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2020年6月2日

ガートナー、外部委託コスト最適化のためのフレームワークを発表

IT関連業務の外部委託が進む国内企業にとって、外部委託コスト最適化は至上命題

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下ガートナー) は、企業が外部委託コスト最適化に向けた施策を進めるためのフレームワークを発表しました。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響によって全社のコストが見直される中、IT関連業務の外部委託が進む国内企業は、フレームワークに基づいてコスト最適化に取り組むべきです。

COVID-19の影響により、企業活動や業績の不透明感が強まっています。コストに対する全面的な見直しが各企業で進められていますが、ITコストもその例外ではありません。ガートナーが2020年4月に実施したユーザー調査では、COVID-19の影響によって、40%強の企業が今後の「IT支出全体」を「削減する見通し」と回答しました。その中でも、「開発費 (外部委託費)」予算を削減する意向である企業は、43.5%に上りました。

こうした中、実行中のプロジェクトの中断を検討する企業もあります。ただし、このような対症療法的な方法だけでは十分なコスト削減効果が得られず、危機後の新たな企業活動に支障が出るリスクもあります。前述した、「開発費 (外部委託費)」予算を削減する意向である企業においても、実施中のプロジェクト以上に着手前の計画段階にあるプロジェクトについて、延期/中止や規模縮小が検討されていることが明らかになっています。

さらに同調査では、システムを維持するための「ランニング・コスト」についても尋ねています。支出抑制策として約40%の企業が、現在契約中の運用保守サービスやサブスクリプションのコストを今後削減する見通しであると回答しています。

アナリストでバイス プレジデントの海老名 剛は次のように述べています。「国内企業は以前から、海外企業と比べてより積極的に外部委託を活用する傾向がありました。そのため、企業が全社のコストを見直している昨今、改めてITコストとしての外部委託コストの見直しが強く求められています。企業がコスト最適化を進める際には、当面のコスト削減に向けた緊急対策だけでなく、現在の危機的状況の後も見据えた、より根源的な対策が必要です」

ガートナーは外部委託コスト最適化を目指すITリーダーに対して、以下のフレームワークに沿って施策を講じることを推奨しています (図1参照)。

図1. 外部委託コスト最適化のためのフレームワーク

開発プロジェクトは「外部委託計画」のフェーズで各プロジェクトの重要度を検証することで、優先度の高いもののみに支出を絞ることができます。さらに「ベンダー選定」や「契約交渉」のフェーズにおいて、適切なコストの提案や契約条件をITベンダーから引き出すことが、ユーザー企業にとって重要です。運用保守サービスやサブスクリプションについても、利用の仕方や契約条件を改めて見直すための「契約交渉」を行うことで、コスト適正化を図る必要があります。

外部委託計画

ITコストの見直しは必要ですが、リモートワーク推進のためのインフラ整備など計画外のITコストが発生する企業も少なくありません。今後の開発プロジェクトは適切な基準に沿って、再度、優先順位付けを行う必要があります。

ガートナーは、プロジェクトの種類を「売り上げ増やコスト削減に結び付けやすいプロジェクト」と「金額的効果に結び付けにくいリスク軽減のためのプロジェクト」の2つに分けて検討することを推奨します。前者については、ガートナーが作成している「ビジネス価値ツリー」を利用し優先順位を決めることができます。後者については、「リスク評価マトリクス」を用い、リスクが起こる可能性とリスクが起こったときの影響度から優先度を評価します。

さらにITサービス調達のための選択肢、すなわち「ソーシング・オプション」として、「リモート型の開発」「クラウド開発基盤」「標準的な開発フレームワークや自動化」を取り入れる必要もあります。これらに関する情報開示をベンダーに求めるべきです。

ベンダー選定

次に、策定した外部委託計画を実行するための最適なパートナーとなるベンダーを選定します。そのために、「開発プロジェクトの提案要請書 (RFP) にどういった項目を含めるべきか」という問い合わせが、ユーザー企業からガートナーに多く寄せられています。RFPには大きく以下の3つの観点を含める必要があります。

1       プロジェクトの基本情報やサービス要件、ベンダーに期待する適性などの情報を開示する。

2       ベンダーが回答作成のためのスケジュールを適切に調整できるように、評価プロセスや価格の提示方法をあらかじめ開示する。

3       各ベンダーから公平で同じ粒度の提案を引き出すために、共通の回答テンプレートを開示する。

回答テンプレートには、「価格 」「スケジュール」「体制」「管理方法」「提供形態」「成果物」「提案する製品/サービス」「セキュリティ管理ポリシー」などの項目が含まれます。各社の提案を比較・検証しやすくするために、特に「価格」「スケジュール」「体制」については、あらかじめ提案の粒度を指定しなければなりません。

契約交渉

開発プロジェクトを厳選し、適切なRFPで最適な委託先を選択したとしても、その後の契約交渉が不調に終わればコスト最適化は望めません。RFPで提示された「価格」「スケジュール」「体制」の詳細を議論するとともに、具体的な「成果物」を詰める必要もあります。

運用保守/サブスクリプションの契約交渉に関しては、現在の状況に鑑みて、無駄なコストの発生源を改めて絶つ必要があります。そのために、社内の利用状況の棚卸しや、現在使用していない「シェルフウェア」 の把握は急務です。

運用保守サービスに関しては直近の契約更新時に、委託範囲やサービス・レベル合意 (SLA) を見直すことができます。加えて中長期的な対策として、人工知能 (AI) やロボティクスなどを活用しオンサイト人材の削減などを進めることも必要です。保守サービスをサードパーティ保守に移行することもコスト低減の選択肢になります。

クラウド・サービスのサブスクリプションは、完全従量課金が一般的なIaaS (サービスとしてのインフラストラクチャ) やPaaS (サービスとしてのプラットフォーム) では利用量の減少が即、コスト低減につながります。契約期間が固定されることの多いSaaSについても、契約更新時に契約条件を再交渉するだけでなく、場合によっては契約期間中であっても不要/過剰なサービスの停止を交渉することも考えられます。

前出の海老名は次のように述べています。「難局は依然続いていますが、ITリーダーは今、『ポストコロナ』に向けた活動への着手も求められています。その第一歩としてガートナーのフレームワークを用いて、堅固な調達プロセスや調達組織を再構築すべきです」

ガートナーのサービスをご利用のお客様は、ガートナー・レポート「これからの外部委託コスト適正化策を問い直す」(SOR-20-25) で詳細をご覧いただけます。
ガートナーのサービスについては、こちらをご参照ください。https://www.gartner.com/jp/products

ガートナーは、来る6月9日 (火)、「ITベンダーとの交渉を成功に導く10のテクニック」と題した無償のウェビナーを実施します。本ウェビナーでは、IT調達のエキスパートであるアナリストでシニア ディレクターの土屋 隆一が、ITベンダーとの契約の際に役立つ交渉術について、体系的なフレームワークを基に解説します。

COVID-19からの回復と再生に向けた投資に関する経営者向けガイドとしては、ガートナーの特設サイト「Gartner COVID-19 Resource Center」で詳細をご覧いただけます。こちらでは、無料のレポートやウェビナーをご案内しており、ガートナーのお客様以外でも閲覧可能です。

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