今回の結果からは、ベンダーへ合理的な説明を求める以外の対抗策に乏しく、十分な説明が得られない場合にはベンダーを変更するという思い切った手段も辞さない顧客企業の姿勢が垣間見えました。
海老名は次のように述べています。「顧客企業は、物価上昇や為替変動といった値上げ要因について、それぞれの要因がどの程度の値上げにつながったのか、細かな説明を受けるべきです。実際にこうした追及をあきらめないことで、値上げ幅が抑えられる例もあります。現在の経済情勢を鑑みて受け入れざるを得ない値上げは受け入れる一方で、正当性のない値上げは拒否する姿勢が大切です。誠意ある説明を行わない場合には、ベンダー変更もいとわないという、毅然とした態度を示すことも時には必要です」
ただしベンダーを変更したとしても、これまでと同じコスト増の問題に直面する可能性はあります。運用・保守プロセスの最適化に時間がかかるアプリケーション・ソフトウェアや、営業秘密を含む重要データを大量に管理するプラットフォームを移行するには、移行プロジェクトとプロジェクト後の定着化に相当の時間を要するため、結果的に、デジタル・トランスフォーメーションで求められる迅速性が損なわれるリスクもあります。
海老名は次のように補足しています。「契約の無駄や過剰を省くことはコスト削減への即効性があり、顧客企業主導で進めやすい施策の1つです。そのために、例えばビジネス部門とIT部門の情報共有を日常的に行う組織文化の醸成や、ソフトウェアやクラウド・プラットフォームの利用状況を正確に把握するためのツールへの投資といった、社内で打てる施策も考えられます。ベンダー変更の決断は、その他の施策や交渉がすべて不調に終わった場合の最終手段と捉えた方が良いでしょう」
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