人材育成プログラムの6ステップ - ソフトウェア開発者のスキルを向上

2021年8月20日

世界各地で恒常的なスキル不足が深刻化する中、ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーは、ここで紹介する6つのステップによる人材育成プログラムを利用して、開発者チームのスキルアップや新たなスキルの習得を図ることができます。

ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーは、スキルセットを既に身に付けている人材を採用したいと考えていますが、最新のクラウド・アーキテクチャやデジタル・イニシアティブに取り組める高度なソフトウェア開発者スキルを有する人材を見つけることはますます困難になっています。

ガートナーのアナリストで、ディスティングイッシュト バイス プレジデントのビル・スワントン (Bill Swanton) は、次のように述べています。「開発者のスキル不足を解消するために、ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーは、既存の従業員や新入社員のスキルアップと新たなスキルの習得に取り組む必要があります。開発者のスキル不足を解消するには、従業員がより幅広い役割を担い、組織の技術力を強化し続けることができるように各従業員のスキルの育成に注力すべきです」

ソフトウェア開発者のスキルを構築するための6ステップ

ステップ1:現在と将来にわたってソフトウェア開発者に求められるスキルとコンピテンシを特定する

まず、自社の成功に不可欠なソフトウェア開発者のスキルを特定し、グループ分けします。例えば、既存のテクノロジ環境に関連する中核的なスキルと、近い将来に必要とされる新たなスキルを明確にします。

ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーは、自社の老朽化したシステムやデジタル・サービスを特定し、将来のニーズと機能強化の可能性を予測できます。また、ビジネス・リーダー、プロダクト・マネージャー、ソリューション・アーキテクトと連携して、プロダクトの近代化に必要とされる将来のスキルセットを理解することができます。さらに、人事の学習/人材育成部門にソフトウェア・エンジニアリングのスキル・マトリクスを作成してもらうこともできます。

以下は、検討すべき4つの要素です。

  • コンピテンシ:ビジネス感覚、デザイン・シンキングなど
  • 開発手法:アジャイル、カンバンなど
  • アーキテクチャとデザイン:SOA、MASA、クラウド・ネイティブ、データ・アーキテクチャ、ユーザー・エクスペリエンスなど
  • テクニカル・スキル:特定のプログラミング言語、開発プラットフォーム、ツールなど
ステップ2:開発者のスキルの現状と成熟度を把握する

既存の開発者のスキルセットと適性を評価し、既存の学習/人材育成体制におけるギャップを明らかにします。

従業員のスキルとコンピテンシを評価する調査を実施するにあたり、調査の目的が従業員の比較ではなく、組織の能力を評価することであることを必ず伝えます。従業員が偏見やバイアスを持つことなく安心して回答できるようにするためです。

また、スキルアップや新たなスキルの習得を組織文化に根付かせることで、開発者が自分のスキルと役割を広げるよう動機づけます。ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーは、実務を通じた学習を広く推奨することで、従業員のために道を切り拓くことができます。そうすれば、事細かにサポートしなくても、ソフトウェア開発者としてのスキルを継続的に向上させる必要があると認識するはずです。

ステップ3:スキルアップがもたらすキャリアにおけるメリットを従業員に伝える

パフォーマンスに関する話し合いを、「何を遂行したか?」から「何を学んだか?」へとシフトします。ソフトウェア・エンジニアリング・リーダーは、従業員に「学ぶ意欲」を植え付け、自発的に行動を起こすよう奨励すべきです。一方、従業員は、ゲーム・チェンジャーとなる (テクノロジとマネジメントの両方の) スキルを特定して目標とする方法を学ぶべきです。

モチベーションを高める次の3つの要素* が人材育成の鍵を握っています。

  • 自律性 (オートノミー):過剰な干渉を避け、業務遂行に最適な方法をチームに考えさせ、従業員の成長を妨げる障壁を取り除く。
  • マスタリー (熟達):ソフトウェア開発者スキルに熟達した従業員が、マネージャーからだけでなく、同僚からも評価されるようにする。
  • 目的:自分の仕事が組織の成長やテクノロジ環境にプラスの影響を与えているかどうかといった観点から、従業員が目的意識を持って仕事をしていることを確認する。

*出典:『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか (原題 Drive: The Surprising Truth About What Motivates)』ダニエル・ピンク (Daniel Pink) 著

ステップ4:基礎的なスキルを持つ人材を受け入れつつ、スキルアップの準備を整える

新規人材の発掘と並行して、既存開発者のスキルアップを図ります。高い能力を備えた人材を見つけるのは困難かもしれないため、基礎的なスキルを有する人材を積極的に採用し、彼らが学習できる機会をすぐに設けて、組織にとって貴重な資産となるようにします。エントリー・レベルの人材を採用する際には、協調性や適応性などの資質を重視します。コアとなるソフトウェア開発者スキルの有効性が組織内で確認されれば、彼らはさらに視野を広げ、ビジネス感覚を磨けるようになります。

テクニカル・サポートや顧客サポートを担当している従業員も、プロダクトや顧客に関してよく理解しており、新たなスキルを身につけることができるため、ソフトウェア開発者の対象として検討することができます。

結果を調整できるよう短期間で反復しながらスキル育成を進めるアジャイル・ラーニングを取り入れます。アジャイル・ラーニングは、従業員に成長重視のマインドセットも植え付けるため、知識を習得するだけではなく、それを応用して大きなビジネス価値を生み出すようになります。そして、従業員が個人の能力というより同僚と共に学んで成長する環境を促進し、組織全体でそのメリットがより広く浸透するようにします。

ステップ5:開発者に学習機会を用意する

さまざまな人材育成アプローチを評価する際には、開発者が実務に就きながら時間とコストをかけずに学べる機会を検討します。重要なことは、従業員が新しいスキルを学習してすぐに応用できるようなダイナミックな環境に身を置くことです。社内人材交流や360度フィードバックのほか、ハッカソンやイノベーション・ラボ、ランチタイム勉強会などのグループ活動を通じて、新入社員と既存従業員の貴重な知識共有チャネルを構築できます。

人材育成アプローチを選定する際には、時間とコストのバランスを取る
ステップ6:学習のための時間を確保する

学習/人材育成プログラムは、長期的には企業の予見能力を高めるものでなければなりません。そのためには、リーダーが、膨大な仕事を抱えている従業員に学習時間を割り当てる必要があります。

1週間単位で、従業員の学習と部門横断活動のために専用の時間枠を設け、マスター・クラス、講師主導のオンライン・コーチング、メンタリング・プログラム、最新テクノロジの概念実証プロジェクト、実践コミュニティなどを割り当てます。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

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2021年に向けたソフトウェア・エンジニアリング戦略

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