ガートナーのデジタル人材管理フレームワークで、将来の要件に対応できるIT人材を確保

2021年9月24日

CIOは、ガートナーのデジタル人材管理フレームワークを使って、デジタル化の加速と将来のディスラプション (破壊) に対応する、IT要員を備えることができます。

2017年以降、デジタル化によるディスラプションが続いた結果、1つの仕事で必要なスキルの数が毎年10%ずつ増えています。

しかし、ガートナーがCIOやCEOを対象に行った調査によると、このようなニーズの増加に対応できるほどデジタル人材が十分でないことが示唆されています。パンデミック後も続くリモートワーク/ハイブリッド・ワークへの移行は、業界や地域を問わず、希少なIT人材を巡る獲得競争をさらに激化させています。デジタル化の加速に注力するCIOは、最新のIT人材管理フレームワークを取り入れ、ポテンシャルの高い人材を見極めて採用し、育成する必要があります。

ガートナーのアナリストでバイス プレジデントのリリー・モク (Lily Mok) は、次のように述べています。「人材の問題に取り組むための従来のアプローチは、急速に変化するデジタル・ビジネスのニーズにもはや追い付けません。CIOは、全体戦略の一部として、将来の要件にも対応するワークフォースにするにはどうすればよいかを再考する必要があります」

ガートナーのデジタル人材管理フレームワークでは、人材の募集、更新、定着、離任という主要な領域に焦点を当てます。CIOやITリーダーは、このフレームワークを用いて、まずデジタル・スキルと人材要件を特定して優先順位を付け、次にこの主要な領域の戦略を策定して、変化するビジネス優先課題に合わせて従業員を育成します。

募集

ポテンシャルの高い人材を見極め、引き付け、採用するために、CIOやITリーダーは、以下の4点に焦点を絞ります。

No. 1:職務/人材のプロフィール

職務記述書では、テクニカル・スキルや学歴だけが重視されることが多く、個人の社会的な影響力や組織の戦略目標との整合性といった、人材のプロフィールの幅広い意義を意識していないことがあります。

考え抜かれた職務記述書は、成果ベースかつコンピテンシ中心に作成され、候補者が個人/職業人として企業と共にどう成長できるかが可視化されイメージできるようになっています。そのため、はるかに大規模な人材プールが生み出され、多様な経歴やポテンシャルを有する候補者が応募してくるようになります。

ポテンシャルの高いIT人材を社内外で募集するために、CIOは人事リーダーと協力して職務記述書を定期的に見直し、コア・コンピテンシが適切に記載されている事、および特定のテクニカル・スキル/資格/職務経験に偏っていないことを確認する必要があります。

No. 2:エンプロイヤー・ブランディング

IT業界における求職者は、業界の特徴が原因で、当該業界の企業に対して誤った認識を持ってしまいがちです。例えば保険会社の場合、実際には、その企業が「ITイノベーション」に積極的に取り組んでいたとしても、業界の特徴から「安定性」や「予測可能性」といったイメージを持つ可能性があります。そのような誤認識を回避するために、CIOは優秀なIT人材を引き付けて定着させるための雇用価値提案 (EVP: Employment Value Proposition) を策定するべきです。また、求人情報には、IT組織のブランドの価値観を競合他社のものと差別化する特性を明記する必要があります。

ガートナ―のデジタル人材管理フレームワーク
No. 3:選考

急速に拡大するデジタル・ビジネスをサポートし、IT職の候補者を大量に採用するには、ダイバーシティ (多様性)/エクイティ (公平性)/インクルージョン (包摂性) を促進する偏りのない人材募集プロセスをテクノロジで実現することが必要です。

CIO、ITリーダー、人材採用マネージャーは、データと人工知能 (AI) ツールを活用して、時間を効果的に使いながら、ポテンシャルの高い人材をスクリーニングし、評価し、特定することができます。データやAIといったテクノロジは、候補者に、各個人に合ったより親しみのあるエクスペリエンスを提供するのに役立ちます。

No. 4:オンボーディング (入社時対応)

効果的なオンボーディングを行うことで、従業員と組織は長期にわたり相互に満足度の高い関係を築くことができます。数週間のオリエンテーションで終わることなく最大6カ月、場合によっては1年継続するプロセスにすることで、従業員は組織文化との結び付きを有機的に深められるほか、従業員のスキルとコンピテンシを評価および強化するための十分な時間とインターバルを得られ、組織が期待するパフォーマンスを発揮できるように強化することができます。

リモートやハイブリッドでの仕事環境では、構造的かつ体系的なオンボーディング・プロセスがIT人材管理にとってより一層重要になります。CIOやITリーダーは、人事部と協力して、バーチャル・ワークプレース向けのオンボーディング・プログラムを見直すことができます。

リモートワーク環境では、新入社員が組織文化とのつながりを得られにくい場合があります。プログラムを見直す際には、組織横断的な人材交流、学習、共同作業を奨励することを目指すべきです。

更新

デジタル・ビジネスで求められることは変化しています。従業員の能力を継続的に更新し、こうしたニーズに対応できるようにするために、リーダーは以下に注力する必要があります。

No. 1:スキル/コンピテンシの育成を含むキャリア計画の策定

優秀なIT人材は、企業に高い価値をもたらす多才な貢献者となるために、多様な機会と個人に合った学習パスを求めていますが、これは体系的なIT人材管理プロセスで推進することができます。CIOやITリーダーは、デジタル・ビジネスにおけるニーズの変化に対応するために、人材を新規に採用するのではなく、既存の従業員のスキルを確かめ、強化することができます。その結果として、スキルアップと新たなスキルの習得を重視する組織文化が育まれます。従業員の各人に合った学習パスを用意できるように、IT人材に、定期的にスキル評価テストを受けるよう奨励します。また、従業員のモチベーションを深く理解し、それに応じたコーチングを行える「コネクター・マネージャー」を制度化します。

No. 2:後継者計画の策定・管理

人材市場で競争が激化する中、CIOは、間近に迫った主要リーダーの退職や、希少なスキルセットを有する人材の流出といった混乱に直面しています。後継者計画の策定と管理を継続的なプロセスとして取り入れることで、組織は以下のことが可能になります。

  • ディスラプションから回復する
  • 新しい機会をつかむ
  • 重要な役割を担う優秀なIT人材を確保しているとの自信を持つ

定着

CIOやITリーダーは、従業員エンゲージメントに影響を及ぼす要因を見定め、従業員のモチベーションと定着を長期間保つためのトータル・リワード戦略を策定する必要があります。

No. 1:従業員エンゲージメントと従業員エクスペリエンス

調査によると、従業員エンゲージメントのスコアが高い組織は、ビジネス・パフォーマンスでも競合他社を上回ることが一貫して示されています。従業員エンゲージメントのスコアをベンチマークで評価し、改善点を特定できるよう支援する専門の企業 (Gallup社など) も存在します。

世界中でIT要員のリモート化が進んだことにより、仕事環境、生産性、責任の相互作用に変化が生じています。CIOは、バーチャルな環境における従業員の健康、モチベーション、効率を維持するために、より直感的で共感型のリーダーシップ・スタイルを取り入れるべきです。

従業員向け意識調査 (パルス・サーベイ) を行い、従業員からのフィードバックを収集して評価します。その結果、ハイブリッド/リモート・ワークプレース設計が、従業員エクスペリエンスを向上させるのにいかに効果的であるかが分かるでしょう。

No. 2:トータル・リワード戦略

優秀なIT人材の獲得に報酬は不可欠ですが、従業員のエンゲージメント、モチベーション、定着を高める要因はそれだけではありません。

トータル・リワード戦略とは、報酬、福利厚生、キャリア・マネジメント、パフォーマンス評価、ワークライフ・バランスの5つの要素を通じて、組織における雇用価値提案をより包括的に実現する方法です。

各要素の重要度は、対象とする人材の希望やニーズによって異なるため、CIOはトータル・リワード担当のリーダーと連携することにより、一人ひとりに合わせた雇用条件を作成できます。例えば、公的機関では、報酬に関しては他の業界ほど優遇されていませんが、目的意識や、共通の使命感、安定性、ワークライフ・バランスといった報酬以外の要素を強調することでバランスを取ることができます。

離任

元従業員が将来、再入社する可能性もあれば、貴重な顧客、パートナー、ブランド支持者 (アドボケイト) になる可能性もあります。そのため、移行計画とオフボーディングは、新入社員向けオンボーディングと同様に不可欠なものになります。

No. 1:移行計画の策定

企業における状況はさまざまであることから、役割の移行が起こる状況も多種多様であり、転勤/昇進、合併/買収、解雇などがあります。

移行計画では、そのようなあらゆる状況を考慮して、組織全体での役割移行に対処する堅牢なプロセス (新規人材採用のためのオンボーディング・プロセスなど) を作成します。綿密に構成されたプロセスがないと、リーダーが新しい役割に慣れることも、従業員をリーダー職に昇進させることも困難になる場合があります。ポテンシャルの高いIT人材の育成計画、メンター制度、「バディ」制度によって、そうした移行をスムーズに行えるようにします。

No. 2:オフボーディング (退職時対応)

オフボーディングは、後継者計画と連動させ、離職する従業員からの知識移転に十分な時間をかけられるようにする必要があります。これを適切に実施すれば、抜けた穴を埋めて新しい役割を担う社内候補者 (特にリーダー職や重要な役割の候補者) を必ず確保できます。

退職者面接では、当該退職者が感じたことを率直にフィードバックできるよう、安全で友好的な環境を用意すべきです。そのフィードバックを生かして、従業員エンゲージメント/定着のためのプラクティスを改善できます。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

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