ガートナー 2021年のデータとアナリティクスにおけるテクノロジ・トレンドのトップ10

2021年5月19日

人工知能 (AI) からスモール・データやグラフ・テクノロジまで、データ/アナリティクスに関わるリーダーは、各テクノロジ・トレンドの活用について考える必要があります。

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) が蔓延した際に、大量の過去データに大きく依存している従来の分析手法を利用している組織は、ある重要なことに気づきました。つまり、これらのモデルの多くがもはや通用しなくなってしまったということに気がついたのです。パンデミックによってすべてが変わり、多くのデータが役に立たなくなりました。

これを受けて、将来を見据えたデータ/アナリティクスに関わるチームは、従来の「ビッグ」データに依存するAI手法から、必要なデータ量がより少ない「スモール」で、より多様性に富んだアナリティクスへと移行しつつあります。

「これらのデータとアナリティクスのトレンドは、破壊的な変化、これまでにない不確実性、そしてそれらがもたらすであろうチャンスに向けて、組織や社会が対処するのに役立ちます」

ビッグ・データから広範なスモール・データへの移行は、ガートナーが発表した2021年のデータ/アナリティクスのトップ・トレンドのひとつです。本記事で取り上げられているテクノロジ・トレンドは、データ/アナリティクス・リーダーにとって、今日のように変化の激しい時代においては無視できないビジネス、市場、テクノロジのダイナミクスを表しています。

ガートナーのディスティングイッシュト バイス プレジデントのリタ・サラム (Rita Sallam) は、「データとアナリティクスのトレンドは、今後3年間にわたって起こる破壊的な変化やこれまでにない不確実性がもたらす好機に、組織や社会が対処する上で役に立ちます。データとアナリティクスに関わるリーダーは、予測し、変革し、対応する能力を加速させるミッション・クリティカルな投資に、これらのトレンドをどう活用するかを積極的に検討する必要があります」と述べています。

各トレンドは、次の3つの主要テーマのいずれかに該当します。

  1. データ/アナリティクスの変化を加速:AIのイノベーションを活用し、コンポーザビリティを向上させ、より多様なデータソースをより俊敏かつ効率的に統合します。

  2. より効果的なXOpsによるビジネス価値の運用:より優れた意思決定を可能にし、データ/アナリティクスをビジネスに不可欠な要素へと変えます。

  3. すべてを分散:データと知見を柔軟に関連付けて、より多くの人や物に権限を与えることが必要です。
ガートナー 2021年のデータとアナリティクスにおけるテクノロジ・トレンドのトップ10

トレンド1:より賢く、より責任ある、拡張性の高いAI

より賢く、より責任ある、拡張性の高いAIは、より優れた学習アルゴリズム、解釈可能性の高いシステム、価値創出までの時間短縮を可能にします。組織は、AIシステムに対してより多くのことを要求するようになり、テクノロジのスケーリング手法を見極める必要があります。

従来のAI技術は過去のデータに大きく依存しているかもしれませんが、COVID-19がビジネスの状況を大きく変えたことを考えると、過去のデータはもはや意味をなさないかもしれません。つまりAI技術は「スモール・データ」技術や適応型の機械学習 (ML) によって、より少ないデータで運用できるようになる必要があります。これらのAIシステムは、倫理的なAIをサポートするために、プライバシーを保護し、規制に遵守し、バイアス (偏見) を最小限に抑えなければなりません。

トレンド2:コンポーザブル・データ/アナリティクス

コンポーザブル・データ/アナリティクスの目的は、複数のデータ、アナリティクス、AIソリューションからコンポーネントを使用して、柔軟かつユーザーフレンドリーで、利用可能なエクスペリエンスを提供することです。これにより、リーダーは、データに関する知見をビジネス・アクションに結び付けることができます。ガートナーの顧客からの問い合わせによると、ほとんどの大規模な組織では、「エンタープライズ・スタンダード」なアナリティクスとビジネス・インテリジェンス・ツールを複数箇所にわたり所有していることが示唆されています。

各ツールのパッケージ化されたビジネス機能から新しいアプリケーションを構成することで、生産性と俊敏性が向上します。コンポーザブルなデータ/アナリティクスが共同作業を促進し、組織のアナリティクス能力を進化させるだけでなく、アナリティクスへのアクセスも向上させます。

トレンド3:基盤としてのデータ・ファブリック

データがますます複雑化し、デジタル・ビジネスが加速するにつれ、データ・ファブリックは、コンポーザブル・データ/アナリティクス、そしてそのさまざまなコンポーネントをサポートするアーキテクチャとなります。

データ・ファブリックは、多種多様なデータ統合スタイルの使用/再利用や組み合わせが可能な技術を採用しているため、統合設計にかかる時間を30%、導入にかかる時間を30%、メンテナンスにかかる時間を70%削減することができます。加えて、データ・ファブリックは、データ・ハブ、データ・レイク、データ・ウェアハウスなどの既存のスキルや技術を活用しつつ、将来に向けた新しいアプローチやツールも導入することができます。

トレンド4:ビッグ・データから広範なスモール・データまで

ビッグ・データとは対照的に、広範なスモール・データは、AIに関するますます複雑化する問題や、希少なデータのユースケースに関する課題に対処しなければならない組織にとって、多くの問題を解決します。広範なデータは、「Xアナリティクス」(テキスト・アナリティクス、ビデオ・アナリティクス、オーディオ・アナリティクスなどの総称) を活用しながら、数々の小規模で多様な (広範な)、構造化および非構造化されたデータソースのアナリティクスと相乗効果を実現し、コンテキスト・アウェアネスと意思決定を強化します。スモール・データは、その名前が示す通り、必要なデータ量が少なくても、有益な知見を提供するデータ・モデルを使うことができます。

トレンド5:XOps

XOps (データ、ML、モデル、プラットフォーム) の目的は、DevOpsのベストプラクティスを用いて効率性と規模の経済性を実現し、テクノロジとプロセスの重複を減らし、自動化を可能にしながら、信頼性、再利用性、再現性を確保することです。

これらのテクノロジは、プロトタイプの拡張を可能にし、統制された意思決定システムの柔軟な設計とアジャイルなオーケストレーションを実現します。XOpsは、組織がデータ/アナリティクスを運用しビジネス価値を高めることを可能にします。

トレンド6:工学的な意思決定インテリジェンス

意思決定インテリジェンスは、従来のアナリティクス、AI、複雑な適応システムの応用など、幅広い意思決定を含む分野です。工学的な意思決定インテリジェンスは、単独の意思決定だけでなく、連続した意思決定にも適用され、それらをビジネス・プロセスや緊急の意思決定のネットワークにグループ化します。

これにより、組織はビジネスのためのアクションを起こすのに必要な知見を、より迅速に得ることができます。工学的な意思決定インテリジェンスは、コンポーザビリティや共通のデータ・ファブリックと組み合わせることで、組織が意思決定を最適化する方法をより正確で、再現性があり、追跡可能なものにするかを考え直したり、再構築したりするための新しい機会となります。

トレンド7:コア・ビジネス機能としてのデータ/アナリティクス

ビジネス・リーダーは、デジタル・ビジネスへの取り組みを加速するために、データ/アナリティクスを活用することの重要性を理解し始めています。データ/アナリティクスは、別のチームが担当する副次的なものではなく、コア機能へと移行しつつあります。しかし、ビジネス・リーダーは、データの複雑性を過小評価し、機会を逃してしまうことがよくあります。最高データ責任者 (CDO) が目標と戦略の設定に関与すれば、ビジネス価値の一貫した創出を2.6倍高めることができます。

トレンド8:グラフはすべてを関連付ける

グラフは、ユーザーの共同作業、MLモデル、および説明可能なAIを強化・改善する機能を備えた、最新のデータ/アナリティクスの基盤を形成します。グラフ・テクノロジは、データ/アナリティクスにとって新しいものではありませんが、組織がユースケースの数を増やしていることから、グラフ・テクノロジをめぐる考え方に変化が見られます。実際、ガートナーの顧客から寄せられるAIに関する問い合わせのうち、50%がグラフ・テクノロジの活用に関することが含まれています。

トレンド9:拡張されたコンシューマーの台頭

従来のビジネス・ユーザーは、事前定義されたダッシュボードを利用しながら、手動でデータを探索するしかありませんでした。つまり、データ・アナリストやまたは市民データ・サイエンティストにとって、データ/アナリティクスのダッシュボードは、事前に定義された質問を検索するためのツールに限られていたことを意味します。

しかし、今後こういったダッシュボードは、自動化された対話型、モバイル型、そして動的に生成された知見に取って代わり、ユーザーのニーズに合わせてカスタマイズされ、必要に応じて配信されるとガートナーは考えています。これにより、知見に関する知識が一握りのデータ・エキスパートから、組織内の誰にでも移行されるようになります。

トレンド10:データ/アナリティクスのエッジ化

より多くのデータ/アナリティクスのテクノロジが従来のデータ・センターやクラウド環境の外部に置かれ始めるようになり、それらはエッジに近づいていきます。これにより、データ中心型のソリューションのレイテンシーが短縮されたり、解消されたりして、よりリアルタイムの価値を実現できるようになります。

データ/アナリティクスをエッジに移行させることで、データ・チームが能力を拡大し、ビジネスのさまざまな部分に影響を及ぼす機会が生まれます。また、法律や規制上の理由により、特定の地域からデータを削除することができない場合でもソリューションを提供することが可能となります。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

ガートナーのサービスをご利用のお客様*にお勧めのレポート (英語):Top Trends in Data and Analytics for 2021


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