米国フロリダ州オーランド発 - 2018年10月16日 - デジタル・ビジネスは、初期の実験段階を経て、大規模な応用段階へと成熟しつつあります。デジタル・ビジネスの規模が急速に拡大する新しい時代に合わせて、CIOは思考を進化させる必要があります。ガートナーが世界のCIOを対象に毎年実施しているサーベイの結果から、トランスフォーメーション (変革) のワークフローにおいても、引き続きCIOは不可欠な役割を果たすことが明らかになりました。
ガートナーのアナリストは、本サーベイで明らかになった結果を、米国フロリダ州オーランドで10月14~18日に開催した『Gartner Symposium/ITxpo 2018』において発表しました。2019年のガートナーCIOアジェンダ・サーベイでは、世界89カ国のあらゆる主要業種に属する3,000人のCIOから回答を得ました。回答したCIOが所属する企業・機関の収益/公共分野の予算総額はおよそ15兆米ドル、IT支出の総額は2,840億米ドルに達します。
サーベイの結果から、2018年にデジタル・ビジネスが転換期に達したことが明らかになっています。CIOの49%が自社のビジネスモデルを変革済み、または変革中であると回答しています。
ガートナーのディスティングイッシュト バイス プレジデント, アナリストのアンディ・ラウゼル・ジョーンズ (Andy Rowsell-Jones) は次のように述べています。「今回明らかになったのは、第3世代の企業IT、つまりデジタル時代への移行におけるマイルストーンです。当初、CIOは『職人的な技能職としてのIT』から『ITの工業化』へとITの概念を飛躍させました。第1回目のCIOアジェンダ・サーベイから20年の時を経て、2019年におけるCIOの最優先事項には、『成長』に加え、『デジタル・イニシアティブ』が挙げられています。これは、企業においてデジタル化が主流になったということの表れです」
デジタル・ビジネスの拡大
本サーベイにおいて、デジタル化への取り組みを拡大させたと回答したCIOは、世界全体で33%に達し、2017年に実施した同調査の17%から増加しています。デジタル・チャネルを通じてコンシューマーのエンゲージメントを向上させようという意図が、取り組みを拡大させる主な推進力となっています。
ラウゼル・ジョーンズは次のように述べています。「ボリューム、スコープ、アジリティという3つの主要領域で、規模の拡大に対応するための投資が行われ、そうした能力が育成されています。その目的はすべて、コンシューマーに組織とのインタラクションを働き掛けることです。例えば、スコープの拡大とは、多様なデジタル・サービスとインタラクションの選択肢をコンシューマーに提供するということです。一般に、デジタル・チャネルを通じて提供できるインタラクションの種類が増えるほど、コンシューマーのエンゲージメントは高まり、コンシューマーへのサービス提供にかかるコストも低下します」
安定したIT予算
デジタル・ビジネスに向けたトランスフォーメーションは、安定的に増加しているIT予算によって支えられています。世界的に見ると、CIOは2019年にIT予算が2.9%増えると予測しています。2018年に平均で3%増えると予測されていたのと比べると、若干減ったとはいえほとんど変わりません。地域ごとの違いに目を向けると、いずれも似たような動きをしていることが分かります。2019年の予算についても最大の増加率を見せた地域はアジア太平洋であり、3.5%の増加が予測されていますが、2018年の予測であった5.1%の増加からは大幅に下がっています。欧州・中東・アフリカ (3.3%) と北米 (2.4%) はどちらも増加が見込まれています。最も低い増加率を見せたのは中南米となり、2018年の2.8%の増加から2019年は2%の増加に低下すると予測されています。
ラウゼル・ジョーンズは次のように述べています。「CIOは自社の財務資源を使用して2019年を『ビジネス・トランスフォーメーションの年』にしなければなりません。トランスフォーメーションに関する活発な議論を継続し、変化を妨げる障壁をすべて取り除くために、時間、予算、人材を投入すべきです。現在デジタル・ビジネスに関して後れを取っている企業は、将来、競争上非常に不利な状況に対処することになります」
CIOのテクノロジ・アジェンダを方向付ける人工知能 (AI) とサイバーセキュリティ
新たに登場している破壊的なテクノロジは、あらゆる組織の財務構造に変化をもたらすため、ビジネスモデルの再構築において大きな役割を果たすようになるでしょう。CIOとITリーダーに対して「どのテクノロジが最も破壊的になると思いますか」と質問したところ、AIを挙げる回答数が最多となり、「ゲーム・チェンジャー」のテクノロジとしてAIが他を大きく引き離してトップの座を獲得し、データとアナリティクスは第2位に後退しました。今回の質問内容は昨年と若干変わりましたが、AIの躍進は顕著です。先進企業がAIを挙げた割合も、昨年の調査時の7%から40%へと急上昇しています。
導入状況を見ると、組織におけるデジタル・テクノロジとトレンドの計画についての質問において、37%がAIテクノロジを「導入済み」または「近い将来の導入を計画中」と回答しました。AIの導入率はサイバーセキュリティ (88%) に次いで第2位となっています。
ラウゼル・ジョーンズは次のように述べています。「数字だけを見れば、この結果は革命的とも言えます。しかし、このようなAI導入率の上昇は、企業による合理性のない過剰反応を反映している可能性があります。AIは無視できないテクノロジですが、CIOは冷静な判断力を失ってはなりません。AIツール群は登場して間もないため、幻滅期をまだ経ていないことに留意する必要があります」
サイバーセキュリティが重視されていることは、組織と顧客を保護するデジタル・ビジネスの安全な基盤の構築が必要であることを表しています。本サーベイでは、大半の企業のCIOが依然としてサイバーセキュリティの責任を担っていることが明らかになっています。しかしながら、もはやIT組織だけではサイバーセキュリティを支えきれません。
フィッシングなどのソーシャル・エンジニアリング攻撃が増加しており、すべての従業員が行動様式を大幅に変えることが求められています。デジタル化への対応における先進企業の24%では、サイバーセキュリティの説明責任を負っているのは取締役会であり、単独のCIOではありません。とはいえ、あらゆる組織においてCIOは、情報処理資産を強化する対策とテクノロジ・ユーザーへの働き掛けを併せて実施することで、サイバー脅威に対するセキュリティの向上に取り組んでいます。
ラウゼル・ジョーンズは次のように述べています。「私は昨年、CIOはデジタル・ビジネスの拡大に着手しなければならないと述べましたが、CIOは見事にそれを成し遂げました。今年は、さらに一歩先へ進み、安全で安定した基盤の上で、デジタル・ビジネスを拡大し続ける必要があります。第3世代の企業ITにおける成功は、既存の投資とのバランスを再調整しながら、新たな破壊的テクノロジを組み合わせて活用する盤石な戦略にかかっています」
ガートナーのサービスをご利用のお客様は、ガートナー・レポート「2019 CIO Agenda: Securing a New Foundation for Digital Business」で詳細をご覧いただけます。
『Gartner Symposium/ITxpo』について
『Gartner Symposium/ITxpo』は、CIOが次世代のITを主導してビジネスの成果を獲得することを支援するツールおよび戦略とCIOのグローバル・コミュニティとを結び付ける、CIOおよび上級ITリーダーに向けた世界で最も重要なイベントです。世界中で2万5,000人を超えるCIO、上級ビジネス・リーダー、上級ITリーダーが、それぞれのITイニシアティブによって自社ビジネスの成功に貢献するために、必要な知見を求めて一堂に会します。
『Gartner Symposium/ITxpo』に関するニュース、写真、動画は、Smarter With Gartner、Twitter (#GartnerSYM)、Instagram、Facebook、LinkedInでご覧いただけます。
『Gartner Symposium/ITxpo』の開催日時と場所は以下のとおりです。
2018年10月22~25日:ブラジル、サンパウロ
2018年10月29日~11月1日:豪州、ゴールドコースト
2018年11月4~8日:スペイン、バルセロナ
2018年11月12~14日:日本、東京
2018年11月13~16日:インド、ゴア
2019年3月4~6日:アラブ首長国連邦、ドバイ
2019年6月3~6日:カナダ、トロント
日本では、来る11月12~14日、『Gartner Symposium/ITxpo 2018』をグランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール (港区高輪) にて開催します。ガートナーのセッションでは、CIOをはじめとするITリーダーの最重要課題について、13の主要な領域におけるテクノロジ、戦略、リーダーシップに関する最新トレンドや最先端の知見、洞察を提供いたします。本プレスリリースに関連した内容は、「2019年のCIOアジェンダ:デジタル・ビジネスの新たな礎を築け」(13日 8:00~8:45、21Bならびに同日17:15~18:00、28C) で紹介する予定です。
本シンポジウムの詳細については下記Webサイトをご覧ください。 https://www.gartner.co.jp/symposium
日本でのニュースと最新情報は、ガートナーのTwitter (https://twitter.com/Gartner_jp) でもご覧いただけます (#GartnerSYM)。