加えて、世界では特に欧米の大企業を中心に、D&Aに責任を持つ最高データ責任者 (CDO) などの役職者の設置が増加していますが、日本の大企業では、それに相当する責任者はまれにしか見受けられません。日本では、データの利活用によってビジネス成果を得る責任の所在を尋ねても不明確であったり、各業務部門や経営企画部門などが挙げられたりする場合が多く、専任で主管組織を設置する企業は少ないのが現状です。実際、ガートナーが日本のIT部門を対象に実施した2020年11月の調査でも、従業員2,000人以上の大企業において、データ利活用の専門組織を設置しているとの回答は15%にとどまりました。
アナリストでディレクターの一志 達也は次のように述べています。「今回の調査や顧客との対話などから、日本と世界では、DXやD&Aの取り組みを担う責任者・役割の定義に違いがある現状が見て取れます。世界では大企業を中心にCDOが増加しており、CDOのリーダーシップの下、D&Aの取り組みを進めています。一方、日本の企業ではD&Aの取り組みの責任を担うCDOはいまだほとんど存在していません。日本は大企業を中心に専門組織の設置など、DXへの取り組みが積極的に行われており、データ利活用をその一環と捉えて最高デジタル責任者の下で取り組んでいるケースが多く見受けられます」
ガートナーは、「2023年までに、CDOを持たない企業の最高デジタル責任者の半数は、成功するためには事実上のデータ責任者になる必要があると考えるようになる」との仮説を立てています。
さらに、一志は次のように述べています。「DXの推進にはD&Aが不可欠ですが、その2つを混同すべきではなく、D&AがDXの一部であると捉えるのは誤解です。世界と日本の状況を比較すると、責任者の明確化と組織的な関与に違いが見られます。DXやD&Aの取り組みを推進する際は、IT部門やビジネス部門の区別なく取り組むことが重要です。技術やインフラだけでは成果を得られないため、DXやデータ利活用の取り組みには、ビジネス部門を中心とした関係者の理解と協力が不可欠です。そのために必要な人材の確保やガバナンスの整備に加えて、データ・リテラシーの向上や組織文化の構築も考慮して取り組むことが求められます。つまり、技術やインフラとは無関係な要素に焦点を合わせて優先的に取り組まなければならないのです。組織のリーダーは、DXとデータの利活用にバランス良く取り組むことで相乗効果を高められるよう、資源の配分などを行うべきです」
(*) CDOサーベイは、2020年9月から11月にかけて実施され、469人から回答を得ました。ガートナーでは毎年、世界規模のリサーチ・プロジェクトとして、米国、欧州・中東・アフリカ (EMEA)、アジア太平洋地域においてCDOの肩書きや責任を持つ個人を対象に調査を実施しています。
ガートナーは来る7月12~13日に、ガートナー データ&アナリティクス サミット 2021をバーチャル (オンライン) で開催します。本サミットでは、最新テクノロジ・トレンドから戦略を策定する手法に至るまで、D&Aのリーダーがその戦略を構築・実行するために必要なコンテンツを提供します。コンファレンスのニュースや最新情報は、ガートナーのTwitter (#GartnerDA) でもご覧いただけます。
ガートナーのサービスをご利用のお客様は、リサーチノート「CDOアジェンダ2021:デジタルとデータにバランス良く取り組んで変革をリードせよ」で詳細をご覧いただけます。
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