リセッション (景気後退) に備え、取り組むべき対策:9つのアクション

2022年8月14日

リセッション (景気後退) に備えるにあたり、適切なデジタル施策を加速させることは、現在の経済状況下で実行すべき中核となるアクションです。

ポイント

  • 企業の業績は、インフレ、人材不足、世界的な供給制限によってすでに圧迫されているが、さらにリセッション (景気後退) も待ち受ける可能性が十分ある。
  • 適切なデジタル施策にコストをかけることは、短期間で経済的圧力の悪影響を緩和し、長期的な競争力を築くことにつながる。
  • 成功を手に入れ、それを維持するためには、こうした今こそ、デジタル戦略によって攻勢に出るべきである。

リセッション (景気後退) の可能性については、投機家、アナリスト、そして各中央銀行の間でも意見の分かれる状態が続いていますが、こうした状況は、過去の下降期から学べることをもう一度考えてみる良い機会です。業界のリーダーたちは下降期にこそ加速するために、積極的かつ迅速に重要施策への投資を行っています。現在、こうした投資判断には必ずデジタルが関わってきます。そして、今この時期は、将来の成長要因に投資を行う絶好のチャンスとなっています。 

しかし、現在、業績を圧迫しているのは、3つの苦境、つまりインフレ、人材不足や人件費高騰、世界的な供給の停止や制限が重なった、類を見ない「三重苦」であり、成長に必要な条件は複雑化しています。複数の不確定要素が絡み合う新たな苦境がビジネス・リーダーたちの前に立ちはだかっています。また、今すべきデジタルの意思決定について「パンデミックに強いられてデジタル化をしたのだから準備はできている」と考えるのは誤りとなる場合があります。

デジタルによって差別化する

現在の三重苦に敢然と立ち向かうためには、競争力の強化につながるアクションを見いだすことが大切です。例えば、次のようなアクションが考えられます。 

  • プロセスを自動化して、業務にかかるコストを恒久的に減らす。
  • 人工知能 (AI) やロボティクスなどのテクノロジによって、人間の作業を補強し、自動化する。これにより、人件費を削減しつつ生産を増やし、貴重でコストの高い人材が価値を創造する作業に従事できるようにする。
  • 実用性の高いデジタル製品やデジタル・サービスを生み出し、顧客と従業員のエクスペリエンスを改善する。

今この時期に攻勢に出る9つの方法

ガートナーでは、3つの主要分野にわたって、9つの重要なアクションを起こす機会があると見ています。これは、リセッション (景気後退) への対策集とも呼べるものです。ただし、成功を収めるデジタル・リーダーは、誰かがリセッション (景気後退) を宣言するのを待たずにアクションを起こすことでしょう。

リソースを有効に使って、戦略的にコストを最適化する
  1. トレードオフ:コスト管理や予算設定の中でトレードオフが生じるリソースについて、優先度付きのリストを作成します。自分の考えを明確に示す説明を用意し、それをステークホルダーに伝えて賛同を得られるようにします。
  2.  クラウドへの移行:重要なビジネス・ニーズ目的あるデジタル化の一環として、クラウドへの移行を加速します。こうした移行は、エネルギー費上昇の影響を軽減する可能性を生むだけでなく、素早い対応を取るために組織の変革を促します。
  3. ワークフロー:コラボレーションの方法、ワークフロープロセスを根本から見直し、それらの高速化、単純化を図り、機動性を高めます。

例:コストに関する施策を評価する際に共通のフレームワークを使用して、リソースの交換や削減が必ず会社全体の利益に基づいて行われるようにします。こうすることで、個々の効率化を実現しつつ、重要なデジタル施策への資金を確保します。コストを戦略的に最適化すると、会話の視点が「コスト」から「価値」に移り、リソースに関する判断を、目先の利益ではなく全体の戦略に基づいて行えるようになります。

今すぐ視聴する (英語):Inflation! Looming Recession! Businesses Need a Plan

デジタル人材確保のために迅速に動く
  1. ワーク・モデル:組織として人材をどのように活用していくのかを根本から考え直します。柔軟性場所、時間、パートタイムかフルタイムか、内製か外注か、といった点を検討します。
  2. 従業員への価値提案:従業員への価値提案 (EVP) を明確にすることで自社を理解してもらい、適切なデジタル人材の採用と定着を図ります。
  3. デジタル人材:デジタル計画の推進に欠かせない適切なデジタル人材を確保するため、積極的な取り組みを行います。規模を縮小するデジタル・ネイティブ企業から人材が放出されるようなことがあれば、すぐに採用を検討しましょう。

例:2021年に採用された求職者のうち49%は、同時に2件以上のほかの求人を検討していました。データ・ドリブンな手法を取り入れることで、スキルを巡る競争の実情が解明され、それに応じてデジタル人材の検索力が強化されます。Gartner TalentNeuron™のような、労働市場およびスキルの分析ツールは、大きなデータセットを使用することで、デジタル人材の隠れた存在場所を見つけ出します。周辺の役割職種の中に該当のスキルを持つ人がいないか、新たに出現している人材プールの中に新しいIT業務について手付かずの対象がないか、などを探ります。

詳細を見る (英語):The Future of Work Reinvented Resource Center

重要なデジタル施策やテクノロジ施策を加速する
  1. 顧客と従業員に対するビジョン:顧客への価値提案と従業員への価値提案を見直し、必要なデジタル投資を急ぎます。
  2. 予測と自律:予測と自律に関係するデジタル・プロジェクトに投資します。こうしたプロジェクトにより、組織は意思決定などを、より速く、そして無駄なく行えるようになります。
  3. デジタル指標:デジタル施策の測定や進捗の監視に使用する指標を絞り込み、成果に直結した少数の対象に注力します。

例:取締役の62%が、デジタル化推進の成果として最も期待されるのは「顧客ロイヤリティの向上」だと言っています。現在、明確なデジタル・ロードマップを策定するには、2~4年間の顧客ニーズについて仮説を立てる必要があります。仮説を立てたら、顧客の既知のニーズと予測されるニーズへの対応に先進テクノロジを活用する準備をします。これは、従業員のニーズについても同じです。例えば、テクノロジ・ロードマップにメタバースを組み込むかどうかを検討します。組み込むとすれば、従業員の入社研修、継続教育、営業支援基盤にイマーシブな企業学習エクスペリエンスを提供できます。

今すぐダウンロード (英語):2021-2023 Emerging Technology Roadmap

「様子を見ながら待つ」という選択肢はない

ビジネス・リーダーが現在直面している具体的な問題は、それぞれの分野や業界、地域によって異なります。今回の「三重苦」が持つ影響の深刻さや、リセッション (景気後退)の可能性もそれぞれ異なることでしょう。こうした逆風による影響の全貌がわかるのを待ち、状況を見極めようとするのも慎重な判断と言えるかもしれません。しかし、経済状況が悪化すればするほど、ここに挙げた行動の重要性は増していきます。行動の重要性が下がることはありません。 

今行動を開始すべきステップには、次のようなものがあります。

  • リソースの戦略的判断を行う準備として、現在の支出をベンチマークする
  • 非効率なコストを挙げ、戦略的なコスト最適化が可能な箇所をデジタルを使って見つけ出し、最適化を図る。
  • 高価値なビジネス成果に最も大きく影響するものに着目して、デジタル投資の優先度付けを始める。 

最後に、もう一つ重要な点として、CFOとCIOの関係強化を考えます。ガートナーの調査「2022 Gartner Funding Digital Initiative Survey (2022年のデジタル施策資金に関する調査)」では、CFOとCIOが平等の権限を持つ協力関係にあり、両者が企業全体の成果に着目している場合、その企業は、デジタル施策への資金を確保し、予算計画に沿ってデジタルへの支出を継続し、目標とするデジタル・ビジネスの成果を達成する可能性が大幅に高くなることが示されています。しかし、この2人の重要なエグゼクティブが、常に同じ見解だというわけではありません。

CIOの94%が「自分はテクノロジが企業の財務に与える影響を理解している」と思っている一方で、それに同意を示すCFOは62%にとどまります。協力関係にあるCFOとCIOは、テクノロジの財務的影響について認識を一致させているだけでなく、企業のデジタル化を支えるために財務管理をどう適応させる必要があるのかについても同じ考えを共有しています。この両者の関係が揺らいでいては、組織として現在の三重苦に対応したり、デジタルで先行したりすることはできません。

Sanil Solanki は、ガートナーのマネージング バイス プレジデントです。デジタル・エコノミー、デジタルKPI、IT財務管理、ITコスト最適化、ITのビジネス価値などの観点から顧客を支援しています。

Alex Bant は、ガートナーのCFOプラクティス バイス プレジデントです。Alex のチームでは、トップ企業やそのリーダーたちが、人員、プロセス、テクノロジの効果を最大化するために行っている独自の手法について、数値化、および情報提供をしています。

【海外発の Gartner Articles】
本資料は、ガートナーが海外で発信している記事を一部編集して、和訳したものです。本資料の原文を含め Gartner が英文で発表した記事に関する情報は、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/smarterwithgartner/

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