注目されるのは、デジタル・スキルを習得するための手段と機会に「関心なし」として、ITスキルの向上に初めから消極的な従業員の割合が16%と7カ国の中で日本が最も高い点です。こうした従業員は、トップダウンでITによる改革をいくら進めても、過去の自らの成功体験に対する執着が強いリーダー的存在あるいは自己の流儀を変えようとしない人々である可能性が高く、それだけに解決が困難な問題といえます。
ガートナー ジャパンのソーシャル・ソフトウェア&コラボレーション バイス プレジデントである志賀 嘉津士は、これらの調査結果を踏まえ次のように述べています。
「働き方改革は、ITだけで成功するものではありません。しかし、日本はまず本調査結果の客観的な事実を受け止め、従業員のワークプレースにおけるITの刷新も含めて、従業員のデジタル・スキルの向上に努めなくてはなりません。CIOは働き方改革の本質を理解し、そのために必要となる目的を明確に設定し、CEOの強力な関与を求める経営課題として進言する必要があります」
また、志賀は今後の対策について次のように述べています。
「デジタル・スキルを向上させるためには、さまざまな教育が必要になりますが、それに加えて、ガートナーはいくつかの成功事例から次の2つの工夫が有効であると考えています。1つ目は、エリート・チームの編成です。まずはITの活用による成功の効果を示し、次第に全体を巻き込む戦術です。2つ目は、デジタル・ワークプレース・リーダーの任命です。ビジネス部門でITに強い人や、IT部門でビジネスに関心のある人を選び、デジタル・ワークプレース・リーダーとして組織内に一定の割合で分散的に配置させます。デジタル・スキルがスムーズに伝播する組織に変える戦術で、ボトムアップの意思決定プロセスに慣れた日本には向いている手法といえるでしょう」
ガートナーでは2018年3月15~16日、『ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット 2018』を開催します。本サミットでは、前出の志賀ならびにガートナーの国内外のトップ・アナリストが、デジタル・トランスフォーメーション実現の鍵としての「アプリケーション戦略」と「アプリケーション・アーキテクチャ」を柱に据え、最新の調査結果や事例を基に知見をご提供します。
本サミットの詳細については、下記のWebサイトをご覧ください。
http://www.gartner.co.jp/event/aa/
調査手法
ガートナーは2017年4月中旬に、日本、米国、シンガポール、オーストラリア、ドイツ、フランス、英国のビジネス・ワーカーを対象として、ワークプレースに関する実態調査をWebアンケートで実施しました。有効回答数は以下のとおりです。日本 n=342、シンガポール n=343、オーストラリア n=345、米国 n=1,039、英国 n=362、フランス n=347、ドイツ n=342。
その他の調査項目や詳細なデータ、推奨事項等については、ガートナー・レポート「サーベイ・アナリシス:グローバル調査で浮き彫りになった日本の働き方改革に立ちはだかる課題」に記載されています。このレポートは、以下のWebサイトのサービスをご契約いただいているお客様に提供されています。
http://www.gartner.co.jp/research/jcor/