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2022年8月25日

Gartner、地政学的リスクはCIOに新たな試練をもたらすとの見解を発表

「Gartner IT Symposium/Xpo 2022」 (10月31日~11月2日) において、アナリストが地政学的変化のインパクトについて解説

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、国家間の政治に起因するテクノロジ・ガバナンスの問題により、「デジタル地政学」(*) が多国籍企業のCIOにとって急速に取り組みを強化すべき課題になっているとの見解を発表しました (グローバルでは2022年8月24日に発表しています)。

(*) デジタル地政学:デジタル・テクノロジとサイバースペースの領域における国家 (または国家共同体) 間の競争を示す固有の表現

Gartnerの調査によると、取締役の41%は、「地政学的なパワー・シフトと混乱」が業績に対する最大のリスクの1つであるとみています。2026年までに、多国籍企業の70%は、リスク・ヘッジによって地政学的リスクにさらされる割合を抑制するために、事業展開する国を調整するとGartnerは予測しています。

アナリストでバイス プレジデント 兼 ガートナー フェローのブライアン・プレンティス (Brian Prentice) は、次のように述べています。「デジタル地政学は今や、CIOが対処しなければならない最も破壊的なトレンドの1つです。多くのCIOが現在、貿易紛争、企業のグローバル・オペレーションに影響するような国の法律の制定、企業のデジタル・テクノロジの獲得と使用に対する政府の規制などに対処しています。CIOは、この新たな現実への理解を深め、その影響に備える必要があります」

地政学は、国家間の力関係における地理的影響を説明するものです。国家間の競争は、結果として、経済、軍事、社会など、さまざまな領域へと波及します。これらの各領域でデジタル・テクノロジの重要性が増していることから、デジタル地政学は、影響力を持つ独自のカテゴリーとして台頭しつつあります。

CIOは企業のリスク評価のほか、必要な場合には、デジタル・システムの再設計においても中核的な役割を果たさなければならないとGartnerは提言しています。そのために、CIOは、デジタル地政学の4つの側面を管理または活用する必要があります (図1参照)。

図1. デジタル地政学の4つの側面

出典:Gartner (2022年8月)

1. デジタル・ソブランティ (主権) を守る

多国籍企業の法令遵守義務は複雑で、常時変化し、拡大していますが、その主な原因となっているのがデジタル・ソブランティ (主権) です。各国政府は、EUの一般データ保護規則 (GDPR) のようなプライバシー法などの立法権と監督権限でデジタル主権に取り組んでいるほか、域外の法律制定にも目を向けるようになっています。ある法域の市民と取引をする企業は、事業拠点や市民の居住地にかかわらず、当該法域の法律を遵守することが求められます。

CIOは、IT組織のオペレーティング・モデルとプラクティスが、現行の法規制を確実に反映するよう、積極的に取り組まなければなりません。CIOの役割は、法的環境を意識し、IT組織が企業全体のコンプライアンスをどのようにサポートしているかを他の経営幹部に明確に説明することです。

2. 自国のテクノロジ産業を確立する

テクノロジ産業は、巨大で成長が速く、戦略的重要性が高く、税収と雇用の可能性をもたらすにもかかわらず、特定の国家資源の優位性が不要なことから、世界中の公共政策立案者にとって非常に関心の高い分野となっています。

多くの国の政府は、自国のテクノロジ産業の発展に投資しています。例えば、米国は国内での半導体製造を支援する法案 (通称CHIPS法) を制定することで、世界の半導体製造における地域的不均衡に対処しようとしています。また、オーストラリア政府は、「デジタル経済戦略 2030」において、ダイナミックで先進的なテクノロジ分野の構築を重要な柱として盛り込んでいます。

国内のテクノロジ産業の確立に向けた取り組みは、CIOが積極的に政府に関与する機会を創出します。CIOは、現地の専門家や、政府による共同イノベーション支援に最もアクセスしやすい国において、特定のイニシアティブをローカライズする必要があります。

3. 必要な軍事力を達成する

国家の軍事/安全保障活動のデジタル化が進むと、さまざまな国で一部のテクノロジの利用が制限されるようになります。企業やCIOは、既存の軍事/安全保障テクノロジのデジタル化に加え、サイバー戦争という新たな領域からも影響を受けます。

CIOはもはや、「企業がオペレーションで使うテクノロジは海外のどの拠点でも利用可能」との期待を持てなくなり、サプライヤーの制限や義務化に直面する可能性もあります。ディスラプションを最小限に抑えるために、ベンダー/テクノロジのリスクを扱うセンター・オブ・エクセレンス (COE) を設立し、政府の規制が進むことによる主要サプライヤーへの影響の定期的評価をその任務とすべきです。

4. サイバースペース・ガバナンスに対して直接主導権を発揮する

サイバースペース・ガバナンスの主導権を巡る国家間競争は、多国籍企業のオペレーションに大きな影響を及ぼすでしょう。デジタル・テクノロジが社会のあらゆる側面に浸透するにつれ、各国は自国のテクノロジに自国の中核的価値観や民意を反映させ、それを支えようとします。各国政府は次第に、自国のデジタル・インフラストラクチャを保護する必要があると結論付けるようになっています。

サイバースペース・ガバナンスの主導権を巡る各国政府の思惑は、CIOの影響力が及ぶ範囲を超えていますが、企業がグローバルで事業を展開するビジネス能力に重大な影響を及ぼします。CIOは、サイバースペース環境に関する最新情報のブリーフィングを毎年実施することで、サイバースペースの主導権を巡る国家間競争および企業の業務運営への影響について、経営幹部チームの理解を深めることができます。

アナリストでバイス プレジデント 兼 ガートナー フェローの藤原 恒夫は次のように述べています。「日本では、2022年5月に経済安全保障推進法案が成立し、2023年には政策拡充に向けた法改正が施行します。ロシアのウクライナ侵攻から半年がたち、多国籍企業では、加速度的に分断が深まっているのを実感していることでしょう。企業は、友好国のITサプライヤーの検討、IT知財の本国での特許出願の見直し、そしてサイバー攻撃対策の強化について、今すぐにでも議論を開始すべきです」

Gartnerのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「デジタル地政学を推進する力とCIOが注力すべき領域」「グローバル化を巡る状況の変化とデジタル地政学:CIOはどう対応すべきか」および「3 Critical Actions for Executives to Cope With Long-Term Impacts of Geopolitical Tensions」で詳細をご覧いただけます。
日本で提供しているサービスについては、こちらよりご参照ください。
https://www.gartner.co.jp/ja/products

Gartnerは来る10月31日~11月2日にGartner IT Symposium/Xpo 2022 (グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール) を開催します。リーダーシップ、テクノロジ・イノベーション、ビジネス戦略に関する知見が結集する本コンファレンスでは、CIOやITエグゼクティブに対して、テクノロジの将来の方向性、IT戦略の策定/検証におけるベスト・プラクティス、主要イニシアティブの実行例について、知見や、エキスパートによるガイダンスを提供します。本プレスリリースに関連する内容は、前出のプレンティスや藤原をはじめとする国内外のエキスパートが解説します。コンファレンスのニュースと最新情報は、Twitterでご覧いただけます (#GartnerSYM)。

日本のITエグゼクティブ向けのニュースや最新情報は、GartnerのTwitterFacebookでも案内しています。最新のプレスリリースや記事、ウェビナー情報については、こちらよりご参照ください。

Gartnerについて

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