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SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

ITインフラ部門は、未来へ向けてトレンドをリードせよ

インフラストラクチャ (INF)/INF-13-161
Research Note
D. Scott
掲載日:2014年9月16日/発行日:2013年11月29日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2014年10月28日(火)〜30日(木)に開催する 「Gartner Symposium/ITxpo 2014」 のページを是非ご覧ください。(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)


多くのITインフラストラクチャとオペレーション(I&O) 部門は、煩雑な各種の現場対応に追われるあまり、次のタスクやイニシアティブを考える時間がない。クラウド・コンピューティングやモビリティを含む「力の結節」のトレンドの多くは、I&Oリーダーが今すぐプランニングに着手し、変化に向けた戦略計画を策定しない限り、I&O部門の長期的な存続を脅かすものとなる。

要約

主要な課題

  • I&O部門の貢献をビジネス価値に結び付けることができないと、企業はI&O部門を過小評価し、コモディティと見なすようになる。
  • パブリック・クラウド・コンピューティングのサービス・プロバイダーが、自社データセンターでホスティングされる従来型ソリューションの代替となる魅力的なサービスをビジネス部門に提供しているため、IT部門では仲介者の役割を果たす傾向が強まる一方でITアーキテクチャに対するコントロールを失う傾向も加速している。
  • I&O部門はコンシューマライゼーションによる重圧を受けており、ビジネス部門との連携強化、迅速な変化、ユーザー・エクスペリエンスの設計、外部のデータや協力者へのアクセスの利便性向上、コンシューマー用のデバイスとアプリケーションのサポート、これまで以上に革新的なサポート・プロセスへの優先的な取り組みを求められている。
  • I&Oチームの大半は、将来のニーズに見合うスキルセットを備えていない。


推奨事項

  • I&O部門に押し寄せる変化を受け入れ、厳格な変更管理ではなくガバナンスを重視する。
  • アウトソーシングまたはクラウド (Cloud) へのソーシングを推進する際は、技術的に熟練した人材が自社に残るよう動機付ける。
  • 複雑性を低減し、乏しいI&Oリソースで最大のビジネス効果が出るように配置するため、アプリケーション、インフラストラクチャ、マネージド・サービスを合理化する。
  • I&O部門を、サービスの卓越性の先にあるビジネスの差別化と変革に向けて移行させる。


目次

  • はじめに
    • I&O部門の課題
      • ビジネス価値に対するI&O部門の貢献
      • テクノロジ
      • クラウド・コンピューティング
      • モビリティ
      • 人材の調達とスキル
    • ベスト・プラクティスのプレビュー
  • 分析
    • 厳格なコントロールではなくガバナンスとガイダンスを重視する
    • ITの工業化に応じて、I&O部門を価値とサービスの卓越性を目指すものとして位置付ける
    • 社外からサービスを調達する場合は、戦略的ビジョンと技術スキルが失われないようにする
    • アプリケーション、インフラストラクチャ、マネジメント・サービス全体にわたり サービス・デリバリを合理化する
    • 攻勢に転じる:イノベーションを尊ぶ文化を確立することにより、ビジネス運営の先に進む
  • 推奨リサーチ

図目次

 図1 ペース・レイヤリング対応型I&O戦略への移行

 図2 インフラストラクチャ合理化のためのアプリケーション合理化



はじめに

I&O部門は、以下のように極めて特殊な変化にさらされている。

  • インターネット販売や、ガートナーの提唱する「力の結節」(インフォメーションとアナリティクス、クラウド・コンピューティング、モバイル・コンピューティング、ソーシャル・メディアの結び付き)の結果として、ビジネスが創出され、再調整を迫られ、変革を余儀なくされ、これまでの役割は終焉を迎えつつある。
  • 外部からもたらされる規制が、産業界の大変革を促している。例えば、米国では患者保護および医療費負担適正化法(いわゆる医療保険制度改革法)によって医療サービス提供側への支払い方法が変更され、ドッド・フランク法とバーゼルIIIはそれぞれ米国と英国の金融サービス業界において銀行の業務プロセスとコンプライアンス体制に影響する。
  • CEOは、ITの活用を通して企業の拡大と変革を追求している。ガートナーがCEOを対象として2013年に実施した調査によると、CEOの80%はコストの削減ではなくIT投資の拡大を進めている (根拠1参照)。
  • 企業はしばしばアーキテクチャとプロセスを大幅に変更するため、IT/サービス・ソリューションの急速な進化は、重要な機会をもたらすだけではなく、製品/サービスの評価やその採用に向けた正当性の立証において、従来の分析が役に立たない事態も生み出している。

これらの変化は、経済の停滞を振り切って自社を刺激的な成長へと向かわせるものと受け止められているため、大半のITリーダーと企業にとっては好ましいものである。しかしIT部門の多くは、一連の変化に乱打されたも同然であり、その結果として機能不全に陥っている。これはI&Oの将来にとって最大のリスクであり、最悪の反応であるといえる。I&O部門が自社にとって価値ある存在であり続けるためには、これまで以上のペースで変化と進歩を続けなければならない。テクノロジが動的なものであるのと同様に、I&Oも動的な存在でなければならない。今は亡き社会評論家のWill Rogers氏は、「正しい道にいたとしても、座っているだけでは車にひかれてしまう」と述べている。

本リサーチノートでは、I&O部門が直面している課題とそれらへの対処法を提示する。まず5つの主要な課題を指摘し、それらを解決するためのベスト・プラクティスを検討していく。


I&O部門の課題

I&Oリーダーは、サービス・デリバリの基盤を揺るがす数多くの課題に直面している。ここでは、現在のI&Oリーダーが直面している最重要課題について概説する。課題のうち2つは、ガートナーが提唱する「力の結節」の一部であるクラウド・コンピューティングとモビリティである。


ビジネス価値に対するI&O部門の貢献

I&Oリーダーが直面している最も深刻な課題は、I&Oの貢献が最終的な成果 (ビジネス価値) と結び付いていないことであり、したがって、ほかと分離した存在であり切り捨ててもよいと見なされる例が多い点である。これは、サービス・デリバリがビジネスを裏から支えている (つまり不可視のプロセスである) ことに由来する大きな問題の1つである。I&O部門は、リスク、パフォーマンスの可用性、キャパシティ、ユーザー・エクスペリエンスなどの管理といった多くの重要な業務を陰で遂行している。しかし、I&O部門を利用する側がこうした業務を理解していることはまれである。さらに、I&Oリーダーは、アプリケーション部門を顧客として考える傾向にある。アプリケーション開発部門は外部顧客へとつながるサービス・デリバリ・チェーンに属しているが、顧客ではない。したがってI&Oリーダーにとっては、チェーンを構成する次の要素が何であるかだけでなく、最終顧客へと向かうすべての過程、最終顧客にもたらされる価値、I&O部門が支えているビジネス・プロセスについて考え始めることが肝要である。ビジネス・イノベーション、ビジネス・プロセス、外部顧客の自社へのロイヤリティ、ビジネスとテクノロジにおけるリスクの管理、自社の売り上げと利益に対するI&O部門の貢献度をビジネス・リーダーがこれまで以上に理解すれば、I&O部門は切り捨ててもかまわないと見なされることはなくなり「不可欠な存在」となる。

「シャドーIT」(すなわち、企業のIT予算の枠外で投じられるIT予算) が激増している。この原因の一端は、ビジネス部門 (LOB) がおそらくは会社名義のクレジットカード1枚で社外クラウド・サービスを採用していることにある。高額に達するまでに増加しているそのほかの支出としては、ITの枠外で資金が調達される商取引と電子化がある。例えば、デジタル・マーケティングには企業収益の平均2.5%が投じられており、9%の伸び率となっている一方、ITに投じられているのは企業収益の平均3.5%であり、伸び率は実質上横ばいである (「Key Findings From U.S. Digital Marketing Spending Survey, 2013」参照)。多くの企業でIT予算が伸びを見せていない一方、ビジネスの成長、変革、再建を目指すこうしたイニシアティブはI&Oに関する専門知識を持つ人材の関与も活用もなしに進められる例が多い。ITの枠外で投じられるこうした支出は、シェアード・サービスはもちろん、特にI&O部門の価値を過小評価するものである。


テクノロジ

テクノロジは、かつてないほどのペースで変化し続けている。これは、ITのみならず科学にも当てはまる。科学は、ロボット工学や3Dプリント、医療におけるゲノム・マッピング、ウェアラブル・コンピューティングの発展に向けた革新的リサーチ・プロジェクトとしてのGoogle Glassなどの例が示すように、さまざまな産業に急速な変化をもたらしている。エンドユーザーの啓発とイノベーションの実現に重要な役割を担うI&Oリーダーは、CEOが追求し、CIOが実現したいと考えているビジネスの成長と変革 (「CEO and Senior Executive Survey 2013: As Uncertainty Recedes, the Digital Future Emerges」参照)に大いに寄与することになり、こうしたトレンドによって有利な状況に置かれることになる。ただし、それ以外のI&Oリーダーは、新たなテクノロジがもたらすイノベーションの外に置かれ、陰でITサービスを提供するデータセンター・アーキテクチャやインフラストラクチャ・アーキテクチャにますます注力することになる可能性がある。その場合でも、同様に大きなビジネス・メリットにつながり得る大きな変化が起ころうとしている。ただし、リスクとサービス・レベルの最適な管理は重要であり、I&O部門の差別化要素である反面、それはビジネス部門が期待していることである。I&O部門がビジネス部門に信頼されるパートナーとなるには、テクノロジにおける上述の急速な変化と力の結節を生かして前面に立つことにより、ビジネス部門にメリットをもたらす必要がある。

I&O部門は、イノベーションを実現する一方で、サービスの卓越性も追求し続けなければならない。インフラストラクチャのアーキテクチャをより標準化、コモディティ化、自動化することによって、コストの削減と俊敏性の向上を図る余地は大いにある。I&O部門が先手を打って、例えばネットワークのプロビジョニングと運用の自動化によって設備投資 (capex) と運用コスト (opex)を削減できるか否かについて、ソフトウェア・デファインド・ネットワーキング (SDN) を評価することもできる。ストレージの分野では、センサ、工作機械、ソーシャル・メディアからのデータといった非従来型データの爆発的な増加を受けて、企業はストレージ・コスト抑制のためにコモディティ・ストレージに移行している。さらに、新たにパブリック・クラウド・ストレージというイノベーションが市場に起こりつつあり、ビジネス・データの50%は2017年までにオフプレミス(社外配置)となる。サーバ・インフラストラクチャも急激に変化しており、大幅な自動化と設備投資や運用コストの低減が可能になる。最後に、企業は社内・社外のクラウド・ベース・サービスを採用する際に適切なガバナンス・ポリシーや仲介ポリシーを導入しようとしており、クラウド・コンピューティングがIT運用管理市場を変えようとしている (「Cloud Will Change IT Operations Management」参照)。


クラウド・コンピューティング

クラウド・コンピューティングはビジネス機会をもたらすと同時に、I&Oアーキテクチャのコントロールを奪う。

  • 2016年までに、エンタプライズ・ソフトウェアの売り上げの20%をサービスとしてのソフトウェア (SaaS) が占める (「Market Trends: SaaS's Varied Levels of Cannibalization to On-Premises Applications」参照)。SaaSは企業IT部門の関知外でビジネス部門によって採用される例が多いが、そうでなければ企業IT部門がSaaS採用の認可とガバナンスを担当する。SaaSの場合、I&O部門はデータセンターの設置場所はもちろん、サービスとしてのインフラストラクチャ (IaaS)やマネージド・サービスのプロバイダーをはじめとする無数のプロバイダーが含まれるサービス・デリバリ・チェーンさえも管理できない。これらのアプリケーションはパフォーマンス、可用性、リスクの管理と同様に、社内の他のアプリケーションとの統合も必要となる。
  • CIOの関心はクラウドに向けられており、I&O部門の価値を過小評価する傾向がさらに進んでいる。2013年にガートナーがCIOを対象として実施した調査では、CIOの55%が「2020年までにすべての重要なアプリケーションをクラウドへのソーシングに移行する」と述べた(根拠2参照)。プライベート・クラウドは導入と価値の実証に課題を抱えているために、この調査においてはパブリック・クラウドとプライベート・クラウドを指定もしくは区別しなかったものの、ビジネス部門では、必要なサービスを社内で調達できなければ社外から調達する傾向が強まっていることをガートナーは確認している。結果として、I&O部門は激しい競合状態に直面しており、自らの価値提案を正面から行う必要がある。
  • 多くの企業が依存してきた従来型エンタプライズ・ソフトウェア・ベンダーも、遅まきながらクラウド製品に参入している。当初、大規模ベンダーの多くはクラウド・コンピューティングを信用に足らぬものと見なしていたか、あるいは抵抗感を示していたが、一般利用者の意向は既に明らかであると実感し、この成長機会に参加したいと考えて、現在は多額の投資を行っている。SaaSは従来のエンタプライズ・ソフトウェアと比較すれば参入障壁が低く、新たなプロバイダーが絶えず市場に参入しているように見受けられる。皮肉なことに、従来型エンタプライズ・ソフトウェア・ベンダーがイノベーションを推進していれば(つまり、アーキテクチャ再編、着実なアップグレード、コンフィギュレーションを通じたカスタマイズ性の維持、全体的な複雑性の低減を実現していれば)、こうした激しい競合状態が生まれることはなかった。I&O部門にとっての課題は、かつてないほどの統合が進んだ状態で、これまで以上に多数のロケーションにおいて、さらに多くのベンダーを企業が管理しなければならないことである。

モビリティ

モバイル・コンピューティングは、おそらく最も大きな技術発展を見せている分野であり、すべてのアプリケーション、すべてのモバイル、すべてのデバイスがその対象となっている。モバイルにおける機会については、どの企業もやっと表面に触れた程度である。従業員や顧客によるモバイル・デバイスの活用によってスマートフォンとタブレットの利用が一般化し、一般消費者の期待も高まっているため、数々の企業が外部顧客向けに新たなユーザー・エクスペリエンスと機能を生み出し続けている。モバイル・イニシアティブでは、多くの場合、モビリティを想定せずに構築されたアプリケーションとサービスのアーキテクチャが更新されることになる。

外部顧客は従業員でもあるため、業務プロセスの刷新という新たな期待を抱いて職務に当たる。結果、社内のエンタプライズ・アプリケーション・ストアがエンタプライズ・アプリケーションのフロントエンドとなるとともに、新たなプロセスを実現するものとなり、生産性の向上とイノベーションが進む。社内アプリケーション・ストアは、マインド・シェアにおいて社外のクラウド・ベース・アプリケーションと競合している例が多い。したがってIT部門は、モバイル・アプリケーションの開発、統合、マーケティングに加えて、自身で完全にはコントロールしていないアプリケーションとデバイスについてはセキュリティ・リスクのバランス確保と管理の実行を求める重圧を受ける。I&O部門は、エンタプライズ・アプリケーションへのアクセス方法に関するコントロールを次第に失っている。代わりに、ビジネス部門のエンドユーザーがコントロールを獲得しつつある。


人材の調達とスキル

かつて市場を席巻したエンタプライズ・ソフトウェア・ベンダーとまったく同様に、多くのIT部門も将来に向けた人材を適切に調達していない。

  • 第一に、優秀な人材の一部は、各自のエンジニアリング・スキルと技術スキルに見合う高報酬が得られる、大規模かつ革新的なサービス・プロバイダーやベンダーへ流れる。
  • 次に、企業がアウトソーシングやクラウドへのソーシングを進めると、多くの場合、I&O部門は自身が擁する最高の技術スキルを失う。結果として、重要なITスキルの頭脳流出を招く企業が増加する。

不足している要素は、技術スキルに限定されない。I&O部門で不足している最大のスキルは、おそらく、I&O部門の価値をビジネスへと結び付け、社内と社外のサービスを仲介し、社内サービス・デリバリの競争力を評価してインソーシングとアウトソーシングのどちらを採用すべきかを判断できるビジネス・スキルである。営業とマーケティングのスキルがそれに続く。企業にとって、自社I&O部門を利用しなければならない理由はない。さらに、サービス・デリバリのコストを把握して競合勢力と比較するという必須の財務管理スキルを備えたIT部門は、ほとんど存在しない。企業の規模が大きくI&O部門がエンジニアリングとオペレーションに長けている場合は、クラウド・プロバイダーを採用するよりも社内でサービスを提供する方が低コストとなる。I&Oリーダーは、自身の価値を証明しなければ絶えず攻撃にさらされ、過小評価される。I&O部門はそれ自体に抗しがたい魅力が存在するわけではないが、同時に、ビジネスを陰で支える存在の価値を売り込むことをせず、どの部分でどのようにI&O部門を差別化できるのかを理解していないという過ちを犯している。世界はI&O部門の周りを回っており、I&O部門の果たす役割と職務の周縁で生計を立てている。同時に、人口統計上の大きな転換が進行中であり、55歳以上で従来型のITスキルを擁する多くの労働者は10年後に職を退くことになる。企業は、スキル逼迫への対処とプラットフォームの移行をどのような形で同時に進めるのか。

I&O部門は、これらの課題の軌道を修正し、過小評価される立場から不可欠な存在へと変わるために、今後5カ年のシナリオを策定する必要がある。I&O部門が将来に備えるに当たって、ガートナーでは、直ちにプランニングを行って戦略的な行動計画を策定し、新たな世界はもはや以前の世界秩序に戻らないという事実を受け入れることからスタートするよう推奨している。新たなI&O部門には、新たな計画テクニックが必要である。


ベスト・プラクティスのプレビュー

I&Oリーダーにとってのベスト・プラクティスを以下に示す。

  • 厳格なコントロールではなく、ガバナンスとガイダンスを重視する。
  • サービスの開発とデリバリについては、社外サービス・プロバイダーの方法論に倣う。
  • 社外からサービスを調達する場合は、戦略的ビジョンと技術スキルを維持する。
  • アプリケーション、インフラストラクチャ、管理サービスの全体にわたりサービス・デリバリを合理化する。
  • イノベーションを尊ぶ文化を確立し、単なるビジネス運営を超えて先に進む。
  • 自社ビジネスに関するI&Oチームの知識を深めて、I&O部門がビジネス成果の実現に向けてテクノロジの有効活用を効果的に支援できるようにする。
  • コンシューマライゼーションの流れには、場当たり的ではなく戦略的な対応を取る。

分析

厳格なコントロールではなくガバナンスとガイダンスを重視する

I&O部門は、世界が以前の状況に立ち戻ることを期待してはならない。絶えざる変化が新たな規範となる。I&O部門にとって、新たな世界とは競合状態であり、コンシューマライゼーションである。これらに抵抗するのではなく、これらを取り込むことが推奨される。かつては、コントロールが重視されていた。管理されていなければならない領域において緩みが生じるたびに (クライアント/サーバ型アプリケーションや初期のモバイル・デバイスなど)、IT部門が最終的にコントロールを回復し、正常な状態へと復旧させていた。

従業員は、個人所用のデバイス、アプリケーション、ソーシャル・ネットワーク、データを職場に持ち込む。企業はクラウド・サービスを購入する。新たな世界では、一元化されていないコミュニティの活力とイノベーションが利用され、I&O部門は監視役から案内役や助言役への変貌を求められる。業務の世界も変化のときを迎えている。焦点となるのは、自治、コラボレーション、社外業務リソースの使用、ジョブ・シェアリング、データ分析といったスキルである。この新たな世界では、新たな現実を生かすことによって最適なリスク管理とビジネス価値の増大を図れるよう、I&O部門が企業の案内役を務める必要がある。

I&O部門の価値提案の1つは、リスクの管理である。コントロールが存在しない世界で、どのようにリスクを管理するのか。その1つの方法は、万能の策が存在しないという現実を認識することである。I&O部門が責任を負う業務は膨大である。アプリケーションまたはサービスごとにエンジニアリング、サービス・レベル合意 (SLA) 管理、キャパシティ管理、パフォーマンス管理、可用性管理、リスク管理などの数多くのタスクとプロセスが存在する。要求されるスピードや変化と膨大な量を考えたとき、I&O部門がこれまでと同じ方法で業務を遂行し続けることは可能であろうか。これまでのところ、I&O部門は不可欠な存在という位置付けを獲得するどころか過小評価されているため、答えは「ノー」である。

ガートナーでは、I&O部門に対してペース・レイヤリング戦略への移行を推奨している。ペース・レイヤリング戦略では、企業がアプリケーションとサービスを分類し、手元のジョブに応じてI&O部門の規模を適切に調整する。I&O部門は、場合によっては、説明責任をアプリケーション・チームかビジネス部門に快く委譲する。ペース・レイヤリングで評価する他のシステムよりも変更頻度が低い記録システムと、ダウンタイムがビジネスに甚大な影響を及ぼすシステムの場合は、I&O部門が引き続き厳格な変更管理を実施し、サポートされ既に実績のあるインフラストラクチャ・アーキテクチャを利用する。その一方で、迅速な変更が要求され、障害に伴うリスクよりも変更がもたらす価値の方が大きい領域や、障害を抑制できる領域では、迅速に移行を進め、インフラストラクチャとオペレーションのプロセスについてしかるべき妥協点を設定しても構わない。企業によるコントロールは減少し、ベスト・プラクティスに関するガイダンスが多用される。I&O部門は、マイナスの影響が生じるリスクを低減するため、I&O以外のチームがベスト・プラクティスに沿って実稼働環境に変更をリリースすることを許可してもよい。これは、多くのE-Commerce企業やハイパースケール企業が取り入れている手法である。コントロールは共有され、アーキテクチャに反映される。I&O部門は、レイヤに応じてさまざまなレベルでガイダンスとポリシーを提供する (図1参照)。





図1 ペース・レイヤリング対応型I&O戦略への移行



出典:ガートナー (2013年8月)




ペース・レイヤリング戦略の概念は、I&Oサービスの構築と管理だけではなく個人所有デバイスの業務利用 (BYOD) プログラムの管理性とセキュリティのバランス確保も目的としている。これは、実行可能な操作をデバイス層で管理するという考えに基づいているが、コンテナ・レベル、次にアプリケーション・レベルまで管理をスタックの上方へと拡大することによって、エンタプライズ・アプリケーションに必要なセキュリティを確保する。5〜10年前には、すべてのセキュリティをデバイス層で設定することも可能であった。現在は、適切な水準のアプリケーション・セキュリティ・リスク管理を実施するには、複数のツールが必要となる。すべてに対応する万能のツールは存在しない。

ペース・レイヤリング戦略という概念について、もう1つ例を挙げるとすれば、契約管理に関連する監督業務がある。ビジネス部門の多くは、契約管理について社外ITサービスに支出する際に、対応が遅すぎるという認識からIT部門に助言を求めない。しかしIT部門は、ビジネス・リスクからプロセスを減速せざるを得ない場合を除いて、プロセスを減速させるべきではない。契約管理の例では、緩和すべきリスク評価の判断に役立つ何らかの評価基準 (例えばミッション・クリティカル性) に応じて契約を分類することが推奨される。契約がミッション・クリティカルではないITサービスに関するもので、エンタプライズ・アプリケーションとITプロセスへの統合をほとんど必要としない場合、IT部門が行う監督は最小限とする。その場合、インシデント管理のプロセスとサポートをI&Oに統合する作業が、おそらく唯一の監督業務となる。

極めてミッション・クリティカル性の高いITサービスを採用する場合は、相当規模のデュー・デリジェンス (事前調査) を実施するのが当然である。これには、例えば設備や運用統制のオンサイトでのリスク評価、アプリケーション・アーキテクチャ、セキュリティ・アーキテクチャ、行程表のリスク評価、ディザスタ・リカバリ・テストへの積極的な参加、SLAや改善余地の評価に向けたベンダーとの定期ミーティング、大幅なITプロセス統合が含まれる。IT部門にとっては、重要事項に加えてビジネス・リスクの管理を要する部分に時間を割くことが肝要である。このデュー・デリジェンスは重要な付加価値であり、文書化してビジネス・リーダーに通知すべきものである。


ITの工業化に応じて、I&O部門を価値とサービスの卓越性を目指すものとして位置付ける

I&Oリーダーは、初期のサービス・プロビジョニング、アプリケーションとインフラストラクチャの監視、動的な適応性 (リアルタイム・インフラストラクチャ [RTI] とも呼ばれる) を含め、IT運用サービス・デリバリの大部分について自動化を計画しなければならない。インシデント管理と変更管理さえも、最新の標準によって自動化が進む。プロセスの設計と導入、反復的かつ自動的なエンジニアリングの実現、継続的な改善によるイノベーションの推進には、高度なスキルを備えたI&Oプロフェッショナルが必要である。継続的なサポート、メンテナンス、コンフィギュレーション、定例的な反復作業については、必要なI&Oプロフェッショナルの数が大幅に減少する。I&O部門の人員は、製造業従事者が長い時間を経て大幅に減少したのと同様に、長期的には減少するが、生産性は向上していく(米国労働統計局によると、米国では、製造業従事者の割合が1950年の30%から2007年に10%まで減少した)。さらに、SaaSの採用によって、変更の受け入れと実施を迅速化する必要性が高まり、社内のDevOpsとアジャイル開発のイニシアティブについても同様となる(「ITサービス提供の迅速化に向けたDevOpsのベスト・プラクティス」INF-13-129、2013年9月30日付参照)。

I&O部門は、こうしたトレンドに抵抗するのではなく、競争がもたらす転換という健全な価値を認識し、一連のトレンドを受け入れる必要がある。例えば、サービスの開発とデリバリについてはパブリック・クラウド・プロバイダーの方法論に倣う。クラウド・プロバイダーは注文に合わせてサービスを組み上げるという精神を重視し、セルフサービスの考え方を提供サービスに強く反映させ、(インフラストラクチャとオペレーションにおいては)可能な限り標準化を採用することによって大幅な自動化とサービス・デリバリ・コストの低減を実現している (結果として粗利益が上昇する)。I&O部門がクラウド・プロバイダーと同一のアプローチを採用した場合、ガートナーの調査においてCEOが求める成果として挙げたビジネスの差別化と変革を実現するためには、カスタマイズするのが当然な部分についてはカスタマイズに注力することが考えられる。さらに、パブリック・クラウド・プロバイダーは顧客を増やしたいと考えているため、自社サービスのマーケティングと売り込みを行う。新たな競争環境に対処するには、IT部門も同様のスキルを習得しなければならない。つまり、IT部門内に新たな役割と対応能力(例えば、サービス・マネージャー、製品マネージャー、ソリューション・アーキテクト、自動化スペシャリスト、営業とマーケティングの専門家など) を設定しなければならない。


社外からサービスを調達する場合は、戦略的ビジョンと技術スキルが失われないようにする

多くの企業は、I&Oをアウトソースした際に、技術面で深刻な頭脳流出を経験している。アウトソーシングで成果を得られない結果、サービス・デリバリを社内調達に戻すことを望んだとしても、必要なスキルが不足しているためにその方法が分からず、困惑する例が多い。

ITサービスのデリバリをブローカーに頼る場合も、技術スキルは引き続き有用なものとなる。アウトソーシングまたはクラウドへのソーシングを採用する際に、スキルを喪失してはならない。クラウドの定義上、技術面での詳細は利用者側からは見えないとされるものの、これは、リスクの管理と緩和に携わる担当者に対してもこうした詳細を隠すべきであるという意味ではない。ビジネスのイノベーションを推進し、サービス・デリバリに確実を期すために利用者からは見えないところでベンダーが行っている作業の最適な管理を行うには (ただし、重要な契約条件についてのみ。ペース・レイヤリングの概念を想起されたい)、技術スキルが必須となる。サービスがミッション・クリティカルなものである場合は、重要な技術スキルをベンダー関係の管理と説明責任の維持に振り向ける。調達部門は、サービス・デリバリに自信が持てるようベンダーの内実を見通すために必要なスキルや、イノベーション(ベンダーと共通のメリットが得られる可能性がある)に関してベンダーと連携する上で必要なスキルを備えていない。

I&O部門は、ITサービスの卓越性とイノベーションを適切に実現するために必要な新たなスキルと役割を継続的に獲得していかなければならない。例えば社内で確保することが重要となるスキルの1つは、戦略的ビジョンとアーキテクチャに関するスキルである。ビジネス戦略をIT戦略とアーキテクチャに変換する能力は、企業にとって重要なビジネス成果を獲得する上で鍵となるコア・コンピテンシである。全体的なビジョンと戦略はエンプライズ・アーキテクチャの範囲に含まれる場合もある反面、戦略的プロセスや戦略の設計と実行全般に対して、I&O部門が果たす役割は重大である。例えば、ビジネス部門とIT部門の間で持続的なフィードバック・ループを形成する手段の1つとして、混乱をもたらす恐れのあるテクノロジとオペレーションについて主要な利害関係者に周知する (「Use Five Best Practices to Increase EA Stakeholder Engagement and Support」参照)。


アプリケーション、インフラストラクチャ、マネジメント・サービス全体にわたりサービス・デリバリを合理化する

IT業界に昔から伝わる名言に、「レガシー・システムは決して廃止されない」という言葉がある。しかし、おそらくは廃止されるべき時期に達しており、I&O部門は廃止を促すための影響力を備えている。多くの従来型アプリケーションと記録システムの使用期間は、10年から20年である。使用期限の近づいているアプリケーションをI&O部門が廃止する場合は、インフラストラクチャも廃止して複雑性を緩和する。さらに、これに弾みをつける要素もI&O部門の側に存在する。2013年のガートナーCIO調査によると、レガシー・システムの近代化は、最重要テクノロジ上位10項目のリストで5番目となっている。

図2に示したマトリクスは、意思決定に役立つものである。意思決定の理想的な位置付けは右側の2つのクアドラント (最適化と維持)であり、アプリケーション・サービスのもたらすビジネス価値が高い。最も理想的なのは、アプリケーション・サービスが右下のクアドラント(維持)に位置付けられる場合であり、ビジネス価値は高く、サービス・デリバリ・コストは低額から中程度の額となる。右上のクアドラント(最適化)で意思決定を進める場合は、サービス・デリバリ・コストを削減する余地が存在している。アプリケーション・サービスのもたらすビジネス価値が低いかまたは中程度の場合、コストの削減と複雑性の低減を実現するにはアプリケーションを廃棄または統合すべき時期に至っている可能性がある。こうした分析を実施するには、相応に正確なサービス・デリバリ・コストを提示できるよう、IT部門がI&O部門に財務管理と原価計算への投資を要求しなければならない。ビジネス価値の評価、評価結果の分析、行動計画の策定には、ビジネス・プロセスの所有者やアプリケーションの所有者と連携を図るイニシアティブも必要となる。さらに、爆発的に普及が進むモバイル・アプリケーションを有効に活用して、アプリケーションの近代化と共に、プロセスに含まれているポートフォリオの合理化を実施することが推奨される。





図2 インフラストラクチャ合理化のためのアプリケーション合理化



出典:ガートナー (2013年8月)



マネージド・サービスの観点から見ると、サービス・デリバリ (「ビジネス運営」)には差別化要素が存在する。特定のサービスは差別化が可能な場合がある。つまり、I&O部門以外には提供できないサービスを提供するならば、それは差別化可能なサービスである。差別化要素は、サービス・レベルの達成、コスト、リスクの管理にも存在する。例えば、クラウド・プロバイダーが提示するコストの3分の1でI&O部門が社内に電子メール・サービスを提供できる場合、これは差別化可能なサービスの1つである。この例では、「クラウド・プロバイダーの料金との差額が利益として最終的な収益に反映されるか否か」という論点が提起される。大半の企業は「反映される」と答えるはずである。

差別化が不可能なコモディティ化した業務は他者に依頼し、差別化可能なサービスに時間を割くことが推奨される。差別化可能なものについては、I&O部門が年1回ベンチマーク評価を実施して現状を維持すべきか否かを判断し、クラウド・プロバイダーなどの競合する存在と比較してどのような理由でどのように優れているのかについて宣伝と売り込みを行う。I&O部門の提供する価値が企業に理解されるよう、陰の存在を脱して正面から取り組む。


攻勢に転じる:イノベーションを尊ぶ文化を確立することにより、ビジネス運営の先に進む

大半のIT部門、および特にI&O部門は、利用者から見えない陰の存在として業務に携わっている。I&O部門はアプリケーション部門と直接対話するものの、I&O部門自体は視野が狭くなる傾向がある。また、提供している価値を明示することも躊躇する。I&O部門の業務を理解していない外部のグループは、いとも簡単に、I&O部門は切り捨ててもよいとか、I&O部門の業務はコモディティ化していると考える (もしコモディティ化しているのであれば、クラウド・プロバイダーやサービス・プロバイダーのサービス停止がこれほど多く発生するはずはない)。多くの企業がI&O部門をそのように捉えている理由は何か。I&O部門は差別化が可能な存在である。I&O部門は、差別化要素がどこに存在するかを正確に把握するとともに、その差別化要素のマーケティングと売り込みを実行しなければならない。その糸口となる方法の1つは、ITサポート・モデルの変革を行って事前対応型のビジネス生産性担当チームとなることである (「The Eight Building Blocks of CRM: Strategy」参照)。

ビジネスは成長と変革を追求しているため、さらに多くの取り組みが必要である。CEOを対象にガートナーが実施した調査では、4対1という差でIT支出の増加が減少を上回っているものの、これは必ずしもIT予算の枠内でのことではない。例えば、IT支出はマーケティング部門やそのほかのビジネス部門で発生している場合がある。しかし、I&O部門が擁する専門知識と能力は、ビジネスのイノベーションと変革を推進する上で不可欠なものとなり得る。優れた社外サービス・プロバイダーと優れた社内サービス・プロバイダーの決定的な相違点は、後者が同一のチームに所属し、同一のビジネス戦略を担っていることである。社内サービス・プロバイダーは、企業のビジネスと文化を理解していると同時に、ほとんどの社外プロバイダーが入り口に立つことすらできない位置に立っている。

現在は、タスクやプロセスの合理化と自動化を進め、イノベーションの創出に投資することによって、前述の差別化要素を有効に活用すべき時期に来ている。I&O部門は、顧客の要件を把握し、他部門と対話し、相互に連携を進め、質問し、意見を聞く必要がある。ビジネス部門はI&O部門およびその専門知識を必要としているため、I&O部門は、イノベーション推進とビジネスへの付加価値創出の方法を追求する必要がある。



推奨リサーチ

「CEO and Senior Executive Survey 2013: As Uncertainty Recedes, the Digital Future Emerges」

「Market Trends: SaaS's Varied Levels of Cannibalization to On-Premises Applications」

「Research Presentation for 'Hunting and Harvesting in a Digital World: The 2013 CIO Agenda'」

「Use the Pace-Layered Application Strategy to Guide Your DevOps Strategy」

「How to Differentiate Governance and Change Management in Your Pace-Layered Application Strategy」


根拠

  1. ガートナーがCEOおよび上級経営幹部を対象として実施する年次調査の第10回は、2012年の10月から12月にかけて実施された。この調査結果によると、あらゆる業種にわたるビジネス・リーダーにおいてIT投資の増加が削減を上回っており、その比率は4対1よりも大きい。しかし、CEOはそれでもなおIT投資の14%は無駄であると考えている。
  2. ガートナーのCIO調査は、1999年から実施されている。2013年の調査は2012年9月から12月にかけて実施され、41カ国以上、36業種から2,000件を超える回答が得られている。クラウド・コンピューティングは、CIOが考えるテクノロジの優先順位において、アナリティクス/ビジネス・インテリジェンス、モバイル・テクノロジに続く第3位にランキングされている。重要なアプリケーションとオペレーションをすべてクラウドへのソーシングに移行する時期に関する質問に対しては、3%が「既に実施」、25%が「2016年まで」、27%が「2020年まで」、45%が「時期は不明」と回答した。



(監訳:亦賀 忠明)
INF: INF-13-161


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