デジタル技術への投資によってビジネス成長を加速させるための4つのポイント

2022年12月18日

ガートナーの調査では、デジタル技術への投資に対する価値実現について、半数以上が経営幹部の期待値を下回っているという結果が出ています。ここに示す4つのステップを通じて、投資のインパクトを拡大することができます。

ポイント

  • テクノロジ投資から売り上げや最終利益の面でメリットを得られることへのCEOの期待値はますます高まっている。
  • デジタル化の「配当」を提供するということは、これまで人や機械では成し得なかったレベルまで、成長を加速させることを意味する。
  • デジタル化の「配当」を提供するにはまず、目標とする財務面の成果を把握する。次に、企業全体へのインパクトという面でデジタル化を検討し、デジタル人材を優先度の高いプロジェクトに配備してインパクト実現までの時間を短縮し、いつもの顔ぶれ以外で通常の人材不足を補う。

CEOは遅くとも2018年以降、ビジネスのデジタル化や情報テクノロジへの投資を拡大してきました。しかし、昨今の経済的な逆風を受けて、投資への効果を得られずにしびれを切らしつつあります。つまり、テクノロジへの投資によって売り上げや最終利益にもたらすメリットを、今すぐ確かめたいと望んでいます。CIOにとって大変悩ましいのは、その具体的な成果を示すことが極めて困難である点です。しかしながら、以下の4つのアクションを実行することで成果を示すことが可能になります。

ITがビジネスにもたらす価値を実証することは、多くのCIOにとって依然として悩みの種になっています。これは、ガートナーが絶えず顧客企業から助言を求められていることからも明らかです。現在のような厳しい経済状況では、CEOからの要求はさらに厳しくなっており、テクノロジ投資から得られる個別的または間接的なメリットだけではなく、企業全体が手にするデジタル化の「配当」を証明することが求められています。

デジタル化の「配当」とは何か?

CEOが期待しているのは、これまで人や機械では成し得なかったレベルまで、デジタル技術によってビジネスの成長を加速させることです。ガートナーではこれを、デジタル化の「配当」と呼んでいます。デジタル化の「配当」は、高度なデジタル・テクノロジによって物理世界を増強することで発生します。以下に例を挙げます。

  • 物理資産をデジタル化して、スマート・プロダクト/サービスを構築する
  • 対話チャネルをデジタル化する (モバイル・アプリやE-Commerceなど)
  • タッチレス・インタフェースによって、「顧客への請求」などのビジネス機能をデジタル化する

デジタル戦略は、現在のような景気後退時には特に重要になります。CEOは、売り上げと最終利益へのインパクトという形で、デジタル化の「配当」がすぐにでも得られることを望みます。しかし多くの組織はいまだに、ビジネスやミッションにおいての「デジタル化」の意味を解読している段階にあります。

デジタル化の「配当」を実現するためにCIOが対応すべき4つの緊急課題

CIOは、デジタル化の「配当」を実現するために、4つのステップをたどる必要があります。1つ目は、どのような財務面の成果が期待されているのか、正確に理解することです。

ステップ1:適切なデジタル・イニシアティブを優先する

ガートナーが実施した調査によると、現在、多くのデジタル・イニシアティブが実施されていますが、経営幹部が期待しているデジタル化の「配当」については、その期待値を下回っているとの回答が半数以上です。そのほとんどは、イニシアティブの完了または価値の実現 (あるいはその両方) に時間がかかりすぎています。

最も大きな障壁は、連携に欠ける行動、人材不足、変化への抵抗、リーダーシップの問題など、人員や組織の課題と関連しており、これらは人材不足によってさらに悪化しています。CIOがこうした障壁を克服し、イニシアティブを促進して、企業の財務に最大のインパクトをもたらすには、協力関係を築き上げる必要があります。

売り上げや最終利益への潜在的インパクトに基づいて、進行中のイニシアティブに優先順位を設定します。優先すべきプロジェクトのリソースを確保するには、インパクトの小さいイニシアティブを中止する覚悟も必要になります。

ステップ2:成果に基づく評価指標の階層を作成する

デジタル化のメリットを実現するには、説明責任が鍵となります。しかし多くの組織は、進捗や達成度を監視するための、目に見える明確な評価指標を有していません。こうした評価指標がないと、結果が不十分であった場合に、リーダーが責任を回避できてしまいます。

CIOはまず、ビジネス・パフォーマンスに根差した評価指標を特定し、説明責任を担う適切なリーダーと協力して、「改善」の意味とその測定方法を確認すべきです。例えば、CEOの目標が「利幅の改善」である場合、CIOはカスタマー/市民エクスペリエンスの向上に焦点を絞ったイニシアティブを優先させます。CIOにとっての第一歩は、最高マーケティング責任者 (CMO) と共に、成功とは何か、つまり利幅を改善するにはどのような点を向上すべきかを明確にします。

次に、望ましいビジネス成果や財務面のインパクトに全体として貢献する、進行中のほかのイニシアティブをすべて特定します。それぞれの貢献度を視覚的に示す、評価指標の階層を作成します。階層の下位に置く評価指標は、間接的なものになります。これにより、どのイニシアティブが望ましい成果をもたらすのか、およびバリュー・ストリームにおいて貢献している各活動について、誰が責任を担っているのかを可視化できます。

ステップ3:ビジネス主導のフュージョン (融合) チームにIT人材を提供する

インパクトの大きいイニシアティブを見極めたら、特にビジネス主導のフュージョン・チームがターゲットとしているような重要な機会に、主要なデジタル人材を割り当てます。IT部門は大抵の場合、ソリューション・デリバリの大部分は「独力で行うもの」というマインドセットを持っています。しかし共通の目標やビジョンを実現するには、ITプロフェッショナルと、ビジネス・テクノロジストを含むビジネス領域専門家の幅広い能力が必要になります。

テクノロジ、専門知識、データに誰もがアクセスできること (アクセスの民主化) の強みを生かすべきです。エコシステムの一員としてデジタル・ソリューションの提供に参加できるよう、IT部門以外の人材にも力を付けさせ、戦略的パートナーシップに対する心理的な壁や形式主義を打ち破ります。

ビジネス主導のフュージョン・チームにIT人材を提供し、パートナーとして連携させることで、ビジネス領域の専門家を、IT主導のフュージョン・チームに合流させる機会も得られます。これにより、内向きであったITイニシアティブにビジネスの視点が加わり、ITチームのビジネス感覚が高まるとともに、フュージョン・チーム自体の影響力も増大します。

ステップ4:「いつもの顔ぶれ」以外を活用する人材アプローチで人材不足を解消する

景気後退の兆しがあるにもかかわらず、デジタル人材の獲得競争は相変わらず熾烈です。多くのCIOは予算の引き締めを迫られているため、デジタル・イニシアティブを加速させるために十分な従業員を雇ったり、アウトソーシングに費用を割いたりすることができなくなるでしょう。特に優先度の低い社内イニシアティブに関しては、慣例にとらわれない方法でデジタル・スキルを獲得することを検討すべきです。

主要な人材は優先度の高い活動に関与させ、学生やギグ・ワーカーなど従来とは異なる人材プールを活用し、必要ではあるものの差別化をもたらすことはないビジネス能力を補います。

いつもの顔ぶれ以外の人材を活用するには、余分な時間や監督体制、トレーニングが必要になるかもしれませんが、多くの場合はコストを低く抑えられます (インターンの採用など)。またスタートアップも、知的財産を保持できるのであれば、意欲的に資産の開発に貢献してくれる可能性があります。

Janelle B. Hillは、ガートナーのCIOプラクティスを担当するディスティングイッシュト バイス プレジデント兼リサーチ主任です。CIOリサーチのアジェンダ全体を点検し、アジェンダが顧客企業中心で適切かつ統合的な内容になっているか確認する役割を担っています。また、自身のリサーチでは、デジタル・ビジネスへの大規模な移行に注力しています。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

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