ガートナーでは「可観測性 (オブザーバビリティ) 」を次のように定義しています。
2024年11月7日
ガートナーでは「可観測性 (オブザーバビリティ) 」を次のように定義しています。
未来は予測するものではなく、準備するものです。例えば、スピード違反回数に基づく予測から、自動車保険料が算出されるのではなく、ドライバーの実際の運転行動に基づいて、適切に自動車保険料が決定される状況を想像してみてください。
Tesla社は、「観測可能な」リアルタイムの運転行動のみに基づき、保険を提供しています。Tesla車両は、センサを使用して運転行動を「観察」して測定することで、毎月の安全性スコアを算出しています。平均的なドライバーは保険料を20~40%節約でき、最高レベルのスコアを保持するドライバーであれば40~60%節約できると推定されています。
ガートナーのアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのデイヴィッド・グルームブリッジ (David Groombridge) は、次のように述べています。「可観測性の応用は、ステークホルダーの意図ではなく確認された行動に基づくものであり、創造力ではなく明確さを重視します。『何を決定したのか』や『計画とは違う形で実施されたのか』を把握していなかったとしても、実際の成果をデータで確認できます。そうしたデータが捕捉されたコンテキストを含めて、AIで分析および提案を行うことで、企業がより迅速かつ正確に将来の意思決定を下すためのフィードバック・ループを形成できます」
可観測性は、従来の監視 (モニタリング) とは異なります。モニタリングとは、システムから出力されるイベント、ログ等によりシステムの状態を把握することです。一方、可観測性とは、観測可能というシステムの1つの特性を表す。可観測性は、クラウド・ネイティブでは必須要件となっています。
可観測性能力の構築は、以下のような多くの職務領域で急速に進んでいます。
可観測性とは、単一のテクノロジや、定義された市場ではありません。ビジネスの多くの機能と階層にわたるものであり、ツールを適用することによって、生成された観測可能なデータの価値が高まります。ユーザーが結果を活用できるものとしては、意思決定インテリジェンスとアナリティクス・ソリューションが最も一般的です。
オブザーバビリティの応用では、以下の3つの要素が重要となります。
機会の民主化:どの組織にも、デジタル化された成果物という形で、観測可能なデータが膨大に存在する。そのようなデータを、特に組織全体で強力な能力に変えることが課題となる
同時進行する複数のデータ・レイヤ:インフラストラクチャ・オペレーション、ミドルウェア、アプリケーション、データ、機能ワークフロー、ビジネス・プロセスといった、組織内のさまざまなレイヤに存在する。各レイヤのビジネス/ITのオーナーは、既にオブザーバビリティの多様な要素を模索していることも多いが、これらのレイヤをまとめることで価値を大幅に高めることができる
実装:並列する複数のレイヤからの要求が重なるため、実装は長期にわたる複雑で困難な取り組みになりかねない。しかし、論理的な段階に分割することも可能であり、そのためには組織全体にわたる強力な包括的な戦略プラン/青写真が必要となる
大量のコンテナ、Kubernetes環境、複雑なマルチクラウド環境を時流に則した形でモニタリングし、必要なアクションをスマートに実践するためには、可観測性の考え方とアプローチが不可欠となります。
それを実現するために、オブザーバビリティ・ツールが登場しています。スケーラブルなクラウド・ネイティブ環境を構築・運用しようとしている企業では、オブザーバビリティ・ツールを選定して調達する必要が出てきます。
オブザーバビリティの応用を役立てることで、組織はほぼリアルタイムでの対応が可能になります。対応の速さは、顧客満足度やロイヤリティの向上につながります。ステークホルダーの行動から組織の対応までのフィードバック・ループを短縮することで、顧客のポジティブ/ネガティブなアクションや不決断 (または情報不足) に基づいて、先を見越してビジネスの意思決定を計画できます。
例えば、顧客の行動と報酬のメカニズムにポジティブなフィードバック・ループがあれば、顧客ロイヤルティを向上させる重要な差別化要因になり得ます。同様に、実際の顧客行動をリスクの尺度として用いることで、理論的な顧客モデルを使用する場合よりもリスクを低減できます。
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