ガートナーの2024年以降の戦略的展望トップ10

2024年2月18日

要旨

2024年の展望が、自身の考え方と戦略プランにどのように影響があるかを理解する

AIの位置付けが、単なるツールから「コラボレーター」「クリエーター」へと移行しています。ガートナーが毎年発表している戦略的展望トップ10は、IT部門内外のテクノロジに精通した未来志向の経営幹部がそうしたAIの影響を検証する上で役立ちます。ここで紹介する展望を検討する際には、プランニングの仮説事項と同様に、各展望について時間軸を決め、短期的な指標を評価し、展望の実現可能性が高いか低いかを見極める必要があります。

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セクション1:生成AIは、個人的にも職業的にも、人を向上させ、より強力にする

  • 個人は、より優れた履歴書/レポート/業務成果物を作成し、他者とのやりとりを改善するために、生成AIを利用できる。2026年までに、労働者30%が、デジタルの「カリスマ・フィルタ」を活用して実力以上に自分を良く見せることで、以前は実現できなかったキャリアアップを達成する

  • 生成AIは労働力全体のアウトプットを高める可能性があるため、大規模で安価な労働力を持つ国が顕著な優位性を持たなくなる。2027年までに、AIの生産性の価値は、主に従業員の生産性が広範囲にわたって向上することにより、国力を示す主要な経済指標として認識されるようになる

  • 生成AIは、幅広い年齢層、さまざまな学歴や民族的背景、ニューロダイバージェント (神経学的に多様) な人材を含む労働力の多様化を促進する上で役立つ。2027年までに、Fortune 500企業の25%は、ニューロダイバージェントな人材を積極的に採用し、業績を向上させる

セクション2:企業は自らの最も悪い特性を、よりうまく克服できるようになる

  • コンピュータへの給電のため、電力のニーズが急速に拡大している。生成AIは、エネルギーのコストと可用性を増幅させる。2026年までに、G20加盟国の半数が、月ごとの電力の供給制限を経験し、エネルギーを意識したオペレーションは競争優位性になるか、もしくは重大な失敗のリスクとなる
  • 生成AIは、近代化プラン、リファクタリング・プラン、テスト/検証など、近代化の取り組みをスピードアップさせる能力を提供する可能性がある。2027年までに、生成AIツールは、レガシー・ビジネス・アプリケーションの説明と適切な代替ソリューションの創出に使用されるようになり、近代化コストを70%削減する

  • 労働力をロボットで補うことでビジネスの成長を促進できるが、そのためにビジネスのオペレーションを変革する必要が生じる。2028年までに、労働力不足により、製造、小売、物流業界においてはフロントライン・ワーカーよりもスマート・ロボットの方が多くなる

  • マシン・ワーカーとマシン・カスタマーが増え、ビジネスの主要オペレーションの見直しが求められるようになる。2026年までに、大企業の30%は、急成長するマシン・カスタマー市場にアクセスするために、専任のビジネス部門や販売チャネルを設けるようになる

セクション3:新たな脅威が、新たな責任とコミュニティを生み出す

  • 生成AIが大きな機会をもたらしているが、その一方で悪意ある情報が新たな脅威ベクトルとなっている。2028年までに、悪意ある情報の対策に企業が投じる支出は300億ドルを超え、マーケティングとサイバーセキュリティの予算の10%が流用される
  • CEO (最高経営責任者) は、悪意ある情報の課題に全社的に取り組むため、CISO (最高情報セキュリティ責任者) のような特定の担当幹部の権限を強める必要がある。2027年までに、CISOの権限の45%が、規制の圧力やアタック・サーフェス (攻撃対象範囲) の拡大によって、サイバーセキュリティ以外の分野にまで拡張する

  • 労働組合はこれまで、企業よりも人を優先して保護するよう、組織や政府に圧力をかけてきた。2028年までに、生成AIの採用が動機となり、ナレッジ・ワーカーの組合加入率は1,000%上昇する

アナリストによる本リサーチについてのコメント

Daryl Plummer, Distinguished VP Analyst and Gartner Fellow

「大規模言語モデル (LLM) を生かした幅広い生成能力への期待が高まり続けています。しかし、そうした期待とは裏腹に、健全な懐疑心やリスクに関する懸念も生じています。ここで紹介した2024年の展望からは、生成AIの応用に無限の可能性があることが示されています。実際のところ、生成AIを抜きにして、もはや戦略的な議論は成り立ちません」

重要な3つのポイント

1

戦略プランのベースとなるプランニング仮説事項として、ガートナーの展望を活用する


2

短期的な指標を評価し、展望の実現可能性が高いか低いかを見極める


3

時間軸の長い展望は、時間軸の短い展望よりも的中する可能性が低いと考える

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Daryl Plummer
アナリスト, ディスティングイッシュト バイス プレジデント兼ガートナー フェロー

リサーチでは、クラウド・コンピューティングの戦略的課題、デジタル・ディスラプションのほか、予測/トレンド/進化するデジタル・ビジネス・サイクルを通じて未来を明らかにすることに注力しています。

テクノロジ&サービス・プロバイダー組織のチーフ オブ リサーチとして、ゼネラル・マネージャー、プロダクト・マネージャー、プロダクト・マーケティング担当者、Tech CEOの4つの役割に関するリサーチの監督支援を行っています。この任務では、エンジニアからCEOや取締役会に至るまで、テクノロジ・プロバイダーの重大な問題を解決し、主要な問いに答えるためのリサーチの進展とその推進を担っています。また、クラウド・コンピューティングのチーフ オブ リサーチも務めているほか、クラウドに関する多数の戦略的トピックに取り組むプライマリ アナリストでもあります。リサーチでは、市場トレンド、予測、クラウド・ベンダー情勢、クラウド・ソーシングのシナリオなど、クラウド・サービス市場に幅広く注力しています。

パブリック・クラウド、プライベート・クラウド、ハイブリッド・クラウドなど、クラウドを活用したさまざまなユースケースを追跡しており、分散型クラウド・コンピューティングに関するトピックの発案者でもあります。クラウド戦略とその進化に対応するには、かつてないスピードでクラウド・イノベーションを生み出しているテクノロジ/サービス・プロバイダーの戦略に照らして、エンドユーザーのシナリオがどのように進化しているかを理解する必要があります。

Daryl Plummerは、変化が起こっている最大のセグメントを牽引する主な現象についての見通しを示します。

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