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2021年2月18日

ガートナー、日本企業の継続的な成長を支える未来のアプリケーションに関する2021年の展望を発表

レガシー・アプリケーションがデジタル・トランスフォーメーションや回復・成長の足かせになってはならない

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下ガートナー) は、未来のアプリケーションに関する2021年の展望を発表しました。アプリケーション・リーダーは、レガシー・アプリケーションがデジタル・トランスフォーメーションを妨げ、回復や成長の足かせにならないよう、「未来のアプリケーション」の姿を描き、実現に向けて着手すべきです。

アナリストでディレクターの一志 達也は次のように述べています。「2020年は新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) が世界中に大きな影響を及ぼし、多くの企業は混乱への対応やビジネスの回復を優先しなければなりませんでした。回復といっても、単に元に戻せばよいわけではなく、生活様式などの変化に合わせてビジネス様式も大きく変容させなければなりません。日本企業にとって、その変容の一部であるデジタル・トランスフォーメーションは大きな課題ですが、その実現には未来のアプリケーションの構築が不可欠となります。そして、その成否は将来的に、企業の生き残りをも左右します」

全面的なリファクタリングやアーキテクチャ変革に成功する大企業は2024年まで3割に満たず、過半数は2025年になっても既存アプリケーションを刷新できない、とガートナーはみています。アプリケーション・リーダーには、全体的なアーキテクチャを含めて、テクノロジの動向を見定めながら、未来のアプリケーションの姿を描き出すことが求められています。未来のアプリケーションは、先進テクノロジやインフラを使って実現されるビジネス全体をサポートするものであり、そこには新しい働き方やカスタマー・エクスペリエンス (CX) も含まれます。そうしたアプリケーションを、継続的に改善していくことが必要です。

2020年に起こったパンデミックの影響から立ち直り、2025年の崖を克服するにはどうすればよいでしょうか。日本企業を取り巻く厳しい環境を背景に、2025年までに起こり得るアプリケーションに関する展望は以下のとおりです。

2025年までにアプリケーションの刷新を済ませている大企業は、2021年現在刷新が必要と感じている大企業の半数に満たない

ガートナーが2020年5月に行った調査において、主要な業務アプリケーションの刷新や近代化の必要性を感じていると回答した国内の大企業 (従業員数規模1,000人以上) は8割を超え、実際にそのための計画があると回答した大企業も7割近く存在しました。しかし、将来のあるべき姿を描くアプリケーション戦略を有している大企業は半数弱にとどまり、戦略立案の担当者を置く大企業も半数に届きませんでした。

既存アプリケーションのさまざまな問題が解決されないままでは、現状のビジネス成長の足かせになるだけではなく、今後のデジタル化を妨げる大きな要因となるでしょう。アプリケーションを取り巻くさまざまな事象と相まって、アプリケーションそのものが大きく変革されると予想されます。一方で、今後劇的に進化していくアプリケーションを自社のビジネスにうまく活用できる日本企業はあまり多くはないことが危惧されます。そのため、デジタル化に対応できる企業とできない企業とのビジネス上の差は拡大するでしょう。こうした状況でレガシー化したアプリケーションの課題を解決する手段として、コンサルティング、アプリケーション・サービス、パッケージの導入や、ローコード開発、テスト自動化に向けた高生産性ツールへのニーズが高まると予想されます。レガシー・アプリケーションの刷新を完了した企業ではアジャイルやDevOpsなど新しいプラクティスの採用が進むでしょう。

2024年まで、レガシー近代化に取り組む大企業の大多数が、現状のアプリケーションではビジネス変化に対応できないと認識するものの、リファクタリングやアーキテクチャなどの内部構造の変革に成功する企業は、その3割未満にとどまる

アプリケーション近代化の今後の方向性を検討する企業からガートナーへの相談が急増しています。そうした企業の大多数が、単なるプラットフォーム移行ではビジネス変化に対応できないと認識しており、過半数は、マイクロサービスやAPIによる既存アプリケーションの分割など、リアーキテクチャのアプローチに関心を持っています。アプリケーションに俊敏性を持たせるには、コンポーザブルなスタイルへと変えることが重要となります。それは、業務遂行に必要な機能すべてをモノリシックなアプリケーションとして構築するスタイルではなく、変化の緩急、規模、ビジネス上の必要性に応じて業務単位で各機能を分割し、APIで組み合わせるものです。

アプリケーションの内部構造の変革がビジネスの俊敏性向上や成長に貢献することは一部の先進企業の事例から明らかになっており、変革を実現するための新しいアーキテクチャや各種テクノロジのスキルセットへの需要が増大します。一方、こうしたスキルセットを持つ人材は、市場にあまり存在していないと同時に育成が困難です。こうした状況は短期間では解決しないでしょう。そのため、2024年になって初めてそうしたスキルセットを求めても、希望どおりに取り組みを遂行できないという事態に見舞われる可能性があります。

2024年にかけて、CXプロジェクトを開始あるいは強化しない企業の80%は、競争力を失い、市場シェアを減少させる

日本は少子高齢化と人口減少の進む成熟市場であり、競争の激化によってビジネスモデルおよび提供商材が複雑化しています。これに勝ち抜くためには顧客を中心に据えた付加価値の提供、すなわちCXが求められています。

顧客が、負担を感じることなく、コンタクト・チャネル間で矛盾が生じることもなく、必要な情報に迅速にアクセスできるものが顧客中心型のアプローチといえます。しかし企業が顧客中心型のアプリケーションを導入することは容易ではありません。多くのエンタプライズ・アプリケーションは企業視点で導入・構築されてきたものであり、顧客視点での導入は新たな取り組みとなります。また、各顧客接点で利用されるアプリケーションは、顧客に対応する各部門が独自に計画し、導入することも多く、顧客へ提供する価値の一貫性が損なわれる恐れがあります。そのため、組織横断的にプロジェクトを組んでCXの実現を目指すことが必要になりますが、顧客中心型のアプローチを採用しない企業がこうした課題を克服して目標とするCXを実現する可能性は非常に低く、そのような企業は市場での競争力を低下させるでしょう。

2025年までにオフィス・ワーカーの半数以上が、意思決定のアドバイスやサポートを得る手段として、アプリケーションに組み込まれた人工知能 (AI) を用いるようになる

COVID-19の影響を受ける前から「働き方改革」は日本企業で広く取り組まれていましたが、その多くは「働く場所」と「働く時間」に力点が置かれていました。それはそれで一定の成果を収めていますが、この先さらに改革を進めるためには、「業務の遂行方法」に力点を置くべきです。よって、業務アプリケーションの改革に取り組む必要があります。

急速な進化を続けるAI技術の中でも、業務への情報活用の観点から注目すべきは、自然言語処理 (NLP) や自然言語生成 (NLG) です。スマートフォンやAIスピーカーなど、さまざまな場面で音声入力を利用する機会が増え、その精度は以前とは比べ物にならないほど高くなっています。また、AIアシスタントとの対話についても、人間の意図を理解する能力や応答の的確さが向上しており、実用に堪える場面が増えています。人間がAIに合わせなくてはならない部分も多く残されているものの、今後その活用機会は急速に広がっていくとガートナーはみています。そしてその先には、AIアシスタントと自然言語で対話するだけで、情報を入手したり業務を遂行したりする、新しい働き方が待っていることでしょう。

ガートナーのサービスをご利用のお客様は、レポート「2021年の展望:日本企業の継続的な成長を支える未来のアプリケーション」(APP-21-13) で関連する内容をご覧いただけます。

ガートナーのサービスについては、こちらよりご参照ください。
https://www.gartner.co.jp/ja/products

ガートナーは来る6月21~22日に、ガートナー アプリケーション・イノベーション& ビジネス・ソリューション サミット 2021をバーチャル (オンライン) で開催します。本サミットでは、企業の成長への貢献が期待されるアプリケーション・リーダーやソフトウェア・エンジニアの方に、変化への適応力の高いアプリケーションを構築し、自社をしなやかな企業へと変革するためのヒントをお届けします。コンファレンスのニュースや最新情報は、ガートナーのTwitter (#GartnerAPPS) でもご覧いただけます。

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