2024年5月9日

Gartner、AIへの組織的な取り組み状況に関する調査結果を発表

  • 日本の大企業でAI専門組織を設置する割合は海外企業の半分にとどまる
  • AI導入の最大の障壁は人材の不足だが特に日本の大企業の枯渇感が強い

 

ガートナージャパン株式会社 (本社:東京都港区、以下Gartner) は、AIに対する組織的な取り組み状況に関する調査結果を発表しました。

日本企業のAI専門組織の設置割合は、海外企業の半分にとどまっている

Gartnerは、日本企業 (大企業および中堅企業) と海外企業 (米国、ドイツ、英国) を対象に、AIに対する組織的な取り組み状況に関する調査を、それぞれ実施しました。AI専門の部門やチームを設置している割合を尋ねたところ、海外企業では、AI専門の部門やチームを設置している割合は76%に上り、12カ月以内に設置を予定していると回答した割合も23%でした。ほぼすべての組織で1年以内にAI専門の部門かチームが存在することになる状況が浮き彫りになりました。

一方、日本の大企業のAI専門の部門やチームを設置している割合は38%でした。12カ月以内に設置を予定していると回答した割合は8%であり、1年後も半数以下の企業にしか専門組織がないことが予想される結果となりました (図1参照)。

シニア ディレクター アナリストの一志 達也は次のように述べています。「日本の大企業でAI専門の部門やチームを設置する割合は、海外企業と比べると、現時点で半分、1年後ではさらに差が広がることになります。このことがAIによる価値の創出や企業競争力に直結するとは言い切れませんが、組織的なAI活用の進展には少なからず影響すると見るべきです」

図1. 日本の大企業でAI専門の部門を設置する割合
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出典:Gartner (2024年5月)

日本企業のAIに対する興味関心は海外と同様に高いと考えられることから、今回の結果は、企業としての姿勢や取り組み方の違いが表れたものとGartnerは見ています。一志は次のようにコメントしています。「AIに限らず、日本企業は専門性を自社に備えて内製するのではなく、外部に委ねようとする傾向があります。足りないものは外部に頼るほかないとはいえ、ここで問題となるのは、『誰が、組織としてAIを活用する機会を探求するのか』です。AIの価値を引き出して日々の活動に定着させるには、誰かしらがリーダーとなり、一定の専門性を備えたチームを構成して、外部リソースの活用と内部の取り組みを、責任を持って推進する必要があります」

本調査では、AI専門の部門やチームを率いているのは誰かについても尋ねました。その結果、海外企業では、主に最高情報責任者 (CIO)、最高技術責任者 (CTO)、最高データ/アナリティクス責任者 (CDAO) の順で回答が挙げられたのに対し、日本では約3分の1の企業が、IT部門のリーダーを挙げ、その次に、CIO、IT部門以外の事業部門リーダーがAI専門の部門やチームを率いていることが明らかになっています。

AIを本格的に活用していくには、AIエンジニアやAI開発者以外にも倫理担当者やプロンプト・エンジニアなどの専門的な役割が不可欠になり、そうした役割を担う人材には、それぞれに専門性と、経験によって技能を培っていくことも求められます。そうした専門集団を取りまとめるリーダーにも、一定以上の専門知識や経験を持ち合わせ、リーダーシップを持ってチームを率いていく人材であることが求められます。

日本の大企業の方が人材の枯渇感が強い

一方、AI開発に必要な人材とスキルに関する現状を尋ねたところ、十分確保できている割合は、海外企業が22%であったのに対し、日本の中堅企業は10%、大企業では7%でした。一方、「慢性的に」および「時として」人材が不足しているという回答は、海外が26%なのに対して、日本の中堅企業は34%と多少高くなり、大企業では実に64%と大幅に高くなっています (図2参照)。

図2. 自社のAI開発に必要な人材とスキルに関する現状の評価

出典:Gartner (2024年5月)

人材の不足を補うには、既存人材の教育、外部採用、外注、のいずれかの手段が考えられます。調査結果を見ると、必要に応じて確保できるという回答が、海外企業では52%であったのに対し、日本の中堅企業では56%と海外を上回る回答でした。一方で、日本の大企業は29%と大幅に少ない割合の回答で、大企業の方が人材の枯渇感が強い状況がうかがえます。

日本企業におけるAI技術を導入する際の最大の障壁は人材の不足

調査では、AI技術を導入する際の障壁についても尋ねました。日本の大企業では、「人材の不足」「データの収集や品質の問題」「技術的なスキルの不足」を突出して上位3つに挙げているのに対して、中堅企業では、「人材の不足」に加えて、「AIのユースケースが見つからない」「事業部門を巻き込めていない」「プロジェクトの計画の問題」を上位に挙げています。海外企業においては、日本企業ほど突出した回答はありませんでしたが、AIモデルに対する信頼の不足、AIの倫理・公平性・偏見に対する懸念、AI技術の導入時の問題が多くなっています。

一志は次のように述べています。「データ利活用、AI活用、デジタル・トランスフォーメーションなど、ITに関わるさまざまな大変化の波が押し寄せ、多くの企業はその波に乗ろうと必死になっています。しかし、どれを取っても成功者は少なく、特に、古くからある日本の大企業ほど苦戦しているように見えます。日本にもAI専門の部門を設置している先駆者が存在し、複数の事業部門で複数の業務プロセスにAIを適用している割合も海外企業に引けを取らないような取り組みを進めている企業は存在しています。その一方で、過半数の企業がAI専門部門の設置すら検討しておらず、試験的な運用段階にとどまっている割合も突出して高い状況です」

「企業がさまざまな変革や挑戦を続けていくには、1) 目的、目標、戦略といったリーダーシップに関わる要素、2) 人材、予算、環境といったリソースに関わる要素、3) 習慣、文化、構造といった組織的な要素、4) 意欲、意識、活力といった個人的な要素、などの要素が不可欠です。日本企業はそれらの要素の足りない部分を補い、『ないない尽くし』から脱却することが求められます。例えば、AIの取り組みでは、AIの導入に関わるデータとアナリティクスのリーダーは、どのようなAIを、何にどう利用し、それにはどのような役割や業務が新たに必要となるかというAI専門組織の在り方を見極め、経営層や事業部門のリーダーと自社のAI戦略、AI専門組織を議論する必要があります」(一志)

3つの調査による結果を基にしています。
・海外企業における役職者を対象に実施した調査:2023年10~12月に、米国、ドイツ、英国の703人を対象に実施
・日本の大企業中心層を対象に実施した調査:2024年2月に446人を対象に実施、うち1,000人以上の企業が86%
・日本の中堅企業における役職者を対象に実施した調査:2024年1月に従業員100~999人の企業の役職者400人を対象に実施

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ガートナー データ & アナリティクス サミットについて


Gartnerは来る5月21~23日に「ガートナー データ & アナリティクス サミット」(会場:グランドニッコー東京 台場) を開催します。本サミットでは、トレンド技術の活用によるビジネス成果の獲得や、積年の課題にD&Aリーダーとしてどう立ち向かっていけばよいのか、人材の確保や組織の構成といった新たな悩みをどう解消すればよいのかなど、広範囲にわたるD&A関連のトピックを解説します。AI関連については国内外のエキスパートによる講演も予定しています。コンファレンスのニュースと最新情報は、X (旧Twitter) でご覧いただけます (#GartnerDA)。

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