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SAMPLE RESEARCH

サンプル・リサーチ

統合型の虚像:モバイル・デバイスの選択

インフラストラクチャ (INF)/INF-13-79
Research Note
L. Fiering
掲載日:2014年8月19日/発行日:2013年7月5日

本リサーチ分析レポートのテーマに関心をお持ちの方は、2014年10月28日(火)〜30日(木)に開催する 「Gartner Symposium/ITxpo 2014」 のページを是非ご覧ください。(イベント終了後も開催実績としてご覧いただけます)


現在、モバイル・デバイスは3つのスタイル (ポケット収納型のスマートフォン、持ち歩き型のタブレット端末、机上型のノートPC)に大別される。ユーザー、ITリーダー、OEMはいずれも1つであらゆる状況に対応可能な統合型デバイスを探しているが、これまでのところ成果は思わしくない。


要約

主要な所見

  • タブレット端末が登場し、エンドユーザー・コンピューティング・スタイルは3種類になった。現在のモバイル・デバイスの大半は、そのうちの1つにのみ対応する設計である。
  • 不向きなデバイスの使用をユーザーに強制すると、業務の生産性とユーザーの満足度が低下し、デバイスの使用拒否 (または次善策探し) につながることさえある。
  • IT部門は、購入/サポート・コストを削減すべく、すべてのユーザー要件を統合し、2〜3台のデバイスを集約して1台の統合型デバイスで対応できるようにしたいと考えている。
  • ベンダーは、統合型デバイスに対する需要とコモディティ化の進む市場で差別化を実現するために、現在の主流からは外れた大型タブレット端末や取り外し可能なキーボードを備えたハイブリッド・ノートPC(画面をタブレット端末として利用可能)といった、多様なフォーム・ファクタを試行している。こうした新型デバイスの多くは標準となるには至らないか、または一部のユーザーにしかアピールしない。


推奨事項

  • ユーザー要件を理解し、支給したデバイスが実際にユーザーのニーズを満たすことを確認する(先にデバイスを選定して目的を達成できると期待してはならない)。ユーザーは一般に複数の作業スタイルを持っているため、複数のデバイスが必要となることを認識する。
  • ユーザー・グループによってニーズが異なるため、すべてのニーズに対応することを期待して1種類のデバイスを選定することは避ける。
  • 画面サイズと入力方法がそれぞれ異なる多数の新規デバイスの評価は慎重に行う(機能面のトレードオフがある)。長所と短所に加え、さまざまなユーザーと作業に対する適合性を調査するため、複数のタイプのデバイスに投資する。
  • 対象ユーザー/役割を基に新デバイスを割り当てる。ライフサイクルを2年として計画する。


分析

タブレット端末の登場により、第3のコンピューティング・スタイルが台頭している(図1参照)。一部に重複があり、異なるスタイルの使い分けも少なくない一方で、現在のデバイスは3つのいずれか1つに合わせて最適化されており、複数のコンピューティング・スタイルを1台のデバイスに統合しようとするとうまくいかない。スタイルによって主な作業は異なり、各スタイルに最適化されたデバイスが提供する価値も、それぞれ異なる傾向が強い(図2参照)。





図1 タブレット端末がもたらした第3のエンドユーザー・コンピューティング・スタイル





出典:ガートナー (2013年3月)







図2 3種類のエンドユーザー・コンピューティング・スタイル





出典:ガートナー (2013年3月)





主要な3つのエンドユーザー・コンピューティング・スタイルは、以下のとおりである。

  • ポケット収納型(スマートフォン、ハンドヘルド端末):価値提案は「高可用性 (即効性)」
  • 机上型 (ノートPC):価値提案は「生産性」
  • 持ち歩き型 (タブレット端末):価値提案は「可搬性 (ポータビリティ)」

これらのスタイルの間に明確な境界は存在せず、すべて一連のコンピューティング利用形態の範囲内にある。本リサーチノートで解説する3つのスタイルは、現時点で最も理解されているものであり、現在のモバイル・コンピューティング・デバイスの大半はこれらをターゲットにしている。

ただし、多くのユーザーは就業中に2種類以上のコンピューティング・スタイルを必要とするため、IT部門は複数種類のデバイスの購入とサポートを余儀なくされる。そうした企業のITマネージャーはサポート要件を簡素化したいと考え、購買責任者は複数種類のデバイスの特長と機能を兼備したあらゆる状況に対応可能なデバイスを標準とすることにより、支出を削減したいと考える。

ナレッジ・ワーカーは、持ち歩くデバイスの数を減らしたいと考えているが、支給されたデバイスに妥協点が多過ぎる場合は不満を抱くことが多い。

一方、デバイス・ベンダーは統合を追求するよりも、今までのコンピューティング・スタイルの間に収まる製品を開発することことによって自社ブランドを差別化する方向に進んでいると考えられる。これらのデバイスは、それぞれ異なる画面サイズと入力方法で差別化されている例が多い。また、プロセッサの処理速度、解像度、入力方法、周辺機器といった機能セットの独自の組み合わせを前面に出すことで差別化を実現している例も少なくない。

その結果、モバイル・ハードウェア市場では試行錯誤と頻繁な変化が進行中である。新型デバイスの一部は特定市場向けの製品となり、少数のユーザーにアピールする。ただしそれ以外は、完全に失敗する。最終的に独自のワークスタイルを新たに生み出すことのできる十分な成熟度に到達するのは、わずか一握りである。また、その場合でも、1台であらゆる状況に対応可能な統合型デバイスに対するIT部門の要求は満たされないままとなる可能性が高い。


ポケット収納型デバイスは、コミュニケーションをターゲットに高可用性を実現する

スマートフォンとハンドヘルド端末に代表されるポケット収納型デバイスは、小型(画面サイズが5インチ以下)であり機能セットが(拡充途上にあるとはいえ)限られることを特徴とする。そのためコンピューティングをフルに活用することはできないが、以下の用途には多用される傾向にある。

  • コミュニケーション
  • アラート
  • 複雑ではないワークフロー
  • ショート・メッセージ・サービス (SMS)/メッセージング
  • 概要情報 (アラート、ワークフロー、期限の確認など) を得るための電子メールの閲覧

用途の多くが何らかの形でのコミュニケーションを伴っている一方で、ポケット収納型デバイスでのコンテンツ利用が増えていることにも注意すべきである。用途の一部には、会議の合間や待ち時間にデバイスを取り出して数分間を過ごす「隙間時間の活用」が含まれるが、これはポケット収納型の可用性の高さを理由としている。以下に、ポケット収納型デバイスで実行されるコンピューティング活動の例を挙げる。

  • Webブラウジング
  • ニュースの閲覧、読書、短いレポートの閲覧
  • ゲーム
  • 短い動画の視聴

以下のような少量のコンテンツを作成することもできる。

  • 電子メールに対する簡単な返信
  • 自分用メモ
  • フォーム入力 (経費報告書や各種申込みなど)
  • 写真および短時間の動画

ポケット収納型コンピューティング・スタイルの価値提案は、高可用性である。ユーザーはデバイスをポケットやバッグに入れて常時携帯できる。そのため、多くの製品の画面サイズは5インチ弱である。画面を大型化する試みが増加しているため、もはやポケット収納型ではなく「ファブレット」(スマートフォンとタブレットの中間) と呼ばれるようになっている機種もある。


着席型コンピューティング・デバイスは、コンテンツ作成に重点を置くことによって生産性を実現する

ポケット収納型に対して、一連のエンドユーザー・コンピューティング・スタイルの対極に位置するのがノートPC (着席型コンピューティング) であり、ユーザーは高度な作業に重点を置き、コンテンツ作成に長時間を費やす。その例を以下に示す。

  • 長いレポート、高度に構造化されたレポート作業、書式が複雑なレポートの作成
  • スプレッドシートの操作
  • グラフィックス制作 (特にプレゼンテーション用のスライド)
  • ビジネス関連動画の制作/編集

ただし、着席型コンピューティング・デバイスの用途がコンテンツ制作のみであると考えるのは早計である。以下に例示するように、コンテンツ利用レベルは高まっている。

  • 動画の視聴 (仕事中にニュース・クリップやトレーニング用動画を視聴し、航空機内や宿泊先のホテル客室で夜間に娯楽用動画を視聴するなど)
  • 文書の閲覧とレビュー

ノートPCはコミュニケーションにも利用されている。

  • 長文形式の電子メールの執筆と送信
  • インスタント・メッセージング (IM)
  • VoIP

着席型コンピューティングの価値提案は、コンテンツ制作に大きく重点を置いた生産性である。ただし、コンテンツ利用とコミュニケーションの重要性を無視すべきではない。机上型デバイスは、文字や数字をキーボードから入力する傾向が強いが、特にWindows 8のリリース以降はペン入力やタッチ操作が普及しつつある。レガシー・アプリケーションについては、大半のユーザーは「12インチ以上の画面でなければ、複雑なスプレッドシートの操作や複雑な表示画面のナビゲーションに不自由を感じる」と述べている。一方で、一部のユーザー(特に机上に大画面の外付けモニタを設置しているユーザー)は、小画面を進んで受け入れている。オフィスの外でコンテンツを作成する必要のある従業員にとっては、小画面が欠点になる可能性がある。


持ち歩き型デバイスは、幅広いコンピューティング機能向けに可搬性を実現する

タブレット端末は、登場時に「持ち歩き (grab and go)」という新たなコンピューティング・スタイルをもたらした。このスタイルを採用するユーザーは、ポケット収納型デバイスを上回るコンピューティング能力と画面サイズを望んでいるが、従来の重いノートPCを持ち運ぶ負担は避けたいと考えている。そのような条件を満たすデバイスで持ち歩き型コンピューティング・スタイルの実現に成功した機能としては、即時起動(インスタントオン)、終日駆動対応バッテリ、鮮明なグラフィックスのほか、各種の軽度なコンピューティング作業を並行して実行できる処理能力などがある。

メディア・タブレット端末(iPadなど)の当初の用途は、主にコンテンツ利用であった。

  • ビデオ・クリップや映画の視聴
  • 読書、新聞/雑誌の閲覧
  • 従来型のオフィスで作成される成果物のレビューや、他のプラットフォーム上で作成されたプレゼンテーション・スライドの表示
  • ゲーム

時間の経過とともに、タブレット端末で可能なコンテンツ制作作業はさらに増え、この動きには市販のBluetoothキーボード(スタンドアロン・タイプやケース内タイプ)が幅広く入手可能になったことも寄与した。メディア・タブレット端末の場合、これらの作業は現在でも相当に軽度であるが、Windows 8 Proベースのタブレット端末の採用により、さらに複雑なコンテンツ制作作業が可能になり、そうした作業にタブレット端末を使用する時間の割合も増える。

  • 従来型のオフィスで既に作成された成果物の編集
  • 従来型のオフィスで作成されるような成果物 (短いもの) の作成
  • 写真、動画の制作/編集
  • 業種別アプリケーションの実行

コミュニケーションも重要である。

  • 電子メール・キュー (待ち行列) の管理
  • テレビ会議
  • VoIP

ユーザーによって利用パターンはさまざまであり、重視する機能も異なるが、上述の作業はどれもある程度のレベルで利用可能である。デバイス自体の機能はかなりバランスが取れており、1つの機能セットのみに重点が置かれているわけではない。現時点で主流の画面サイズは10インチであるが、コンテンツ利用とノートPCとの併用を重視する傾向から7インチも増加しつつある。11インチ以上のタブレット端末(通常は取り外し可能なキーボードが付属)も市場にリリースされている。ただし大型化については、大画面でかさばる上に重い端末が、一般的な10インチ画面の端末と同程度に魅力的なものになるか否かについては疑問が残る。

持ち歩き型デバイスの価値提案は可搬性である。ポケット収納型ほど小さくはないが、携帯や手元に常備しておくことは容易である。会議に出向くときや、従来型のオフィスから短時間外出する際に持ち歩き型デバイスが選ばれる可能性は、通常のノートPCよりも確実に高い。


他のモバイル・デバイスの現状

現在出荷されているモバイル・デバイスの大半は、図2に示した3つのコンピューティング・スタイルのいずれか1つの要件に合わせて最適化されている。これらのデバイスを定義する要素には画面サイズ、処理能力、入力オプション(例:キーボード、ペン、タッチ操作) などがある。

その一方で、差別化を追求するデバイス・ベンダーの切迫したニーズと、統合型デバイスに関してまだ満たされていないIT部門やユーザーの要件の双方に対応すべく、コンピューティング・スタイルに関する多様な要件を単体で満たそうとするデバイスが続々と登場している。

中間的サイズの画面を搭載したデバイス (タブレット端末とノートPCの間のギャップを埋める11インチ画面や、5〜6インチ画面の「ファブレット」スマートフォンなど)の普及率が高まりつつある。ただし、これらのデバイスにはトレードオフが多数存在する。例えば11インチのノートPCは、小さ過ぎるためにレガシー・アプリケーションには使いたくないと考えるユーザーがいることも考えられる。オフィス内で外付けモニタを利用できる場合でも、ユーザーが移動中に大量のコンテンツを作成しようとしても、モニタから離れている場合は実質的に意味がない。また、このような機種は薄型設計であるため、エンタプライズ・ノートPCに要求される、ポートと機能を完備したドッキング・ステーションは制限されることも考えられる。Intel Core i5プロセッサで完全な処理能力を実現する必要がある場合は、厚みを増して冷却 (ファン)に対応する必要があり、その結果としてバッテリ駆動時間が大幅に短くなる。そのためタブレット端末は、ユーザーが現時点で持ち歩き型コンピューティングに選択している製品よりも大型化し、厚みと重量も増す可能性がある。

デバイス・ベンダーは、本市場の「スイート・スポット」を探り当てようとして、さまざまなフォーム・ファクタ、機能セット、価格ポイントを試すことになる。例えば、あるデバイスは処理速度を引き上げる代わりにキーボードの設計を犠牲にする。別のデバイスは、優れたキーボードと高解像度画面を実現するが、ポートのオプションが限られている上に高価なものになる。

携帯機器メーカーは、複数の画面を搭載することで、タブレット端末とスマートフォンを統合しようとしている。これにより、スマートフォンの利用パターンはタブレット端末に近づくが、デバイス・サイズが大きくなり過ぎてポケットに収まらなくなる。

ポケット収納型と持ち歩き型のギャップを埋めようとする新たなデバイスの中には特定のユーザーと役割に対応するものも現れる。しかし、一部のユーザーは個人的な嗜好や職務要件を理由に必要なトレードオフに応じないため、企業内ユーザーの大半に適したものにはならない可能性がある。

そのため、デバイス・ベンダーとユーザーが教訓から学ぶに従い、2013年にはデバイス乗り換え事例が大規模に発生するであろう。IT部門は、以下の作業を行うことによって自衛策を講じる必要がある。

  • デバイスとコンピューティング・スタイルに関する現状を理解する。
  • さまざまな役割におけるユーザーの要件を理解する。
  • 各種の新型デバイスが市場にリリースされるたびに、購入してテストし、課題と機会を洗い出す。
  • 新たなフォーム・ファクタのデバイスで職務関連ニーズを満たす必要のあるターゲット・ユーザーのグループ内で、新型デバイスをパイロット運用する。
  • 新型デバイスの耐用年数を、2年以内と想定する。

市場の変動も、デバイスの統合を阻む障害も、長期的なものではない。ただしこれらの要因には、現在の購入実態が反映されている。ユーザー・インタフェース (UI) がより分かりやすい簡素なものに

市場の変動も、デバイスの統合を阻む障害も、長期的なものではない。ただしこれらの要因には、現在の購入実態が反映されている。ユーザー・インタフェース(UI)がより分かりやすい簡素なものになり、タッチ指向を強めたアプリケーションが登場し、レガシー・アプリケーション(雑然とした画面とテキスト入力を特徴とする)への依存性が低下すると、画面サイズの重要性も低下する。この場合、ユーザーは小画面を使用する際であっても、アプリケーションを実行して生産性を維持できる。

したがって、統合するトレンドよりも、新たなフォーム・ファクタの登場の方が優勢になり、新たな利用パターンと作業スタイルが現れる可能性が高い。



推奨リサーチ

  • 「Enterprise Tablets as Notebook Replacements: Limited but Growing」
  • 「Effects of Mobility on Information Management」



(監訳:針生 恵理)
INF: INF-13-79


※本レポートの無断転載を禁じます。

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