- スピード、レジリエンス、アジリティなどのビジネス成果の最適化につながるクラウド戦略を策定する。
- 分散クラウドを取り入れて、ハイブリッド・クラウド・アーキテクチャを実現する。
- 社内でパブリック・クラウドのスキルアップを図るとともに、人材不足を解消するための創造的なリクルーティング戦略を検討する。
2022年4月28日
急速に変化する予測不可能な経済状況に対応するために、クラウド・サービスの柔軟性と拡張性がビジネスに必要です。こうした理由から、今日ほぼすべてのIT部門でパブリック・クラウドが利用されるようになっています。しかしながら、ビジネス成果をもたらす最適な方法でパブリック・クラウドが利用されているケースはほとんどありません。
ガートナーのアナリストでシニア ディレクターのポール・デロリー (Paul Delory) は、次のように述べています。「パンデミック期間中に、クラウドの採用が一気に加速しました。そして、今後数年でさらに加速するでしょう。賢明なビジネス・リーダーは、クラウド・サービスを利用して、ビジネス機会、あるいは脅威に素早く対応しています。クラウド・コンピューティングの活用を成功させている企業は、競争を優位に進めることができ、それが企業の存続を左右する可能性もあります」
今すぐダウンロード (英語):Build a Strategy to Maximize the Benefits of Cloud Computing
2022年にはテクノロジの新たな進歩によって、クラウドの導入環境が改善し、これまでは不向きであったユースケースにもクラウドを利用できるようになっています。IT部門は、クラウド・コンピューティング戦略の構築、実装、成熟化を図るために、以下の6つのステップを考慮する必要があります。
今日の不確実性の高いビジネス環境では、競合他社よりも先に機会をつかむために、迅速に行動を起こせるようにする必要があります。クラウド・サービスは、ビジネスのアジリティを向上させ、結果として成功の可能性を高める重要な役割を果たします。
インフラストラクチャとオペレーション (I&O) のプロフェッショナルは、技術的なアーキテクチャを完成させることに注力するあまり、より重要な「最短時間で最大のビジネス価値を提供する」という点に対する意識が希薄になることがよくあります。まず、以下の3つの主要なCIO優先課題にクラウド戦略を結び付けることから始めましょう。
詳細を見る (英語):The Cloud Strategy Cookbook
ほとんどの組織は、サービスとしてのインフラストラクチャ (IaaS) やサービスとしてのプラットフォーム (PaaS) を提供する、少なくとも1つの主要なパブリック・クラウド・プロバイダーを全面的に業務で利用しています。今後多くの組織は、アプリケーションに関する他のユースケースのために、クラウド・プロバイダーの追加を検討するようになるでしょう。マルチクラウド戦略にすることで、柔軟性が高まりますが、複雑さとコストも増大します。
マルチクラウドの複雑さとコストに対処するには、クラウド・ワークロードを配置するための戦略を策定する必要があります。優先するプライマリ・プロバイダーを選定し、そのプロバイダーでは対応できないビジネス要件がある場合は、具体的なビジネス・ニーズに合わせてプロバイダーを適切に追加します。また、クラウド・ワークロード配置フレームワークを開発して、ビジネス・ニーズと、それに対応する最適なクラウド・プロバイダーを結び付けます。
ランサムウェアのほか、パンデミックに伴って繰り返される組織の混乱や、その他の自然災害/大災害など、サイバーセキュリティの脅威の発生頻度が高まっていることから、ITレジリエンスがこれまで以上に注目されています。レジリエンスは、ビジネスの差別化要因になります。競合他社で遅延やダウンタイムが発生する中でビジネスを継続できれば、プロダクトの優位性を示すITサービス機会が生じたことになります。
信頼性については以前からオペレーション担当者が責任を負っており、オペレーション担当者はディザスタ・リカバリ機能をインフラストラクチャに組み込むことで信頼性を確保していました。しかし、信頼性の確保は、次第にアプリケーション・コード自体の機能になってきています。2025年末までに、企業の30%は、ITレジリエンスに特化した新たな役割を確立し、エンド・ツー・エンドの信頼性、許容性、回復性を少なくとも45%向上させるとガートナーは予測しています。最新のITレジリエンスを取り入れるために、個々のサービスの継続性ではなく、レジリエンスの高いアプリケーション・アーキテクチャへと重点をシフトさせる必要があります。
IT部門がプライベート・クラウドやハイブリッド・クラウドを構築する理由としては、規制要件、データ・グラビティ、レガシー・インフラストラクチャの機運、スタッフのスキルセットの限界、プロジェクトの納期など、さまざまな要因が挙げられます。しかし、プライベート・クラウドのプロジェクトは、複雑で管理が難しいことから、多くの場合、失敗に終わります。組織はハイブリッド・クラウドやプライベート・クラウドに対し、パブリック・クラウド同様の使いやすさ、サービス利用、統合の機会を求めますが、そうした期待が満たされることはほとんどありません。
分散クラウドは、このミスマッチを解消するソリューションとなります。分散クラウドを導入することで、管理スキーマを変えることなく、同じネイティブ・パブリック・クラウド・サービスをローカル・インフラストラクチャに拡張できます。そうしたクラウド・サービスが各地に分散されると、従来のパブリック・クラウド利用の優位性を保ちつつ、ハイブリッド・クラウドやプライベート・クラウドのニーズに対応できるようになります。
当初、パブリック・クラウドIaaSは仮想マシンでのみ提供されていましたが、最近ではコンテナやサーバレス・コンピューティングなどの新しい仮想化手法が根付きつつあります。クラウド・コンピューティングの原則がアプリケーション開発やインフラストラクチャ・オペレーションに広く組み込まれると、コンテナやサーバレスがコードのデプロイ手段として注目されるようになるでしょう。
クラウド・ネイティブ・アーキテクチャで設計されるアプリケーションには、より高度なサービス・ディスカバリ、プログラマビリティ、自動化、可観測性、堅牢なネットワーク通信、セキュリティが求められます。コンテナやサーバレス・コンピューティングであれば、アプリケーションの実際の要件に合わせてリソース消費量を柔軟に調整できるため、結果として、インフラストラクチャのアジリティ、自動化、効率性、コスト最適化が改善します。
パブリック・クラウドは新しいインフラストラクチャとは言えなくなりましたが、増大するクラウド・サービスへのニーズに対応できるほどI&Oテクニカル・プロフェッショナルがクラウドのスキルを身に付けているわけではありません。スキル不足は、クラウド・プロジェクトの遅延や縮小につながり、イノベーションを阻害する恐れがあります。スキルを持つ人材の採用がますます困難になる中、IT部門は、社内でパブリック・クラウドのスキルアップを図る必要があります。
IT部門内で必要とされるスキルの開発と必要な役割の育成を目的に、タレント・イネーブルメント・プログラム (TEP) を構築することを検討できます。TEPは、組織が必要とするスキルの定義や、リクルーティング活動の推進のほか、向上/獲得の必要がある最も重要なスキルをテクニカル・プロフェッショナルに指定するのに役立ちます。
クラウドのスキル不足を解消する創造的な方法も検討します。例えば、既存のクラウド実践コミュニティに目を向けて、クラウドを担当する候補者を社内で募集することができます。クラウド担当になることを希望する従業員をクラウド・プロバイダーのトレーニング・コースに参加させ、最終的にはプロジェクト・ベースでOJTトレーニングの機会を与えるという方法もあります。ペアリングも、クラウドのスキルアップに有効な方法です。社内の従業員をクラウド・アーキテクトとして独り立ちさせることを目指して、クラウドのスキルを持つ外部のクラウド・アーキテクトと、クラウドのスキルはまだないものの一般的なアーキテクチャについては確かなスキルを持つ従業員をペアにします。
【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/
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