「ユーザー部門自ら、業務自動化のためのシナリオ開発が可能なツール」というのが、RPAの当初からの売り文句でした。また、2018年から2019年にかけてガートナーに寄せられたRPA関連の問い合わせのうち、少なく見積もっても7割を超える企業がユーザー部門によるシナリオ開発を検討していました。しかし現実には、「ユーザー部門が開発」を担っている企業は23%にすぎず、ユーザー部門以外がシナリオ開発を行う企業が8割近いという状況が明らかになりました。
ガートナーは、今回の結果の背景には複数の理由があると推察しています。第1に、「一般的な企業のユーザー部門にとって、RPAのシナリオ開発は言われるほど容易ではない」と多くの企業が理解していることが挙げられます。RPAはいわゆるノーコードやローコードと呼ばれるツールに属します。しかし、シナリオを開発するには処理フローの考え方を理解している必要があります。第2に、RPAを安定稼働させるために不可欠なノウハウやスキルの修得が、ユーザー部門にとっては容易ではないということです。第3に、企業として一定のガバナンスを確保するための開発プロセスやガイドラインをユーザー部門のスタッフに理解させるのは、簡単ではありません。これらのことから、IT部門がRPAのシナリオを開発せざるを得ない状況になっていると考えられます。
前出の阿部は次のように述べています。「RPAの適用範囲の拡大は、現場レベルでの業務の可視化や効率化だけでなく、『働き方改革』の下地づくりや、デジタル・トランスフォーメーションに向けた一般社員のITリテラシー向上といった効果につながると期待できます。しかし、これを場当たり的に行うと、技術的負債の顕在化・肥大化を招き、企業の機敏性とガバナンスが中長期的に低下する恐れがあります。RPAの適用拡大を推進する際は、どの部門がそれを主導するのであれ、IT部門は前述したような自分たちにしか担えない役割を果たし、取り組みの成功に向け積極的に関与していくべきです」
ガートナーのサービスをご利用のお客様は、ガートナー・レポート「サーベイ・アナリシス:RPA推進の理想と現実 -導入・拡大への課題」(INF-19-170) および「2020年の展望:RPAによる自動化拡大のチャレンジを見極めよ」(INF-20-24) で関連する内容をご覧いただけます。
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調査手法
本調査は、2019年5月に、全国の従業員数20人以上のITユーザー企業のシステムの管理者、あるいは購買責任者を対象に実施しました。有効回答企業数は715社でした。