IT部門が主導する分野が多かった1つの要因としては、既存や新規ビジネスに関連するデータやITインフラ等の基盤の整備の必要性が増してきた点が考えられます。一方、事業部門等の既存の非IT部門が主導している割合が高い分野は、今後のビジネスモデル自体の変革に主眼が置かれた取り組みであるため、実事業部門が主導することは自然な流れといえます。
中尾は次のように述べています。「今後、事業運営の柔軟性や迅速性を高めるため、自ら『デジタル』の能力を補完し、クラウド活用し、その運営を含めすべて対応することも考えられます。重要な役割を担うIT部門としては今後、主導する事業部門等への側方支援の必要性や、支援のための組織フォーメーションをどのように構築するかといった検討も進めていく必要があります」
DXの取り組みにおける内製/外製化の現状は、社外のリソースを活用している企業が依然として多い
本調査では、DXの取り組みにおける内製/外製の状況について、DXに関連するシステムの企画、設計・開発・実装、実装後のシステムの運用・管理・保守の3つの工程で尋ねました。その結果、各工程で、大部分を社内のリソースで対応できている企業は全体の20~30%にとどまりました。一方、程度に関係なく社外のリソースを活用している企業の割合は、各工程で60%以上となりました。
上流の企画工程では、社内の知見にとどまらず、積極的に社外の知見や新たなアイデアを取り入れ、デジタル・ビジネスを進めようとする企業の意図がうかがえます。一方で、システムの設計、開発、実装以降の工程では、社外の人材リソース/ITベンダーに頼らざるを得ない側面もあるとみられます。
中尾は次のように述べています。「『デジタル』の取り組みでは、クラウド、AI、アナリティクスといった導入において、新しい技術スキルを保有する人材が社内では不足しており、社外リソースに頼らざるを得ない現状もみてとれます。社外のリソースを活用している企業には、補完的な活用にとどまる企業と、全面的に活用する企業に分かれますが、社外リソースの活用については、社内のIT部門の立ち位置、必要なIT人材の不足状況など、企業の状況によって左右されます。今後の内製/外製化の方向性は、分野によって、より内製に振れる分野とそうでない分野でめりはりのついたソーシングになっていくことが考えられます」
「こうした変化に伴って、社外リソースの活用の仕方も変化していくと予想されます。現在、社外のリソース活用においては、多くの企業で『既存システムの開発や運用等で付き合いのあるITベンダー』に頼っている状況がうかがえます。特に、大手ITベンダーは資金力があり、新しいサービスの拡充やDXに関連する人材の補充、また、M&Aを含めた新しい技術への投資にも余念がありません。こうしたベンダーのケイパビリティをうまく活用するメリットは大きいといえます。しかし、大手ITベンダーも万能ではありません。多岐に広がっているデジタルの取り組み分野によっては、ベンダーの能力を見極めると同時に、これまでのベンダーとの関係性の見直しや、多彩なソーシング・オプションの活用を検討する可能性も出てくるでしょう。企業にとって、DXの推進とともに、こうした社外リソースの活用やベンダーの管理を強化することは、ますます重要になります」
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