2024年10月28日

Gartner、AIの真価を引き出し、安全かつ大規模に展開する上でCIOが克服すべき4つの課題への対応策を提言

Gartner IT Symposium/Xpo (10月28~30日開催) において、AI施策をリードする日本のCIOが取るべきアクションをアナリストが解説

 

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、本日より開催中のGartner IT Symposium/Xpoのオープニング基調講演において、AIの価値を安全かつ大規模に展開する上でCIOが克服すべき4つの課題とその対応策を発表しました。

2024年第2四半期にCIOとITリーダーを対象に実施した調査では、日本のCIOの48%が、自社のAI戦略の主導を任されています。しかし、AIによる価値の実現は、4つの課題によって阻まれています。

バイス プレジデント アナリストの本好 宏次は、次のように述べています。「テクノロジ・ベンダーの競争による絶え間ないイノベーションが、常に高い期待を生んでいます。その一方で、AIを実際のビジネス価値につなげるのは簡単ではありません。企業の現場でAIの成果を生み出す競争を担当しているCIOは、幻滅期の谷底にいるようにも感じているはずです」

本好は、次のように補足します。「ただ、ベンダー主導のイノベーション競争と違い、AIの成果を巡る現場の競争では、CIOが自身でペースを決めることができます。AIの計画が現実的で、まだ業界でAIの影響がそこまで大きくなければ、焦らず、自社にとって堅実なペースでも十分です。一方、大胆なAIの計画を立てたり、業界が既にAIで大きく変わりはじめたりしているなら、もっとペースを加速しなければなりません。このように、ペース配分は調整できますが、誰もこの競争から逃げることは、もうできません。そこで、AI施策に関わるCIOは、ビジネスの成果、テクノロジの成果、そして行動の成果の3つに注力すべきです」

AIのビジネス上のメリットが常に実現するとは限らない

Gartnerが世界のデジタル・ワーカーを対象に2024年に実施した調査によると、従業員は生成AI (GenAI) を使うことで週平均3.6時間を節約できています。しかし、すべての従業員が生成AIによって同じメリットを得られるとは限りません。

マネージング バイス プレジデントのガリオピ デメトリウ (Galliopi Demetriou) は、次のように指摘しています。「ここに、AIの生産性に関する真の課題があります。生成AIによる生産性の向上は、誰にでも等しく見られるものではありません。従業員が得るメリットは、業務の複雑度と経験値のレベルに依存します」

加速的なペースでAI施策を推進する組織は、生産性以外のメリットにも着目します。例えば、オペレーション・レベルでは、主要なビジネス・プロセスの自動化や、業務を再設計してチャットボットを組み入れるといった改善が考えられ、ビジネス・レベルでは、新しい収益源の創出、さらには企業のビジネス・モデルを再構築するといった変革にもつながります。

デメトリウは、次のように解説します。「CIOはAIのメリットをポートフォリオとして扱う必要があります。メリットを分類して、分野ごとにどれだけ投資するかを決定し、ポートフォリオの全体でリスクとリターンを管理します」

AIのコストは制御不能に陥りやすい

Gartnerが2024年に実施した調査では、AIから価値を引き出す上で、コスト管理が阻害要因になっていると回答した日本のCIOは95%以上に上ります。実際のところ、コストはセキュリティやハルシネーションと同じくらい、AI活用における大きなリスクであるとGartnerでは考えています。

生成AIのコストが増大しやすいことをCIOが理解していない場合には、見積もりと比べて500~1,000%の誤差が生じる恐れもあります。

デメトリウは、次のように述べています。「CIOは、AIのコストをもっと理解する必要があります。コストを構成する要素や価格設定モデルの詳細を理解し、コストを抑えるために手を尽くし、ベンダーと交渉しなければなりません。POCを行う時に、テクノロジがどのように機能するかだけでなく、コストがどのように変動するかを検証することを推奨しています」

あらゆる場所で増殖するデータとAIが新たなリスクを生む

企業内のあらゆる場所で、データとAIが増えており、IT部門は、それらを集中管理できなくなっています。Gartnerが300人以上のCIOを対象に実施した調査によると、IT部門が構築するAI機能は企業が活用するAIの35%にすぎません。データ・アクセスを管理し、AIのガバナンスを確保し、安全にAIの価値を実現するための新たなアプローチが必要となっています。

本好は、次のように解説します。「AIのテクノロジ・スタックは、サンドイッチのような形状で捉えることができます。つまり増え続けるデータとAIを上下のパンの部分に配置し、その他を挟み込むのです。サンドイッチの下の部分は、IT部門が提供するため、集中型になります。上のデータやAIは、あらゆるところからやってくるため、分散型にならざるを得ません。その間に、TRiSM (トラスト/リスク/セキュリティ・マネジメント) テクノロジを挟み込むことで、AIの安全性が確保されます。増え続けるデータやAIに対応するためには、この構造が必要になります」(図1参照)。

図1. GartnerのAIテクノロジ・サンドイッチ
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出典:Gartner (2024年10月)

本好は、次のように強調します。「CIOの役割は、増え続けるAIのリスクに対処しながら、新たなチャレンジを阻害しないAIテクノロジ・サンドイッチを設計することです。堅実なペースでAIに取り組む組織、つまりAI施策が10件以下の組織では、人によるチームやコミッティを組成してテクノロジ・サンドイッチを管理します。一方、加速的なペースでAIを推進する組織では、TRiSMテクノロジを追加します。この、信頼性を高め、リスクを監視し、セキュリティを管理するためのテクノロジによって、大規模で安全にAIを活用することができます」

従業員のパフォーマンスとウェルビーイングに、AIはポジティブにもネガティブにも影響する

急速に進化するAIに対して、従業員が親近感を抱く場合もあれば、恐れや憤りを感じる可能性もあります。AIに対するこうした複雑な反応は、「AIを使いこなす人に嫉妬する」「AIツールに過度に依存する」など、従業員のパフォーマンスに悪影響を及ぼす懸念があります。

しかし、ほとんどの組織は、こうした個々の従業員の行動がもたらす成果を積極的に管理していません。Gartnerが2024年に実施した調査では、生成AIが従業員のウェルビーイングに与える潜在的な悪影響を軽減することに注力していると答えた日本のCIOは10%にとどまりました。

デメトリウは、次のように言及しています。「ほとんどの企業は、AIが従業員にどのような感情をもたらすかという点に十分な関心を払っていません。しかし、AIは従業員の意図しない行動を引き起こす可能性があるため、注意すべきです。チェンジ・マネジメントでは、どのような行動の成果に対して、誰が責任を持つのかを意識することが重要です。テクノロジやビジネスの成果と同様に、一人一人の行動がもたらす成果をしっかり管理する必要があります」

Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「Pacing Yourself in the AI Races: 2024 IT Symposium/Xpo Keynote Insights」 (英語) で詳細をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products

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Gartner IT Symposium/Xpoについて

10月28~30日に、グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて開催中のGartner IT Symposium/Xpo では、2024年度は、「今日をリードし、明日を形作る」をテーマに、テクノロジ・イノベーション、経営幹部のリーダーシップ、ビジネス戦略の3つのトラックからなるプログラムをご用意しています。主要な17のトピック領域における最新のテクノロジ、戦略、そしてリーダーシップに関する知見を提供し、CIOとリーダーシップ・チームにとっての最重要課題を取り上げます。コンファレンスのニュースと最新情報は、Xでご覧いただけます (#GartnerSYM)。

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