持続可能なテクノロジとは?

テクノロジによって持続可能な成果を生み出す方法

2023年5月2日

持続可能なテクノロジは単独で目的とすべきものではなく、ESG (環境、社会、ガバナンス) の成果を促進するデジタル・ソリューションの枠組みとして捉える必要があります。ここでは、持続可能なテクノロジを最大限に活用する方法についてご紹介します。

ポイント

  • デジタル・ソリューションの枠組みとしての持続可能なテクノロジは、企業とその顧客にとってのESG (環境、社会、ガバナンス) の成果を実現するために活用できる
  •  ITのサステナビリティについてだけ考えるということは、複数の必須課題のうち1つにだけ対応することになってしまう
  • 企業や顧客に関連するオペレーションにおいて、どのようなテクノロジ投資がサステナビリティを推進するのかについて、同様に検討する必要がある

 

ガートナーの予測では、2025年までに、CIOの50%はIT組織のサステナビリティ (持続可能性) に結び付いたパフォーマンス評価指標を使用するようになります。しかし、社内ITのオペレーションに関連するサステナビリティ (「持続可能なIT」) に焦点を当てるだけでは、持続可能なテクノロジを考える上で視野が狭すぎるといえるでしょう。むしろ、持続可能な成果を実現するためには総合的な観点からテクノロジを活用することを考えるべきです。

ガートナーは、持続可能なテクノロジを、「企業とその顧客にとっての環境/社会/ガバナンス (ESG) の成果を支援する可能性を持つデジタル・ソリューションの枠組み」と定義しています。

ガートナーのアナリストでプリンシパルのオータム・スタニシュ (Autumn Stanish) は、次のように述べています。「持続可能なテクノロジは、コスト/エネルギー効率/資産活用の最適化など、オペレーション面でますます重要性を増しています。それだけでなく、責任あるビジネス・プラクティスの確保に必要となる、ウェルネスの向上やトレーサビリティの確保といったESG (環境、社会、ガバナンス) の成果も高めます。さらに、新しいビジネスモデルやテクノロジを駆使したプロダクトの提供を促進し、顧客サービスを向上させます」

持続可能なテクノロジによって、環境/社会/ガバナンス (ESG) の成果を高めることのできる3つの領域とは?

持続可能なテクノロジによって、「社内IT」「企業」「顧客」という3つの重要なビジネス領域に関するオペレーションにおいて機会が創出されます。

領域1:社内ITに関するオペレーション

持続可能なITとは、適切なツール、ハードウェア、ベンダーを選定して活用し、最小限のリソースで最大限のアウトプットを提供することを指します。

持続可能なITの目標には、スコープ2とスコープ3の温室効果ガス (GHG) 排出量の削減*が含まれるようになるでしょう。これは、ITで使用される電力に関連する間接排出や、企業の直接管理外の排出 (廃棄されたIT機器の内包二酸化炭素など) が対象です。また、人権、倫理的調達、サプライチェーンの透明性といった重要なテーマにも明確に焦点を当てる必要があります。

*サプライチェーン排出量=Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量
出典:環境省ホームページ「サプライチェーン排出量全般」

ソリューションとしては、IT資産の責任ある管理のために持続可能なアプローチを新たに導入することが挙げられます。例えば、循環型経済の原則をITに導入するためのリサイクル用ロボットの利用や、ハイパースケール・クラウド・プロバイダーのような持続可能な事業者へのITオペレーションのアウトソーシングなどが考えられます。

得られるメリットは、ITリソースの最適化によって財務を改善できることです。例えば、消費量に基づく価格設定にすることで、コストとリソース活用を結び付けることができ、ひいてはサステナビリティに関するインパクト (二酸化炭素排出量や電気電子機器廃棄物 [E-Waste] の削減など) をもたらすことにつながります。

領域2:企業に関するオペレーション

例えば、調達や取引慣行の透明化、エネルギーや材料の効率化、排出量の削減、公正な労働慣行などが該当します。

ビジネス全体でESG (環境、社会、ガバナンス) の目標達成を推進する機会として、以下を挙げることができます。

  • 自動化により、資源集約的な活動を削減する
  • 人工知能 (AI) や自然言語処理により、気候がビジネスに及ぼす影響を予測する
  • 高度なアナリティクスにより、リアルタイムのパフォーマンス分析を行う
  • クラウドにより、プロセスを変革し、リモートワークを可能にする

組織のサステナビリティ戦略にとって、最重要とされるイニシアティブを推進するテクノロジ投資を特定し、優先させます。これによって、持続可能な企業のオペレーションを最大限にサポートすることができます。

領域3:顧客に関するオペレーション

顧客がサステナビリティの目標を達成できるように支援するプロダクト/サービスを提供することも、持続可能なテクノロジの領域となります。

そのためには、顧客の主要な優先課題を十分に理解し、相反することもある要望を調整することが必要となります。例えば、持続可能なプロダクトを必要とする一方で、品質やコストで妥協することには消極的である顧客への対応などがあります。自社のプロダクトやサービスを利用することがサステナビリティの目標達成にどのように貢献するのかを、顧客が理解しやすい形で提供する必要があります。

持続可能なテクノロジの効果的なポートフォリオを構築するために今すぐ行動する

最終的には、持続可能なテクノロジとして、確立されたテクノロジと最先端のテクノロジの両方を取り入れることになります。企業が将来の成功のために最も重視すべきと判断した最重要課題に基づいて、テクノロジ投資の優先順位を設定します。

ビジネスや主要なステークホルダーにとって重要になると考えられるトレンドを、以下にいくつかご紹介します。

  • クラウド・サービス:経済/環境/社会システムの中でサステナビリティのメリットを実現するために利用できる。クラウド・サービス・モデルは拡張性や柔軟性が高いことから、組織は必要なものだけを使用でき、共有リソースの利用率を高め、環境への影響を低減できる。
  • 温室効果ガス (GHG) 管理ソフトウェア:スコープ1 (直接排出)、スコープ2 (間接排出)、スコープ3 (スコープ1とスコープ2に含まれない間接排出) の全体にわたって、過去、現在、未来に及ぶ排出量データの収集/アナリティクス/報告を容易にする。企業はこうしたソリューションを利用することで、報告義務を果たすと同時に、排出パフォーマンスを向上させる行動を促進する知見を取得できる。また、計画/予測/イニシアティブのポートフォリオの最適化もサポートされる。
  • 人工知能 (AI):オペレーションや、緩和しにくいプロセスを最適化することで、二酸化炭素や環境フットプリントを削減し、重大なリスクを軽減する。環境面でのAIのサステナビリティは、部分的/全体的な精度を損なうことなく、二酸化炭素排出量が最も小さくなる方法でモデルを構築/実行できるAI手法を使用することで実現する。
  • サプライヤー・サステナビリティ・アプリケーション:企業がサプライヤーのESGのパフォーマンスを収集/評価できるようにする。
  • サプライチェーン・ブロックチェーン:倫理的調達などのために取引を保護/検証/追跡する。

Autumn Stanish (オータム・スタニシュ) は、ガートナーのデジタル・ワークプレースのインフラストラクチャとオペレーションのチームに所属するアナリストでプリンシパルです。未来の働き方におけるエンドユーザー・デバイスのトレンド、調達のモデルとベスト・プラクティス、ライフサイクル全体でのデバイス管理の最新戦略に関するリサーチを担っています。

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本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
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