ガートナーの2023年CEO/上級経営陣向けサーベイによると、世界的な変化に対する近年の短期的な反応はやや落ち着きを取り戻し、幹部リーダーは、長期計画の策定へと慎重に戻ることが可能となっています。しかし、パンデミックは消費者の行動と従業員の働き方を永遠に変えました。長期戦略ではこのような変化を受け入れ、変化のメリットを生かす方法を具体化する必要があります。
2023年6月17日
ガートナーの2023年CEO/上級経営陣向けサーベイによると、世界的な変化に対する近年の短期的な反応はやや落ち着きを取り戻し、幹部リーダーは、長期計画の策定へと慎重に戻ることが可能となっています。しかし、パンデミックは消費者の行動と従業員の働き方を永遠に変えました。長期戦略ではこのような変化を受け入れ、変化のメリットを生かす方法を具体化する必要があります。
「成長」は引き続き、CEOの49%にとって最大のビジネス優先課題となっています。この割合は、2022年次調査の54%から減少しました。これは、インフレといった経済的現状を受けてのことですが、過半数のCEOは、大幅または長期的な景気後退を恐れていません。今は、次の中・長期的 (3~7年) 成長戦略の策定に注力すべきです。
上級経営陣は、2023年に投資家が最も注力する領域は「収益性」であり、「売り上げ拡大」に対する関心は急減したと回答しています。
本サーベイによると、「効率と生産性」はCEOの優先課題のトップ10にようやく戻り始めたばかりです。しかしガートナーは、複数年にわたる徹底的な生産性エンジニアリングによって利益率の低下を補うことをガートナーは強く勧めます。
ガートナーは、2025年までに、「生産性」がCEOの戦略的なビジネス優先課題のトップ5に入ると予測しています。ビジネスの生産性を向上させる主要な要因として、以下があります。
「テクノロジ」は引き続き、上級経営陣の3分の1にとっての最大の戦略的注力領域になっています。中身を見ると、「自動化」が主要なイニシアティブとして2022年よりも順位が大幅に高まっているほか、「デジタル化」と「デジタル・トランスフォーメーション」も確実に視野に入っています。
また、CEOは現在、「IT」と「デジタル能力」を以前よりも明確に区別しているようです。デジタル化よりもITへの投資が増えると予測する上級経営陣はほとんどいません。それは、既に熱心に投資を行っている「デジタル化」の枠組みの中で、最も価値あるIT使用を捉えているからでしょう。
上記に沿って、自らの計画と投資について伝達する準備をします。内部やバックオフィスのレガシー・システム削減作業について言及する際は、以前と同じように「IT」と呼ぶのが最も論理的かもしれませんが、「デジタル化による近代化」「デジタル化による生産性」「デジタル・ワークプレース」といった用語を恥じらうことなく使った方が、注意を適切に向けられるかもしれません。
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「人材不足」と「インフレ」という懸案事項は、「景気後退」や「金利上昇」よりも高く位置付けられています。CEOの戦略的なビジネス優先課題として「従業員」カテゴリの順位が近年、上昇しており、中でも「人材を引き付けて定着させる」ことが最重要課題になっています。
業界や地域を問わず、企業は必要とする人材の発掘に苦労しています。そのいくつかの理由は、早期退職、長期傷病休暇、給与や労働条件に対する新たな期待といった、パンデミックに関連するものです。しかしここでは、ベビーブーマー世代の引退といった、より奥深く構造的で人口動態に関わる問題も作用しています。
CEOはまた、人材問題の鍵は「報酬」だと回答しています。インフレの期間に、給与に対する従業員の不安が高まるのは当然ですが、今日の労働市場はいつもと異なります。景気低迷にもかかわらず、失業率が低いままとなっています。換言すれば、給与に対する従業員の要求は弱まりそうにないということです。
従業員が現在も柔軟性とハイブリッド・ワークの選択肢を求め続けていることに留意し、それに適切に対応します。
鍵となる人材不足について分析を行い、厳密なワークフォース計画を策定して、この問題がビジネスの成長をどの程度阻害しているかを推定します。
「CEOは、しばらく立ち止まるかもしれませんが、2023年の間にためらいを乗り越え、2024年以降には、成長への回帰を確信する方向へと転換するでしょう。短期的には、予算に制約があり、利益率や収益性の改善が必要です。それを考えると、大きな影響をもたらせる役割/活動、特にAIやロボットによる自動化の活用を対象とした、生産性向上プログラムに的を絞ることを強くお勧めます。しかし、これまでの古くて冗長なやり方を単に自動化してはいけません。方法、プロセス、そして場合によってはプロダクトも作り直すという心構えが必要です」
Mark Raskino は、CEO/デジタル・ビジネス・リーダーシップのリサーチ チームに所属するガートナー フェローです。ビジネスおよびテクノロジのトレンド、ならびにそれらがビジネス戦略、イノベーション、ビジネスモデル、リーダーシップ、経営幹部との関係に及ぼす影響を調査研究しています。
ダウ社 (Dow Inc.) は125年の歴史があります。ダウ社のコーポレート・バイスプレジデント兼CIO兼チーフ・デジタル・オフィサーであるメラニー・カルマー (Melanie Kalmer) は、同社のデジタル・トランスフォーメーションの先頭に立つ中で、テクノロジよりも、顧客と従業員がどう接するかが重要であることに気づきました。
ダウ社は、人とワークフローの簡素化に焦点を当てることで、ダウの顧客が同社とビジネスを行うことを容易にし、同時に従業員にも能力を提供し、彼らが日常生活を通してデジタル・ツールをどのように使用するかを適合させました。
メラニー・カルマー (Melanie Kalmer) のインタビュー動画 (英語)をご覧ください。
【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/
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