介します。
つまり、犯罪者が暗号通貨関連の強盗を行うこと、そして盗んだ資金を暗号通貨ネットワークから移動させることがますます困難になっています。例えば、TRM Labsは、最近発生したBadgerDaoへのハッキングを調査し、「ハッカーの手口が、取引所に口座を開設する際に不正な本人確認書類を使用しただけであったとしても、 (中略) 最終的に当該ハッカーの匿名性にとって致命傷となる可能性が十分にある。現時点で、ハッカーは1億2,000万ドル相当額をはるかに超える資産を盗んでBitcoinやEthereumに換金している」と捜査当局に報告しています。
結局、BadgerDaoへのハッカーは、Polygon Networkへのハッカーと同じ運命をたどり、盗んだ資金の大半を返還することになるかもしれません。というのも、ブロックチェーンからの資金の移動は逮捕に結び付くリスクが高いためです。
ブロックチェーン・ネットワークが犯罪の温床だとするのは通説にすぎません。政府間組織である金融活動作業部会 (FATF) が2021年7月に発行した報告書によると、暗号通貨の交換を含め、仮想資産サービス・プロバイダー (VASP: Virtual Asset Service Provider) 経由での取引が犯罪に巻き込まれる可能性は、自己ホスト型ウォレットや非VASP経由での取引に比べて著しく低くなっています。
将来的に、透明性が高く十分に保護された比較的少数のブロックチェーン・ネットワークよりも、有り余るほど存在する不透明なレガシー決済ネットワーク上において窃盗が進行し、犯罪者はマネー・ロンダリングによる資金を楽に動かせるようになる、と考えて間違いありません。
【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/
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