2024年10月28日
2024年10月28日
Gartner IT Symposium/Xpo (10月28~30日開催) において、業界のトレンドを明らかに
ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、 2025年に企業や組織にとって重要なインパクトを持つ10の「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」を発表しました。
開催中の「Gartner IT Symposium/Xpo」において、バイス プレジデント アナリストの池田 武史がトレンドを解説しました。
池田は次のように述べています。「今年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドは、進化の止まらないテクノロジに関して、ITリーダーが責任あるイノベーションによって、企業や組織の未来をより確かなものとするために選択されました。今年は、『AIの最重要課題とリスク』『コンピューティングのニューフロンティア』『人間とマシンの相乗効果』の3つのカテゴリに分けられます。こうしたトレンドの本質を理解し、自社のテクノロジ戦略をアップデートすることが世界中のITリーダーに求められています」(図1参照)。
2025年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドは、次のとおりです。なお、以下で取り上げているトレンドやテクノロジは、取り上げる順番によって重要であるという意味ではありません。
エージェント型AI (Agentic AI)
エージェント型AIは、ユーザーが設定した目標を達成するために自律的に計画を策定し、行動を起こします。これによっては、人間の作業負荷を軽減し、仕事を補強できる仮想労働力となる可能性があります。人間は、自らの能力をこうしたエージェントによってより高めることができます。2028年までに、日常業務における意思決定のうちの少なくとも15%が、エージェント型AIによって自律的に行われるようになるとGartnerではみています。これは2024年の0%からの増加になります。このテクノロジの目標主導型の特性によって、さまざまなタイプのタスクをこなすことのできる、より適応性の高いソフトウェア・システムが実現するでしょう。
エージェント型AIには、組織全体の生産性を向上させたいというCIOの願いを実現できる可能性があります。このような動機から、企業やベンダーは、堅牢性、安全性、信頼性に優れた方法でエージェント型AIを提供するために必要なテクノロジとプラクティスを模索し、革新し、確立しようとしています。
AIガバナンス・プラットフォーム (AI Governance Platform)
AIガバナンス・プラットフォームは、Gartnerが提唱し、進化を続けるAI TRiSM (AIのトラスト/リスク/セキュリティ・マネジメント) フレームワークの一部であり、組織がAIシステムの法律/倫理/運用面のパフォーマンスを管理できるようにするものです。これらのテクノロジ・ソリューションは、責任あるAI利用のためのポリシーを策定/管理/実施する能力、AIシステムがどのように機能するかを説明する能力、そして信頼と説明責任を確立するための透明性を提供する能力を備えています。
2028年までに、包括的なAIガバナンス・プラットフォームを実装している組織は、そうしたシステムを実装していない組織と比べて、AI関連の倫理的インシデントが40%減少するとGartnerではみています。
偽情報セキュリティ (Disinformation Security)
偽情報セキュリティは、情報の信頼を体系的に見極め、完全性の確保、真正性の評価、なりすましの防止、拡散する有害情報の追跡のための方法論体系を提供することを目的とした、新たなカテゴリのテクノロジです。2028年までに、企業の50%が偽情報セキュリティ対応のユースケースに特化したプロダクト、サービス、または機能の採用を開始するとGartnerではみています。これは現在の5%未満からの上昇になります。
高度化したAIや機械学習ツールが広く普及する一方で、偽情報により悪用される懸念も高まっています。今後、企業を標的とした偽情報インシデントの件数が増加することが予想されます。この状況を放置すれば、いかなる組織も偽情報から長期にわたる重大な損害を受けかねません。
ポスト量子暗号 (Postquantum Cryptography)
ポスト量子暗号は、量子コンピューティングによる暗号解読のリスクに強いデータ保護機能を提供します。ここ数年、量子コンピューティングの開発が進むにつれて、広く使用されている従来の暗号手法のいくつかに終止符が打たれることが予想されています。暗号手法の変更は容易ではないため、組織は機密情報や社外秘情報を強固に保護するための準備期間を通常より長くする必要があります。
2029年までに、量子コンピューティングの進歩により、従来の非対称暗号化のほとんどが安全でなくなるとGartnerではみています。
環境に溶け込むインテリジェンス (Ambient Invisible Intelligence)
環境に溶け込むインテリジェンスは、超低コストの小型スマート・タグとセンサーによって実現され、大規模で手頃な価格の追跡とセンシングを提供します。長期的には、環境に溶け込むインテリジェンスによって、日常生活にセンシングとインテリジェンスがより深く統合されるようになります。
2027年末までの環境に溶け込むインテリジェンスの初期導入例は、小売店の在庫チェックや生鮮品の物流など、目先の問題解決に焦点を当て、低コストでリアルタイムの商品の追跡/センシングを可能にすることで可視化と効率を向上させるでしょう。
エネルギー効率の高いコンピューティング (Energy-Efficient computing)
ITはさまざまな形でサステナビリティ (持続可能性) に影響を及ぼしており、2024年には大半のIT組織が自社の二酸化炭素排出量を最も重視するようになっています。AIトレーニング、シミュレーション、最適化、メディア・レンダリングなど、コンピュート負荷の高いアプリケーションは、最もエネルギーを消費するため、組織の二酸化炭素排出量の最大要因になり得ます。
2020年代後半から、AIや最適化といった特別な目的を持つタスク向けに、光学、ニューロモルフィック、新型アクセラレータなど、消費エネルギーが大幅に少ない新たなコンピューティング・テクノロジが登場すると予想されています。
ハイブリッドなコンピューティング・パラダイム (Hybrid Computing)
CPU (中央演算処理装置)、GPU (グラフィック・プロセシング・ユニット)、エッジ、ASIC (特定用途向け集積回路)、ニューロモルフィック、従来の量子コンピューティング、光コンピューティングなど、新たなコンピューティング・パラダイムが次々と登場しています。ハイブリッド・コンピューティングは、異なるコンピューティング、ストレージ、ネットワークのメカニズムを組み合わせてコンピュータ処理に関わる問題を解決します。この形態のコンピューティングは、AIなどのテクノロジが現在のテクノロジの限界を超えたパフォーマンスを発揮できるよう、組織が問題を探り解決するのを支援します。ハイブリッド・コンピューティングは、従来の環境よりも非常に効果的で効率的なイノベーション環境を構築するために使用されます。
空間コンピューティング (Spatial Computing)
空間コンピューティングは、拡張現実 (AR) や仮想現実 (VR) などのテクノロジを用いて物理世界をデジタルで強化するものであり、現実世界の位置情報や3次元情報にその状態や周辺環境などを関連データとして統合的に扱う新しいコンピューティング・パラダイムです。ユーザーが3D空間でデジタル・コンテンツとやりとりできるようになり、没入感の高い直感的エクスペリエンスが実現します。空間コンピューティングを利用することで、ワークフローは合理化され、コラボレーションは強化されるため、今後5~7年で組織の業務達成能力が向上します。
2033年までに、空間コンピューティングは、1兆7,000億ドル規模まで成長するとGartnerではみています。これは2023年の1,100億ドル規模からの増加になります。
多機能型スマート・ロボット (Polyfunctional Robots)
多機能型スマート・マシンは複数のタスクをこなす能力を備えており、単一のタスクを繰り返し実行するようにカスタム設計されたタスク特化型ロボットに取って代わりつつあります。こうした新しい機能により、効率が向上し、短期間で投資収益率 (ROI) を実現します。多機能型スマート・ロボットは、人間のいる世界で動作するように設計されており、迅速な導入と優れた拡張性を実現します。
2030年までに、人間の80%がスマート・ロボットと日常的に関わるようになるとGartnerではみています。これは現在の10%未満からの上昇になります。
神経系の拡張 (Neurological Enhancement)
神経系の拡張は、脳の活動を読み取り解読するテクノロジを利用して、人間の認知能力を向上させるものです。このテクノロジは、一方向ブレイン・マシン・インタフェースまたは双方向ブレイン・マシン・インタフェース (BBMI) を使って人間の脳を読み取ります。神経系の拡張は、AIに適応するための人間のスキルを向上させる目的、次世代のマーケティング、人間のパフォーマンスの根本的な向上という3つの主要領域において大きな可能性を秘めています。神経系の拡張は人間の認知能力を高め、ブランドが消費者の思考や感情を理解するのを可能にし、人間の神経能力を高めて成果を最適化します。
2030年までに、ナレッジ・ワーカーの30%は、AIが台頭する職場での存在意義を保つために、雇用主負担か自己負担かを問わず、BBMIなどのテクノロジによって強化され、それに依存するようになるとGartnerではみています。これは2024年の1%未満からの上昇になります。
2025年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドでは、今後10年間にCIOなどのITリーダーにとって顕著な破壊と機会をもたらすトレンドにスポットライトを当てています。詳細はスペシャルレポート「Top Strategic Technology Trends for 2025」でご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products
日本のITエグゼクティブ向けのニュースや最新情報は、GartnerのXやFacebookでも案内しています。最新のプレスリリースや記事、ウェビナー情報については、ニュースルームよりご参照ください。
開催中のGartner IT Symposium/Xpo (10月28~30日) では、「今日をリードし、明日を形作る」をテーマに、テクノロジ・イノベーション、経営幹部のリーダーシップ、ビジネス戦略の3つのトラックからなるプログラムをご用意しています。主要な17のトピック領域における最新のテクノロジ、戦略、そしてリーダーシップに関する知見を提供し、CIOとリーダーシップ・チームにとっての最重要課題を取り上げます。コンファレンスのニュースと最新情報は、Xでご覧いただけます (#GartnerSYM)。
Gartner, Inc. (NYSE: IT) は、お客様のミッション・クリティカルな課題について、より優れた意思決定と大きな成果へと導く実行可能かつ客観的な知見を提供します。詳細については下記Webサイトでご覧いただけます。