デジタル・ビジネスを成功させる上で不可欠な優れたIT戦略についてご説明します。戦略を策定し、実行する上で重要な点や注意点をまとめています。
デジタル・ビジネスを成功させる上で不可欠な優れたIT戦略についてご説明します。戦略を策定し、実行する上で重要な点や注意点をまとめています。
優れたIT戦略計画は、企業の目標を推進するイニシアティブを特定し、その実行に必要な能力(時間、予算、人材、テクノロジ)を確保します。このガイドブックは以下のような点でお役立ていただけます。
ガートナーでは「IT戦略」を次のように定義しています。
そして戦略計画は、戦略で定義された目標の達成に必要となる「イニシアティブのロードマップ」と「投資のポートフォリオ」を明らかにすることによって、戦略と実行のギャップを埋めます。
戦略的プランニングでは、戦略、戦略計画、運営計画を網羅しなければなりません(「IT戦略の立て方とそのポイントとは?」を参照)。
しかし、多くの企業では「戦略」と「戦略計画」を混同しています。その違いとそれが重要な理由を理解することで、より効果的な戦略、戦略計画、運営計画を策定し、より優れた実行を促進することができます。
それでは「戦略」と「戦略計画」の主な違い何でしょうか?
主な違いは、戦略が「IT部門の長期的なビジョン」を定義するのに対し、IT戦略計画は「IT部門が中期的にその戦略ビジョンを実現していく方法」を定義するという点です。
戦略計画には、1~2年間にわたって展開すべき必要不可欠なイニシアティブのロードマップが含まれています。
戦略と同様に、ITエグゼクティブは、それぞれのイニシアティブを「ビジネス戦略で定義された戦略目標」に明確に整合させなければなりません。この結び付きにより、IT部門は、戦略の各要素に対する説明責任を明確に定義し、プランをチームや個人へと段階的に落とし込むことが可能になります。
その次の詳細レベルでは、IT部門が各イニシアティブの運用プランを策定する必要があります。運用計画では、戦略計画で特定されたイニシアティブを実現するために短期的に必要となるプロジェクト/プログラム/プロダクトを定義します。運用プランは通常、6カ月〜1年の期間をカバーします。
このように戦略を分割することで、IT部門は実行の成功に向けてチームとリソースを展開できるようになります。また、企業が上位レベルの戦略を変更した場合に個別の変更または再調整が必要となるITイニシアティブやITプロジェクトを、IT部門が迅速に特定するためにも役立ちます。
テクノロジの変化が企業に及ぼす影響がさらに⼤きくなり、そのペースも速まっています。世界の動きは速いため、ITを組織全体に定着させなければ、企業はその結末に苦慮することになります。
例えば、戦略や使命の遂⾏の遅れ、競争⼒の低下、コスト⾼でありながら実現される価値が低いといったことにつながります。
企業が変⾰と実⾏を進める中で、ITは、ビジネスモデル、戦略、オペレーティング・モデルのあらゆる側⾯に統合されています。
下の図が示すように業務能⼒ (ビジネス・ケイパビリティ) は、ビジネスモデル、ビジネス戦略、企業のオペレーティング・モデルを結び付けています。
ビジネスモデル:
ビジネスモデルは、企業の価値提案を実現するために必要な幅広い業務能⼒を定義します。
戦略フレームワーク:
戦略は、企業が市場競争に勝てるよう、あるいは公共部⾨の使命を果たせるよう、業務能⼒をより深化させます。
企業のオペレーティング・モデル:
オペレーティング・モデルは、戦略的⽬標の達成に向けて業務能⼒を運⽤します。
これら3つのビジネス・フレームワークは、互いに連携しています。モデルの1つに変化が⽣じると、ほかの2つのモデルにも変化が起こるます。しかもそれだけではなく、⼀部の業務能⼒は、ビジネスを差別化するものとして収益化され、ビジネスモデルと戦略へのインプットとして利⽤されます。
従来の戦略アプローチは、不安定なビジネス環境にある組織にとって⾮効率的である場合があります。そのため、それに代わるものとして、適応型の戦略アプローチを⽤いて機会や脅威に対応する必要があります。
さらに、戦略の策定と維持は、複雑で時間のかかる作業である必要はありません。重要なコンテンツに焦点を絞り、時間を節約する⼿法 (実⽤最⼩限の戦略にするなど) を活⽤したシンプルなプロセスを適⽤することで、優れたIT戦略を速やかに策定・維持できるようになります。
ガートナーは、戦略の策定と、短い計画期間への戦略の細分化において、価値実現までの時間を短縮する戦略フレームワークを提供しています。戦略に照らして実⾏を成功させるために、⻑い計画期間を細分化し、中期的な戦略計画と短期的な運営計画にする (すべて適応型にする) 必要があります。
デジタルの世界では、企業のビジネス戦略とIT戦略の関連性が強ければ強いほど、戦略のその先にあるビジネス上の利益に達成できる可能性が高くなります。しかし、優れた戦略だけでは成功は保証されません。戦略は企業全体に広く支持され、適切に実行される必要があります。
また、不安定な世界では、戦略を策定して実⾏しても、適切な進路からすぐに外れてしまう可能性があります。これを放置すると、企業は戦略的な⼤志を果たせなくなる恐れがでてきます。
企業は、戦略と実⾏を軌道に乗せるために、継続的な戦略的プランニング・プロセスの⼀環として主要な事項を確認し、戦略を継続してレビューすることが重要です。
IT戦略を成功に導くために、下記の4つの視点から定期的な見直しを行います。
1. 戦略の有効性
チェックポイント:戦略はまだ有効か?
ビジネス環境は刻々と変化します。その変化が戦略の前提を揺るがすものであれば、速やかな見直しが必要です。例えば:
これらの変化を察知したら、戦略の調整を検討しましょう。
2. 実行計画の適切性
チェックポイント:実行計画はまだ有効か?
戦略そのものは正しくても、その実行方法の見直しが必要になることがあります。以下のような場合は計画の調整を検討します:
状況に応じて、柔軟に実行計画を調整することが重要です。
3. 戦略の実効性
チェックポイント:戦略は機能しているか?
効果的な戦略は、具体的な成果となって表れるはずです。以下のような点をチェックしましょう:
期待する効果が得られていない場合は、戦略自体の見直しを検討する必要があります。
4. 実行の正確性
チェックポイント:計画は正しく実行されているか?
設定したマイルストーンの達成状況を定期的に確認することで、実行の質を評価できます:
計画通りに進んでいない場合は、実行プロセスの改善や必要なサポートの追加を検討しましょう。
これら4つの観点から定期的に戦略を見直すことで、変化する環境に対応しながら、確実に目標達成への道筋を確保することができます。
これまでのデジタル化の進展が不⼗分である場合、企業は戦略への重要なインプットとして、現在のパフォーマンスを評価する必要があります。ガートナーはそのために、デジタル・パフォーマンスの評価と改善に向けた2つの⽅法を提供しています。
1. 現在のパフォーマンスを評価して同業他社と⽐較するための、フレームワークに基づくベンチマーク診断ツール
同業他社に照らしてベンチマーク評価を⾏うことで、業界内や同規模の他社に対する強みや弱みを特定できます。こうした強みや弱みは戦略へのインプットとして利⽤でき、結果としてその強みを⽣かしたり、弱みに対処したりするために投資を変更できます。
2. 企業のパフォーマンスと戦略実⾏の改善を促す、パフォーマンス管理フレームワーク
企業は、評価指標を策定して⽬標を設定し、デジタル・ビジネスの道筋を提⽰して、期待されるビジネス成果を明確にすることができます。
企業が自らのデジタル・ビジネスへの旅に漕ぎ出す際は、その道筋における進捗状況と、それによって生み出されるビジネス価値を測定することが重要です。
しかし、多くの企業は、プロジェクト・レベルのKPIを除き、主なステークホルダーにとって意味のある方法でデジタル・ビジネスの進捗状況を測定することに依然として苦慮しています。
デジタル・ビジネスのKPIは、ビジネスのデジタル化の進捗度合いを評価するものであり、企業業績のKPIに反映されるパフォーマンスの変化の先行指標としても機能することが重要です。
ここに事例として、日米企業が採用しているDX戦略の数値指標を取り上げます。デジタル・ビジネスにおける優れたKPIの条件を検討し、自社のKPIを作成する際の参考としてください。
投資家や経営トップにアピールできるKPIとその見せ方について、さらなる詳細は下記の無料Webinarからご確認いただけます。
IT戦略策定と実⾏に関するフレームワークを、お客様にとって重要な領域と説明責任に沿って、ガートナーではご提供することが可能です。これらのフレームワークを活⽤することで、企業は、価値実現までの時間を短縮するとともに、戦略と戦略計画の策定や、それらの実⾏の成功に対する⾃信を深めることができます。
変化が加速するデジタル時代において、特に情報とテクノロジを担当するITリーダーは、ビジネス・エグゼクティブの役割を果たすと同時に、オペレーション上の責任を継続的に履⾏する必要があります。結果的に、企業のITに対する信頼が⾼まると、ITのビジネス価値も向上させることができます。
ガートナーの各種コンファレンスでは、CIOをはじめ、IT投資、導入、運用管理にかかわるすべての意思決定者に最新・最適な情報とアドバイス、コミュニティを提供します。