ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、オンプレミスに関する展望を発表しました。多くの日本企業は、レガシーなオンプレミス環境の近代化を進める必要に迫られています。
2026年までに、オンプレミス・ベンダーのテクノロジの90%がNewオンプレミスになる
近年、ハイパースケーラーが、ハイブリッド・クラウドもしくは分散クラウドのソリューションの一部として、オンプレミス・サービスを展開し始めるなど、さまざまなクラウド・サービスの展開が進んでいます。それを受けて、ハイパースケーラーと、従来のオンプレミス・ベンダーとの競合が再燃しつつあります。こうした競争の中で、従来型 (Old) のオンプレミス・テクノロジは衰退し、クラウド・ネイティブの要素を取り入れた新しいオンプレミス (Newオンプレミス) のテクノロジへのトランスフォーメーションが進み、結果としてユーザー企業はオンプレミスの在り方を変えざるを得なくなるとGartnerはみています。
ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀 忠明は次のように述べています。「Newオンプレミスをも含む新たなビジネス・アーキテクチャは産業革命的なインパクトをもたらします。この変化に対応できずに従来型のオンプレミスや仮想ホスティング (Oldクラウド) のみにフォーカスし続けるユーザー企業、ベンダー、システム・インテグレーターは、衰退する可能性があります」
インフラ戦略およびイノベーションを率いるITリーダーは、Newオンプレミスへの理解を深め、備えを強化し、自社システムの将来を考察するとともに、「目利き力」を獲得するためにも、スキルやマインドセット、新しいスタイルを身に付ける必要があります。既に時代は、オンプレミスかクラウドかを問う時代ではなくなってきています。むしろ、Oldオンプレミス+Oldクラウドか、それともNewオンプレミス+Newクラウドか、の議論がますます重要になってきていると捉えることが肝要です。
2026年までに、マイグレーションを検討するメインフレーム・ユーザーの60%は、膨大な費用を提示され、マイグレーションを見送る
2022年に富士通がメインフレームからの撤退を発表した影響もあり、レガシー・マイグレーションが再びユーザーの関心を集めています。IBM、NECを除くメインフレーム・ベンダーは、基本的に撤退の方向であるため、ユーザーは何らかのマイグレーション計画を立案せざるを得ない状況にあります。一方で、メインフレームからオープン環境へのマイグレーションの提案を依頼したものの、想定していた金額よりも遥かに高い見積もりを提示され、マイグレーションを躊躇している多くのユーザー企業が見られます。本当に見積もりほどのコスト、時間、労力をかけるべきものなのかについて疑問を持つユーザーも多く存在します。
亦賀は次のように述べています。「何の対策も講じていないユーザー企業も見られますが、将来的にその場合はサポート切れのメインフレームを使う、さらに業務システムを理解できる人材がいなくなる状況に陥る可能性があることを認識しておく必要があります」
メインフレームのユーザー数が減少するに伴い、ベンダーから保守料金を大幅に値上げされ、途方に暮れるユーザーが、これからさらに増えると予想されます。メインフレーム・マイグレーションに関しては、未来に向けたコスト最適化への配慮と戦略的投資の考え方を提案に含めるようベンダーやシステム・インテグレーターに要請することが重要です。また、マイグレーションにおいては、完璧なコピーを作ろうとするのではなく、まず業務システムを「松竹梅」の区分による棚卸し、仕分けを行い、使っていない業務システムを洗い出し、思い切って捨てることが最も効果的です。今の要件に過剰に拘らず、クラウドなどにあるものを割り切って使うことともマイグレーション戦略の重要な指針となります。
亦賀は次のように述べています。「時代はまさに『江戸時代 (的な従来型の時代) からNew World (新たな時代) へ』と転換し始めています。今後、時代変化はさらに加速し、従来型の業務とシステムは、2030年までに、時代が求める要請に対応できなくなるリスクが最大化していくでしょう。これはITだけの問題ではなく経営問題です。よって、CIOだけでなく、経営者は、自らこの問題を『将来的に経営を揺るがす大問題』と捉え、大局的、戦略的かつリアリティを踏まえた課題解決に尽力することが重要です。なお、ベンダーの撤退に伴い緊急避難的にマイグレーションを行うことは仕方ありませんが、それでも、『江戸を江戸ダッシュにするのに100億円』といった膨大な費用の提示をうのみにしないよう注意が必要です」
シニア プリンシパル アナリストの青山 浩子は次のように述べています。「インフラストラクチャの選択肢、検討すべきことが過去これほどまでに増えたことはありません。今どきのオンプレミス環境向けの新しいテクノロジや手法は破壊的です。ユーザー企業はハードウェアの単純更改といった『容器』交換のやり方から、オンプレミス環境の新陳代謝を図るためのやり方へと自らの意思で変えていく必要があります。インフラ戦略およびイノベーションを率いるITリーダーは、ベンダーの変化や競争の場の移り変わりを再点検することも重要です。オンプレミス向けの新しいテクノロジ、アーキテクチャ、手法については、ハイパースケーラーのクラウド・サービスまで視野を拡げて理解を深めながら、自社のインフラ戦略に沿ってオンプレミス・ワークロードの再配置と近代化を進めるべきです。同時に、『これまで通り』で踏襲してきた運用のあり方、スキル、チーム編成と役割をも、未来に向けて見直す必要に迫られていると言えます」
Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「2023年の展望:オンプレミスの将来」で詳細をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。https://www.gartner.co.jp/ja/products
前出の亦賀は、来る4月18日(火)、「新しい時代に向けて獲得すべきマインドセット2023」と題した無料のウェビナーでマインドセットについて詳しく解説します。
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