戦略をスライド1枚にまとめる極意

2021年10月6日

ビジネスの成功にITがどのように貢献するかをストーリーテリングによって伝えることで、IT戦略を具体的に示すことができます。それはまた、明確なスライド1枚の戦略プランを策定するための土台となります。

いかなる市況でも優れた業績を上げている企業は、最大限の成果が得られる方法で、戦略を策定し、説明し、実践する能力に長けている点が、卓越している理由として挙げられます。CIOとしては、ビジネスの成功を促すビジネス能力を情報とテクノロジがどのように実現するのかについて、企業全体で理解できるようにしなければなりません。

ガートナーのアナリストでバイス プレジデントのヘザー・コレラ (Heather Colella) は、次のように述べています。「CIOは、ストーリーテリングを通じて、自らの戦略がビジネスの成長をどのように促進するかを示すことで、より大きなインパクトをもたらすことができます。ストーリーテリングを活用すると、企業は優れた戦略を優先課題や投資に確実に適応させ、速やかに意思決定を下せるようになります。つまり、1ページのストーリーから1ページの戦略プランへと、ナラティブ (物語) を用いて、アイデアからアクションへと発展させることができます」

ストーリーテリングは、CIOが戦略文書 (すなわち、実際にはほとんど使用されない、長々と書かれた技術文書) に注力するという、昔からの落とし穴を避けるためにも役立ちます。CIOやITリーダーはストーリーテリングによって、企業全体でのコラボレーションに向けた共有しやすい方法でビジネスモデルを可視化し、ビジネス・リーダーをビジネス上の戦略的議論に引き込めるようになります。

4ステップで戦略のストーリーを策定する

1967年、ロリン・キング (Rollin King) とハーブ・ケレハー (Herb Kelleher) の両氏は紙ナプキンに三角形を描き、それぞれの頂点を、ダラス、サンアントニオ、ヒューストンの都市に見立てました。そして2人は、この3都市間で乗客を運ぶ、低コストのコミューター航空会社のビジョンを生み出しました。こうしてサウスウエスト航空が誕生し、低コストの航空輸送という新たな業界が生まれたのです。

それでは4ステップのアプローチを用いて、自社のストーリーをスライド1枚にまとめてみましょう。

ステップ1:どのように成功するかを把握する

戦略の策定は、「ナンバーワン企業の法則 (原題:The Discipline of Market Leaders)」の著者であるマイケル ・トレーシー (Michael Treacy) 氏とフレッド ・ウィアセーマ (Fred Wiersema) 氏が考案した、価値基準モデルを理解することから始まります。成功する企業は、以下の3つの方法のいずれかで差別化を図っています。

  • カスタマー・インティマシー (顧客との親密な関係):競合するどの企業よりも深く、顧客の要求とニーズを理解することで、売り上げを創出する
  • オペレーショナル・エクセレンス:サプライチェーンを最適化し、高品質のプロダクトやサービスを低価格で提供する
  • プロダクト・リーダーシップ:イノベーションを通じて業界のプロダクト・リーダーとなる
ステップ2:差別化要因を理解する

自社が採用しているアプローチを把握することで、戦略的な意思決定や投資の焦点を絞るためのレンズを得られます。例えば、プロダクト・リーダーはイノベーション・プロセスに重点的な投資を行い、競合他社よりも早くプロダクトを市場に投入できるようにします。

ステップ3:特定の視点から内容豊かなストーリーを策定する

特定の視点を決め、その視点から戦略のストーリーを語ります。以下に例を挙げます。

  • ステークホルダーの視点:サービスを提供する従業員から、プロダクトやサービスを受け取る顧客に至るまで、ストーリーに登場するすべてのステークホルダーを特定します。それぞれのステークホルダーの視点で、ストーリーを語ります。
  • プロダクトのストーリーを語る:スライドの中央に顧客やプロダクトの画像を配置し、顧客満足度の向上やプロダクトの成功のために、企業として必要な行動について語ります。
  • プロセスのストーリーを語る:最適化された場合にはビジネスを成功させることができる、中核的なビジネス・プロセスの上位5~7つを特定します。その成功を実現するために、プロセスによって生み出される能力を見極めます。
ステップ4:図を描いて戦略を書き留める

このステップは、必要に応じて見直しや変更を行うべき反復プロセスである点に注意してください。

例えば、以下のような図を使用します。このプロセス主導の戦略では、新任のCIO向けに3~6年を要する計画を示しています。

  • 1~2年目 (基盤):ITに投資し、将来の成長を可能にするプラットフォームを構築する。
  • 3~4年目:ビジネス・プロセスから重複と複雑性を排除する。
  • 5~6年目:顧客への付加価値をもたらすソリューションを構築することで、ビジネスを成長させる。
戦略をスライド1枚にまとめる極意

戦略ストーリーを戦略プランへと変える

ビジネス・リーダーとのコミュニケーションやエンゲージメントが容易になるように戦略を捉え、戦略実行に必要なイニシアティブのロードマップや投資ポートフォリオを具体的に定義する戦略プランを策定することで、ITリーダーは戦略と実行のギャップを埋めることができます。

戦略プランもスライド1枚にまとめることが可能であり、ITリーダーにとっては、戦略と戦略プランのつながりを要約、可視化、伝達するための効果的なツールとなります。

スライド1枚のIT戦略プランでは、主要なインプットを要約し、戦略プランのアウトプットの主要セクションと結び付けます。

あらゆる戦略プランの基礎となる3つの要素は、以下のとおりです。

  • ビジネス目標:収益性の高い成長、オペレーショナル・エクセレンス、カスタマー・エクスペリエンス、および優れたコプライアンス対応
  • ビジネス能力:ビジネス成果を促進できると期待されるもの。実際には1つの能力が複数のビジネス目標を促進する可能性が高い
  • 主要パフォーマンス指標 (KPI):成果を挙げているか判断するために使用

その後、実現するための能力/イニシアティブの展開に関するロードマップを策定し、企業横断的な依存関係とリスクを追跡する機能を構築します。

 

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

ビジネスを成功に導くガートナーのサービス

ガートナーのエキスパートから提供する、確かな知見、戦略的アドバイス、実践的ツールにより、ミッション・クリティカルなビジネス課題の解決を支援します。

Get Smarter

Gartner Webinars

Gartner Webinars

ガートナーのエキスパートから、さまざまな分野における最新の知見をご紹介

ガートナー コンファレンス

ニュースレター「Gartner News」へご登録ください

「Gartner News」はITの各分野を幅広くカバーした「皆様のビジネスとITを成功に導く情報」をお届けいたします。

ご登録のEメールアドレス宛てに、最新リサーチ情報、コンファレンス開催情報などをお届けいたします。

Gartner Articles

さらに Gartner Articles を表示する