1. テレワーク
従業員個人が保有している紙の資料類や情報漏洩のリスクがない紙文書を、複合機/スキャナで電子化し、必要に応じファイル名を付与するなどして活用する段階です。ただし、個人ベースでの電子化を禁止すべき文書も出てくるはずです。
2. コラボレーション
簡易なワークフロー製品/サービスが多様な電子フォームのテンプレートを提供しており、簡単に電子フォームをカスタマイズできる場合もあります。社内の各部門のプロセスに紙帳票がまだ残っている場合は、こうしたソリューションを短期間で導入し、紙帳票を電子フォームに変えていくことができます。
例えば工場の現場や店舗で紙の報告書を作成していたり、社内の事務職に紙文書を扱うプロセスが残っていたりする場合は、タブレット端末などのモバイル・デバイスを活用して電子化を進められる可能性があります。紙文書をWordやExcelのようなオフィス・ツールで作成すると、「文書がどこに保存されているか分からない」「どれが最終版か明らかでない」「探し出すのが大変だ」といった問題が生じる可能性がありますが、タグ付けや分類、検索、ログの取得、バージョン管理といった文書管理機能を利用して対応することができます。
アドホックな紙のスキャンでは対応しきれない、チームで共有する既存の紙文書も、テレワーク時に利用できるようスキャンしておく必要が生じる場合があります。こうした文書には顧客情報が含まれる可能性がありますが、だからといって電子化を諦めればテレワーク時に仕事が進みません。緊急対応としては、紙文書をすべてスキャンするのではなく、できる限り必要なものに絞り込むべきでしょう。また、電子化の目的がテレワークのみである場合は、紙文書は少なくとも当面は廃棄しないようにすることも重要です。
3. より複雑なプロセスへの対応
ワークフローや文書管理の基本機能を活用するだけでなく、こうした機能をベースに各企業がカスタマイズし、用途により適した仕組みをつくって活用することは、既に広く行われています。また、各用途や各業種に向けたパッケージやサービスも市場に存在しています。例えば、稟議書向けのワークフロー、契約書のライフサイクル管理、マニュアルや規定の作成支援、汎用的なプロジェクト管理、品質管理に向けたものが挙げられます。
紙文書を電子ファイルによる運用に置き換えていく上でハードルとなるものの1つが、法令および訴訟への対応ですが、これには電子帳簿/帳票や電子契約、電子請求といったソリューションを活用することができます。電子帳簿保存法は施行から20年以上が経過していますが、さまざまな改正を経て対象が広がり、適用の難易度は低くなりました。現実的に適用しにくい部分も残っているものの、電子帳票は既に普及しています。一方、電子帳簿保存法が適用されない契約書については、プロバイダーによる簡易な電子契約書保管サービスを活用できます。これらの対応は、紙問題への取り組みを、3カ月、6カ月、1年先まで見据える場合に検討すべきでしょう。
顧客自身が書き込む申込書など、顧客や取引先が紙を用いている場合は、電子化のハードルはやや高くなります。代表例はコンシューマー向けの保険申し込みプロセスの電子化で、ここでは紙の申込書を大量にスキャンし、複雑なワークフローとシステム連携を用いることが必要となります。こうしたケースでは、より高度な機能群を有する製品が用いられます。この段階を緊急対応の一環と位置付けるのは難しく、紙問題への取り組みを1年先まで見据えた場合に検討する対象となります。
前出の鈴木は、ペーパーレスとファイル活用の取り組みについて次のように述べています。
「新型コロナウイルス感染症への対応とテレワークを推進するために、企業は従来の慣行や紙文化を突き崩し、電子ファイル・ベースで業務を進められる環境への移行を図るべきです。その際は、直近の問題にだけ対応するのではなく、視野を広げて、やや時間のかかるペーパーレスとファイル活用への取り組みも検討し、自社の計画を実施していくことが重要です。ペーパーレスやファイル活用の領域に属する製品やサービスは数多く存在していることから、文書管理やワークフロー、ファイル共有などのソリューション選定時に見落としが発生する恐れがあります。また、テレワーク環境を展開するスピードを重視するあまり、企業が間違った選択をするリスクが高まっているため、注意が必要です」
ガートナーのサービスをご利用のお客様は、ガートナー・レポート「テレワークの効率性を高めるペーパーレスとファイル活用の基本」(INF-20-57) で詳細をご覧いただけます。
ガートナーのサービスについては、こちらをご参照ください。
https://www.gartner.com/jp/products
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