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SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

国内外における業務アプリケーションの標準化や統合を円滑に実施するためのベスト・プラクティス

ソーシング&ITサービス (SOR) /SOR-14-45
Research Note
T. Ebina
掲載日:2015年6月22日/発行日:2014年12月05日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2015年7月28日(火)に開催する 「ガートナー アウトソーシング&ITマネジメント サミット 」のページを是非ご覧ください。(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)


日本企業において、グローバルで業務アプリケーションを標準化/統合する動きが広がっている。ただし、こうしたプロジェクトを実施するに当たり留意すべき点は、国内プロジェクトの場合とは異なる。本リサーチノートでは、役割分担/体制、アプリケーションの適用方法、クラウド (新技術) の採用という3つの観点から、業務アプリケーションの海外展開 (国内外での標準化/統合) のベスト・プラクティスを紹介する。加えて、外部委託時 (サービス・プロバイダーの活用時) に留意すべき点についても言及する。


要約


主要な課題

  • 各産業においてビジネスがグローバル化した(根拠1参照)ことに伴い、ビジネス・プロセスを支える業務アプリケーションについても、日本の本社や海外拠点間での標準化/統合が必要とされている。
  • ビジネスのグローバル化に伴う国際競争力の強化は急務であり、IT部門に対しても、決められた期間内での海外展開プロジェクトの完了が求められている。
  • アプリケーションの海外展開 (国内外での標準化/統合) プロジェクトは大掛かりな取り組みであるが、IT部門の経験値が低く、人材や予算にも限りがある。

推奨事項


国内外における業務アプリケーションの標準化/統合を行うIT部門は、あらかじめ以下を実施する。
 
○ プロジェクトの推進体制について
  • 経営会議でのプロジェクトの実施状況の報告に加え、プロジェクトを主管する新たな組織の立ち上げや、人事部とも連携した業務部門との人材交換制度を整える。
  • プロジェクトを支援するプロバイダーの「コンサルティング力」を、業務プロセスへの理解だけではなく、エンドユーザーのファシリテーション力の観点でも評価する。
○アプリケーションの選択や適用方法について
  • アプリケーションの実装について、各地域/拠点の裁量範囲を明確化する。
  • 日本の本社/海外拠点間と、同一業務を行う拠点グループ間の2つの軸で、アプリケーションを標準化/統合する。
  • アプリケーション導入プロジェクトの委託先は、明確な理由 (特定アプリケーションに関するノウハウや地域間のリソース力の違いなど) がない限り集約する。
○クラウドの採用について
  • インフラストラクチャについては、サービスとしてのインフラストラクチャ (IaaS) やサービスとしてのプラットフォーム (PaaS) を検討の俎上に載せる。拠点共通のアプリケーションや特定業務向けアプリケーションとして、サービスとしてのソフトウェア (SaaS) を選択肢に含める。
  • アプリケーション関連サービスの調達において、プロバイダーのデータセンターの設置状況やアプリケーション・ユーザー企業向けの活用例を確認する。Amazon Web Services (AWS) やMicrosoft Azureなど、グローバルのパブリック・クラウド・ベンダーと、支援先候補となるプロバイダーとのパートナーシップについても確認する。

目次



図目次



戦略的プランニングの仮説事項

2017年までに、業務アプリケーションの海外展開プロジェクトでは、70%以上の企業が、拠点要望の実現や合意と同等以上にプロジェクトのスピードを重視するようになる。



はじめに

国際競争への早期の対応を目指して、国内外の各拠点で業務プロセスを最適化したいという企業の意向は強い。業務プロセスを下支えするアプリケーションについても、標準化/統合をできるだけ短期間で実現することを目指している。海外拠点を持つ企業を中心に、今後の業務アプリケーションの調達において、パッケージの優先度を高く設定する企業が多くなっていることも、その証左といえよう(図1参照)。パッケージを利用することは、開発リソースやコストが掛かるカスタム開発を抑えながら、国内外の各拠点に標準的な業務プロセスを取り入れることにつながる。実際に、ガートナーがユーザー企業に行ったインタビューの結果においても、パッケージ・アプリケーションを利用して、1拠点当たりの実装期間を2〜3カ月に抑えるケースは珍しくなかった。

図1. 海外拠点あり/国内拠点のみの企業のパッケージ/手組みの利用状況



財務会計、生産管理、営業支援といった業務ごとに、当該業務のアプリケーションを海外拠点にも持つ企業、および、国内拠点にのみ持つ企業のパッケージ/手組みそれぞれの回答率を算出し、すべての業務の平均を算出した。
出典:ガートナー (2013年12月)


海外展開を効率的に短期間で実施するには、IT部門だけではなく業務部門が主体となった業務プロセスの調整が必要になる。特にパッケージ・アプリケーションを利用する場合は、エンドユーザーに対して、個別に最適化された従来のアプリケーションとは異なる、標準化されたアプリケーションを活用することの必要性を説明し、理解を求めなければならない。そのためには、IT部門と業務部門のこれまで以上に密接な連携が必要になる。

実装を効率的に進めるために、社内の標準的なアプリケーション仕様へのアドオンやカスタマイズを最小化するには、単一のアプリケーションのみで全地域の業務に対応するよりも複数のアプリケーションを組み合わせる方が効率的な場合もある。

さらに海外拠点については、今後のビジネス拡大を目指す上で、アプリケーション環境の立ち上がりの速さと、ビジネス環境の変化に対する柔軟性も考慮しなくてはならない。ここでは、IaaSやSaaSといったクラウドのポジティブな側面を活用しやすい。

適用範囲の地理的な広がりと実装プロジェクトの「短納期」が求められる業務アプリケーションの海外展開プロジェクトをスムーズに進める先行企業では、上記のように、プロジェクトの推進体制、アプリケーションの選択や適用方法、クラウドの採用という3つの課題に、的確に対応している。



分析

IT部門に対する業務部門からの理解と協力を得るための仕組みを整える

背景:

アプリケーションの海外展開プロジェクトでは、自社のガバナンスや効率化の方針に沿った業務プロセスを国内外の各拠点へ適用することが主な目的となる。企業の経営上、従来とは異なる仕様のアプリケーションが必要であることについて、エンドユーザーの理解を促す必要がある。

こうした背景から、アプリケーション設定やアドオン開発といった技術的な作業以上に、各拠点のプロセスにおける例外を極力なくし標準化する作業と、その取り組みの必要性をエンドユーザーに説明することが、プロジェクトの成否を左右する。パッケージ・アプリケーションを、アジアだけではなく北米や欧州を含むグローバルで展開し、安定的に運用している企業に対してガートナーが行った取材においても、海外展開プロジェクトが「業務プロジェクト」として意識され、IT部門だけではなく業務部門からの協力も密であったことが確認されている。


先行企業に見られる実行例:

CIOなどIT部門のリーダー・クラスが、経営会議の議題として、アプリケーションの海外展開プロジェクトの目的や実行状況を定期的にかつ繰り返し報告する

アプリケーションを海外展開する先行企業のCIOからは、時間がかかる地道な取り組みではあるが、海外展開プロジェクトに着手する前提としてこれを早い段階から行うべきという声が強い。例として、他の業務部門のマネジメント・クラスとの定期的な会議に、海外展開プロジェクトに関する報告を、短時間でも必ず議題として含めるといった活動が挙げられる。定期的に繰り返し行われる取り組みとなるため、IT部門長のリーダーシップと共に、課題やビジネス部門へ協力を求めるべき事項の洗い出し/整理といった、IT部門メンバーの貢献が前提となる。



海外展開プロジェクトを主管する組織として、従来のIT部門を「業務プロセス改革部」などに改称するか従来のIT部門と併設する形で新たな組織を立ち上げる

グローバルIT(アプリケーション)の管理部門として、組織名を変更したり、新たに組織を立ち上げたりすることによって、海外展開プロジェクトの目的がITの改革だけにとどまらないことを示す。これにより関係者の意識改革を図る例が見られる。


こうしたグローバル・プロジェクトの管理組織は依然としてIT部門のメンバーを中心に構成されているが、シニア層の業務部門の社員を迎えたり、組織長を業務部門から任命したりする例もある。

新組織は、アプリケーションのインスタンス(データベース)が置かれる主要拠点を中心に、海外のIT組織やチームの立ち上げの支援を担当する場合もある。



IT部門/IT子会社と業務部門/親会社間の「出向(逆出向)」制度を、人事部と協力して整える


実際にIT子会社からの「出向(逆出向)」を受け入れる企業のマネジメント層からは、「所属組織では機会の少なかった業務部門とのやりとりや海外プロジェクトが経験できるため、『逆出向』する社員のモチベーションが高くなり、IT人材の育成だけではなく業務部門の人材のITに関する理解促進にもつながる」との声が挙がっている。IT部門/IT子会社側から業務部門/親会社へ派遣されることが一般的であるが、前述の新設組織に業務部門のメンバーが加わるという形で、業務部門/親会社からIT部門/IT子会社へ異動する場合もある。各業務プロセスの効率性や妥当性の管理に責任と権限を持つ「プロセス・オーナー」が、業務部門から海外展開を主管するIT部門や新設部門へ異動する例も見られる。



外部委託時に留意すべき点:


IT部門がエンドユーザーに対し、アプリケーションの標準機能の必要性を訴える以上、プロジェクトの計画や管理を支援するサービス・プロバイダーにも、同様の姿勢が必要となる。IT部門のスタッフだけではなくプロバイダーも、経営層やIT部門のマネジメントの決断を支えるために機能し、全体最適やガバナンスの方針に合わないエンドユーザーからの要求を棄却することが求められる。ここでは、アプリケーションの標準機能を使用する必要性を説く「コンサルティング力」が不可欠となる。

委託先の「コンサルティング力」を、各産業や自社の業務プロセスへの理解だけではなく、エンドユーザーをファシリテートする能力の観点でも評価しなければならない。プロジェクトの実施時に、上記のようなファシリテーションを重視する姿勢をサービス・プロバイダーと共有するだけではなく、プロバイダー内で、他のプロジェクトで提示したワークアラウンドの例が、各コンサルタントやエンジニアへ共有されていることを確認する必要もある。


「グローバル」と「リージョナル」の2つの軸で、アプリケーションの標 準化/統合を図る

背景:

アプリケーションを海外展開する場合も、すべての仕様を国内外で統一することは難しい(根拠2参照)。生産、販売といった業務が、国内ではなく海外の特定のリージョン(海外拠点)を中心に行われており、国内にない機能を海外ユーザーのみが使用する場合もある。トランザクション・データの検索/出力のレスポンス・タイムや、時差によるメンテナンス時間の違いなどから、アプリケーション環境(インスタンス) が複数に分かれることもある。

一方で、過度にアプリケーションを分散させることは、展開(導入)のスピードを落とすばかりではなく、導入後の運用効率やガバナンス維持の観点からも負担となるため、避けるべきである。

海外展開プロジェクトを成功裏に実施した企業では、グローバルでアプリケーションを共通化するとともに、そこで共通化できなかった部分についても、可能な限りリージョン・レベルで共通化するという、2軸での取り組みを行っていた。SAPとSAP BusinessOneなど同一ベンダーのパッケージを組み合わせたり、リージョン向けには生産管理など特定分野に、より特化したパッケージを適用したりする例がある (根拠3参照)。なお、こうした展開を可能にするためには、各組織や担当者の役割分担といった組織に関する課題に適切に対応することが必須条件であると意識する必要がある。


先行企業に見られる実行例:


各業務プロセスを有効かつ効率的に維持/管理するための権限と責任を持つ担当者を特定し、グローバル標準として従うべき業務プロセスを明確化する

先行企業では、アプリケーションの海外展開の前提となる組織や役割分担に関する課題への対応として、各業務プロセスの管理者である「プロセス・オーナー」を特定する意向が強い。一部の企業では以前からガバナンス向上のために、業務部門がコンサルティング・サービスなど外部の支援も受けながら、プロセス・オーナーの設置を進めてきた。それだけではなく、アプリケーションの海外展開を契機に、CIOが業務部門のマネージャーと協力してプロセス・オーナーを設置し例もある。業務プロセスのグローバルでの標準化を進めるためには、こうした地域横断的にプロセスを俯瞰する役割が業務部門側に設定され、IT部門と協業することが欠かせない。


海外リージョンの裁量を認める範囲を規定することで、グローバルや、海外の各リージョン間で共通化すべきアプリケーションの仕様を明らかにする


組織/役割分担に関するその他の対応として、リージョンの「自由度(裁量)」を規定することが挙げられる。これにより、「自由度」の範囲に含まれないプロセスはグローバルで標準化するという原則が、拠点の担当者へ伝わりやすくなるため、グローバルでの業務プロセスの標準化も進みやすくなる。


先行企業では、固定資産申告や税関連など拠点固有のレポ―ティング要件への対応と、仕入れや調達など現地のパートナー企業(取引先)とのトランザクション連携が必要な業務について、グローバル標準における例外を認め、リージョンのIT部門に対し、アプリケーションの適用方法や設定に関する裁量を与える傾向が見られる。


上記の対応後の技術的な取り組みとして、グローバル標準とリージョン標準のアプリケーションを決定し、導入する作業がある。先行企業では、海外拠点の業務の一部について、グローバル標準からの例外を認めた場合でも、法制度や取引先対応に共通性が多い拠点については、共通のアプリケーションの利用や設定が前提とされている。


グローバル/リージョンそれぞれのアプリケーションについて、パッケージやその展開(導入)を支援するベンダーの選定を、国内IT部門と海外IT部門(IT担当チーム) の合議により行う


プロセスを共有する拠点グループ間でのアプリケーションの共通化を担保するために、拠点でのアプリケーションや導入支援プロバイダーの選定には、本社のIT部門も関与すべきである。


先行企業では、北米、欧州、アジアといった各リージョンのベンダー/プロバイダーによる提案説明会へ、日本本社の代表者も参加し、共通化のための施策を評価するといった進め方が見られる。こうした企業では、グローバルで共有するアプリケーション(グローバル・アプリケーション)に関する決定についても、リージョンの代表者と本社のCIOの合議によって進めることで、国内外の合意形成の円滑化が図られていた。


外部委託時に留意すべき点:

アプリケーションの選択と同様に、導入(展開)プロジェクトの委託先についても、可能な範囲で集約して、ベンダー管理やプロジェクト推進の効率化を図ることが望ましい。先行企業でも、日本本社と海外拠点で共通して利用するアプリケーションについては、プロジェクトの委託先を国内外で同一にする場合が多い。また、委託先が少数のプロバイダーに限られることによるIT部門の価格交渉力の低下を防ぐために、日本の大手サービス・プロバイダーだけではなく、欧米のグローバル・プロバイダーやインド系プロバイーなど、複数の候補先からの選定を行っていた企業もある。


一方で、現時点では、グローバルの各地域で均一なサービスを提供できるプロバイダーは限られている(根拠4参照)。特に日本の本社と海外拠点で異なるアプリケーションを用いる場合や、アプリケーションの展開先となる海外拠点が広い地域に多数存在する場合は、国内外で異なるプロバイダーに委託するケースも珍しくない。ただし、この場合も、各海外拠点の支援プロバイダーは極力同一にして、拠点ごとの委託先が別々になることを避けるべきである。こうした共通化を進めやすくするためにも、グローバルだけではなく、リージョン・レベルでのアプリケーションの共通化を徹底する必要がある。

クラウドをはじめとする新技術を取り入れることで、アプリケーション の海外展開を効率化/短期化する

背景:


日系企業でのIaaS/PaaSやSaaSの導入は徐々に広がりつつある(根拠5参照)。インフラストラクチャ基盤としてIaaS/PaaSを活用することは、広い地域へアプリケーションを効率的に展開するために有効である。アプリケーション環境(インスタンス)の乱立を防ぐ効果も期待できる。さらに、SaaSを活用すれば、アプリケーションの機能や設定も含め、グローバルでの共通化をより効率的に進められる。


代表的なパッケージ・アプリケーション・ベンダーが自社製品のクラウド対応を進めているだけではなく、アプリケーションの海外展開を支援するプロバイダーも、AWSに自社固有のソリューションを組み合わせるといった提案を活発化している。海外展開を実施する企業でも、クラウドを取り入れる例が徐々に広がりつつある。


IT部門は、アプリケーションの海外展開でクラウドを活用した先行企業の例を参考に、自社で同様の取り組みが有効となる場合がないかを確認すべきである。


先行企業に見られる実行例:


導入期間の短縮、アプリケーションの柔軟性確保、要員不足への対応といった課題を解決する一手として、クラウドを取り入れる

アプリケーションを海外展開する企業でのクラウドの活用例として、以下が挙げられる。

  • バックオフィス業務を中心に、オンプレミスで国産パッケージ (ERP) を利用していたが、ビジネスのグローバル化に伴い、国内外のアプリケーションの刷新を決断した。SAPをAWS上に構築しグローバルで使用することで、旧環境から新環境への移行期間の短縮だけではなく、運用負荷の増加を抑えることにも成功した。
  • 国内のバックオフィス業務においてSAPを使用済みであり、アジア地域のバックオフィス業務のリージョナル・アプリケーションとしてNetSuiteを導入した。SAPとNetSuite間で必要なトランザクションを連携させることで、グローバル/リージョン・レベルでのアプリケーションの標準化を実現した。各リージョンで、本社が管理できないアプリケーション環境(インスタンス)が新たに立ち上がるリスクを排除する効果も得た。
  • 全社の施策である「グローバル人材の育成」を実現するために、各リージョンの人事関連データを統合的に管理するタレント・マネジメント・アプリケーションの導入を決定した。SaaSであるSuccessFactorsを採用することで、経営方針の早期実現に寄与した (根拠6参照)。

特に海外拠点では、IT資産が整っていなかったり、将来のビジネス量の変化が読みにくかったりするため、多大なIT投資を決断しづらい場合がある。拠点ごとに比較的小規模な、異なるIT資産が散在している場合も見られる。こうした場合にクラウドを採用することは、立ち上がりの速さや将来のビジネスの変化に対する柔軟性を確保する上で有効であり、アプリケーション環境の集約や運用負荷の軽減を進める効果も上がっている。


上記の例にある「グローバル人材の育成」など、企業が新たな取り組みを行うために新規のアプリケーション環境をグローバルで立ち上げる場合にも、クラウドは有効な選択肢の1つになる。既に各拠点がアプリケーション資産を持っている場合と比べ、各拠点に既存の業務プロセスやアプリケーションの設定がないため、標準的な機能を当てはめやすい。加えて、取り組みの早期実現や、その進捗度合いに応じたアプリケーションの利用範囲の調整といった面でも、クラウドが適する場合があるとガートナーでは分析している。


クラウド採用の条件の明確化と、それらへの対応を徹底する

海外展開時に有効なツールとなる可能性が高いクラウドであるが、十分な効果を得るには、以下の条件を満たす必要がある。

  • 既存の業務プロセスをアプリケーションの標準機能と合わせるために再設計する。
  • クラウドでは、アドオンやカスタマイズがクラウド以外のパッケージ・アプリケーションの導入の場合よりも難しい。「プロセス・オーナー」との協業など業務プロセスの標準化が特に必要になる。
  • アプリケーションのライフサイクル全般での総合保有コストを確認する。

展開(導入)に必要な初期投資が低くなる反面、利用期間や利用状況によってはコスト高になる場合もある。先行企業では、5年程度のスパンでのコスト比較が実施されている。

  • 顧客/従業員関連など、重要なデータの持ち出しや管理について、海外を含め法制度や社内規定を確認する。

企業には顧客や従業員情報など、アクセス者や社外への持ち出しが制限されるデータがある。加えて、特にアプリケーションの海外展開では、EUやカナダなど国境を越えたデータのやりとりが規制される場合もある (根拠7参照)


外部委託時に留意すべき点:


インフラストラクチャ関連サービスの調達と同様に、アプリケーション関連サービスの調達でも、プロバイダーのデータセンターについて、設置状況やユーザー企業向けの活用例を確認事項とする。大手ベンダーが自社のデータセンターを使って、独自のクラウド・サービスを提供するだけではなく、AWSやMicrosoft Azureをはじめとする他のグローバル・ベンダーのサービスを扱う例も広がっているため (根拠8参照)、こうしたパートナーシップの確認も怠らない。



推奨リサーチ

  • 「ERPシステム・インテグレーション・サービスの評価/選定のベスト・プラクティス」 (SOR-14-32、2014年9月12日付)
  • 「日本におけるERPのハイプ・サイクル:2014年」(APP-14-92、2014年9月5日付)
  • 「スノーデン事件の影響:データ・レジデンシに関する問題」(INF-14-105、2014年8月20日付)
  • 「ケーススタディ:SaaS型タレント・マネジメント導入によってグローバルでの人材情報整備を実現した 伊藤忠商事」(APP-12-18、2012年2月29日付)
  • 下記レポートを閲覧するには、ITサービス・ジャパンのサービスを購入いただく必要があります。
  • 「国内アプリケーション関連サービスの競合分析」(PFST-J1-MT-1413、2014年11月5日付)
  • 「2014年版ERP/SCM/CRMパッケージ関連市場規模予測」(PFST-J1-MT-1405、2014年4月4日付)

根拠

  1. 2014年4月に日本情報システム・ユーザー協会 (JUAS) から発刊された『企業IT動向調査報告書2014』によると、調査への回答企業 (997社) のうち、既に海外進出している企業の割合は51.3%であった。特に「素材製造」業と「機械器具製造」業では進出率がそれぞれ、68.2%、71.1%と高かった。なお、各産業において、前年の調査から大きく増減する傾向は見られなかった。
  2. ガートナーが2013年12月にユーザー企業486社を対象に行った調査では、海外拠点のITシステムについて、「すべての海外拠点(日本を含む)で統一」する方針である企業は41.9%(すべての業務分野の平均)であった。また、「リージョン(北米、東南アジアなど)ごとに統一」は15.5%、「拠点ごとに異なる」は20.7%、「不明(未定)」は21.9%であった。
  3. ガートナーでは、グローバルな共通アプリケーションと、地域別/部門別のアプリケーションの2つ のレイヤで、異なるERPスイートを導入することを「2層ERP戦略」と定義している。「2層ERP戦 略」は、ガートナーのハイプ・サイクルでは啓蒙活動期の初期にあり、本格的な普及が進みつつあ る。詳細は、「日本におけるERPのハイプ・サイクル:2014年」(APP-14-92、2014年9月5日付) を参 照されたい。
  4. 特に日系プロバイダーは、日本の顧客企業向けであっても、海外でのアプリケーション関連サービスの提供は、いまだ強化の途上にあるといえる。詳細は、「国内アプリケーション関連サービスの競合分析」(PFST-J1-MT-1413、2014年11月5日付)を参照されたい。
  5. 2014年4月にJUASから発刊された『企業IT動向調査報告書2014』によると、「パブリッククラウド(IaaS、PaaS)」を導入済みの企業の割合は19.4%と、前年から約8ポイント増加していた。「SaaS」についても導入企業の割合は32.6%と、同調査が行われた2011年 (同13.7%) からの増加傾向が顕著であった。
  6. 本事例の詳細については、「ケーススタディ:SaaS型タレント・マネジメント導入によってグローバルでの人材情報整備を実現した伊藤忠商事」(APP-12-18、2012年2月29日付) を参照されたい。
  7. データ・レジデンシ (Residency) とデータ主権について、企業において多くの議論がなされるようになっており、企業の技術革新にも影響しているとガートナーではみている。詳細については、「スノーデン事件の影響:データ・レジデンシに関する問題」(INF-14-105、2014年8月20日付) を参照されたい。
  8. 主要なアプリケーション関連サービスのプロバイダーは、クラウド・サービスのアプリケーショ ン・ユーザーへの提供を強化しつつある。自社のデータセンター・リソースや海外でのサービス提供の実績が限られる場合、グローバルで実績があるパブリック・クラウド・ベンダーとの協業を、海外展開プロジェクトの支援強化の一手として進めるプロバイダーもある。詳細は、「国内アプリケーション関連サービスの競合分析」(PFST-J1-MT-1413、2014年11月5日付) を参照されたい。


SOR: SOR-14-45
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