今日の組織では、人間が多くの意思決定を下しています。その一例が、給与です。給与決定には概して、マネージャーの裁量と評価される従業員の無形の貢献度が反映されます。しかし、自分の給料が公正だと考える従業員は40%しかいません。それでは給与決定にAIを導入すれば、この結果は改善されるのでしょうか。この件については、後ほど詳述します。
まずは、今日、優れた意思決定を下すことが難しい原因と、AIがこの助けとなる理由を考えてみましょう。ガートナーの最新の調査によれば、2年前と比較すると、関与するステークホルダーや選択肢が増え、65%の意思決定が複雑になっています。つまり、今日のビジネス上の意思決定が行われている急速に変化する状況に、意思決定が追いついていないのです。
ガートナーのアナリストでシニア ディレクターのピーター・デン・ハーマー (Pieter den Hamer) は次のように述べています。「現代のビジネス、特にデジタル・ビジネスでは、市場ダイナミクスと複雑性が絶えず高まっています。企業は、可能な限り最短に最善の意思決定を下せるよう能力を高めなければなりません。しかも、リスクに配慮しながら、スケーラビリティ/一貫性/適応力のある意思決定を個々の状況に合わせて下す必要があるのです。さらに言えば、今日の意思決定とは、過去の状況認識に基づいて行われるものではなく、『今このとき』を反映したものでなければなりません」