回答からは、給与水準を親会社より低く抑えることによって、親会社が自ら行うより低いコストで済む (だろう) という考えが根底にあると推察されます。一方、最近ではデジタル技術やデータ活用など、いわゆるデジタル・トランスフォーメーション (DX) のために新たなIT子会社を設立する例が見られますが、今回の結果では、その割合はまだ限定的と言えます。
シニア ディレクター アナリストの一志 達也は次のように述べています。「現在、世界的にも、ITに携わる人材、特にAI技術、データとアナリティクス (D&A) やデジタル・プロダクトなどのリーダーは貴重であり、その給与水準はあらゆる職種の中でも高い状況にあります。そうした人材を確保するには、相応の待遇を用意する必要があります。これまでのITに対する見方とは区別し、ITを経営戦略の実現に重要なものとして位置付け、IT子会社を戦略的に活用するために、将来どのようにITを扱っていくかを考えるべき時が来ています」
親会社から見た喫緊の課題はIT戦略立案能力、受け身の姿勢、スピード感、先進技術の習得
IT子会社に委託している業務の遂行および目的達成についての評価を尋ねたところ、期待どおり、期待未満の割合はともに49.2%で全体を二分していました。さらに、IT子会社に関する喫緊の課題について、重要と考える順に第3位までを尋ねたところ、第1位に選択された割合が最も多かったのは、「親会社の経営課題・戦略を反映したIT戦略を立案する能力の不足」(16.2%) でした。それに続いて、2番目に多い回答 (12.3%) として「待ちの姿勢、言われたことをやる姿勢で、積極的な提案を行う姿勢が見られない」「先進技術を習得し、その活用について積極的に提案、実装する能力の不足」「スピード感が不足している」の3項目が並びました。
一方、第2位と第3位に選ばれた割合も合算すると、「待ちの姿勢、言われたことをやる姿勢で、積極的な提案を行う姿勢が見られない」(33.5%) が最も多く、次に「スピード感が不足している」(30.3%)、「先進技術を習得し、その活用について積極的に提案、実装する能力の不足」(26.4%) の順でした。第1位として最も多く選ばれていた「親会社の経営課題・戦略を反映したIT戦略を立案する能力の不足」は、第3位までの合算は25.6%で4番目でした (図2参照)。